Interview

『BanG Dream!』超人気メディアミックスの仕掛け人に聞く。クリエイターとブシロード会長が語った作品愛─「ポピパは来年、いろいろと面白いことがある」

『BanG Dream!』超人気メディアミックスの仕掛け人に聞く。クリエイターとブシロード会長が語った作品愛─「ポピパは来年、いろいろと面白いことがある」

数々のバンドと楽曲が飛び交う『BanG Dream!』(バンドリ!)プロジェクト。その中で楽曲づくりの中核を為す中村 航と上松範康の二人からは、自身もバンドを組んでいたことからの経験、抱く愛着をガールズバンド・Poppin’Partyに対して注ぎ込んでいるとの告白も。これまで手がけた楽曲、そして新作についてを語り合う中、企画立案者であるブシロード・木谷高明会長が参入し……。対談は鼎談へと怒涛の展開を見せる『BanG Dream!』インタビュー後編。

取材・文 / 清水耕司(セブンデイズウォー)

前編はこちら
始動から4年、なぜ『BanG Dream!』は長く愛されるプロジェクトへと育ったのか? 上松範康・中村 航、ふたりの中核クリエイターが明かす成長秘話

始動から4年、なぜ『BanG Dream!』は長く愛されるプロジェクトへと育ったのか? 上松範康・中村 航、ふたりの中核クリエイターが明かす成長秘話

2018.10.03

創作側にも刺激が必要

Poppin’Party(ポピパ)以外にもRoseliaやAfterglowなど、バンドごとのカラーに関してはどのような意識がありますか?

上松 ものすごく意識していますよ。イメージや楽曲がかぶらないように、音色の使い方から、キャラの一人ひとりのことを考えています。身長といった並んだときの雰囲気から感じることとか細部までを。バンドが違うということは彼女たちの根本が全部違うので、自分たちの中でもチェンジしなければいけないことがあるんです。ただ、『BanG Dream!』はパイオニアとしてやってきているので、誇りやクオリティも感じさせないといけない。バランスを見ながら一個一個ていねいに考えていきます。

作曲家の選定についてはモチベーションもよく見ますよ。「これ、絶対やらせてください」と言ってきたときは任せるし、ルーティンっぽくなってきたと思ったらサッと変えます。そこは冷静に。ただ、その場合、プロジェクト全体がいつまでにどこまで到達しておくか、という点が非常に重要になるので木谷さん(ブシロード 木谷高明会長)には定期的に確認しています。よく変わるんですよ(笑)。

妄想がどんどんと大きく?

上松 そう。「また大きくなってるじゃん」みたいな。

中村 妄想と書いてマジと読むやつだ(笑)。

上松 (笑)。「『BanG Dream!』が『ガンダム』だなんていつから思っていたんですか!」みたいなこともあるんですが(※インタビュー前編参照)、そこがないと僕は作れないタイプなので。『BanG Dream!』では参謀の役割を務めたいと思っているんです。

TVアニメ『BanG Dream!(バンドリ!)』第1期より

次はRoseliaのシングル、というときにこれまでやこれからも見据えた楽曲づくりになるわけですね。

上松 そうですね。ただ、そこで気をつけないといけないのが木谷さんの言葉とずれてないかどうか。そのとき、僕が戦うこともあります。例えば、Roseliaの場合、スマートフォン向けゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(以下『ガルパ』)を制作するCraft Eggさんからもオーダーが来ますが、ライブのことも考えないといけない。そこでずれがあったので、Craft Eggさんと、Roseliaメンバーも交えて、改めて僕らから意図と目標についてすり合わせて進んだこともあります。

やっぱり作品の作り手が見ている世界と音楽の作り手が見ている世界は違うんですが、そこはシステム上混ぜていった方が良くて。我を出すときもあれば、作品の作り手の意向に沿うこともあり、やっぱりバランスを見る目が大事なんです。

中村先生がバンドの違いで意識されていることはありますか? ポピパ専念ではありますが。

中村 だから、自由にやればいいのかな、と(笑)。ただ、「こっちのバンドでこの言葉を使っているのか、じゃあそっちに行くわけにはいかないな」というのはありますね。

上松 他のバンドの歌詞は見ないほうがいいですよ。純粋にポピパの未来を考えていたほうが(笑)。

中村 そうなんですが、新しいユーザーが見たときにポピパが後追いしたと思われると困るので。

上松 なるほど。じゃあポピパのために。

中村 そう。ただ、おっしゃるとおり、あまり詳しくは見ていないです。でも僕はゲームをやっているので。

ひと通りそこで曲を聴いてしまっているわけですね。全国100位を目指しているくらいなので。

中村 そう(笑)、だいたいいつも2000位以内で走っていたんですけど、最近はのんびりやってます。本業に支障が出そうなので(笑)。

TVアニメ『BanG Dream!(バンドリ!)』第1期より

上松 曲の話で言えば、僕としては先生と詞先で作った曲を出してみたいと思っているんですよ。曲という縛りがなかったら先生はどういう言葉を書くのかを見てみたいですね。その歌詞を見て今度はこっちが、「あ、そういうことか」みたいな感じで曲を作れると思うんです。やっぱり、創作側も刺激を活性化させる必要があるので。

詞先にするとかなり変わりますか?

上松 変わりますね。こちらが楽になります(笑)。例えば、僕なんかは何千曲も作ってきたのでメロから作るとどうしても癖が出やすくなりますが、詞先だと言葉の数で音数も制限されるのですごく助かるんですよ。僕の先輩ですと田中公平さんも、8000曲、9000曲と作っていると詞先でやるのが楽しいとおっしゃいますね。なのでいつかぜひ先生から言葉をいただいて作ってみたいです。

先生は詞先でやった経験は?

中村 ないですね。これ詞先なんじゃないか、と思われるような仕上がりを目指してますけど。詞先というのは、意外と難しい気がする。やってみないと、わかんないですが。

上松 大変ですよ(笑)。ただ、韻とリズムが詞の段階で作り上げられるので、僕らがそのリズムに導かれるんです。

中村 へえー。詞先のほうが大変、というのは一般のイメージとは逆かもしれないですね。そういえば一度、先にイメージを投げたことはありましたね。メンバーのソロ曲で。

上松 キャラソンのときに?

中村 そう。メンバー5人のキャラソンで、イメージと使用を想定している言葉をいくつか先に投げたんです。「花園電気ギター」、とか、「す、好きなんかじゃない」、とか、「チョコレイトの低音レシピ」とか、そういう単語。曲ができてきたときはイメージ通りだったので「おぉっ」と思いましたし、多分、ちゃんと譜割されたわけではないと思うんですけど、実際、言葉をちゃんとハメることもできた。今度はサビの詞を投げるとか、お題を出す感じでやってみるのはいいかもしれませんね。

エンタメ業界で音楽の重要性が増していく時代

(ここで、会議を終えたブシロード木谷会長が登場)

木谷 これはなんの取材ですか?

上松 「ガールズコード」のリリースに合わせて、『BanG Dream!』やポピパの歴史を振り返っているんです。

さすが参謀ですね。木谷会長の構想についても伺いました。妄想ではなく。

木谷 「妄想」はダメですよ(笑)。夢は実現しますが妄想は実現の可能性ゼロですから。

上松 書いておいてください、今の(笑)。

参謀を名乗る上松さんから見て、木谷さんの『BanG Dream!』戦略についてどうご覧になっていますか?

上松 愛情なんですよ、プロモーションって。作品のための愛情表現。それが大きいほど、作り手としては大船に乗ったつもりになれます。僕らとしては作っているとき、脳の片隅に「この作品を広めてくれるのか」という怖さがありますから。ただし、木谷さんに関して言えばそれがない(笑)。強い愛情で広めようとしてくれるので、僕らとしては恥ずかしくないものを作ろうと集中できるんです。そのモチベーションの高さが『BanG Dream!』の良さだと思います。

木谷 会議で部下にはよく言うんですよ。「そんなところで満足するな」って。「他のコンテンツに比べてよく出ました」と言っても、今はヒット3本打っても点が入らない時代ですから。思いっきりいかないと。

フルスイングで。

木谷 フルスイングして場外まで球を飛ばさないと、作品が残っていかないんです。

愛情の差がなせる業ですね。

上松 そうです。だから最高の環境です。僕らがいいものを作ればヒットさせてくれるので(笑)。

TVアニメ『BanG Dream!(バンドリ!)』第1期より

木谷 今の時代、世の中の情報量は日に日に増えていますが、人の受信能力は簡単には上がらない。だから、ユーザーの感覚とこちらの現場にギャップが生じている状態なんですよ。でも、「最近の若い人は考察してくれない」という愚痴を聞かされるんですね。実際には情報量が多いから、余計な情報は排除するように、あまり深く入り込まないように、お客さんが時代に適応しているんです。だから、上松さんみたいにキャッチーさを形にすることは、時代のニーズにすごく合っているんですよね。

上松 ありがとうございます(笑)。

木谷 何度も聴いてもらうことを考えるのは贅沢な話ですから。1回聴いて「これいいね」と思ってもらえて初めて、何度も聴いてくれるわけです。だから、音楽はものすごく大事ですよ。例え、いいアニメがあっても100回も見る人はいません。でも、いい曲なら100回聴く人はいくらでもいます。車で鳴らしている場合もあるし、街中で偶然耳にする可能性もあるし。音楽の重要性がどんどんと上がっている時代だと思います、エンタメ業界において。だって、小説なんて10回も読まないですもんね。

中村 読んでほしいですけど、なかなか(笑)。

木谷 だから、最初から勝つつもりでプロモーションするしかないんです。特に立ち上げ時期は、負けたら死ぬゲームに挑むつもりでないと。その意識が高い成功率につながります。そのかわり、たまにしか勝負できませんし、たまに負けたときのダメージは大きいですが。

中村 加えて、木谷会長について最近思うこととして、どんどんと音楽に詳しくなっているということですね。音楽が好きになってるというか。

木谷 まだまだ知らないことがいっぱいありますよ。この間、仮歌を歌う人のほうがうまくなきゃいけないと知りました。

上松 バンドやプロジェクトによって仮歌も変えています。演者のコンプレックスもありますし。例えば、歌が苦手だと思っている人には真似られるような上手い人を選ぶとか。むしろ、キャラの色を崩してほしくないときは無機質だけどうまい人に歌ってもらいます。

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