Review

『STEINS;GATE ELITE(シュタインズ・ゲート エリート)』という時を越える物語が時を越えて愛される理由

『STEINS;GATE ELITE(シュタインズ・ゲート エリート)』という時を越える物語が時を越えて愛される理由

マッドサイエンティストを自称する厨二病全開の若者がふとしたきっかけで過去を変革する力を手に入れ、世界の運命を左右する壮大な物語に巻き込まれていく想定科学アドベンチャー作品『STEINS;GATE』。2009年に初めて発売された本作は、その後各種媒体への移植や派生作品、続編となる『STEINS;GATE 0』のリリース、マルチメディア展開などを続け、10年近く経過したいまでも高い人気を誇っている。そんななか、2018年9月20日に発売されたのが、シリーズの原典とも言える『STEINS;GATE』全編をアニメーションで新たに表現し、“アニメで遊ぶ”という体験を生み出す『STEINS;GATE ELITE(シュタインズ・ゲート エリート)』だ。

本稿では、物語としての『STEINS;GATE』の魅力に、そのストーリー性、濃厚ながら人間味を感じさせるキャラクターたち、そしてキャラクターたちに命を吹き込む声優の名演などから迫っていく。

文 / 村田征二朗


記憶を消してもう一度読みたくなる物語 

アドベンチャーゲーム、とくにビジュアルノベルとも称される、テキストと絵、そして音声や効果音によってプレイヤーの目と耳に物語を投げかけるジャンルでもっとも重要なのは、やはり物語自体の面白さです。

アドベンチャーゲームと言えば一般的には物語を読み進めつつ、ときおり発生する問いかけへの返事や決断を示す選択肢を決定していくイメージですが、本作では会話中の選択肢は存在せず、各キャラクターから送られてくるメールに対する返信のしかたによって物語が分岐します。『STEINS;GATE ELITE』のゲーム性や全編アニメーション化という試みについては次回の記事で触れるとして、まずは本作で描かれる物語について見ていきましょう。

▲文面で青文字になっている話題をひとつだけ選び、返信を行います。いわゆるトゥルーエンドを目指す場合、複数のメールでどの話題に触れていくかがとくに重要となります

――舞台は2010年、東京の秋葉原。主人公となるのは、思春期の少年たちが抱くちょっぴりイタい空想、いわゆる厨二病から抜け出せない大学生の岡部倫太郎(通称オカリン)。彼はみずからを“狂気のマッドサイエンティスト・鳳凰院凶真(ほうおういん きょうま)”と名乗り、幼馴染の椎名まゆり、高校時代からの友人である橋田至(通称ダル)とともに、ヘンテコな発明品を作る“未来ガジェット研究所”での生活を謳歌していた。

▲こちらが主人公・岡部倫太郎、またの名(ただし自称)は鳳凰院凶真です。狂気のマッドサイエンティストというふたつ名を見てもわかるとおり、なんとも独特なネーミングセンスの持ち主です

しかしある日、彼らは偶然にも過去に電子メールを送信できる発明品、つまりはタイムマシンを生みだしてしまう。些細な過去改変はバタフライ効果によってその変動を大きく広げ、やがて世界規模の陰謀に関わる事件へと発展していく――。

というのが、『STEINS;GATE』のあらすじです。この物語の魅力は、実在する街、商品、ネットスラングとともに登場人物たちが生活するという現実性のなかで、タイムマシンや過去改変という超常的な要素がゆっくりと、しかし加速度的に世界の日常性を揺るがしていく展開にあります。

▲厨二病全開の岡部、ふわっとした天然キャラのまゆり、どストレートにオタクなダル。未来ガジェット研究所のメンバー(ラボメン)たちのやり取りはじつにほのぼのとしたものですが……

▲ある日岡部は天才科学者・牧瀬紅莉栖(まきせ くりす)と出会い、彼女が血の海のなかに倒れているのを発見します。しかしその後、怪我をした様子すらない牧瀬と再会することになり、自分の体験と世界とがずれていることに気づき、物語は静かに動き始めるのです

タイムマシンというものは、少なくともいまの時点では一般的に非現実的な、ファンタジーのような存在です。そのタイムマシンが『ドラえもん』のように“そういうものがある”という前提で進むのではなく、岡部たちは繰り返し実験を行うことで、タイムマシンの機能を科学的に解明し、理解していきます。

▲なんだかんだあって、未来ガジェット研究所でいっしょにタイムマシンの実験を行うことになった牧瀬を岡部が勝手に助手と呼び出すなど、実験中のやりとりはコミカルに、しかしときに科学的な解説も入りつつ進みます

タイムマシンをあくまで科学的な装置として描くことで、時間遡行という超常的な現象を扱いながらも、本作の物語はしっかりと地に足をつけたものとなっています。ただのファンタジーではなく、現実性を伴って描かれるからこそ、本作が見せる衝撃的な展開は読み手であるプレイヤーを驚かせ、何が起きたのか、つぎはどうなるのか、と続きを読ませたくさせるのです。

▲タイムリープ理論を詳細に紹介されても「なるほど、わからん」となってしまいますが、本作ではある程度噛み砕いた説明がされており、なんとなくわかったような気分になれます

本作の物語は複数のルートから構成されているのですが、トゥルーエンドとなるルートはとくに伏線の回収がすさまじく、終盤は読み進めるにつれて感動、感心のあまり声を上げてしまいたくなるほどです。プレイしたあとに「記憶を消してもう一度遊びたい」と語る人も多く、実際にプレイするとその感想にも納得するしかありません。

1 2 >