全話レビュー!『幽☆遊☆白書 25th Anniversary Blu-ray BOX』リリース記念特集  vol. 5

Review

能力者バトルから、“夕方アニメ”の限界に挑んだダークな物語へ! TVアニメ『幽☆遊☆白書』全話レビュー:仙水編(第67話~第94話)

能力者バトルから、“夕方アニメ”の限界に挑んだダークな物語へ! TVアニメ『幽☆遊☆白書』全話レビュー:仙水編(第67話~第94話)

冨樫義博原作、伝説のTVアニメ『幽☆遊☆白書』が放送スタートから25周年を迎えた。アニメ全話とともに豪華映像特典を収めた『25th Anniversary Blu-ray BOX』(全4巻)がリリースされるなか、“これを機に全話を振り返ってみる”という当企画。約2年分、全112話にもおよぶTVシリーズだったが……あらためて見始めてみると止まらないおもしろさ! 25年前、『幽☆遊☆白書』に夢中だったリアルタイム世代のライター陣が、再びこれを見直しながらあらゆる魅力を再検証していく。

今回はいよいよ作品の後半へ。第67話からの「仙水編」を一挙に見せます!

文 / 柳 雄大(担当話:#67-70,91-94)
逆井マリ(担当話:#71-80)
北野創(担当話:#81-90)


高度な頭脳戦、人間の闇、予測不能の展開……「仙水編」が今も魅力的な理由

暗黒武術会という壮絶な戦いが終わり、シナリオとしては終了してしまってもおかしくなかった『幽☆遊☆白書』。しかし本作にはまだまだ続きがあった。バトルものの長編作品では、大きな山場を終えたあとがどう展開するかによって評価が分かれがちだが、『幽☆遊☆白書』ではここからの新シーズン=「仙水編」でおもしろさの真髄がいっそう発揮されていくことになる。

“領域(テリトリー)”なる特殊能力に目覚めた者たちの戦いが描かれ、いわゆる“能力者バトルもの”の性質を強めた「仙水編」。しかしこれらの特殊能力が「単純な強さを競うためだけのもの」ではなくなっており、肉弾戦ではない高度な頭脳戦が増えていったのがまずは新鮮だった。言葉で戦う“禁句(タブー)”や、TVゲームで戦う“遊熟者(ゲームマスター)”との戦いなど、本作きっての頭脳派キャラである蔵馬が活躍した名エピソードも多い。

また、妖怪との対峙が描かれてきたこれまでとは違って主に「対人間」という構造の物語になっているのも大きな特徴だ。人の闇の部分の象徴のような男・仙水を中心に、敵対側の勢力についても内面がディープに掘り下げられ、時には彼らの成長も描かれていく。あわせて深みを増した心理描写、残酷描写なども原作からの魅力のひとつで、これらがどのように映像化されるのかにも注目された。TVアニメ版(当時は毎週土曜日18時台に放送)はその点でも“子どもたちが観る時間のアニメ”における表現の限界に挑み、期待を裏切らない内容を残してくれている。

人間同士の能力者バトルとしてのストーリーにグイグイ引き込まれる「仙水編」だが、後半戦以降の、いわゆる(いい意味での)“超展開”ぶりも見どころ。多重人格者や隔世遺伝といったサスペンス要素、そして魔界での最終決戦……。予測不能の暴走で最後まで楽しませてくれる「仙水編」は、25年経った今もなお色あせない輝きを放っている。

〈第67話~第94話「仙水編」主題歌データ〉
OPテーマ「微笑みの爆弾」 歌:馬渡松子
EDテーマ「アンバランスなKissをして」(~第83話) 歌:高橋ひろ
EDテーマ「太陽がまた輝くとき」(第84話~) 歌:高橋ひろ

「浦飯さん、オレの“領域(テリトリー)”にようこそ……」

第67話 新たなるプロローグ
脚本:隅沢克之 絵コンテ:下田正美 演出:中山晴夫 作画監督:室井ふみえ
(1994年2月12日放送)

暗黒武術会の激闘を終えて、再び平和な日常を送る幽助たち。しかし霊界のコエンマは、人間界に何か不穏な出来事が起きる予兆を察知していた……。とある放課後、見知らぬ生徒3人組が幽助のもとに現れる。

訪れる不吉な予感。新シーズンへの期待感を高める重要な一本だ。40話ぶりにストーリーが一区切りということで、まずは作品のオープニング映像が一新。おなじみとなった主題歌「微笑みの爆弾」はそのままに、完全新規映像となったオープニングフィルムがうれしい(仙水編の新キャラもいっぱい!)。そして本編、殺伐としていた暗黒武術会から戻ってきた日常の描写が新鮮だ。原作にはなかったシーンもいくつか肉付けされていて、特に「気をつけて帰るのよ」「オレはガキじゃねーぞ!クルマにはねられたりすっかよ」「はねられたじゃない、一度……」という螢子と幽助のやりとりは秀逸。

「この家に入った者は決して『あつい』と言ってはいけない。もし言えば…………。」

第68話 四次元屋敷にひそむ罠
脚本:富田祐弘 絵コンテ:もりたけし 演出:山口よりふさ 作画監督:梶谷光春
(1994年2月19日放送)

幽助は謎の3人組に誘拐されてしまった。幽助の分身である霊界獣・プーからの知らせを受け、桑原とぼたん、蔵馬、そして飛影を加えた4人が、置き手紙に記された“四次元屋敷”へと向かう。その奇妙な屋敷には、入り口にあるメッセージが書かれていて……。

特殊能力=“領域(テリトリー)”に目覚めた人物たちが姿を現し、いよいよ新たな戦いが始まる。さらわれてしまった幽助を探すため、ぼたんが取り出す「霊界七つ道具」が久々の登場でちょっとうれしい(笑)。ピンチの中でもとにかく明るいぼたん、冷静沈着な蔵馬を中心に、再び集まった仲間たちの空気感になんだかホッとさせられる回だ。

「あと10分もすれば、会話はほとんどできなくなる……会話ができなくなる!? つまり、声を出すことさえできなくなる……よめたぞ、奴の狙いは、ほとんど声さえ出せなくなってからだ!!」

第69話 禁句(タブー)のパワー! 蔵馬の頭脳
脚本:大橋志吉 絵コンテ:高橋資祐 演出:水野和則 作画監督:高橋資祐
(1994年2月26日放送)

四次元屋敷には、“禁句(タブー)”の能力を持つ少年・海藤(声:二又一成)が待ち受けていた。彼のテリトリーにおいて、禁じられた言葉を言った者は魂を取られてしまう。飛影、桑原、ぼたんが次々と罠にかかり、残った蔵馬が一騎打ちを挑む。

 “『あつい』と言ってはいけない”と書かれた貼り紙、そして海藤VS蔵馬の頭脳戦は、『幽☆遊☆白書』全編の中でも脳裏に焼き付いて離れないエピソードのひとつだ。当時、リアルタイムで原作を読んだ時のおもしろさも衝撃的だったが、この静かな戦いをどんな映像にするのか? という点も興味深かった。そんな期待に答える形で、1話をじっくり使って“やりきってくれた”回。蔵馬の提案したルールから、1分ごとに禁句が増えていく……その過程を画面上に示す演出は、まさにアニメならでは。能力を逆手にとられ、声を出すことすら封じられた海藤の焦り、そしてラストのオチにいたるまで目が離せない(蔵馬が最後にいったいどんな顔をしていたのかは、本作最大の謎のひとつ)!

「少々悪趣味な自己紹介、そんなところでしょう?」

第70話 恐るべき真実! 新たな謎
脚本:隅沢克之 絵コンテ:榎本明広 演出:うえだしげる 作画監督:榎本明広
(1994年3月5日放送)

海藤を破った4人は四次元屋敷の奥へと進む。“影(シャドー)”によって幽助を捉えている城戸、そして“模写(コピー)”能力をもつ柳沢が仕掛ける次の罠。彼らの背後には、意外な黒幕の存在があった。

柳沢(声:真殿光昭)とのスリリングな駆け引きの中、再び登場の霊界七つ道具、「目印留(めじるしーる)」! 貼った本人しかはがせない、というシールの特性を生かして状況を打破しようとする局面。これをぼたんが説明するくだりが突然の“通販番組ふう”となっており、この頃のギャグ演出の冴えを感じる(「霊界ショッピング」なるコーナーが始まり、聞き手の桑原まで「おやおや~、それはなんですか?」とノリノリである)。そして、幽助を捕え「この場でオレがあんたの口と鼻をそっとふさぐだけで、あんたを殺すこともできる」と語った城戸。敵キャラとしての活躍は短期間だったが、子安武人による演技の凄みもマッチして強い印象を残した。

「果てしない残忍な欲望で腹を満たし……それでも足りずに何でも食らい、何でも壊す人間ども。お前たちが裁かれるときが来たのだ」

第71話 迫り来る恐怖! 魔界の扉
脚本:橋本裕志 絵コンテ:下田正美 演出:下田正美 作画監督:時矢義則
(1994年3月12日放送)

城戸、海藤、柳沢の3人の背後には幻海の存在があった。魔界の穴の存在を知った幽助たちは、さらにコエンマから迫りくる脅威について聞く。魔界と人間界を隔てる「界境トンネル」が何者かによって開けられていること。これが開いてしまうと強力なパワーを持つ妖怪が人間界に来られるようになってしまうこと。A級以上の妖怪が一匹でも入り込んだものなら、人間界は滅ぼされてしまうということ。猶予は3週間と宣言され、戸惑う幽助たちだが……。

「魔界の扉」について解き明かされた第71話。これから始まるであろう未曽有の戦いの不穏感、動揺や怒りなど登場人物それぞれの感情の機微が丁寧に描かれているのが印象的だ。しかし霊界における妖怪のランク付け、あの恐ろしく強かった戸愚呂クラスでもB級上位、飛影でB級中位とコエンマから明かされたときの衝撃よ……!

「右ストレートでぶっとばす 真っすぐいってぶっとばす」

第72話 魔界の使者! 七人の敵
脚本:富田祐弘 絵コンテ:小柴純弥 演出:小柴純弥 作画監督:山沢 実
(1994年3月19日放送)

界境トンネルの影響で人間界に能力者が続出しているなか、魔界の穴を開こうとしている張本人を探すため蟲寄市の探索に出た幽助たち。そこで読心能力を持つ男、室田(声:福田信昭)と出会う。

本作ファンの間では“「右ストレートでぶっとばす」の回”で通じるであろう第72話。挑発する室田の思考が追い付かないほどの素早い動きで、宣言通り右ストレートでぶっとばした幽助。幽助の心の中、まさに直球のセリフが画に描かれる演出は原作同様にインパクト大だった。

Bパートではその室田の能力を使い、能力者の探索に。幽助たちと仙水(声:納谷六朗)の衝撃的な初対面の様子が描かれる。仙水が振り返る瞬間がスローモーションで表現されていて、幽助たちの緊張感が伝わってくるとともに見る者の恐怖心も煽ってくる。規格外の敵であるということが、ひとつひとつの描写から伝わってきた。

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