モリコメンド 一本釣り  vol. 87

Column

ジェニーハイ “誰がやってるのか?”と“高度な音楽性”を同時に楽しめるスーパーバンド

ジェニーハイ “誰がやってるのか?”と“高度な音楽性”を同時に楽しめるスーパーバンド

ロックバンドに取材していると、ときどき「バンドは“何をやるか”ではなく、“誰が、どんなふうにやっているか”かが大事」みたいな話になる。つまり、音楽性とか楽曲の内容よりも“どんなメンバーがいて、どんなスタイルでバンドをやっているか”のほうが重要という考え方(わかりやすい例は、ザ・ローリング・ストーンズ。「ミック・ジャガー、キース・リチャーズがやってるからこそ、あのロックンロールは世界最高なのだ」ということですね)なのだが、そういう話になったとき筆者は「確かにそうだけど、上手ければいいというものではないけど、やっぱり音楽の質も大事じゃない?」と心のなかで思ってしまう。どうしてこんなことをグダグダ書いているかと言えば、今回紹介する“ジェニーハイ”というバンドに初めて触れたとき、「これって“誰がやってるか?”というおもしろさと音楽的なクオリティの高さが完全に共存してるじゃないか!」と思ったからなのだった。

“ジェニーハイ”はもともと、BSスカパー!のバラエティ番組「BAZOOKA!!!」の知名度を上げるために結成されたバンドだ。つまりはバラエティ番組にありがちな(?)、「出演者でバンド組んで盛り上げよう」みたいな企画モノなのだが、まずはメンバーがヤバい。最初に集まったのは、音楽フェス「KOYABU SONIC」の主催者でもある小籔千豊(Dr)と野生爆弾のくっきー(Ba)、そして、tricoのギター&ボーカル中嶋イッキュウ(V)。さらに川谷絵音(ゲスの極み乙女。、indigo la Endなど)がプロデューサーとして参加し、キーボーディストとして“あの”新垣隆も加入。かくして誕生したジェニーハイは、ジャンルの枠を超え、表現の枠さえも超えた(小藪さん、くっきーさんはそもそもミュージシャンではない)才人たちが集結した超個性派バンドとして、当初から大きな注目を集めることになった。

もちろん企画モノではあるのだが、このメンツ以上にヤバいのが楽曲。まずはデビュー曲「片目で異常に恋してる」を聴いてみてほしい。作詞・作曲は川谷絵音。トリッキーなコード進行とリズムのアレンジ、“苦しゅうない苦しゅうない”という出だしでグッと掴まれるキャッチーな歌詞の世界はまさに川谷節だが、彼が関わっている他のバンドとはまったく違うムードが色濃く表出しているのだ。その要因はもちろん、個性とセンスを併せ持ったメンバーたちの演奏。まず気になるのは小藪&くっきーによるリズムセクションだが、音源を聴き、MVを観る限り、まったく問題ナシ、というか、そのへんのバンドマンなんかよりよっぽど達者である。くっきーの演奏技術の高さはこれまでのバンド活動からもわかっていたつもりだが、小藪のテクニックは正直、「え、こんなに上手いの?」と驚かされてしまった。さらに“ギタリスト・川谷絵音”“ボーカリスト・中嶋イッキュウ”の魅力が体感できるのも、この曲の魅力。そして特筆すべてきは新垣のピアノである。クラシック、現代音楽に精通した高度な音楽知識、プレイヤーとしての確かな技術をバランスよく共存した彼の演奏は、ロックシーン、ポップスシーンにおいては明らかに異次元のレベルだ。メンバー全員、パフォーマンスにも華があり、このMVは何度観ても飽きない。その理由はやはり、“誰がやってるか?”のおもしろさときわめて高度な音楽性が同時に味わえるからだろう。

「片目で異常に恋してる」を含む1stミニアルバム『ジェニーハイ』も、聴きどころ満載。まるでエンジン音のようなギターから始まるグルーヴィーなナンバー「ランデブーに逃避行」、ブラックネスを感じさせるバンドサウンドと抒情的なメロディが溶け合う「強がりと弱虫」(間奏パートではベース、ピアノ、ドラム、ギターのソロが炸裂!)など、ポップスとしての制度とメンバーのプレイやビリティを同時に堪能できる楽曲が並んでいる。ジェニーハイの活動について川谷は、

「最初は“何だこれ”と思いましたが、本当にいいバンドになる気がします。音楽をやっていない人もいるバンド、その方がプロデュース力が問われるので楽しみです。こんなスーパーバンド他にいないでしょう。色んな意味で。曲を聴けばわかります、イロモノじゃないですよ」

というコメントを残しているが、本作を聴けば「まさにその通りだな」と納得せざるを得ないだろう。(川谷の多作ぶりと音楽的な進化の著しさも、ここに記しておきたい)。番宣にための企画バンドというイメージを捨て……いや、そのイメージをしっかり持ったまま、このアルバムを聴いてみてほしい。絶対、そのほうがおもしろいはずなので。

文 / 森朋之

その他のジェニーハイの作品はこちらへ

オフィシャルサイトhttp://genie-high.com

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