Interview

始動から4年、なぜ『BanG Dream!』は長く愛されるプロジェクトへと育ったのか? 上松範康・中村 航、ふたりの中核クリエイターが明かす成長秘話

始動から4年、なぜ『BanG Dream!』は長く愛されるプロジェクトへと育ったのか? 上松範康・中村 航、ふたりの中核クリエイターが明かす成長秘話

始動から4年を経ようとしている『BanG Dream!(バンドリ!)』プロジェクト。ここに企画当初から(株)ブシロード・木谷高明会長の構想を実現する両輪として活躍を見せる、中村 航と上松範康。前者は作品の根幹となるストーリー原案とともにガールズバンド・Poppin’Partyのほぼ全曲で作詞を担当、『BanG Dream!』プロジェクトの進む道を固めていき、後者は自身も楽曲制作に携わりながら幾人ものクリエイターを先導して楽曲という命を登場全バンドに吹き込んだ。『BanG Dream!』がここまで育った足跡をふたりはどう見るのか。

取材・文 / 清水耕司(セブンデイズウォー)


ブシロードの柱となるような息の長いコンテンツに

おふたりはどれくらい交流されているんですか?

上松範康 作品の中で会話しているくらいですね(笑)。ライブのときにお会いして「元気ですか」と挨拶するとか。立ち上げのときは、よく一緒に木谷さん(木谷高明会長)から構想を聞いていました。

皆さんで熱海に行って企画を固める「合宿」をされたんですよね。

中村 航 そうです。そのとき(上松と)初めてお会いしました。前回(2014年)のワールドカップのときですね。

そのときからここまで、振り返ってみての実感は?

中村 最初に小説と漫画を立ち上げるということで、それにプラスして作詞に手を挙げさせていただいたんです。音楽モノなんだったら曲の詞が原作にあたると思っていたので。小説家が作詞するということで皆さん不安だったと思いますが、個人的には10年くらいやっていたことなので「任せろ」という気持ちでした(笑)。

先生はバンドマンでしたから。

中村 えぇ。でももちろん最初はまったくの手探りでしたね。何をどう書くのか、自由だけど難しかった。最近は役割分担というか、各所に責任者なりプロデューサーなりがいて、オファーも具体的だったりするので、逆に作詞屋という感覚でないとできなかったりもします。でも楽しいです。ここにきて作詞に取り組めているのは、作家としても大きなトピックですね。

TVアニメ『BanG Dream!(バンドリ!)』第1期より

作詞で作品を育てた実感はありますか?

中村 そうですね、そうあるべきだし、そうしたいと思ってやってきました。ただあまりその意識が出ないようにも気をつかって、あくまで(戸山香澄という)キャラクターが作詞するものとして書いているので、自分の言語感覚が漏れすぎないように、裏方の気持ちでいます。が、出てしまいますけどね(笑)。

上松 でも、そういう色濃いものがあってこそ歌詞に魂が宿るので。先生のそういうところがいい方向に働いていると思います。

中村 だといいんですが。おっさんの姿を感じさせないように(笑)。

先生の脳内では、戸山香澄は読書家という設定があるという話ですが。

中村 そうそう、中学生のときに読書家だったという裏設定が(笑)。だからなんとなく、「あいつはあれくらい書ける」という感覚でいるんですよ。ただ曲は無理だと思いますよ(笑)。

上松 (笑)。クオリティが高い楽曲ですよね、高校バンドにしては。

TVアニメ『BanG Dream!(バンドリ!)』第1期より

上松さんとしては振り返ってみた感想は?

上松 最初から木谷さんの構想ははっきりしていて、でもすごく難しいことをおっしゃっていました。なので、それを僕ら手足がどう実現するか、その道のりは非常に大変でしたね(笑)。今は、木谷さんの構想の半分ぐらいには到達したのかな、という感じはしています。

その「半分」という感覚を持つ手応えはどこで感じていますか?

上松 木谷さんは『BanG Dream!』を息の長いコンテンツにしたいとずっとおっしゃっているんですよ。よく『ガンダム』に例えられるんですが、ブシロードの柱になるような大きなものにしたい、と。そこの基礎作りとしてPoppin’Party(以下ポピパ)を中心に見据えているんです。

中村 『ガンダム』ですか。初めて聞きました。すごいですね。

上松 いつもおっしゃってますよ。あれだけ続いたら僕らは60(歳)になっちゃいますね(笑)。

中村 まだ、最初の『ガンダム』が終わったくらいですからね。

上松 まさにそうかもしれないですね。基礎ができつつあるという感覚はあります。設計図ができたので、ここからは新しい人が入ってきても広げられる可能性があると思います。土台があればバンドやキャラクターを増やすのは容易ですよね。そこに参謀として手応えを感じています。

楽曲制作者としての手応えはいかがですか?

上松 曲作りに関してはこれまでずっとやってきたことなので、最初のルール作りが終わればあとは腕を振るうだけでした。(中村)先生とも最初は、曲の割り振りやブレスといったところで話し合ったこともありますが、先生がすごく流れを作ってくださったので。今では、「先生のリズムだとこういう言葉遣いをするかな」と考えながらメロディを置くというか、いち職人のつもりではいますね。

成長の陰に少しずつ芽生えてきた自信

ポピパがスタートして以降、ライブを観て、CDを聴いて、どういった成長を感じますか?

中村 自信みたいなものが出てきた気はしますね。

上松 わかります(笑)。

初期は本人たちの不安が伝わってきましたね。

上松 だって(バンドを)やったことないんですから。そりゃ不安ですよ(笑)。

中村 最初から笑顔は作れていましたが、でも「いっぱいいっぱい」で。ぎりぎりのところでやっている感じでしたよね。

上松 まさに。見ていて可哀想に感じるときもありました、ちょっとね(笑)。

中村 今だって同じかもしれませんが、でも、見ていて安心感がある。

上松 そうですね。そこで成長は感じますし、彼女たちの悩み事が次のステップに繋がっているので、非常にいい道を歩んでいるとは思いますね。

本人たちから相談を受けることはあるんですか?

上松 この間、うれしかったことがあって。(香澄役の)愛美ちゃんからブシロードさんを通じて「相談がある」と言われたんです。それを聞いた瞬間、もう怖くて。いよいよ「曲が難しすぎる」とか言われるのかと思ったんですが(笑)、香澄として歌うにあたって今苦手なことを正直に伝えてくれたんです。表現したいのにできないと感じるところを。そのとき、彼女のチームへの想いをあらためて感じて、すごくうれしかったですね。今までは相談する暇もないくらいに精一杯だったと思うんですが、彼女は『BanG Dream!』の顔であり、ポピパの顔でもあるので。「これをきっかけに『BanG Dream!』はまたひとつ上に行くぞ」という感覚はありました。

中村 そう言えば何度か、(スタッフを通じて)歌詞の意味や背景を聞かれたことがありますね。特に悲しい曲のときにどういう気持ちで歌うのか、どういう世界観を考えればいいのか、悩んだりするみたいで。でもそれがレコーディングの直前に来るんですよ。前日の夜中とか(笑)。

本人たちも悩んだ末に、というタイミングなんでしょうね。

中村 スケジュールが厳しいというのもあるのかな(笑)。だんだんわかってきたんですけど、僕なんかが想像するより何倍、何十倍も、彼女たちは気持ちを作ってレコーディングに臨んでくれていた。素直に頭が下がる思いだし、何よりちょっと驚いています。「こんなに考えてくれるんだ」って。

1 2 >