小田和正『あの日 あの時』特集  vol. 3

Interview

小田和正のベスト・アルバム『あの日 あの時』が遂にリリ-スされた。第三回は、いよいよご本人の生の声をお届けする。

小田和正のベスト・アルバム『あの日 あの時』が遂にリリ-スされた。第三回は、いよいよご本人の生の声をお届けする。

新たな伝説を生んだソロ活動 等身大からの様々なアプロ-チが実を結ぶ

ソロになって、ストイックだったオフコ-スから一転、小田さんの等身大というか、人間味溢れる雰囲気も伝わり始めましたが。

小田 『恋は大騒ぎ』なんて、タイトルからしてそうだよね。より客観的に、そんな自分を“演じてみた”というか、ともかく明るく前向きな曲を、敢えて書いてみた感覚だった。くるりの岸田(繁)君とかスキマスイッチの大橋(卓弥)君とか、若い世代から「この曲いいですね」って言われることが多いんだけど、そう言ってくれるのはすごく嬉しいよ。

オフコ-スにはないもの、というのも当初は・・・。

小田 「Oh! Yeah!」も、自分なりのソウル・ミュ-ジックというか、ブルースっぽいのをやってみたくて作ったけど、こういう匂いのものは、オフコ-スの頃には無かったからね。

そして外せないのが「ラブ・ストーリーは突然に」のメガ・ヒットでした。

小田 実はカンツォーネなんかには、そもそもあった感覚なんだけど、♪タタタ♪タタタ♪タタタっていう、いわゆる3連が炸裂するような曲を、というアイデアがあって、そこに『東京ラブスト-リ-』というドラマの話が来て、曲の持つ情熱的な感じと、ドラマでの使われ方とが上手く合ったということだろうね。お陰様で多くの人達に聴いてもらえたけど、俺にしてみたらソロになって間もない時期だったし、いきなり大きなご褒美をもらえた感覚だったんだけどね。

90年代はドラマから様々なヒットが誕生しましたけど、実はこの曲が先駆け、だったんですよね。そして様々なコラボ、タイアップも増えていきますね。

小田 アニメ映画『走れメロス』のテ-マ・ソングとして書いたのが「そのままの 君が好き」で、この時は全体のサントラも担当してね。そのあと、自分が映画の監督をした「いつか どこかで」になるんだけど、ともかく「ラブ・ストーリーは突然に」のお陰で、いろんな話を頂いたんだよ。たとえば「woh woh」なら、JRAからきた依頼だったしね。ただ、先方のそもそもの要望としては“テンポのあるラブソング”だったのが、思いついたのがバラ-ドだった。もしダメなら引っ込めようと思ってた。そしたら懐深く、JRAがこの曲を受け入れてくれたんだよ。

タイアップって、あれこれ先方から注文つけられるものなのかと想像してましたが…。

小田 でも話の続きがあって、実は最初はもっと“woh woh”とだけ歌う部分が多かったんだ。でも、さすがにそこだけは“少し減らせませんか?”って先方から要望が来たのでそうしましたけど(笑)。この“woh woh”っていうのは、「言葉にできない」の“la la la”もそうだろうけど、“歌詞のないところにこそ含みを”、みたいなことだろうな。あと、「キラキラ」とかもね。

ドラマ『恋ノチカラ』主題歌でしたね。

小田 “♪キラ キラ キラ”って歌っているところのメロディだけが浮かび、さらにこの言葉が出てきたことが全体を決めたね。でもいきなり“キラ、キラ、キラ”って始まるのも…、ということで、歌い出しは“♪ゆら ゆら ゆら”にしたんだけど。

“ゆら ゆら ゆら”がさっと出てくる閃きも凄いと思いますけど…。

小田 あとイントロを頑張って考えましたね。「ラブ・ストーリーは突然に」の“♪チャカチャーン”を超えないといけない、という想いもあってのことだったけど、この曲の冒頭の“♪ティロリ~ン”ていうグロッケンの音も、あれはあれでライブやっていくうち、アイデンティティのあるものだと思えるようになったけどね。

曲順は前後しますが、同世代に向けた「the flag」という曲の反響も手応えになったんじゃないですか。

小田 聴き手が何を求めているのかを考えるより、ともかく自分が書きたい曲を好きに書くのがいいんじゃないかって思うようになって、その想いのまま、同級生に向けて歌うつもりで書いたけど、思いの外、反響が大きくてね。曲というのは『素直な気持ちで書けば届くんだ』と思えたのは大きかったね。

“たしかなこと”を歌い続けるための、今も変わらぬ小田の流儀とは…。

ここ最近の小田さんというと、「たしかなこと」を支持する人が多いですよね。

小田 特にア-ティストの人達から言ってもらえるのは、ふと自分の声に乗せて歌ってみたいと思える、そんな曲調だからじゃないのかな? 多分、それもあってのことだと思うけどね。

明治安田生命のCMのために、長らく使われていた「言葉にできない」を超えるもの、という意識で書いたものだとか…。

小田 まあ“超える”と言っても、長い時間を経て浸透していったあの曲を、いきなり新曲で超えていくことは出来ないし、だから時間をかけて伝わっていくようなものを目指したつもりではあるんだけどね。歌詞のテ-マとしては、ふと空を見上げてみて“ああ、雨は上がったな”とか、“今、いい風が吹いてきたな”とか、つねにそう感じていられる自分でいたいという、そんなことからだったな。でもCMで、“時を越えて 君を愛せるか”っていう部分を使ってもらえたことで、より深くこの歌が伝わっていった気がしたんだけど。

歌を作る立場として、やはり2011年の東北大震災というのが大きな出来事だったとも思うのですか。

小田 直後の段階では、『音楽をやってても何の助けにもならんぞ』って想いが大半で、でもちょっと落ち着いてきた時、「でも何かの助けになる部分があるのかも・・・」ということで、音楽をやる身としての自信を取り戻す、というか、そんな心持ちのなかで書いたのが「その日が来るまで」という歌なんだ。

地域全体へ向けてのガンバレではなく、一人一人に対しての歌いかけ、ですよね。

小田 そうだね。“君が好き”と、そう歌いかけてるのでラブ・ソングだと捉える人もいるだろうけど、歌いたかったのはまさに一人一人に対してで、その想いがこの言葉になったんだけど。

2年前に出たオリジナル・アルバム『小田日和』は納得できる内容だったそうで、もちろんこのベストにもその中から選ばれてますね。

小田 実は今回、あのアルバムから5曲か6曲は選びたかったんだけどね。さすがに出たばかりだし、スタッフから止められた(笑)。でも、あのアルバムを聴いてない人も、今回のベストなら聴いてくれるのかもしれないし…、という考え方をすれば、『小田日和』から多くを選曲するというのもひとつの道理ではあるのでね。

新曲2曲に関しても教えてください。

小田 「wonderful life」は車SUBARUのCMのために書いたんだけど、もともと軽快で明るい感じがいいなって思ってて、そしたらふと、“♪ワ-ンダフル♪ワ-ンダフル”って言葉が出てきてね。そして大きな虹が掛かった風景が浮かんだんだよ。虹、俺は大好きなんだけど。“ワ-ンダフル”って言葉はありがちではあるけど、ふと出てきたものって、あとから別のものにしようと思っても超えられなかったりするんだよね。

「風は止んだ」は映画『64』の主題歌ですね。

小田 映画のために書いたんだけど、大好きで読んできた横山秀夫さんの原作だし、話を頂いたことがすごく嬉しかったな。で、たまたま大サビのメロディを決めてるときに“心の中 風は止んだ”って言葉が出てきてね。

“生まれてきた そのわけは”と始まる冒頭から心を掴まれますね。

小田 でも生まれてきた理由なんて誰にも分からないわけで、結局、自分が決めるしかないわけじゃない? でも歳をとるに従って“君を想う気持ち”がだんだん強くなって、その気持ちとともに「風は止んだ」っていうのはどうかなって。でも生きてる以上、“風”とは一生のつきあいなんだろうけど。『64』は前・後編の大作だし、観た人が最後に俺の歌を聴いて、『映画は良かったのに歌がねぇ・・・』ってならないことを祈るばかりだけど。

まもなく30日からツア-が始まりますが。

小田 今回はベストを出してのツア-なので、もちろんこの中の曲を沢山やると思うけど、そもそもツア-・タイトルが「君住む街へ」なのでね。気持ちはいつも、君たちのところに一緒にありますよ、というのがこの歌だし、それを銘打ったツア-なのだから、そんな前向きな気持ちで全国を回れたらと思ってますけどね。

All Time Best Album
あの日 あの時

あの日 あの時

FHCL-3005~FHCL-3007
¥3,611+税

【初回仕様限定盤】
・デジパック仕様
・特製ギターピック封入(2種(「あの日あの時ver.」or「君住む街へver.」)から1種ランダム封入)
*本人直筆のタイトル「あの日あの時」or「君住む街へ」がピックに印刷されています。

日本人に長き渡り親しまれ、J-POPシーンのトップとしてそれぞれの時代を駆け抜け数々の記録を打ち立ててきた小田和正。1969年オフコースを結成し、翌70年プロとして音楽活動を開始、「さよなら」「言葉にできない」などのヒット曲を発表、今作にはオフコース時代のセルフカバー作品に手を加え多数収録。89年2月オフコースを解散後、ソロアーティスト活動を再開。1991年270万枚を超える大ヒット作となった「ラブ・ストーリーは突然に」明治安田生命CM曲でのヒット曲「たしかなこと」「今日もどこかで」やSUBARU ブランドCM タイアップソング「wonderful life」や、5月から全国東宝系にてロードショー公開される映画『64-ロクヨン-前編/後編』の主題歌「風は止んだ」も初CD化。まさに43年に渡る小田和正の創作活動の軌跡をたどった、珠玉の50曲を収録。

収録曲

【DISC 1】

  1. 01. 僕の贈りもの
  2. 02. 眠れぬ夜
  3. 03. 秋の気配
  4. 04. 夏の終り
  5. 05. 愛を止めないで
  6. 06. さよなら
  7. 07. 生まれ来る子供たちのために
  8. 08. Yes-No
  9. 09. 時に愛は
  10. 10. 心はなれて
  11. 11. 言葉にできない
  12. 12. I LOVE YOU
  13. 13. YES-YES-YES
  14. 14. 緑の日々
  15. 15. たそがれ
  16. 16. 君住む街へ

【DISC 2】

  1. 01. 哀しみを、そのまゝ
  2. 02. between the word & the heart-言葉と心-
  3. 03. 恋は大騒ぎ
  4. 04. ラブ・ストーリーは突然に
  5. 05. Oh! Yeah!
  6. 06. そのままの 君が好き
  7. 07. いつか どこかで
  8. 08. 風と君を待つだけ
  9. 09. 風の坂道
  10. 10. それとも二人
  11. 11. my home town
  12. 12. 真夏の恋
  13. 13. 伝えたいことがあるんだ
  14. 14. 緑の街
  15. 15. woh woh
  16. 16. the flag
  17. 17. キラキラ

【DISC 3】

  1. 01. たしかなこと
  2. 02. 大好きな君に
  3. 03. 明日
  4. 04. 風のようにうたが流れていた
  5. 05. ダイジョウブ
  6. 06. こころ
  7. 07. 今日も どこかで
  8. 08. さよならは 言わない
  9. 09. グッバイ
  10. 10. やさしい雨
  11. 11. 東京の空
  12. 12. その日が来るまで
  13. 13. 愛になる
  14. 14. そんなことより 幸せになろう
  15. 15. やさしい夜
  16. 16. wonderful life
  17. 17. 風は止んだ

小田和正スペシャルサイト
http://www.kazumasaoda.com/

オフィシャルサイト
https://www.fareastcafe.co.jp/

小田 和正 (おだ かずまさ)

1947年9月20日生 神奈川県横浜市出身

東北大学工学部、早稲田大学理工学部建築科修士課程卒業
1969年オフコース結成。翌70年プロとして音楽活動を開始、「愛を止めないで」「さよなら」「Yes-No」などのヒット曲を発表する。
82年には日本武道館連続10日間公演を実施、それまでの記録を塗り替えた。日本の音楽シーンに様々な記録を残しつつ、89年2月、東京ドーム公演を最後にオフコース解散。その後、プロデュース活動を経てソロとしてアーティスト活動を再開。91年に発表したシングル「ラブ・ストーリーは突然に」は270万枚を超える大ヒット作となった。また映画やテレビの特別番組など映像監督としても活躍し、これまでに「いつか どこかで」(92年)、「緑の街」(98年)の2本の映画監督作品を発表している。2001年からは毎年12月に「クリスマスの約束」と題した音楽特番を放映(TBS)、好評を博している。
2008年4月5日を皮切りにスタートした全国ツア―「今日もどこかで」は、ドーム4公演を含め、全国で53万人を動員する記録的なものとなった。そして、2011年4月20日6年ぶりのオリジナル・アルバム『どーも』発表。業界紙オリコンにてチャート1位を記録。5作連続、通算9作目のアルバム首位を獲得し、自身の持つアルバム最年長1位記録を更新した。同年5月7日長野BIG HATを皮切りに、5大ドーム8公演を含む全国31会場59公演総動員74万人、1年に及ぶ全国ツアーを実施した。
2013年4月24日に約2年5カ月ぶりのニューシングル「その日が来るまで / やさしい風が吹いたら」の両A面シングル発売。さくらの植樹活動を通じて震災を風化させないように取り組む「東北さくらライブプロジェクト」の活動を支援するコンサートは、今後も継続的に実施してゆく。同時期ベストアルバム「自己ベスト」が発売から足掛け11年で500週目のランクイン(=TOP300入り)を果たす史上初の快挙を成し遂げた。
7月2日9枚目のオリジナル・アルバム『小田日和』リリース。同年25会場50公演の37万人動員の全国ツアーを実施。
2016年ベスト・アルバム『あの日あの時』を発売。また、全国ツアー『明治安田生命Presents KAZUMASA ODA TOUR2016「君住む街へ」』を2016年4月30日(土)の静岡エコパアリーナからスタートさせる。

ツアースケジュール

【明治安田生命Presents 「KAZUMASA ODA TOUR2016 君住む街へ」】
4/30(土)・5/01(日)静岡エコパアリーナ
5/07(土)・5/08(日)四日市ドーム
5/14(土)・5/15(日)別府ビーコンプラザ
5/21(土)・5/22(日)函館アリーナ
5/28(土)・5/29(日)富山市総合体育館 第一アリーナ
6/07(火)・6/08(水)神戸・ワールド記念ホール
6/14(火)・6/15(水)さいたまスーパーアリーナ
6/21(火)・6/22(水)朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
6/30(木)・7/01(金)東京体育館
7/06(水)・7/07(木)盛岡市アイスアリーナ
7/13(水)・7/14(木)北海道立総合体育センター 北海きたえーる
7/23(土)・7/24(日)さぬき市野外音楽広場テアトロン
7/30(土)・7/31(日)宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
8/05(金)・8/06(土)ビックパレットふくしま
8/11(木・祝)・8/12(金)出雲ドーム
8/17(水)・8/18(木)マリンメッセ福岡
8/24(水)・8/25(木)大阪市中央体育館
8/30(火)・8/31(水)名古屋・日本ガイシホール
9/6(火)・9/7(水)大阪城ホール
9/17(土)・9/18(日)広島グリーンアリーナ
9/27(火)・9/28(水)国立代々木競技場第一体育館
10/09(日)・10/10(月・祝)高知県立県民体育館
10/18(火)・10/19(水)横浜アリーナ
10/29(土)・10/30(日)宜野湾海浜公園屋外劇場

小貫信昭

80年代より、雑誌『ミュ−ジック・マガジン』を皮切りに音楽評論を開始。以後、主に日本のポップス系ア−ティストのインタビュ−、各媒体への執筆などに携わりつつ今日に至る。主な著書には日本の名ソング・ライタ−達の創作の秘密に迫る『うたう槇原敬之』(本人との共著)、小田和正『たしかなこと』『小田和正ドキュメント 1998-2011』(本人との共著)、人気バンドの凝縮された1年間を繙いたMr.Children『es』(本人達との共著)、また評論集としては、ロック・レジェンド達への入門書『6X9の扉』、J-POPの歌詞の世界観を解き明かした『歌のなかの言葉の魔法』、また、ゼロからピアノ習得を目指した『45歳・ピアノ・レッスン!』などなどがある。現在、歌詞のなかの“言葉の魔法”を探るコラムを「歌ネット」にて好評連載中。

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