小田和正『あの日 あの時』特集  vol. 3

Interview

小田和正のベスト・アルバム『あの日 あの時』が遂にリリ-スされた。第三回は、いよいよご本人の生の声をお届けする。

小田和正のベスト・アルバム『あの日 あの時』が遂にリリ-スされた。第三回は、いよいよご本人の生の声をお届けする。

小田和正が語るベスト・アルバム『あの日 あの時』に込めた想い

小田和正のベスト・アルバム『あの日 あの時』が遂にリリ-スされた。そして今回は、いよいよご本人の生の声をお届けする。ちなみにこの取材が行われたのは、ベストに関するスタジオ作業も終了しかけた時期であり、小田は愛用している小さめのマグカップを前に置き、さまざまなエピソ-ドを交え、語ってくれたのだった。

取材・文 / 小貫信昭

「早くみんなのところへ行こう」。その想いから生まれた『あの日 あの時』

今回、ベストを出した理由から教えてください。

小田 本当はここで、オリジナル・アルバムを作れたら良かったんだけどさ。前回のツア-でも、『また新しい曲を書いて・・・』って、みんなの前で言ってたわけだし。ただ、それだとさらに1年…、いや、もっと時間が掛かるかもしれない。だったら俺の体力や精神的なことを考えて、オリジナルではなくベストを出して、『早くみんなのところへ行こう』って思ったんだよ。

その優先順位にしたわけですね。

小田 ただ最近は、やたらみんなベストを出すじゃない(笑)。自分もそれに乗っかって、片棒を担いでると受取られるのはイヤだったけど、でもそのぶん、オリジナル・アルバムを作るのと同じくらいの一生懸命さでやったんだ。いや、“やらざるを得なかった”とも言えるんだけど。

それはどのような理由から…。

小田 これに類似したものを近い将来再び出す、ということは想像しづらいし、否応なしに、自分が音楽を生業として何十年も歩んできたストーリーを具現化したものにもなると思ったからなんだよ。でもさすがに50曲ともなると、自ずと俺というものを“語っちゃってるな”っていうか、言い訳はできないところがあったよね。

ちなみに『あの日 あの時』というタイトルは?

小田 ベストということで、みんなが知ってる曲を中心に選んでいるし、そこには聴いてくれる人達それぞれの“あの日”や“ あの時”が詰まっているだろうしね。そもそもこのタイトルなら分かりやすいしさ。

小田さんとベスト・アルバムといえば、『自己ベスト』、そして続編の『2』がリリ-スされてますよね。ユニ-クな命名の仕方でしたよね(笑)。

小田 あのタイトルに勝るくらい面白くて正しいものって、なかなか見つからないんだよ。しかも今回は、さっきも言ったけど自分が生きてきたスト-リ-とも重なるし、なのでああした“ギャグ的なこと”はやめました。

懐かしさを越え、今こそ鮮やかさを増すオフコ-スの名作について

Disc-1はオフコ-ス時代の作品ですね。

小田 俺はセルフ・カバ-のことを“LOOKING BACK”と称して、シングルのカップリングをそれに充てたりしてきてね。これまでにそんなアルバムを2枚出しているんだよ。「僕の贈りもの」や「秋の気配」は、その時、やり直したものなんだ。特に「僕の贈りもの」は、子供の合唱団とやってみたら上手くいったんだけどね。純朴で衒いもなく、かといってバラバラでもない、いいコ-ラスが録れた。もちろんこの曲は、自分が初めて書いたものだから、思い出深いけど。

「秋の気配」はどうでしょうか。

小田 この曲の場合は、当初、サビも含め16ビ-トでやるつもりだったのが、当時はディレクタ-の勧めもあって、サビだけ8になっている。それを“16でやり直したかった”、みたいなことも、セルフカバ-の理由だったりしたんだけど。まあこうした細かいことは、聴いてくれる人達に、どこまで伝えればいいのか分かりませんけど(笑)。あとこの歌の歌詞の中には自分でも好きなフレ-ズがあって、“たそがれは風を止めて ちぎれた雲はまたひとつになる”ってところなんだけどさ。まあ気象学的には、雲が一旦ちぎれたら、もはやひとつにはならないんだろうけどね。

この曲は“港の見える丘公園”が出てきたり、横浜のご当地ソングとしても人気ありますよね。

小田 冒頭の“あれがあなたの好きな場所”の“場所”って言葉とかは、書いた時は“果たしてこれが歌詞として成立するのか”って思ってたけどね。そもそも「秋の気配」の“気配”って言葉にしても、当時の感覚では“アナウンサ-が天気予報で使う言葉みたいだ”って、違和感を持ったスタッフもいたくらいでね。でも、今ではそんなこと、誰も思わないんだろうけど。

今回話題となっているのが、「眠れぬ夜」を新たにレコ-ディングしたことだと思うのですか…。

小田 代表曲と言われるものは入れるべきだと思いつつ、この曲は“LOOKING BACK”もしてなかったので、新たにやってみたんだ。実は何度もやり直して、でもなかなか上手く行かなくて、途中で女性のコ-ラス(松たか子とJUJU)を入れてみたら、そこから上手く行き始めたんだ。もちろんオフコ-スの頃のものには、女性の声は入ってないわけでね。

原曲のイメ-ジを残しつつ、よりアコ-スティックな味わいの仕上がりですよね。

小田 これ、ドラムとベ-スがいない演奏なんだけど、そんな編成だから逆に、“当たり前に安定したもの”にはならず、そこが面白かったな。あとこの曲で覚えているのは、歌詞が難航して難航して、いよいよ明日が歌入れって時、事務所に泊まり込んだらギリギリで書けたこと。でもあれだけ難航したのに、書ける時は1時間くらいで書けちゃうんだな。

まさに状況的にも“眠れぬ夜”であった、と。あとオフコ-スの代表曲といえば、誰もが知っているのが「さよなら」ですけど、この曲にまつわるエピソ-ドなどもあるのでしょうか。

小田 ツア-中にタクシ-のラジオで、“ただいま人気急上昇のオフコ-ス…”って紹介されつつ、この曲が掛かったことがあってさ。“あ、人気急上昇なんだ”って思ったの覚えてるけど(笑)。

まさにタクシ-のラジオのアナウンスの通り、バンドがブレイクを果たしたヒット曲でもありますね。

小田 実はこの曲のサビの“さよなら”って三回繰り返すところは、もともと別の言葉で書いてたんだ。その時の歌詞を書いたメモが、どこかにあるはずなんだけど。でもそのうち、“さよなら”を繰り返す案が浮かんでね。ただ、果たしてそうすべきなのか、判断つかなくて、ずいぶん考えた。いろいろ別の言葉にも変えてみたけど、“さよなら”以上のものが見つからなかったのさ。

オフコ-スの楽曲は、他にも「愛を止めないで」が新たにフジテレビのドラマ主題歌になるなど未だに人気が衰えませんけど、後半は四人になってからのオフコ-スの作品ですね。

小田 なかでも「君住む街へ」は、自らの生涯の大事な一曲のなかに入ってくるものだと思うよ。台湾でコンサ-トやったことがあったけど、この曲を北京語で歌ったら、お客さんがサビを一緒に歌ってくれてね。あの時の光景とか、とってもいい想い出になってるし…。

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