Interview

物語はいよいよ佳境へ。TVアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』第3次世界大戦後の情景、モーツァルトとサリエリの逸話…3人の作家に聞く劇伴音楽の秘密

物語はいよいよ佳境へ。TVアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』第3次世界大戦後の情景、モーツァルトとサリエリの逸話…3人の作家に聞く劇伴音楽の秘密

劇場版を含むアニメ展開で人気を集めた『STEINS;GATE』の続編として、この春より2クール連続でTVアニメがオンエアされている注目作『シュタインズ・ゲート ゼロ』。主人公の岡部倫太郎をはじめ多彩かつ魅力あるキャラクターたちと、先が予測できないストーリー、ハードなSF設定などで支持を広げている同作だが、その世界観をときにクールに彩り、ときにドラマティックに盛り立てる劇伴音楽も見どころのひとつとなっている。

今回のアニメ版の劇伴を手掛けたのは、最初に制作されたゲーム版『STEINS;GATE』から一貫してシリーズの音楽に携わっている阿保 剛、そして音楽制作事務所のミラクルバスに所属する信澤宣明、日向 萌の3人。彼らはいかにして新たなβ世界線の物語に寄り添う音楽を作り上げたのか? サントラが9月19日にリリースされ、物語も佳境に差し掛かったこのタイミングに、3人に話を聞いた。

取材・文 / 北野 創

科学アドベンチャーシリーズとして、現実と空想がうまい具合に混ざっているSF感が魅力(阿保)

『STEINS;GATE』シリーズの音楽と言えば阿保さんですが、今回、信澤さんと日向さんがTVアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』の劇伴に携わることになった経緯をお聞かせください。

信澤宣明 阿保さんが作られたゲーム版『STEINS;GATE 0』の音楽はすべて打ち込みで制作されているのですが、TVアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』の音楽は弦やピアノを生音で録音したいというお話だったんです。そのためには、レコーディングの際に演奏家の方が演奏できる形に調整したり、譜面に起こす作業が必要ということで、普段から生音の仕事をしていて同じ音楽事務所の僕たち二人にお声がけをいただいたんです。

信澤さんは以前に『STEINS;GATE』の劇伴をオーケストラアレンジで収録した作品『STEINS;GATE SYMPHONIC REUNION』(2013年)にアレンジで参加されていましたよね。

信澤 そのときは『STEINS;GATE』のアニメ1期の音楽に関わってらっしゃった村上(純)さんにお声がけいただいたんですが、僕が作家の仕事で初めてクレジットを入れていただいた作品でもあったんですよ。まさかその後にこうしてアニメ本編の音楽に関わらせていただけると思ってなかったので、最初に『シュタインズ・ゲート ゼロ』のお話をいただいたときは感慨深かったですね。

みなさんは『STEINS;GATE』シリーズおよび『シュタインズ・ゲート ゼロ』という作品にどのような魅力を感じてらっしゃいますか?

阿保 剛 やはり『CHAOS;HEAD』から始まった科学アドベンチャーシリーズとして、現実と空想がうまい具合に混ざっているSF感ではないでしょうか。個人的にもSF作品が大好きなので、そういう意味ではすべてが魅力に感じられるというか。自分は最初のゲーム(2009年にリリースされたXbox 360版『STEINS;GATE』)から音楽で関わっているんですが、音楽を作るにあたってまずシナリオを途中まで読ませてもらうんですよ。それで続きが気になるので、林さん(林 直孝/『STEINS;GATE』のシナリオライター)に「早く次を読ませてくれ」と催促するぐらいハマりましたから(笑)。

信澤 僕も先ほどお話したオーケストラ・アルバムで関わらせていただく前から作品の名前は知ってました。これはアニメに関わらずですが、個人的に最近はわかりやすく作られた作品が多い気がするんです。そういう意味で『STEINS;GATE』シリーズは難解な部分もありますけど、そのぶんスタッフさんのこだわりを感じますし、ファンの方もそういうところに引き込まれるのかなと思います。

日向 萌 この作品には様々な個性のキャラクターが登場しますが、それぞれがそれぞれの想いを抱えていて、その想いが複雑に絡まっていくことで、作品自体がとても魅力的になっているように感じました。

今回の劇伴におけるお三方それぞれの役割や、主な担当分野について教えてください。

阿保 基本的に特別役割を設けていたわけではなくて、ディレクターに得意そうな楽曲を割り振っていただいて、それぞれで制作していきました。そもそも最初の時点からけっこう急ぎの状態だったので、できるものから順番に着手していった形ですね。

金谷雄文(音楽プロデューサー) 基本的に阿保さんは『STEINS;GATE』シリーズすべてに関わられてますので、テーマ曲や作品の土台となる楽曲を手掛けていただきました。いわゆるキャラクターごとのテーマやコアな部分については、阿保さんにメロディーを書いていただきまして、お二人にはそれらのアレンジをしていただくのが主な割り振りになりますね。あとはお二人が生のサウンドを得意とされてますので、そういった楽曲に関してはお任せしました。

TVアニメ『シュタインズ・ゲート ゼロ』を含む『STEINS;GATE』シリーズの音楽は全体的にどのようなコンセプトで作られているのですか?

阿保 そもそも大元となるゲーム版の『STEINS;GATE』の音楽を作るときは、ファンタジーでも、すごく先の未来のお話でもない、現代に近い未来のフィクション作品ということを意識して制作したんです。ゲーム版『STEINS;GATE 0』の音楽もそれに繋がるものがコンセプトとしてあるのですが、基本は第3次世界大戦が起こった後の世界をイメージして作ったので、前作に比べてダークで過酷な雰囲気のものになりました。作品的にも明るいイメージがほとんどありませんでしたから。

それらの音楽を作る際に、何か参考にした音楽はありますか?

阿保 自分は曲を作るときに他の音楽を参考にはしないのですが、あとになって考えてみると『ブレードランナー』の音楽に近いものがある気はしますね。もしかしたら同じ近未来のお話ということで、自分のなかで無意識のうちに影響を受けた部分はあるかもしれないです。僕はヴァンゲリス(『ブレードランナー』の音楽を担当した作曲家/シンセサイザー奏者)の曲もそうですし、あの時代の音楽が好きなんですよ。打楽器の音はあまり使わないようにして、弦の音をメインにしたところもそうですし、すべてシンセで完成させたところは通じてるかもしれないです。

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