Interview

1966カルテット 女性弦楽カルテットが描くジャンルを超えた音楽の楽しみ方

1966カルテット 女性弦楽カルテットが描くジャンルを超えた音楽の楽しみ方

今でもミュージシャンに多大な影響をもたらし、熱狂的なファンが多いことで知られている、数々のヒットソングをこの世に生み出してきた、英国が誇る伝説のロックバンド『THE BEATLES(ビートルズ)』。発売セールスの実績だけでなく音楽的にも評価され、国境・世代・性別を超えて人気を獲得している彼らが、1966年に来日を果たし武道館で伝説のLIVEを行った。
そんな彼らの来日により日本中が熱狂した年である「1966」を名に冠する女性弦楽カルテット『1966カルテット(イチキュウ ロクロク カルテット)』。メンバーは、松浦梨沙(ヴァイオリン・リーダー)、花井悠希(ヴァイオリン)、林はるか(チェロ)、江頭美保(ピアノ)の4名で構成され、クラシックのテクニックをベースに様々な洋楽ポップスのカバーをしている。
グループ結成6周年を迎えて、ますます活動の幅を広げている彼女たちが、今まで発表してきた数々のビートルズカバーの中から、究極の名曲を選定し、新録音を加えて再構成したベスト盤『1966カルテットBest of Best 抱きしめたい』を発売した。
今回、新たなビートルズ像をクラシカルアレンジで模索してきた彼女たちの到達点である新譜に触れながら『1966カルテット』に迫っていく。

取材・文 / 新麻記子 撮影 / 増永彩子


1966カルテットが結成に至った経緯を教えてください。

松浦 遡ること50年前の話になりますが…私たちのエグゼクティブ・プロデューサーである高嶋弘之さんが、東芝EMIでビートルズの初代担当ディレクターをしていました。その際にビートルズの楽曲はクラシカルにアレンジしても素晴らしい音楽になるだろう!と、ずっと思っていたそうなんです。『クオリーメン』から『THE BEATLES(ビートルズ)』という名前ができて50年となる節目の2010年に、高嶋さんの心に秘めていたその熱い想いを私たち4人にぶつけてくださったのが結成のキッカケですね。

(左より)松浦梨沙、花井悠希、江頭美保、林はるか

(左より)松浦梨沙、花井悠希、江頭美保、林はるか

皆さんは初対面だったんですか?

松浦 はい…全く以て互いの存在自体も知りませんでした。高嶋さんが各々に「ビートルズやらないか?」という声掛けをし、その提案に賛同したメンバーが招集されたようなかたちになります。

普段クラシック音楽を中心として活動していますが、ビートルズに対してどのように感じていらっしゃいますか?

花井 はじめは“好き”とか”嫌い”とか以前の問題でしたね。普段からテレビのCMや音楽の教科書を通じてメロディーは知っているけどタイトルまでは知らないという浅い知識でした。次第に聴いていくと…あれもビートルズだった!これもビートルズだった!という発見に加え、公演の移動中には高嶋氏から担当していた当時のお話を聞かせていただいたこともあり、次第にビートルズに対しての興味を刺激されて学んでいきましたね。

演奏していて戸惑いはありませんでしたか?

江頭 やはりクラシックの演奏とは異なるので戸惑いますね…その点に関しては個々に葛藤はあります。

演奏するにあたり大切にしているポイントを教えてください。

松浦 ヴァイオリン隊はメロディーを担当することが多いので「どうしたら歌に近づけるかな?」というものを念頭に置いて演奏しています。単にメロディーを弾いているだけだとBGMになってしまうのですが、かと言って…歌通りに弾いたとしても聴者にとっていいとは限らない…。その瀬戸際でヴァイオリンでできることと同時にヴァイオリンにしかできないことをを最大限に考えながら弾いています。何て言うんだろう…”綺麗じゃないけど聴きたい音”というものを目指していますね。

花井 そうですね…私も同じです。例えば、松浦さんがメロディーを弾いている際には私はコーラスに回ることが多いのですが、その際にはコーラス感を出すように心がけています。私たちは同じ楽器であり、同じ音色でもあるので…テンションが下がってしまっただけでも、ピタッと一つの音に聞こえてしまう恐れがあるのです。かと言って…弾きかた一つとっても少しだけテンションが違うだけで、バラバラになってしまいグループの意味を失ってしまいます。

そういった場合はどのように改善するのですか?

松浦 話で詰めますね。「ここはどっちする?」みたいな話し合いを設けますね。

花井 「こう弾くぜ!」みたいな…でも、それに対して「それはやだ!」って言われたり(笑)音の輪郭は似ていないとコーラスに聞こえないので、そういう繊細なところを意識していますね。

1966q-0069

チェロの林さんとピアノの江頭さんはいかがですか?

 演奏中はチェロとピアノでベースやリズムを刻みながら、全体を支える土台づくりの役割を担当しています。チェロに関して言うと…クラシック演奏の場合でも全くないわけではないのですが、時々ヴァイオリンとハモったりする場合があります。さっきまでベースで伴奏を弾いていたのに、次の瞬間にメロディーを演奏する…音域も低いところから高いところ、高いところから低いところ。指先だけでなく頭も切り替えなければならず、また楽曲中にその回数も多いので大変なんです。でも、そう言った苦労も楽しんでいますよ(笑)

江頭 バンドにおいてのドラムやベースの役割について深く考えています。クラシック音楽の場合だとメロディーに合わせにいくということが多く、歌を伴奏している時も”始め”と”終わり”を必ず合わせる感覚があったんですが、このカルテットだとピアノはドラムの役割なので、音楽の流れとして全体を引っ張っていかなければなりません。土台でしっかり支えてヴァイオリンの2人には楽しく自由に弾いてもらえるように心がけていますが…その中であんまり合わせ過ぎない、敢えて2人を置いていくような、そういうものが”ロックっぽくなる”と思い、強く意識しながら演奏しています。はみ出したり、前のめりになってる…シンコペーションぐらいが調度いい!というような感覚で奏でています。

そういうもの模索しつつ、構築しながら演奏しているんですね。LIVE演奏は大変なのではないですか?

松浦 そういうものも踏まえながら楽しくLIVE演奏しているので大変ではないと…でも、全体の土台となるチェロとピアノは大変なのかも?!(汗)

花井 すごく自由に弾かせてもらっているから…。

江頭 「今日、すごいな。」とか「今日、変えたな。」ってことあります(笑)。でも、そういうアドリブ的なものをやってもらえたほうが楽しいですけどね。

松浦 チェロとピアノのベースやリズムが進めば音楽的には成立するので…安心して遊んでます(笑)。私たちが何処かに行かないように「ダメ、ダメ、行き過ぎ〜。」というふうに紐で引っ張ってくれている役割ですね。

 でも、ヴァイオリン2人を見ていると楽しそうでついて行っちゃいそうになるんですよね。その時は「ダメだ、ダメだ。」と心を鬼にして自分に言い聞かせています(笑)

レコーディングについてお伺いしますが、どのようにレコーディングされているのでしょうか?

松浦 一人ずつの録音ではなく、全員一丸となって録りますね。

今回、新譜を発売するにあたり新録・再録したとお聞きしましたがレコーディング中はいかがでしたか?

1966q-0048

松浦 以前に比べると録り直しは少なくなってきましたね。蓋を開けてみると意外と早く進行しましたね…全然、揉めなかったし。

花井 今回、スケジュール的に非常にタイトで…1日で新録と再録を合わせて5曲を録音しました。前日の夜とか「明日、5曲だよ。…みんな、どうする?帰れる?」みたいな話をしましたけど(笑)「コレ、時間かかっちゃったな。」っていう楽曲も想定の範囲内でクリアで、本当にあっという間に淡々と1日が過ぎて行きましたね。

1 2 >