Interview

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』TVアニメ史上に類を見ない試み“レヴュー曲”とは何だったのか? 制作陣が明かす「歌とセリフと映像の一体化」の秘密

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』TVアニメ史上に類を見ない試み“レヴュー曲”とは何だったのか? 制作陣が明かす「歌とセリフと映像の一体化」の秘密

心にキラめきを宿した、9人の舞台少女たちの物語――。

2018年7月から9月にかけて全12話が放送されたTVアニメ『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は、舞台に情熱をかける少女たちの姿をまっすぐに描いた青春ものでありながら、見る者の想像を超える演出や展開が次々となされていく、非常に稀有な存在感をもった作品となった。その世界観を支える力として大きく貢献したのは、劇中のさまざまな場面を彩った印象的な音楽たち。それらを生み出した楽曲制作チームのキーパーソンである音楽プロデューサーの野島鉄平、同じく音楽プロデューサー山田公平、そして主題歌・劇中歌全曲の作詞を担当した作詞家・中村彼方。以上3名の談話を交えながら、「ミュージカル×アニメーションで紡ぐ二層展開式少女歌劇」の魅力を紐解いていく。

取材・文 / 仲上佳克


ミュージカルからアニメへ、舞台少女たちの道のり

『少女☆歌劇レヴュースタァライト』のプロジェクトが発表されたのは、2017年4月のこと。アニメを中心とした数々のメディアミックス作品を成功させてきたブシロードと、2.5次元ミュージカルの世界で確固たる実績をもつネルケプランニングがタッグを組み、「アニメとミュージカルが相互にリンクし合う、新感覚エンターテインメント」を展開していくことが宣言された。

最大の特徴は、先にアニメがあって舞台化するという形ではなく、舞台が先行して上演されること。アニメ化に先駆けた同年9月には早くもミュージカルの公演が行われ、それと同時にメインキャラクター9人を演じるキャストによるユニット「スタァライト九九組」が活動を開始。2018年1月の舞台再演を経て、次第にファンの数を増やしてきたスタァライト九九組は6月23日に東京・八王子オリンパスホールにて初のワンマンライブ『1stスタァライブ“Starry Sky”』を開催する。この公演はライブビューイングも行われるほどの人気となり、いよいよ注目度も高まってきたところで満を持してのTVアニメ放送開始となった。

ミュージカルからバトンを渡される形でスタートしたTVアニメ第1話「舞台少女」は、九九組をずっと追いかけてきた舞台創造科(ファンの呼称)にとって待ちわびたものであったのと同時に「どうやら先にミュージカルをやったアニメがあるらしい」という評判を聞きつけて見たという視聴者も多かったことだろう。主人公の愛城華恋を中心とした聖翔音楽学園第99期生たちの日常や授業風景を描きつつ、華恋の幼なじみである神楽ひかりが転校生として現れるという導入部分は、かわいらしく描かれた親しみやすいキャラクターデザインと相まって、非常にわかりやすく好感をもてるものになっていた。だが、視聴者の度肝を抜く展開は後半パートに待っていた。

ひょんなことから学校の地下にある劇場に迷い込んだ華恋は「トップスタァをめざして、歌って、踊って、奪い合う」オーディションで、クラスメイトの星見純那とひかりが激しい火花を散らすのを目撃する。華恋の傍らで戦況を見つめるのは、謎のキリン。華恋はキリンの制止も聞かずオーディションに乱入し、そのままの勢いで純那に相対して勝利を収める――というのが、第1話クライマックスで起こった怒涛の展開のあらましだ。

独特のロゴで書かれた「アタシ再生産」の文字が画面に大きく映し出されるのをきっかけに、華恋のレヴュー衣裳が用意されるという流れは、いわゆる変身バンクシーンに該当するものではあるが、その描写は変身ヒロインのように華麗なものでもアイドルのように可憐なものではなく、油と炎にまみれた工場で衣裳が縫製されていくという非常に無骨なもの。まるでスチームパンクのような画と音楽に視聴者が呆気にとられている隙に、完成した衣裳を身にまとった華恋が「みんなをスタァライトしちゃいます!」の名乗り口上と共にポーズを決めるという、外連味あふれる登場シーンが描かれる。あまりの情報量の多さと急展開に、舞台創造科も新規の視聴者も目を見張ったに違いない。

第1話が放送された当時、この「再生産」シーンを見て1997年放送のTVアニメ『少女革命ウテナ』を引き合いに出す人も少なくなかった。確かに『少女革命ウテナ』における決闘シーンの演出も舞台的な要素を取り入れ、また視聴者を唖然とさせるようなシュールな描写も多かった。だが、実は『スタァライト』を見て『ウテナ』を連想するのはまったく不自然なことではない。『スタァライト』で監督を務めた古川知宏は『ウテナ』監督の幾原邦彦氏が手掛けた作品『輪るピングドラム』『ユリ熊嵐』に主要スタッフとして参加していたからだ。ある意味、正統後継者というべき人物であり作品でもある。

楽曲の構成をばらすことには葛藤があった

前置きが長くなったが、ここでようやく本題である音楽の話に移りたい。先述したキリンによる謎めいたオーディション、そして舞台少女同士がしのぎを削るレヴューのシーンは一部の話数を除いて毎回のクライマックスとして定番になっていく。そこに流れるレヴュー曲は、当然ながらその回のレヴューに挑むキャラクターや物語によって、毎回違うものを用意しなければならない。しかも、アイドルものやバンドもののアニメで見られるようなライブシーンとは異なり、この作品におけるレヴューは歌とセリフが常に混然一体となって描かれる。TVアニメ史上でもあまり類を見ないような試みに対して、音楽制作チームはどのようにアプローチしていったのか? 音楽制作を担当するポニーキャニオンの野島鉄平とアップドリームの山田公平によると、まず古川監督のイメージありきで、そこから楽曲制作に入っていったという。

野島 「監督から言葉でいただいたアイデアをもとに僕から山田さんに楽曲を発注して、出来上がったところで僕がまた監督に確認をして、決定したところで彼方さんが作詞に入るというのが大体の流れとしてありました。作家さんにイメージを伝えるときは、僕が映像ソフト上にコンテを張って、その映像に対して『目の開き、曲スタート』というテロップを入れて監督からのイメージをメモとして入れていましたね」

山田 「音楽としては、セリフとか絵の動きにどう熱量を合わせていくか。その最終的な調整を作家と詰めて、OKとなったら楽器のレコーディングに入るという段取りをずっと繰り返していました」

また、企画の初期段階からこの作品に深く関わり、これまでリリースされたスタァライト九九組の楽曲やレヴュー曲全般の作詞を手がけた作詞家・中村彼方によると、レヴュー曲の作詞には大まかに分けて二つのやり方があるとのこと。

中村 「1話の『世界を灰にするまで』は、歌っている二人の心情に合わせた歌詞でもありますが、どちらかというと舞台装置に合わせて歌詞を書きました。“流星を象った矢が 追いかけて行くわ”という歌詞は、まさに純那の放った矢が流星の中を縫っていく感じを意識しています。2話の『The Star Knows』はセリフに合わせたところが大きく、特に後半の華恋と純那のやりとりは本編のセリフを汲む感じで書きましたね」

楽曲と歌詞、そして映像がぴったりとマッチするように、細心の注意を払って作られたレヴュー曲たち。しかし、その代償というべきか。ある葛藤が音楽チームを悩ませた。

野島 「普通の楽曲はAメロ→Bメロ→サビ(Cメロ)で、それが繰り返されてDメロ→ラストサビの構成が多いじゃないですか。でも、1話のレヴュー曲であえてABCDをばらしたんですよね。そこは作家さんにも苦労させてしまったのかなと」

山田 「野島さんも僕も普段はポップス的な仕事が多いですし、こういう作り方をしていいのかというのは悩みましたね。しかもレヴュー曲はCDになることが決まっていたので、はたしてこれを商品にしていいのか?ということでも葛藤がありました」

野島 「でも、とりあえずそのまま入れてみました。音だけ聴いているとボーカルがなかなか出てこなかったりするので、レイザーラモンRGさんの“なかなか言わないあるある”みたいなんですけど(笑)。フィルムがあってこそのレヴュー曲ですし、逆にフィルムを見た後にCDで楽曲だけを聴くと、それはそれで楽しんでいただけるのではないかと思います」

確かに、いわゆる普通の曲ではないかもしれないが、通常と違う構成だからこそ伝わってくるキャラクターの心情には我々の心を強く打つものがある。さらに各話の内容に合わせた多様な作風も、レヴュー曲を語るうえでは外せない要素だろう。第1話の「世界を灰にするまで」は挨拶代わりとばかりに壮大なオーケストラアレンジを取り入れ、第3話の「誇りと驕り」はまさに宝塚のトップスタァのように、天堂真矢役の富田真帆が持ち前の歌唱力で高らかに歌い上げる。露崎まひるをフィーチャーした第5話のレヴュー曲は、画面が野球ふうの演出になっていたことに合わせての「恋の魔球」。まひるから華恋への一途な想いを、野球用語を絡めて描く、全話中でも屈指の異色作となった。石動双葉&花柳香子のコンビによる第6話の「花咲か唄」は和風EDM。野島氏によると、乃木坂46の楽曲にあるような美しさやアンチテーゼ感を意識した部分があるという。

中盤で物語の重大な鍵を握っていたことが明かされた大場ななにスポットを当てた第8話の「RE:CREATE」と第9話の「星々の絆」は、聴く者の涙を誘わずにはいられない感動曲。聴く者どころか、「RE:CREATE」のレコーディング中に神楽ひかり役・三森すずこの歌を聴いて、大場なな役の小泉萌香……つまり歌っている本人が涙したというエピソードも。そして終盤の第10話、第11話ではスタァライト九九組の1stシングル『プロローグ -Star Divine-』に収録された「Star Divine」「舞台少女心得」がそれぞれ「-Star Divine- フィナーレ」「舞台少女心得 幕間」となって“再生産”。舞台創造科にとって、これ以上はないほどのうれしいサプライズとなった。

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