SID 15th Anniversary Special マオ Self Liner Notes「歌詞を巡る旅」  vol. 6

Interview

シド 5th Album『hikari』~周囲の環境が激変するなか、ついにメジャーへの扉を開けた1枚~

シド 5th Album『hikari』~周囲の環境が激変するなか、ついにメジャーへの扉を開けた1枚~

Self Liner Notes特集「歌詞を巡る旅」。今回はメジャー初のアルバムとなった『hikari』のエピソードを紹介していきます。このアルバムはメジャーシーンをすごく意識して作りましたね。シングル「モノクロのキス」で、シドがついにメジャーデビューする。ここからどんな感じで階段をのぼっていくのか。このアルバムがその鍵を握っているなというのは、4人とも思っていました。なので、このアルバムからたくさん候補曲が集まるようになって、選曲会もかなりシビアになっていった時期でしたね。ここからはメンバーだけではなくて、レコード会社や事務所のスタッフの意見などがしっかり入ってきだした。そこがいままでと一番違うのかな。その方たちは自分たちとはまた別の、音楽のプロでもあるので。いまは自分たちの意見を中心に「また意見、聞かせてよ」っていうときもあるんですけど、この当時は「周りの人はそういうふうに聴くんだ」とか「そういう売り方を考えているんだ」とか、いろんな人の意見を聞くのが楽しかった。メジャーに行くことについては、“TOUR 2008 センチメンタルマキアート”のツアーファイナルでファンに発表して以降、別にドキドキする感じではなかったですね。俺は早くそのことをみんなに言いたくて仕方なかったので、発表してからは落ち着いてたんですよ。でも、メジャーデビューしてからは、自分たちを取り巻く環境が急激に変わっていって。最初はそれに戸惑いましたね。TVに出るようになったり、タイアップだったり、自分たちに関わる人、専門の人がいきなり増えていって、戸惑うと同時に、これはもっともっとシドは輝けるなと思いました。このアルバムタイトルを『hikari』にしたのは、11曲目の「光」ができ上がったときに、タイトルはこれしかない! と思って決めました。曲は絶対に漢字がよかったんですけど、アルバムタイトルにするときは漢字は違うな、という直感が働いてローマ字の小文字にしました。(通常盤の)アルバムジャケットにある4つの扉は、ここから扉を開けて、4人がメジャーに向けて再スタートしていくという意味ですね。

構成・文 / 東條祥恵 撮影 / 今元秀明

「ヴォーカリストは最終的に一人だからね」。それを痛感し始めたころ

01.  落園
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

これは歌詞が暗いですね(苦笑)。俺が悩んでたのかな? いや、悩んでましたね、きっと。たぶんメジャーになって、周りにどんどんどんどん人が増えていくにつれて、先輩にもよく言われてた言葉があって。「ヴォーカリストは最終的には一人だからね」。それを痛感し始めたころだと思います。もちろん、メンバーもファンもいるんですけど、最終的には1回一人にならないと自分の殻を破れない。これは、そういう壁にぶち当たったときに書いたものだったのかな? ちょうど人気も出てきて、TVにも出始めて。その反動が大きかったのかな。「きっついなー」っていうのをすごい感じてたんですよ。フロントマンとしての重圧、プレッシャーがすごいことになっていて。例えば、TVだと「そんなにヴォーカルだけ抜く?」っていうぐらいのカメラワークじゃないですか。こっちはバンドなのに、それでもソロのアーティストと変わらないぐらいヴォーカルだけを抜くんですよ。いままではそういう経験、「俺ばっか観られてるよ」って感じることはなかったのに、ヴォーカルのでき次第でバンドの見え方が変わってしまう、どうしようっていうプレッシャーをどんどん感じて。バンドなのに、俺が全部を握ってるって感じることが、TV以外にも増えていった時期だったんですよ。例えば、キャンペーンにしても「じゃあ、マオさんお願いします」っていうものも多くて。ホント、そういうことが重なったタイミングだったんですよね。自分にのしかかってくる重圧とか、忙しさもあって「うわー、きっついなー」って。そういう時期にこれは書いたんだと思う。タイトルを“楽園”ではなく「落園」にしたのは、とにかくそんな感じで、俺の気持ちが落ちてたから(笑)。でもこの歌は最後に“僕は歌う”と言い切っている。だから、暗くても例えつらくてもこの曲を1曲目にしたんです。

02. 妄想日記2
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

このタイミングでふと「2があってもいいんじゃない?」って思って、最初Shinjiに相談したのかな? すでにあった曲を「これ、“妄想日記2”っぽくない? 2にしちゃっていいかな?」って言ったのかな。Shinjiは「えぇー!!」っていうリアクションだったけど、俺は「面白いと思うよ」って言って。それで、歌詞を書きました。「妄想日記」で終わったと見せかけておいて、その後いろんな人をストーカーした挙句、また同じ人のところに戻ってきたという(笑)。驚いてるからね、相手が。でも、相手にはもう彼女がいてという内容です。“184の嵐で”というところは、当時ファンのなかでも流行るぐらいすごい反響がきましたね。「184の嵐、表現がヤバイです」って。ここは、非通知ってどうやるんだっ? 184か。184が嵐のようにきたらめっちゃ怖いなと思いながら書きました。いまだとすぐに通報されちゃいそうですけど。“留守電の数 愛の重さなの”と言ってるけど、その入り口みたいな人は結構いると思うんですよね。「返事、すぐに返すから」って言ってるのに、待てなくて何回も電話してくる人とか、その要素はありますよね(笑)。“シツコイ~”をカタカナ表記にしたのは、何回も何回も留守電にメッセージを残してる感じを出したかったのと、早口でババババーッて言ってる感じがあったので。それを表すとしたらカタカナかな、と。急にカタカナが出てくると怖いじゃないですか。視覚的にも。だから、映画のホラーものとか、カタカナがよく使われてますし。「妄想日記」では“写真”を使ってたんですけど、「2」はその流れで“記念写真”を入れました。相手がぐしゃぐしゃ~ってなってるような顔の記念写真。怖いですよね(微笑)。この歌詞は、じつはオチが最後にあって。「妄想日記」にも、まだその人に自分の姿を見せてなかったというのが最後の最後で分かるというオチがあるんだけど。それ、めっちゃ怖いなと思って。「妄想日記2」も最後の最後に、まだ見せてなかったのかよ! やっとこれから見せるんかい!! っていうオチを入れました。

03.  嘘
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

アニメ『鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST』のEDテーマになりました。このようなアニメ・タイアップのお話をいただくとき、俺の場合はめちゃめちゃ原作を意識して寄り添うか、シド色を出しながらも寄り添っていく、という2つのパターンがあるんです。『嘘』はその後者でシド色が強い。そのなかでも“約束”とか“二人”はアニメの絵にもすごいハマってましたよね。シド色が強いといっても、この歌詞は、サビの入り口を全部“あの日見た空~”で統一していたり、同じ二人が歌詞のストーリーのなかで成長していく姿とかは、すごくいろんな人へ向けて書いていて。たくさんの人に聴いて欲しいなということを意識して、分かりやすい歌詞を目指して書いたところなんです。いまだに「カラオケでシドの「嘘」を歌いました」とか、聞いたりするんですけど。そういう話を聞くと、この曲がたくさんの人に届いてたんだなって思いますね。特にイベントに出たときにこれをやると、それを実感しますね。黙っててもお客さんたちが(曲に)入ってきますから。だから、シドとしてずっと歌い続ける、演り続けるのがこの曲なのかな、と思いますね。 歌詞のなかの“テーブルの上の 震えない知らせ 待ち続けて”というところは「情景がすごい浮かびます」という感想をすごくいただきました。ここは、携帯の着信音を音にしてる人って少ないなと思って。電話が来たことを知るのはバイブじゃないですか? じゃあ電話がバイブで震えるのを待つということをどうやって伝えようと考えて、この1フレーズだけでめちゃくちゃ悩んだのを憶えてるな。“テーブルの上で震えた電話が~”とか言っちゃったら、もう俺のなかではアウトなんで。そこはもっと隠したい、でももうちょい伝えたいというところでこうなったんですよね。絶妙な、難しいバランスです。ただ新しい層だけを意識した分かりやすい歌詞だけではなくて、そういう“マオ節”も入れたものがちゃんといろんな人に届いたというのが、俺はすごくうれしいです。

04.  サーカス
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

これは、気持ちが絡まっている感じがクルクル空中で回ってるようなイメージから「サーカス」。それで、歌詞のなかに“決死の空中ブランコ”とか、“花形の君”、“ピンとピン”……これはピンスポットの意味です。そういうところで、サーカスを匂わせたりはしていますね。それ以外は、ひたすらこの歌詞は言葉遊びをしたいなと思ったんですよ。曲を聴いたときからいっぱい言葉が入りそうだなと思って、だったら言葉遊びで書いたら楽しそうだな、と。“病”が次では“やばい?”にしてみたり、あとは……“放つ課後”とか。ここはね、放課後なんだけど、たぶんこれ、文字数がうまくハマらなくてそうしたんだと思いますね(笑)。放課後……ヤバイ……うまくハマんない……じゃあ放て、みたいな感じで、結局は面白くしていったんですよ。ストーリーの設定は学園モノ。学校で、クラスのなかでは窓際に座って、見てるんですよ。年上の好きになった相手を。あっ……これ、ちょっと実体験が入ってますね(笑)。高校生のときに年上の人を好きになったっていうことがありました。俺は窓際に座るのが好きで。で、渡り廊下を挟んで向こう側にも校舎があって。好きな女の子はそっちの校舎のクラスだったから、渡り廊下を歩いてる姿がチラッと見えたりすると「うぉー来た!」って(笑)。違う人の姿が重なってきたら「違う違う。どけどけ!」って思ったり。バカみたいに昼休みも見てました。その子はすごい学校でも人気があって。そこも、歌詞のなかの“花形の君”っていうところと一緒ですね。卒業式に何人かの男子から花をもらっちゃうぐらい人気があったんだけど、最終的には俺と両想いだったんです! ぐはははっ(笑)。“ふと想ってるとか そんな次元じゃなくて 日々が君色”っていうところはファンのみんなが好きだって言ってくれるところ。女の子はとくにここを抜き出してファンレターに書いてくる子が多いんですよ。“日々がシド色”とかに替えて書いてくるファンの子が多いから、ここは書いてよかったなって思います。

普通のTVドラマではできないようなところまでを音楽で表現しているものが好き

05.  泣き出した女と虚無感
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

これは「2℃目の彼女」と一緒に収録して先にリリースしましたね。俺たちとしてはダブルA面みたいな感じで、「2℃目の彼女」と「泣き出した女と虚無感」、どっちがタイトル曲でもいいぐらいの気持ちだったんです。明希がこの曲を持ってきたとき、すっごい俺が絶賛したんですね。「むちゃくちゃいいな! 絶対これ出そう」って。普通にアルバムに入れるだけじゃなくて、「2℃目の彼女」と一緒に出したら絶対いいなと思ったんでシングルに入れました。改めてそのことを思い出しますね。自分的に一番気に入ったのはメロディ。難しい歌ではあるんですけど、歌いこなしちゃえばむちゃくちゃかっこいいだろうなと思って。この曲はいまでも好きですね。そろそろライブでやりたいな。歌詞は学園モノだった「サーカス」とはガラッと変わって、悪い男の話。“花、開く頃 午前4時 睡魔との混ざり 丁度良い”ってところが俺すごい気に入ってて。ここは、眠いんだけど寝たくないっていう感じがすごく出てる。4時っていう時間帯がまたね、すっごい悪い感じがしますよね(笑)。外が暗闇から薄暗くなってきても、まだ寝ないんかい、みたいなところが悪っぽい感じがする部分。そこが、ギリ4時だなっていうのがなんとなく俺のなかにあったんですよね。いまの俺だったら、5時半とか6時には起きちゃうから、それだと2時間ぐらいしか寝られない(笑)。でも、この歌詞を書いたときは夜型でしたから。だからこそ、出た歌詞ですかね。悪い男なんだけど、包み込もうとはしてて。こうやって読むと、優しさも感じられますよね。ただ冷たいだけでも悪いだけでもなくて。“声にだして 俺を求めれば? 擬似 あげる”とか“全部捨てて 俺を求めれば? もう連れて「いって」あげる”とかは世界観に入り込んで書いてますね。歌うなら、いまぐらいがいいんじゃないかな。この歌の世界観をちゃんと伝えられる気がするな。

06.  モノクロのキス
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

アニメ『黒執事』のOP曲となったメジャーデビューシングルですね。シドとして初めてアニメ作品のタイアップがついて、しかもメジャーデビュー曲でもあったので、いろいろ初めてだらけの曲でした。デビューシングルって、この先一生残っていくんだろうなっていう気もしてましたから。いきなりメジャーデビューだったらそんなことは考えないんでしょうけど、インディーズを5年ぐらいやってからのメジャーだったんで、俺はそこまで考えてましたね。デビュー曲だから、曲もみんなで選びに選び抜いて。大勢のスタッフも入れた本格的な選曲会のなかで、これで万全だろうというものを出したと思います。その俺たちが選んだ曲とアニメの『黒執事』がばっちりハマってたんで、歌詞は原作を読んで、アニメの世界観をかなり意識して書きました。『黒執事』だから“黒”という言葉をどうしても歌詞に入れたくて“モノクロ”を入れたり、意識的にアニメ側に寄せてます。主人公のシエルの辛い過去とか、それを乗り越えてというところはアニメと重ねて書いてますからね。それもあって、反響はかなりあったんですよ。その反響も、シドのファンとアニメのファンが完全に2つに分かれてました。シドのファンは単純に「シドの曲がTVで流れてうれしい」とか、「メジャーデビューしてうれしい」とか、そういうお祝いムードだったんです。一方、アニメ側の『黒執事』ファンの方々は、「初めてシドというバンドを知りました」とか「テーマソングとしてかなり好きです」とか、「『黒執事』に曲がハマってます」という意見をたくさんいただいて。「今度シドのライブに行ってみます」といって、「モノクロのキス」きっかけでライブに来てくださるとか。そういう広がり方をしていったんですよね。俺自身アニメはそれほど詳しくないので、初のアニメ化だし、オンエアは深夜帯だから観る人は限られるんだろうなと、最初は思ってたんですよ。そうしたらめちゃめちゃ反響があったから、深夜帯でもこんなにみんなアニメを観てるんだって驚いたんですよね。俺の認識が甘かった(苦笑)。

07.  罪木崩し
(作詞・マオ/作曲・ゆうや)

ちょっと前でいうところの『昼顔』的な歌ですね。なんなんだろうな。たま~にこういう歌詞を書いちゃうのって。こんな経験したことないし、憧れてもいないのにな~。きっと、世界観が好きなんでしょうね(笑)。こういうギリギリなところで駆け引きをしている男女の恋愛の感じが。普通のTVドラマではできないようなところまでを音楽で表現している、みたいなものが好きだったりしますからね。だから、言ってみればこういう世界観の歌詞は、ファンの層は意識してないんですよね。当時こういうファンが多かったわけでもないし、年齢層的にもそう。ファンを意識してとか世の中のブームを意識してというよりは、作品としてこの曲調を聴いたときに俺がひらめいたものがこういう世界観ということが多かったですね。あと、アルバムに1曲ぐらいこういうものは入れておかないと気が済まない、みたいなのもあるかな(笑)。歌詞のなかでは“「待て」”という言葉を使って二人の関係性を表していて。ラブラブものは二人の関係性が対等というのが多いんだけど、これは「待て」と言ってるぐらいだから。二人は対等ではなくて、主従関係にあるんだなというのが分かりますよね。ただ、この歌ではいろんなものを壊してまで、その関係性を超えてどっぷり浸かっていきそうなことも匂わせてるんですよ。お互い、それまで積み上げてきた城的なものが崩れるところまでいく。それを積み木と罪を重ねて“罪木崩しよ”っていう言葉で表現したんです。

08.  2℃目の彼女
(作詞・マオ/作曲・Shinji)

この曲は俺、ゴリ推ししましたね。「とにかくいい曲だね」、「いままでのシドのイメージもぶっ壊せるし、めっちゃいいじゃん!」って。歌詞は、一度離れた男女が、やっぱりもう一度付き合いたいなっていう。その男ゴコロを歌った曲ですね。別れた後に、再会する場所がまたゲレンデという、まさにトレンディー路線で。俺が一番好きなシチュエーションですね。トレンディードラマのなかのありえないやつです(笑)。例えば第1話でオフィス街とかですれ違って、「あれ、あのときの子?」っていうのがあって。第3話ぐらいでまた、別々のグループでお店に来てたら、また偶然会っちゃうとか、よくあったじゃないですか? 昔のフジテレビの“月9”なんかで。「ある? そんなこと」って思いながらも、俺はそういうものが好きだし、それこそ運命的な恋愛みたいな気がすごいするんですね。この曲はそれを書きました。ゲレンデで二人は再会するんですけど……俺、スキーをした経験が全くないんですよ。あ! 修学旅行で1回した。それぐらい。だから、ゲレンデは俺の憧れがだいぶ入ってます。あと、別れた後に再会するという歌詞もこれまでのシドにはなかったんですよ。そういうストーリーもトレンディー路線で気に入ってます。彼女とは1回付き合ってさよならしたんだけど、それでもずっと想い続けていて。だけど、その子はたぶん、別れた後に自分とは違う人と付き合っていて。それを考えるだけでもどかしくて息苦しくなるんですけど、そんな彼女とゲレンデで偶然を超えた再会を果たすという内容です。タイトルは “℃”に違和感を感じるという意見が最初あったんです。それは俺もそうだった。でもこれぐらい思いっきり違和感がないと目立たないからっていう話をしっかりみんなにしてこのタイトルになりました。最初は「なんすか、それは!」、「相変わらず変なの出しますね」と言ってたファンも、いまはみんな“次でシドのライブ行くの2℃目です”とか普通に使ってるから(笑)。うれしいです。そうやって浸透してる感じがね。

まっすぐで純粋なものって、俺、ファンレターが一番だと思ってるから

09.  capsule
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

これは、いろんな意見が耳に入ってくるようになった頃に書いたものですね。ネットとかがどんどん広まっていった時代とも重なって、いらない情報までどんどん入ってくるようになってきた時代。そこでは、いいものも、こっちが「そうじゃないんだけどな」って思ってるものも表に出ていくわけですよ。あくまで俺が感じたことだけど「俺のシドのイメージはそうじゃないんだけどな」とか「そもそも俺、そんなこと言ってたっけ?」とか。俺自身、自分の発言まで気になり出しちゃって、とか。人のちょっとした悪いところをほんのちょっとでも見つけたら、全部引きずり出してボッコボコにするみたいな風潮はいまだに続いてると思うんですけど……。それをこの歌で俺はcapsuleに例えていて。「ああいうことする人たち、嫌だね」って言ってたヤツも、アイツらにcapsuleを飲まされて、どんどんゾンビ化していくっていうイメージだったんですよ。で、ゾンビになったらアイツと同じことを言い出す。そういうのがちょっと嫌だなと思って。いま話したことをめちゃくちゃ濁しながら歌詞にしていったんですよ。リアルに書いちゃうとパンクすぎて俺のスタイルじゃないなと思ったんで、濁しながらも、この当時自分が思ってたことを吐き出しましたね。そのcapsuleはすでにパソコンとか、TVのケーブルを通してお茶の間まで流れ出してきてるんじゃないか、と。それを“お茶の間”って書くのも面白くないから“オチャノアイダをすり抜けた”と書いたんです。“だから君だけは 僕を 目を見て 抱きしめて”とか、“だから君だけは 染まることなく”というところはファンに向かって書いています。俺はそっち側の人間にはなりたくないという思いで。“だから君だけは 僕を realを”というところもそうですね。

10.  ドラマ
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

これはファンレターを元にして書きましたね。ファンレターはちゃんと読んでます。一番リアルなんですよ、ファンレターって。まっすぐで純粋なものって、俺、ファンレターが一番だなと思ってるから。そもそもファンレターって、出しても俺にちゃんと届くかどうかなんて分からないじゃないですか? 分からないのに書くってことは、本当に思ってることを書いてるはずなんですよ。俺はそれが知りたいんです。ファンでもあるけど、お客さんでもあるので。知りたいなって思うんですよね、お客さんの本当の気持ちを。俺っていう人間に対して、お金を払って時間を費やしてまで会いに来てくれる人たちの心理を知りたいんです。あとは、単純に感謝の気持ちがわいてくるんで読みますね。それで、ファンレターを読んでて単純に思ったことが、みんな悩みすぎだなって。ファンレターなのに自分の悩みだけブワーって書いてる人もいたし。抱えてる悩みにも大きいちっちゃいがあって、長く悩んでる人、最近悩み始めた人、いろんな人がいるんだけど。そういう人たちに対して、「無理して笑ったりしなくても、泣いたりしていいんじゃないかな」とか「もうちょっとズルして楽してもいいんじゃないかな」っていうことを伝えたいなと思って、この歌詞を書いたんですよね。しかも、ファンレターをくれる人は俺を好きって言ってくれてるんで、あなたが好きな人はずるいからそんなときはすぐ寝ちゃうよ、っていうのを“僕はずるいからね 疲れたらすぐ眠る おぼえたての近道さ”というところで書いていて。こういうことを言えば、悩んでいる人も「なんだ、マオがそうやってるんだったら私もそうしようかな」「俺もそうしようかな」って思ってくれると考えて、自分のことを書いたんですよ。タイトルを「ドラマ」にしたのは、それぞれに主人公がいて、それぞれにドラマがある。その人のドラマの主題歌的にこの歌、シドがいつも流れていたいなという意味ですね。

11.  光
(作詞・マオ/作曲・御恵明希)

メジャーデビューが決まった後に初めて開催するツアー。そのツアーを回るときに携えていくアルバムの最後の曲、というのをイメージして書きました。そこで、ミラーボールが回ってる感じも出てきて、いま自分が思ってることを書いていきましたね。いろいろあるけど、マイペースでいたいし、一度心を落ち着かせようよ、そこにはいいことしかないんだからって。これは自分に対して言ってるし、ファンの方にもそんなにカリカリしないで一旦落ち着こうよっていうのもありますね。まったりする時間があると、また違うよっていうのを伝えたくて。大事だけど忘れがちじゃないですか。こういうことって。ちょっと話が変わるんですけど、俺、めっちゃ働けるんですよ(笑)。でもそのためには、休みがちゃんとないとダメなんです。休みなくダラダラ働くんじゃなくて、休みが1週間ポンってあれば、それまでは「もっと仕事入れてよ」って自分からいろいろ入れたくなっちゃうぐらい働くんですね。だから、この歌詞はいま話した“休み”みたいなイメージですね。“幸せなことに 僕たちは 離れても何度でも 逢える”っていうところは、休んでも俺たちはやり続けるし、せかせかしないで、いろんなことを長く広い目で見たら、落ち着く場合もあるよっていうファンへのメッセージ。「光」は“生きる意味とか 一晩中考えて”って、すごく大きなテーマを歌いながらも、結局朝まで眠れなくてつかまえたものはなんだったっけ? そもそもなにを考えてたんだっけ? っていうようなことを伝えたかった。あんなに大きな闇となっていたテーマが、結局朝がきたら忘れちゃうほどまだまだ俺たちはちっちゃな光だよねって。だから、そこまで恐れるものは、じつはそんなにないんじゃないかって。これは実体験です。自分も恐れ過ぎて、眠れない怖い夜をいっぱい過ごしたんで、そういうことを乗り越えたうえでこの歌詞を書いてますね。この曲がファンのみんなにとっての「光」になってくれたらうれしいです。

次回 6th Album『dead stock』編は2018年10月下旬掲載予定です。

リリース情報

LIVE DVD / Blu-ray『SID TOUR 2017 「NOMAD」』

2018年7月25日リリース
【初回生産限定盤DVD(DVD+写真集)】
KSBL-6322-6323 ¥6,000+税
【通常盤DVD】
KSBL-6324 ¥5,000+税
【初回生産限定盤Blu-ray(Blu-ray+写真集)】
KSXL-268-269 ¥7,000+税
【通常盤Blu-ray】
KSXL-270 ¥6,000+税

Mini Album『いちばん好きな場所』

2018年8月22日リリース
【初回生産限定盤(CD+DVD)】
KSCL-3076-3077 ¥2,788+税
【通常盤(CD)】
KSCL-3078 ¥1,852+税

ライブ情報

SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR

「いちばん好きな場所2018」
http://archive.sid-web.info/15th/

公演スケジュールなどの詳細は公式サイトをご参照ください。

マオ from SID

マオ/福岡県出身。10月23日生まれ。2003年に結成されたロックバンド、シドのヴォーカリスト。
2008年10月「モノクロのキス」でメジャーデビュー。以降、「嘘」「S」「ANNIVERSARY」「螺旋のユメ」など、数多くの映画・アニメテーマ曲でヒットを放つ。2018年、バンド結成15周年を迎え、4月にはセレクションベストアルバム『SID Anime Best 2008-2017』をリリース。直後の5月から6月28日まで”SID 15th Anniversary LIVE HOUSE TOUR 2018”と銘打った全国6都市14公演ツアーを無事に完走。そして、8月22日にリリースしたミニアルバム『いちばん好きな場所』を引っ提げ、9月からLIVE HOUSE TOUR”いちばん好きな場所”をスタートさせた。

オフィシャルサイト
http://www.maofromsid.com
http://sid-web.info

vol.5
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