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谷口賢志&多和田秀弥&荒木宏文が背中で見せる男同士の絆。大人のムード漂う演劇空間に引き込まれる舞台「文豪ストレイドッグス 黒の時代」開幕

谷口賢志&多和田秀弥&荒木宏文が背中で見せる男同士の絆。大人のムード漂う演劇空間に引き込まれる舞台「文豪ストレイドッグス 黒の時代」開幕

舞台『文豪ストレイドッグス 黒の時代』が、9月22日(土)より池袋・サンシャイン劇場にて上演中だ。
原作は漫画・アニメ共に大人気の異能力アクションバトル作品『文豪ストレイドッグス』、通称“文スト”。昨年12月~今年1月にかけて作・御笠ノ忠次、演出・中屋敷法仁のタッグにより初舞台化され、好評を博した。今回は通称“文ステ”の第2弾。テレビアニメ第2期で放送された、太宰 治の“前日譚”となるエピソード“黒の時代”を描く。
初日前日に行われたゲネプロの熱演と、織田作之助 役の谷口賢志、太宰治 役の多和田秀弥、坂口安吾 役の荒木宏文、そして演出の中屋敷法仁が登壇した囲み取材の模様をレポートする。

取材・文 / 片桐ユウ 撮影 / 中原幸

戻らない時間の儚さ。一時だけすべてが噛み合う美しさ

“黒の時代”は、『文豪ストレイドッグス』ファンから絶大な人気を誇るスピンオフ・エピソード。本編からさかのぼること4年前、太宰 治が“武装探偵社”に入社する前に属していた“ポートマフィア”時代の物語だ。

“異能”の力を持ち、ヨコハマの裏社会に巣食う“ポートマフィア”。その最年少幹部を務める太宰 治。下級構成員の織田作之助、秘密情報員の坂口安吾。
組織内の立場を超えて交わる3人は、静かなバーのカウンターに肩を並べてグラスを傾けていた。あの日、ひとりが消息を絶つまでは……。

舞台版の第1弾は、“月下獣”の異能力を持つ中島 敦が太宰 治と出会い、“武装探偵社”に入社するところから始まる物語だった。国木田独歩や谷崎潤一郎、宮沢賢治ら“武装探偵社」のメンバーが多数登場して和気藹々とする様子や、対抗する“ポートマフィア”の芥川龍之介や中原中也らとのバトルシーンが大きな見どころとなっていた。

第2弾の今回は、そんなにぎやかさとは一変。
シックな大人のムードが全体に漂う舞台となっている。

ステージは傾斜のついた八百屋舞台。ステージの左右と中央には様々な小説のページとおぼしき紙面が見開かれたデザインのパネルが立ち、映像をはじめとする様々な演出に使われる。

映像演出やアンサンブルの身体表現は健在。スタイリッシュな衣裳とメリハリの効いた展開も第1弾同様に盛り上がるが、今回はすべてが極限まで削ぎ落とされ、隙間なく整えられている印象を受けた。

例えば、グラスの中でカランと音を立てる氷。軽妙洒脱な会話。背中で語られる関係。
そして“無音”と“無言”が空間を支配する瞬間。

ひとつ掛け違いを起こしただけで崩壊してしまいそうなほど繊細なステージを成立させている要素、或いは勝因は、芝居を見ているだけでハッキリと伝わってきた。

すべてのキャラクターの人生観が丸ごと詰め込まれているかのような台詞。
それを狂いのない順番で取り出してみせる脚本。
情景のみならず、地の文の隅々までも“演劇”に錬金していく演出。
脚本・演出からの高度な要求を受け止め、咀嚼し、奥底から体現する役者陣。

織田作之助は一見すると冴えない下級構成員。だが最年少幹部の太宰からは一目置かれる“ただならぬ男”という両面を持ち合わせている。
谷口賢志は、そんな“織田作”の柔らかな落ち着きと内に秘めた決意を、絶妙な力加減でシームレスに見せる。彼の慟哭とその後の行動は、まさに織田作之助だけができる“生き様”。演じる谷口も舞台空間という限られた場所と時間の中で、その瞬間に命を燃やしていた。

太宰 治は、片目と両腕に包帯を巻いた黒いスーツ姿で登場する。“黒の時代”というタイトルを背負うように、“ポートマフィア”最年少幹部としての顔を覗かせる太宰は仄暗く、ゾクリとするほど冷たい。その一方で、バーの場面では明るく温かい表情を見せる。
その差は何だったのか、何が彼をそうさせていたのか。そのことを太宰演じる多和田秀弥の人間味が言葉以上に表現している。

秘密情報員として謎が多い一方、わかりやすい性格にも思える坂口安吾。彼の実直な言動と立ち振る舞いは物語の要だ。重圧の多いこの役の務めと本音を、荒木宏文は心地よい温度で伝えてくれた。

彼ら3人を取り巻く面々も、重厚感とコメディタッチなシーンともに、たっぷりのアクセントを効かせて見せてくれる。
江戸川乱歩 役の長江崚行は、第1弾で披露した“武装探偵社”チームの明るさをひとりでもしっかりと請け負いつつ、“黒の時代”における自分の役割を果たしていた。

これから観劇する方も多いだろうから内容について深くは語らないが、舞台に生きる彼らをぜひ見届けて欲しい。

戻らない時間の儚さと、ある一時だけすべてが噛み合う美しさ。
留めておけない“演劇”で見るからこそ、より味わい深くなる物語が、ここにはある。

人間という存在をまざまざと知ることができる演劇体験になる

このあとは、ゲネプロ後に行われた囲み取材の模様をレポートする。

囲み取材は、織田作之助 役の谷口賢志、太宰 治 役の多和田秀弥、坂口安吾 役の荒木宏文、そして演出の中屋敷法仁の4名が登壇した。

織田作之助を演じる谷口賢志は、ゲネプロを終えての気持ちを聞かれて「ゲネプロのあとに囲み取材をやる形式に慣れていなくて、まだちょっとフワフワしています(笑)」とはにかみつつ、「稽古場からスタッフさんたちが丁寧に説明してくださっていたので、全体像のイメージもしやすかったのですが、想像をはるかに超えるものが舞台にありました」と、舞台の仕上がりに驚いた様子。

太宰 治 役の多和田秀弥も「世界観がより増したのを感じました」と語り、坂口安吾 役の荒木宏文は「とてもスムーズに進んだので、余裕を持ってゲネプロに臨むことができました」とコメントした。

演出の中屋敷法仁は「大人のムード漂う作品ですので“気合いで乗り切るぞ、ウェーイ!”ではやれないと思って(笑)。貫禄あるお芝居をして欲しいと思っていました」と、荒木のコメントに応えつつ、今作について「俳優さんがとても魅力的なので、いろんな演出をやりたくなってしまう。アイデアをもらっている気持ちでやっていました」と、キャストたちへの信頼を明かした。

谷口は膨大なセリフ量と出番に対して「正直、最初は脚本家と演出家の首を締めてやろうかな? と思いましたが(笑)。実際にやってみると、役者って追い込まれるのが好きなんだな……となりました。先程ゲネプロが終わった直後も倒れ込んでいましたが、それほどになれる作品に出会うことって、とても幸せなことだなと思ってやっています」としみじみ。 加えて中屋敷の演出について聞かれ「天才だと思いました! 常日頃からそう言えと言われているので!(笑)」と、冗談めいて取材陣を沸かした。

谷口と同じく、中屋敷の演出を初めて受けた荒木は「すごく親切な方だと思います。キャストにもですが、お客様に対しても。この作品は描かれていないところをお客様が察したり、想像する部分が多い。それをこちらから提示するのはなかなか難しいことなのですが、感じ取れる要素を演出効果によって増やそうとしてくれている。ただの答えではなく、ヒントをたくさんつくってくれています」と分析した。

太宰治役の多和田は「アンサンブルメンバーを“ストレイドックスのみんな”と呼んでいるのですが、彼ら彼女らがいることによって“文ステ”の空気感をつくっていただけていると思います。背中を押してもらっています」と、アンサンブルメンバーに言及。
そして「前作に引き続き出演させていただいているので、前作の想いを背負わなければというプレッシャーや、ここで生き抜かないと太宰 治として認めていただけないという思いが強かったです。でも大先輩のふたりと一緒の空間をつくれることを幸せに思いましたし、18歳の太宰として自由に伸び伸びとやれたら、それが今作の成功にも繋がるのかなと思えるようになったので、気負いすぎずに演じていきたいと思います!」と、意気込みを語った。

荒木は「いろんな角度から、いろんなものを感じ取ることができる作品になっています。ぜひ劇場で空間を味わって、匂いを感じ取って欲しいと思います」とアピール。

谷口は「とても人気がある原作で、第1弾の舞台も好評だった作品の第2弾。さらに40歳で2.5次元舞台の主役をやるってどうなんだ!?という思いもありつつ、いろんな覚悟を持って挑んできました。前作に出演していた彼らにもヘタなものは見せられないし、全身全霊をかけてコイツ(太宰 治を演じる多和田)に想いを届けようと思って命がけでやっています」と真摯な表情を見せた。

中屋敷は「『文豪ストレイドッグス』は特殊な作品で、アニメ、漫画、そして文学というチャンネルもある。今作はそれに加えて“演劇”の4方向のコラボレーションだと思い、僕は“演劇”を代表してつくりました。人間という存在をまざまざと知ることができる演劇体験になると思います」と自信を覗かせる。

最後に谷口が「今作“エピソードゼロ”になりますので、前作を観ていない方、原作を知らない方にもまっさらな気持ちで楽しんでいただける作品になっています。劇中の『小説を書くことは人間を書くことだ』という台詞が僕はすごく好きで、演劇も同じで演劇をつくるということは人間をつくることですし、出会うことだとも思っています。多くのお客様に出会って、人生を一緒につくれたらと思っていますので、劇場に足を運んでください。心よりお待ちしています」と熱くメッセージを送り、囲み取材は終了した。

東京公演は9月22日(土)~10月8日(月・祝)池袋・サンシャイン劇場にて。大阪公演は10月13日(土)~14日(日)大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。大千穐楽公演は、全国33館の映画館にてライブビューイングが上映決定している。

舞台『文豪ストレイドッグス 黒の時代』

東京公演:2018年9月22日(土)~10月8日(月・祝)サンシャイン劇場
大阪公演:2018年10月13日(土)・10月14日(日)森ノ宮ピロティホール
ライブビューイング:10月14日(日)17時開演公演

STORY
常人ならざる「異能」の力を持ちヨコハマの裏社会に巣食う悪虐の徒「ポートマフィア」の最年少幹部・太宰治、下級構成員・織田作之助、秘密情報員・坂口安吾。階級を重んじる組織にありながら立場を越えて交わる3人は、仄暗いバーのカウンターに肩を並べ今夜もグラスを傾けていた。あの日、ひとりが消息を絶つまでは……。
男は何を求めてマフィアとなり、何を失い訣別したのか?
胸襟を開かぬ彼らに代わり一葉の写真が物語る。黒の時代、闇の中に光る“何か”を。
これは、まだ太宰治が「武装探偵社」に入社する前の話である──。

原作:テレビアニメ『文豪ストレイドッグス』
演出:中屋敷法仁
作:御笠ノ忠次
協力:朝霧カフカ・春河35

出演:
織田作之助 役:谷口賢志
太宰 治 役:多和田秀弥
坂口安吾 役:荒木宏文
ジイド 役:林野健志
森 鴎外 役:窪寺 昭
エリス 役:大渕野々花
広津柳浪 役:加藤ひろたか
種田山頭火 役:熊野利哉
江戸川乱歩 役:長江崚行 ほか

オフィシャルサイト
公式Twitter(@bungo_stage/)

©舞台「文豪ストレイドッグス 黒の時代」製作委員会

関連書籍:コミック『文豪ストレイドッグス』