Interview

杉江大志が舞台『ニル・アドミラリの天秤』と映画『メサイア ―幻夜乃刻―』で“挑戦”する、役者人生にとっての大きな壁とは?

杉江大志が舞台『ニル・アドミラリの天秤』と映画『メサイア ―幻夜乃刻―』で“挑戦”する、役者人生にとっての大きな壁とは?

11月1日より上演される舞台『ニル・アドミラリの天秤』(以下ニル・アド)は、同名を冠にした人気アドベンチャーゲームを下敷きにした作品。本来なら15年で終わるはずの大正時代が、25年を経たというSF的な時代背景に、“愛”をテーマにとある男女の恋愛模様を描くストーリーだ。
さらに、この公演が終わった翌週の11月17日からは、映画『メサイア ―幻夜乃刻―』が公開される。こちらは今年の4月に上演された、舞台『メサイア―月詠乃刻―』の続編となる作品で、警察省警備局特別公安五係に属する公安工作員である通称“サクラ”の壮絶な戦いを描いている。
このどちらの作品でも、主人公を演じる杉江大志にインタビュー。“ニル・アド”にかける意気込みから、“メサイア”での当たり役“加々美いつき”のことについて語ってもらった。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


尾崎隼人は何に対してもまっすぐに立ち向かう心の強さがある

『ニル・アドミラリの天秤』はゲーム化だけでなく、漫画化もされて好評を博し、なかでも、杉江さんの演じる主人公の尾崎隼人は、とても人気のあるキャラクターですね。

初めはクールな役どころだと思っていたのですが、熱い人物で、芯の強い頑固な男でもあります。他のキャラクターと意見が食い違ってぶつかることもあって、そこから成長していくのが魅力的なキャラクターだと思います。

役作りはどのようにされますか。

まずは脚本から読み解いて、与えられた情報の中で、尾崎が何をどう感じたのか、何を考えて何を大事にしているのかを、しっかり知っていくことを大切にしていきたいです。

原作をプレイさせていただいて、今作のテーマは、“愛”という普遍的なものであると感じました。

尾崎は誰にも流されずに、自分の信じる正しさに立ち向かってまっすぐ突き進みます。それが尾崎の醸し出す“愛”だと思うんです。僕は、彼がブレずに進んでいけば、必ず立ちはだかる障害があると思うので、それでも揺るがない姿勢を貫きたいと思います。

菅野臣太朗はいろいろな作風にチャレンジする演出家

脚本・演出の菅野臣太朗さんの印象を伺わせてください。

菅野さんとは数年ぶりにご一緒するのですが、前回の時は、わからないことばかりで何もできずに悔しさが残りました。それから数年経ち、今の僕に何ができるのかを提示して、成長した姿をお見せできたら嬉しいです。菅野さんは、芝居の全体のバランスを考えつつも、お客様に見せたいキャラクターの感情を大切に描いてくださる方なので、信頼できる演出をされますし、食らいついていきたいと思います。

菅野さんの舞台で苦戦されたということですが、どのようなところで苦労されたのでしょうか。

まずは、経験が不足していたこともありますが、お芝居のテクニックですね。それから、今では当たり前だと思うのですが、稽古はひたすら一生懸命しないといけないことも学びました。他人としっかりしたお芝居をするのは、ある程度時間とコミュニケーションの必要性を肌身に感じたので。それ以外にも、ご一緒させていただいた、ワンシチュエーションのコメディの舞台では、笑いが起きる“間”や、お客様をズッコケさせる“間”といった、笑いのテクニックを習得するのに苦労しました。お客様を笑わせることのできるキャラクター像をなかなか掴めなくて……今考えるとたくさん勉強させていただきましたね(笑)。

菅野さんの演出の特徴はどんなところにあるのでしょうか。

いろいろな作風にチャレンジされる方です。だから、“ニル・アド”ではどんな演出をされるか楽しみです。菅野さんの演出は、その場でフレキシブルに対応される方法です。そうして、ご自身の中で、作り上げたイメージを具現化していくのですが、変なこだわりや偏りを役者に押し付けないフラットな方なので、役者として全幅の信頼を寄せられる方です。

菅野さんとの苦い経験も含めて役者として引っ張ってくれたものはありますか。

菅野さんはお芝居に対して、尾崎隼人のように前のめりで、演劇が大好きだからこそ、手を抜かない方です。僕は菅野さんに言われて、とても心に響いた言葉があります。「手を抜いてオーケーな芝居はない。一生で、作ることのできる作品は限られている。だから無駄にしていい作品はないから、すべてをかけろ」とおっしゃられて、演劇に携わる人間として感動して役者としての姿勢が変わりました。

舞台だからこそ表現できる“ニル・アド”を

今作は座長としてどのように引っ張って行こうと思いますか。

僕は「座長として何かをしなくちゃいけない」という意識はそれほどなくて、座組みがギスギスしないで、気軽にディスカッションができる空気感を作りたいです。カンパニーのみんなが思っていることを、すり合わせながら作ることが、より良いものができると実感しているので。年齢の幅がある座組みで、当然、演技の考え方に差が出てくると思うので、だからこそコミュニケーションを大切にして、みんなのいいところを伸ばせる空気作りをしたいですね。それから、お兄さん的存在の吉岡 佑さんと久しぶりに共演するので、任せるところは任せていきたいです(笑)。

ちなみに、杉江さんは公演期間で気をつけていらっしゃることはありますか。

初日が開いて、お客様がもう1回観劇したいと思っていただけるものを作りたいです。そうするためには、お客様の心に届くものがないといけないので、観劇してよかったという感動を伝えて劇場を後にしてもらいたいといつも思っています。

今作の注目ポイントを教えてください。

尾崎は居住まいがかっこいいので、最初はどんな雰囲気をつかめばいいのか不安でしたが、実際のビジュアルが出来上がって、とても納得できる仕上がりでした。僕は、尾崎のキャラクターと近しい部分もあると感じたのですが、当然、違うところがあります。ですから、活かすところは活かしつつ、違うところは役に近づいて、舞台だからこそ表現できる“ニル・アド”をお見せしたいですね。

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