Weekly モバイルエンタメステーション  vol. 8

Column

「ポスト・安室奈美恵」は誰だ? iri・ちゃんみな・あいみょん、3人の女性アーティストから次代のポップスシーンを占う

「ポスト・安室奈美恵」は誰だ? iri・ちゃんみな・あいみょん、3人の女性アーティストから次代のポップスシーンを占う

9月16日、惜しまれつつ引退した安室奈美恵。25年にわたる活動期間は、平成という時代の大半と重なる。新しい年号に変わろうとする現在、「ポスト・安室奈美恵」と呼ぶべき存在がいるとすれば、それは「ポスト・平成の歌姫」とも同義であろう。一見彼女とは異なる個性を持っている3人の女性アーティストから、次代のポップスシーンを占う。

セレクト・文 / 北出 栞

iri

シンガー/トラックメイカーの境界を溶かす触媒的な存在

iriは複数のトラックメイカーからトラックの提供を受けつつも、シンガーソングライターというアイデンティティを強く押し出している。彼女を「ポスト・安室奈美恵」という切り口から紹介したくなるのは、さまざまな音楽性のトラックを乗りこなすそのしなやかなフロウに、「コラボレーション相手の個性を取り込み、一段上へと引き上げる」安室と共通の個性を感じるからだ。今年はじめにリリースした2ndアルバム『Juice』では、Tokyo Recordings、 yahyel、WONKなど、ブラックミュージックを独自解釈したバンドやトラックメイカーたちの作り出す、多種多様なトラックを自分のものにする歌唱スキルが見て取れる。

安室は5thシングル「Don’t Wanna Cry」から急速にブラックミュージックへ接近。それまでのユーロビート路線から横揺れの揺蕩うリズムへの変化には、デビュー時から二人三脚で歩んできた小室哲哉の意識の変化もあっただろうが、その後のセルフプロデュース期の音楽性を思えば、安室自身の嗜好性も小室に影響を与えた面があったのではないだろうか。iriは元々弾き語りスタイルで活動しており、その上で複数の作家とコラボレーションしているところに特徴がある(最新シングル「Only One」の作曲クレジットは彼女個人によるものだ)。シンガー/トラックメイカーの境界をより流動的にし、シーンの触媒として存在感を発揮していく可能性を秘めていると言えるだろう。

iri オフィシャルサイト
http://www.iriofficial.com/


ちゃんみな

「リアル」と「ファンタジー」を行き来する自己演出力

日本人の父と韓国人の母を持ち、日英韓の3カ国語を操るという女性ラッパー、ちゃんみな。特筆すべきはその自己演出力だ。初めてのワンマンライブからして、「プリンセスが逃げ出した」という設定を作りミュージカル仕立てにするという力の入れよう。楽曲制作の面のみならず、衣装やダンスなどビジュアル面も含め隅々まで自身の美意識を浸透させている。まだ今年で二十歳というから驚きだが、こうしたスタイルは小室哲哉の手を離れて以降、テレビ出演を減らしライブエンタテインメントに心血を注いだ安室の道のりも想起させる。

いくつかのインタビューにおいて「ちゃんみな」というペルソナが自分自身からは切り離されているということを示唆している彼女は、他方で率直で等身大なリリックも魅力だ。ピアノやバレエを習うような環境で育ちながらも、いじめられた経験、非行を経て音楽の道へ……そんな彼女のキャッチフレーズは「練馬のビヨンセ」。強い土着性を感じさせるこの愛称は、沖縄への愛を折に触れて強調してきた安室とも重なるものだ。若い世代に突き刺さる「リアル」と緻密に演出された「ファンタジー」の境界を行き来し、その中心には「ちゃんみな」という個が揺るぎなくそびえる。後年にはある種の神格化を見せていった安室とはまた異なる、身近さも感じさせる憧れの存在としての活躍を期待したい。

ちゃんみな オフィシャルサイト
http://chanmina.com/


あいみょん

生と死とエロスと……素手で形作られた強い個性

ギター弾き語りのスタイルをメインに活動するあいみょんは、一見して「歌って踊れる」安室奈美恵からは遠いところにいる存在かもしれない。しかし「強い女性」のモデルになりうる最右翼のアーティストとして、「ポスト安室」に位置付けるのが相応しいことは疑い得ないだろう。その生と死とエロスが同居する独自の世界観は、ブックオフで投げ売りされている官能小説もインスピレーション源の重要なひとつだとか。情報過剰の現代にあって、素手で自らの感性を形作ってきたことがよくわかる印象的なエピソードである。

また彼女は6人きょうだいの大家族出身であり、そのことも作風に大きな影響を与えているという。姉妹の出産を間近で見た経験が、恋愛を含む大きな意味での「ラブソング」を歌い上げる姿勢につながっているのだ。安室奈美恵が二十歳で結婚・出産をしたことは世間を驚かせたが、復帰後さらに攻勢を強めていったのはご存知の通り。ライフイベントに伴う変化を経ても、変わらない感性でリスナーを導いてくれるだろうという安心感が、20代前半の現時点ですでにあるのが頼もしい。米津玄師「Lemon」のヒットを生んだドラマ『アンナチュラル』の脚本家・八木亜希子が手がける最新作『獣になれない私たち』の主題歌を担当することも決まっており、年末にかけてその存在感はさらにお茶の間に浸透していくことだろう。

あいみょん オフィシャルサイト
http://www.aimyong.net/

音楽編の次回更新は11月5日(月)予定です。


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