LIVE SHUTTLE  vol. 294

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カーリングシトーンズ 驚異の新人バンドは、くだらないことと音楽に手を抜かない。独特のヤル気(?)とユーモアと音楽愛に満ちた1stライブの全貌とは。

カーリングシトーンズ 驚異の新人バンドは、くだらないことと音楽に手を抜かない。独特のヤル気(?)とユーモアと音楽愛に満ちた1stライブの全貌とは。

寺岡呼人25周年presents
カーリングシトーンズ デビューライブ
2018年9月23日 Zepp Tokyo

話題のスーパーバンド“カーリングシトーンズ”の初ライブだ。寺岡呼人のソロ・デビュー25周年を記念して集まったメンバーがすごい。寺岡シトーン、奥田(民生)シトーン、斉藤(和義)シトーン、浜崎(貴司)シトーン、(ヨー)キングシトーン、トータス(松本)シトーンは、6人全員が50代で、全員がリードボーカルを取れ、詞曲を作れ、楽器の演奏ができる。7月に結成が発表されるや、大反響を呼び、ついにその勇姿を生で見られるライブの日がやってきた。

僕がいちばん注目したのは、楽曲だった。当然、それぞれに持ち曲がたくさんある。しかし、それらを使わず、このバンドのために作られた新曲をライブで演奏するという。このメンツなら新曲の数は揃うだろうが、ライブ前にアルバムが出るわけでもなく、オーディエンスにとっては聴いたことのない曲でライブが構成されることになる。いくらツワモノぞろいとはいえ、果たして大丈夫なのか?

Zepp Tokyoは異様な熱気で満たされている。僕の心配をよそに、超満員のオーディエンスたちは、とにかくこのメンバーが勢揃いするのを待ちわびている。このメンバーなら、何があっても何とかしてくれるという信頼感があるのだろうか。

開演時間が来ると、6人は真っ白なスーツ姿で登場。万雷の拍手が起こる。ドラムには斉藤シトーンが座り、ベースは寺岡シトーンで、あとの4人はギターを持っている。記念すべき1曲目は、バンドのテーマソング「スべり知らずシラズ」だ。ストーンズの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」タイプの、ギターのコード・カッティングをメインに据えた、8ビートの明るいロック。誰にでもわかるポップなメロディを、エネルギーを込めて思い切り届ける。加えて、ステージの背後にあるスクリーンに歌詞が字幕で出る。これまた誰にでもわかる言葉で書かれている。だからオーディエンスたちはすぐにバンドと一緒に歌い、手を振り上げて盛り上がる。ほとんどの人が知らない曲で、これほどの一体感が生まれるという、にわかには信じられない光景を眼前にして、僕はたちまち降参したのだった。このバンドは、凄い。

まずは寺岡シトーンが挨拶する。「デビュー・ライブにようこそ! いきなりメンバー紹介をします。向かって右側から、斉藤シトーン、浜崎シトーン。2人は栃木チーム。僕と奥田シトーンは広島チーム。 キングシトーンは東京で、トータスシトーンは兵庫。今日は新曲ばっかりやりますよ。誰も持ち歌はやらない」。すると客席から「えーッ!?」と悲鳴のような声が上がるが、なぜか嬉しそうだ。オープニングの「スべり知らずシラズ」のパフォーマンスを観て、オーディエンスは1発で“新曲の不安”から完全に解放されていた。

2曲目の「何シトン」は、斉藤シトーンが作ったお気楽なラテン風味の曲。奥田シトーンがドラムを叩き、斉藤シトーン、浜崎シトーン、トータスシトーンのトリプル・ギター・リフがカッコいい。♪ライブ前でも酒のむぜ エビバディ 何しとん?♪みたいなことを歌うバンドに対して、これまた会場は初めて聴く曲なのにノリノリのリアクションを返す。

3曲目の「カリフォルニア」は、ただただカリフォルニアに行こうと歌う曲で、♪西洋コンプレックスを満喫しようぜ♪など笑えるフレーズが満載。ベイ・シティ・ローラーズの「サタデー・ナイト」のリズムを入れた奥田シトーンのドラムがリードする。

4曲目の浜崎シトーン作「俺たちのトラベリン」では、斉藤シトーンがベースを弾き、寺岡シトーンがキーボードを担当。トータスシトーンのギター・ソロを受けて、キングシトーンがハーモニカ・ソロを取るといった具合。

わかりやすい音楽のアイデアと、短い言葉で自分たちのライフスタイルをオーディエンスと共有する歌詞が、音源の出ていないバンドの初ライブを大成功に導いていく。

5曲目「わかってさえいれば」が終わったところでオリジナルのジングルが鳴り、カーリングだけに“もぐもぐタイム”に突入。結成記者会見の際にメンバーが希望した“もぐもぐメニュー”が、ステージ中央のテーブルに運びこまれる。寺岡シトーンはチョコレート、奥田シトーンは広島のジャンクフードのイカ姿フライ、斉藤シトーンはなぜか長崎名物の皿うどん、浜崎シトーンはサバ寿司、キングシトーンはひねり揚げ、トータスシトーンは黒糖ドーナツ棒で、6人がステージに座り込んで食べる姿に、大爆笑が起こったのだった。

その後も新曲のオンパレードは続く。キングシトーン作の6曲目「マホーのペン」では、キングシトーン、浜崎シトーン、トータスシトーンがリードボーカルを2小節ずつ歌い継ぐという離れワザを披露。ドラムの斉藤シトーン、ベースの奥田シトーン、キーボードの寺岡シトーンが確かな演奏力でそれを支える。 

斉藤シトーン以外は全員バンド経験者で、斉藤シトーンにしてもライブではバンド感が強い。なので、セットなどの演出に凝ったステージというよりは、バンド・ミュージックの良さが全面に出る展開だ。特にコーラス・サウンドが分厚くて、個性派ボーカルが集まったメリットがきっちり活かされているのが嬉しい。また、トータスシトーンはブルース・テイストの曲を書いたり、寺岡シトーンはポップな曲調だったり、どの曲も作ったメンバーの個性が反映され、なおかつメンバー全員の演奏でカーリングシトーンズの色に染め上げられる。

と、ここで寺岡シトーンから突然のコメントがあった。

「このバンドを始めるにあたって、企画書を書いたんですが、その中に、①みんなで演奏する ②みんなで歌う ③バックバンドもやる、というのがありました。その③の夢をかなえてくれるために、今日はシークレット・ゲストが来てくれています。紹介します。世良公則!!」。

カーリングシトーンズのTシャツにデニム姿の世良が、胸を張って現われたからたまらない。そのまま、♪あーいそづかしの言葉が♪と「銃爪」を歌い出すと、会場はハチの巣をつついたような大騒ぎになる。この日のために特注したというマイクスタンドを振り回す世良に、会場だけでなくメンバーも超ノリノリで爆発的な演奏を繰り広げる。カーリングシトーンズは、続く「宿無し」でも立派にバックバンドを務めて、夢を果たした。大型爆弾のような世良に一気に持っていかれた後、キングシトーンが「僕らのときと全然違う」とポツリ。

シークレット・ゲストでかなりエネルギーを使ったようで、奥田シトーン作の「キャラバン」の後、再度、もぐもぐタイムへ。目まぐるしくも面白い展開に、会場もひと息つく。キングシトーン作の「タイムテーブル」の後は、バンドの名前の話をひとしきり。

浜崎シトーン 最初、バンド名は“AB/CD”になるはずだったよね。

トータスシトーン だって、俺、「AB/CD」っていう曲、作っちゃったもん。

寺岡シトーン でもロゴとか含めて、訴えられるかもしれないと思って、カーリングシトーンズにしたんだけど、確か、もう一個、候補があったよね?

奥田シトーン “メガデズ”=芽が出ず(笑)

次の曲はトータスシトーン作の一大ロックンロール「AB/CD」だった。さらにはトータスシトーンが「寺岡シトーンの渾身のロックンロールです!」と紹介した「Oh! Shirry」は、その名の通り“お尻”を題材にした軽快なナンバーで、トータスシトーンがハンドマイクで熱唱する。

トータスシトーン ハンドマイク持ったら、すごく「ガッツだぜ!」を歌いたくなっちゃった。

寺岡シトーン いやぁ、持ち歌禁止だからムリムリ。約束が違う!

その言葉が終わらないうちに、奥田シトーンがバスドラムで4つ打ちを開始したから、もう止まらない。リハーサルはしていないと言いながら、見事な「ガッツだぜ!」が始まった。本当にこの6人からは目が離せない。当然、会場は“世良タイム”をしのぐ興奮度だ。

そして本編ラストは、バンドのテーマソング「スべり知らずシラズ」をもう一回。完全に一体となったバンドとオーディエンスは、すでに何年も経た名曲のようにこの曲を一緒に歌い、盛り上がったのだった。

アンコールは3度目のもぐもぐタイムでスタート。今回のメニューは本家“LS北見”御用達のチーズケーキ“赤いサイロ”で、本当にくだらないことには手を抜かないバンドだ。もちろん、音楽にも手を抜かない。このライブでメキメキ上昇した“バンド感”が、アンコール1曲目の「夢見心地あとの祭り」で頂点に達する。この曲はトータスシトーン作で、「ゆめみ」「ごこち」「あとの」「まつり」といった3文字の言葉を、ブギーのリズムにあてはめたもの。一度、聴いただけで傑作と断言できる素晴らしい歌と演奏だった。

そして最後を飾った「涙はふかない」で、6人はハンドマイクを持ち、カラオケで揃いのステップを踏みながら歌う。これには会場全員が大喜び。笑顔のエンディングとなった。

始まる前の心配が嘘のように、とにかく新曲のクオリティが高い。簡単な言葉で作られた歌詞は、それでいて人生の深みを描く。メロディもシンプルで覚えやすく、グルーヴィだ。だから“新曲ライブ”のハンデを突破することができたのだ。それは6人のシトーンたちが、これまでの音楽活動の中で培ってきたソングライティングのエッセンスを、惜しげもなく注ぎ込み、ソングライターならではの歌唱力と演奏力で仕上げているからだ。早くアルバムを出して欲しい、全国津々浦々ツアーをして欲しいと、強く思ったデビュー・ライブだった。

驚異の新人バンド、カーリングシトーンズは、この時代を覆う閉塞感を、独特のヤル気(?)とユーモアと音楽愛で吹き飛ばしてくれるに違いない。

文 / 平山雄一 撮影 / 平野タカシ

寺岡呼人25周年presents
カーリングシトーンズ デビューライブ
2018年9月23日 Zepp Tokyo

セットリスト
1.スベり知らずシラズ ☆新曲
2.何シトン ☆新曲
3.カリフォルニア ☆新曲
4.俺たちのトラベリン ☆新曲
5.わかってさえいれば ☆新曲
~ もぐもぐタイム1 ~
6.マホーのペン ☆新曲
~ シークレットゲストボーカル登場! ~
7.銃爪 with 世良公則
8.宿無し with 世良公則
9.キャラバン ☆新曲
~ もぐもぐタイム2 ~
10.タイムテーブル ☆新曲
11.AB/CD ☆新曲
12.Oh! Shirry  ☆新曲
13.ガッツだぜ! ウルフルズカバー
14.スベり知らずシラズ リプライズ
~ もぐもぐタイム3 ~
En1.夢見心地あとの祭り ☆新曲
En2.涙はふかない ☆新曲

カーリングシトーンズ

2018年7月結成。寺岡シトーン(Vo.G.B.KEY.)、奥田シトーン(Vo.G.B.Dr.)、斉藤シトーン(Vo.G.B.Dr.)、 浜崎シトーン(Vo.G.)、キングシトーン(Vo.G.B.)、トータスシトーン(Vo.G.)。

オフィシャルサイト
http://curlingsitones.com

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