モリコメンド 一本釣り  vol. 85

Column

月に吠える。 いぶし銀の男たちによる日本のロックンロール。11月にはワンマンライブも 

月に吠える。 いぶし銀の男たちによる日本のロックンロール。11月にはワンマンライブも 

映画『アイデン&ティティ』『ハゲタカ』『アウトレイジ 最終章』などの名作に出演するなど、名実ともに日本を代表する俳優のひとりである大森南朋。彼には俳優のほかに、もうひとつの顔がある。ロックバンド“月に吠える。”のボーカリストとしての顔だ。

月に吠える。の結成のきっかけは、大森とギタリストの塚本史朗との出会いだった。10代の頃からバンド活動を行い、役者になった後も日々ギターを弾き、曲を作っていたという大森。そして、aiko、KinKi Kidsなど数多くのアーティストをサポートしてきた塚本は、とある酒場で出会い、そのたびに「バンドやりたいね」と話し合っていたという。実際に動きはじめたのは、2015年。大森が40才、塚本が36才のときだ。大森と同じく役者としても活動しているドラムの山崎潤、everset、眩惑庭園など複数のバンドに在籍しているベースの長野典二を含めて、完全に“大人の”バンドである。

30才を過ぎて大人と言われる年齢になり、ちゃんと仕事もしているんだけど、心のどこかで“バンドやりてえな”と思っている——という人は意外と多いのではないだろうか。“10代の頃に仲間とバンドを組み、ともに夢を見る”というロマンもあるが、“大人になってからバンドを組んで、好きな音楽を演奏して楽しむ”というロマンもある。しかも月に吠える。は単なる趣味ではなく、プロのロックバンドとして活動しているのだ。これはまさに“大人の夢”そのものではないか。

2015年1月にライブハウス“青山 月見ル君想フ”で最初のライブを行った4人は、同年7月に1stアルバム『第一巻』リリース。さらに翌年4月には1st EP「第一巻。別冊 〜だってこんな好きなんだからしょうがない〜」を発表した。このバンドの軸になっているのは、‘70年代〜’80年代から脈々と受け継がれている日本語のロックンロールだ。たとえば「ロマンチックブギー」という楽曲を聴いてみてほしい。ブルーズの香りを感じさせるギターリフから始まり、シンプルで骨太なエイトビート、濃密なグルーヴを感じさせるベースライン、大森のブルースハープが絡む。そこに乗るのは男っぽくて、ぶっきらぼうで、でもちょっと切なさを感じさせるボーカル。00年代以降にデビューした若いバンドからは絶対に感じられない、大人の男のカッコ良さが濃密に含まれた楽曲である。ザ・ストリート・スライダーズ、忌野清志郎、エレファントカシマシなどが築き上げてきたものを受け取りつつ、自分たちのリアルな感情を乗せることで、大人のリスナーを惹きつけるロックを鳴らすバンドは、いまとなってはきわめて貴重だ。(モノクロで撮影された映像も素晴らしい。当たり前かもしれないが、大森はロックシンガーとしてもめちゃくちゃ絵になる)

2017年5月には1st ミニアルバム『 第二巻。〜浮世歌〜』を発表。初の全国ツアーを行う一方、情報番組「スッキリ!!」に出演して生ライブを披露、ツアーファイナルにはゲストに中村獅童、大杉漣を迎えるなど、個性的な活動を展開してきた彼ら。今年の夏には「気まぐれジョニー」「さよならブギー」「ワンダートレイン」を3週連続で配信。オルタナの雰囲気をさりげなく取り入れたバンドサウンドのなかで、“僕”と“ジョニー”の会話を軸にした歌が響き渡る「気まぐれジョニー」(ちなみにジョニーのモデルは“ジョニー・サンダース”だそう)、タイトル通りブギー・スタイルのアレンジとポップなメロディがひとつになった「さよならブギー」、そして、UKギターロックの雰囲気を感じさせるサウンドメイクが印象的な「ワンダートレイン」はいずれも以前からライブで披露され、ファンの間でリリースが待ち望まれていた楽曲だ。ライブで練り上げられた演奏、ルーツミュージックに根差しつつ幅を広げている大森のソングライティングからは、このバンドが確実に前進を続けていることを感じ取ってもらえるだろう。

“役者とロックンロール”は昭和の時代からこの国の音楽シーンに確実に存在してきた。萩原健一、原田芳雄、松田優作。男が憧れる俳優がロックンロールを歌うとき、そこには必ず匂い立つような色気、そして、たばこと酒に象徴される(まるでハードボイルド映画のような)ムードが溢れた。もしかしたら月に吠える。は、その伝統を無意識のうちに引き受け、ほとんどのロックバンドがすっかり消毒され、毒気が抜けてしまった2018年に蘇らせようとしているのかもしれない。11月18日には新宿BLALZEでワンマンライブを開催。いぶし銀の男たちによる日本のロックンロールをぜひ、たっぷりと味わってみてほしい。

文 / 森朋之

ライブ情報

『月に吠える。ワンマンライブ 月に吠える。ジュクで吠える。』

11月18日(日) 新宿BLAZE

http://shinjuku-blaze.com/schedule

OPEN:16:30/START:17:30
料金:¥4,500(税込、1ドリンク別)※当日¥500UP
現在各プレイガイド先行発売中!(詳しくはオフィシャルサイトで) 一般発売:10月20日(土)

オフィシャルサイトhttp://tsukinihoeru.com

その他の月に吠える。の作品はこちらへ

vol.84
vol.85
vol.86