Interview

ゴスペラーズ “進化したメロウなR&B”が満載のニューアルバム。最新ゴスペラーズの立ち位置と極上の作品について訊く。

ゴスペラーズ “進化したメロウなR&B”が満載のニューアルバム。最新ゴスペラーズの立ち位置と極上の作品について訊く。

ゴスペラーズが日本語のR&Bを、また進化させた。ニューアルバム『What The World Needs Now 』で、かつて「永遠(とわ)に」(2000年)のプロデュースを担当したBryan-Michael CoxとPatrick”J.Que “Smithと再びタッグを組み、最先端のグルーヴに乗せてこれまで以上に多彩なボーカルワークを聴かせてくれる。緻密な歌詞で描かれるのは、スウィートな恋人たちの世界で、ゴスペラーズが得意とするラブソングがずらりと並ぶ。
今年2月に出たシングル「ヒカリ」と7月の「In This Room」で進化を予感させていたが、待ちに待ったアルバムは“進化したメロウなR&B”で満たされている。これまでのゴスペラーズのイメージを打ち破った上で、極上のポップに仕上げている点が素晴らしい。
そんな奇跡の制作のプロセスについて、村上てつや、黒沢 薫、安岡 優、酒井雄二、北山陽一に話を聞いた。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 緒車寿一


我々が「永遠(とわ)に」のとき、ちゃんとやったからこうなったって思いましたけどね(笑)(黒沢)

村上 アルバム全体の話から言うと、前回の『Soul Renaissance』(2017年)では“90年代R&B”っていう大テーマの他に、「永遠(とわ)に」が収録されたアルバム『Soul Serenade』(2000年)を意識しようっていう裏テーマがあった。ツアーも含めてファンの皆さんが喜んでくれたんですけど、終わったあとに「もう1、2曲、普通の意味でのラブソングがあっても良かったよね」って話になったんですよ。なので、今回の『What The World Needs Now 』は、少し糖度が高め、甘めのR&B路線で行くっていうことでスタートしようとミーティングしてるときに・・・

海外のプロデューサーからオファーが!

村上 そうなんです、“米国人”からオファーがありまして(笑)。それこそ「永遠(とわ)に」のアレンジをしてくれたBryan-Michael Cox(ブライアン)とPatrick”J.Que “Smith(ジェイキュー)が、もっと日本でやれることがあるんじゃないかなって彼らなりに思っていて、日本のパブリッシャー(出版社)とちょうど契約を考えてるタイミングだっていうことがわかって、「それならね」っていうことで、俺らもまた彼らと一緒に甘いR&Bを作ろうということになった。

北山 最初は契約関係を含めて「彼らの曲をホントに使えるの?」っていうレベルだったんです。

安岡 「次のシングルは」っていうぐらいの気持ちだったんですよ。

村上 アメリカでも音楽業界が変化してるから、ブライアンとジェイキューは韓国をはじめ、アジア進出を本格的に考えてたんですよ、法律や著作権をクリアして。で、久しぶりに彼らとガッツリ組めるのなら、「行けるだけ行ってみるのがいいよね」っていうことで、最初に「ヒカリ」、「Right by you」、「DON’T LEAVE ME NOW」の3つを選んで、あとは相談しながら制作に入りました。

安岡 それが去年の11月くらいかな。

村上 次のシングル、かつ、アルバムの中心になるような曲をっていうことで3曲選んだら、そのあとも続々と曲が送られてきて(笑)。こっちとしては、他にも一緒にやりたいアジアの作家さんがいたんですけどね 。いろいろな意味で条件的にも可能になって、ホント嬉しい悲鳴っていうやつでしたね。残念ながら今回は入れてないけど、いい曲が他にもいっぱいありました。なので、我々の制作のタイミングと、ブライアンとジェイキューの指向が合って生まれたのが、『What The World Needs Now』なんです。 

黒沢 自負じゃないですけど、我々が「永遠(とわ)に」のとき、ちゃんとやったからこうなったって思いましたけどね(笑)。

村上 「あいつらとなら、またやりたいな」って言ってくれたっていう。

黒沢 それはすごくありがたかったです。

ポップスをやってる人間としての矜持みたいなところで、すごく嬉しいです(北山)

いろんなタイプのR&Bがあるけど、ブライアンとジェイキューが送ってきたのはどんな曲だったんですか?

村上 ジェイキューが、「あいつらの良さが出る曲を送ろうぜ」っていう話をブライアンにしてたみたいで。

安岡 今ある最新のストック曲を渡すのではなく、ちゃんとゴスペラーズ用に書こうって。

黒沢 ブライアンはものすごく過激な曲を送ってこようとしたらしいですけど。

村上 今となってはそれも聴きたかったですけどね(笑)。そういう意味で言うと、『What The World Needs Now』はメロウな曲で統一しました。スウィートっていうよりもメロウって言葉のほうが合うかなあっていうような感じですね。

ゴスペラーズのファンって、日本の中ではいい意味でフツーの人たちだと思うんだけど、その人たちがこういう最先端の音を聴くっていうことが、すごく興味深い。

北山 そういうふうに言ってもらえると、ポップスをやってる人間としての矜持みたいなところで、すごく嬉しいです。

安岡 僕らが18年前に「永遠(とわ)に」をやったのだって、今ほどクロスオーバーしてない時代の、まさに超最先端だったわけですから。

スキルアップして、最先端の音楽を日本語としてやっと聴かせられるようになった(酒井)

超最先端を見事に“日本語化”したのが「永遠(とわ)に」だった。

安岡 そうそう。

村上 ただ「永遠(とわ)に」は、日本で書いたメロディだった。でも今回は、メロディもハーモニーもトラックも、ほとんど米国産なわけですよ。そこは僕らもスキルアップしたっていう部分があるんだろうなって、改めて思ったりはしますね。

酒井 スキルアップして、最先端の音楽を日本語としてやっと聴かせられるようになった。作詩は安岡が主にやってます。それと我々の歌い回しですよね。今回のアルバムでは、ちゃんとした日本語として聴かせられてると思う。

「Goodbye」の♪囁きたい 冬の誓い♪っていう日本語のフレーズは、本当に美しいと思った。

安岡 ありがとうございます! もともとあった原曲の英語のフレージングの持つビート感を、いい意味で空耳で日本語にして、文章としてのつじつまをちゃんと合わせる。ここ10年、“ダンス☆マン”さんと共同作業してきた成果が、ここに出ているんだと思うんですね。

北山 僕らはそれを歌うときに、メロディとの関係で英語にあったフロウが残されているから、日本語の発音自体を英語っぽくする必要がなかったっていうことですよね。

ゴスペラーズが日本語のR&Bを、また進化させたね。今までのキャリアと、米国産のメロディの出逢いが生んだアルバムって感じだよね。

黒沢 ここまでのお互いの積み上げがあったからこそ、お互いに踏み込んで音楽を作れたっていうのはありますね。

ブライアンとジェイキュー以外のスタッフは?

村上 Mayu Wakisakaさんが書いてくれた「Sweetest Angel」のトラックは、台湾の人なんですよ。

これは西野カナが歌うと似合いそう(笑)。

村上 メッチャいいでしょうねえ(笑)。

(一同笑い)

安岡 Mayu Wakisakaさんは、女性グループにたくさん曲を書いているので。

村上 それこそTWICEとか、K-POPに書いてるからな。

安岡 だから、男性グループの曲を久々に書けるのが、すごく嬉しかったって言ってました。

村上 15年ぐらい前に、(石野)卓球さんがテクノを作るにあたって、「もはやファンキーって言葉は、黒人音楽のものだけじゃないだろう」って言ってるのを、すげえカッコいいって思ったんだけど、今やR&Bはブラックミュージックに限らない。あらゆる国の人が作ったり、楽しんだりしてる。そういう時代に入ってきたって、今回ホントに感じましたね。

「Ashes」っていう曲は酒井くんが作っているんだけど、狙いは?

酒井 「Ashes」は竹本健一くんと一緒に作った。アルバムの曲が出揃ってきたときに、もう少し曲を書き足したいというタイミングでのものだったんです。トレンドを強く意識しながら作ったというよりは、アルバムとして情熱的な曲があるといいかなと思ったんですよ。日本チームの側の情感を出したかった。

村上 こういう曲があると、ファンは落ち着くんと思うんですよね。

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