Interview

“劇団鹿殺し”の丸尾丸一郎&渡部豪太らが“伝説になれるさ”とあなたを勇気づけてくれる。舞台『さよなら鹿ハウス』まもなく開幕

“劇団鹿殺し”の丸尾丸一郎&渡部豪太らが“伝説になれるさ”とあなたを勇気づけてくれる。舞台『さよなら鹿ハウス』まもなく開幕

10月12日に発売されたばかりの“劇団鹿殺し”代表の丸尾丸一郎による自伝的小説『さよなら鹿ハウス』を原作とした同名の舞台が、11月8日(木)から、座・高円寺1にて上演される。
本作は、関西で旗揚げした“劇団鹿”のメンバー7人が、ハイエース“鹿カー”に乗り込み、関東の東久留米に拠点“鹿ハウス”を構え、東京で一旗あげる野望に燃え、時には笑い、涙し、喧嘩して、それでも路上パフォーマンスに明け暮れた2年間の“青春”を真空パッケージした胸熱ストーリー。
その舞台で、作・演出を務める丸尾丸一郎と彼をモチーフにした角田角一郎 役の渡部豪太にインタビュー。
本作にかける意気込み、原作のこと、劇団のこと、役者のこと、まさに本作同様に、“胸熱”な話を聞くことができた。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 岩田えり


劇団を続けたからこそ生まれた人間の心の絆

丸尾さんの小説『さよなら鹿ハウス』を読ませていただきました。私小説的であり、これまでの“劇団鹿殺し”の劇団史としても読むことができて面白かったです。そもそもどういうきっかけでこの小説を書き始めたのでしょうか。

丸尾丸一郎

丸尾丸一郎 知り合いの編集者の方から「小説を書いてみないか」とお誘いをいただいたんです。とても光栄で、僕の人生にとって最も濃かった2年間、2005年から2007年の路上パフォーマンスをひたすらしていた日々と、仲間たちの人生を書きたいとすぐに思い立ちました。というのも、この2年間は、これまでの僕のオリジナリティがすべて凝縮されているとても濃い“青春”だったから。その編集者から、誰かに渡す手紙のように書いて欲しいと言われたので、あの思い出深き日々をありのまま素直に書きました。結果として読者の方が、劇団史のように感じていただけるところもありますが、劇団を続けたからこそ生まれた人間の心の“絆”を中心に書いています。

渡部さんはお読みになられていかがでしたでしょうか。

渡部豪太

渡部豪太 まず文体が優しくて素敵でした。とても楽しく読ませていただいて、笑って、心が熱くなって、人との出会いや別れといった人間模様も丁寧に描かれた作品で、だからこそ、今の“劇団鹿殺し”が出来上がったのだと理解することができましたね。

これは7人の役者が、路上パフォーマンスをして生活することを主に描かれていますが、役者として共感するところはありましたか。

渡部 パフォーマーとして活躍していた時期のお話なので、役者として人前に立つという、役者の前段階の心構えを教えてもらったような気がします。例えば、役者の僕でも、大宮や新宿の駅前でパフォーマンスをするのはとてもハードルが高いです(笑)。

丸尾 今思うとよくやってたな(笑)。舞台が用意されていないから、勇気がいるし、大変でしたね。

渡部豪太は優しい淡い色のオーラを出す役者

そして、今作の舞台は、キャスティングが面白くて。まず、渡部さんが主役の角田角一郎を演じることが事前に発表されました。渡部さんをキャスティングした理由を聞かせてください。

丸尾 渡部くんは僕と天然パーマ繋がりで(笑)。それは冗談ですが、映像と舞台を拝見して、どちらもブレない演技をしていて感心しました。しかも、渡部くんの纏っているオーラが、白に薄いピンクの優しい淡い色の僕好みの役者だったんです(笑)。

(笑)原作から劇化にされる流れは自然と出来上がっていたのでしょうか。

丸尾 まず劇場の“座・高円寺”の年間の上演作品のいくつかは、日本劇作家協会が毎年公募をかけて決めるんです。その時に、今書いている小説を自分のフィールドである“演劇”にぶつけたら、どういう化学反応が起きるのか知りたいと思い、この作品を応募しました。それから、単純に自分の舞台でこの物語を上演したら、お客様はどういう反応をされるのだろうと興味がありましたね。

どのような演出プランになりますか。

丸尾 僕は舞台美術家になりたくて演劇を始めたので、美術から考えるようにしています。まず古い民家に7人が喋っている絵を思い浮かべました。椅子を7つ並べて、それから、僕らが使っていた“鹿カー”というハイエースや、東久留米で共同生活していた“鹿ハウス”に見立てた四角いオブジェがたくさん置かれているイメージでした。ただ、今作の舞台美術の青木拓也さんと話しているうちに、今回は難しいと思いますと言われたので、とにかく7人がゴミ屋敷のような空間で喋っている絵を思い描いていますね。まだまだこれから詰めていくのですが、ただ、転換もせずに進行して行こうと考えていて。ありがたいことですが、最近は商業的な舞台を作ることも増えて、すごくわかりやすい作品を求められるケースが多かったので、もう少し人の感覚に訴えかける演出にしたいと思っています。

角田は劇団という生き物の細胞の1個

渡部さんが演じる角田角一郎はどのような役だと思いますか。

渡部 丸尾さんがモチーフになっているとはいえ、丸尾さんと角田は全く別の人間だと思いますし、僕の体というフィルターを通して表現するので、僕なりの角田を演じると思います。角田は劇団という生き物の細胞の1個ですが、劇団が欲していた角田と、角田角一郎の個人の考え方はズレることもあると思っています。丸尾さんは、舞台の上ではあんなに弾けているけれど、家では体育座りをする内向的な人かもしれないし、演じている人と、その人は必ず違うと思うので、いろいろな面をお見せしたいですね。

渡部さん以外のキャストは全てオーディションというとても面白い試みだと思いました。

丸尾 シンプルに新しい方々とやりたかった。なので、今作に関しては、自分が知っているキャストをキャスティングするという考えは採用していないんです。そもそも違う劇団を作って公演するぐらいの心積りでした。もともと“劇団鹿殺し”が、東久留米時代に、公民館を借りようとしたら、“殺し”という言葉が子供たちに悪影響を及ぼすという理由で借りられなくて、“演劇サークルばんび”と改名して、それでも活動していた時のように熱い気持ちで役者たちと舞台を作りたかったんです(笑)。

(笑)。私も何作か拝見しているのですが、“劇団鹿殺し”といえば衣服さえも脱いで人間の素になっていくイメージがあります。

丸尾 今回はお客様にとってアウトな部分を描こうと思っていなくて、路上パフォーマンスのシーンは断片として出てくるだけで、メインは“鹿ハウス”での日々を、2018年に40歳になった角田が過去を見直しているという構成になっていると思いますよ。

ちなみに、主宰の菜月チョビさんをモチーフにした、今作でもキーパーソンになるチョビンさんがWキャストだということも面白いキャスティングだと思います。

丸尾 チョビン役と、今作でも音楽のオレノグラフィティをモチーフにしたオレノハーモニー役は劇団員です。彼らから履歴書を出されて、この舞台のオーディションを受けたいですと聞きました。劇団員含め、いろいろな方の意見を聞いて、全く知らない人より、彼らはチョビやオレノのことを近くで知っているので、劇団員が演じたほうがお客様は納得できる気がします。チョビン役の女優が2人なのは、彼女たちは、実力がほぼ互角だったので、どうやってチョビン役を演じるのか競わせてみたかったんです。

渡部さんの周りを囲むようにキャストが決まっていく心境はいかがでしょうか。

渡部 実は、今回の座組みは、同い年の方はいらっしゃるのですが、僕が最年長になるんです。そういった現場は初めてなので、緊張しています。先輩との接し方はわかりますが、年下との付き合いは初めてなので。

となると、座長としての心構えは変わったりしますか。

渡部 引っ張ることはしないですね。原作でもみんな揃って居酒屋で飲むシーンがたくさんありますが、「みんなでお酒を飲みにいく?」と声をかけることぐらいかな(笑)。やはり、大きさの違いはあるけれど、あくまで角田も劇団の歯車の1人なので、心はおごらないように、みんなの意見を聞いていきたいです。

丸尾丸一郎の演劇をしていて最も嫌な事とは?

今回、丸尾さんが、役者・渡部さんから引っ張り出したい部分はありますか。

丸尾 僕の関わる作品であれば、少しでも渡部くんの新しい面を出せたら正解だと思っています。どんなキャストでも、出演したことを絶対に損だと思わせたくないんです。僕の舞台が、例えば、出来のよくない作品で、渡部くんの評価も下がってしまうのは演劇をしていて最も嫌な事なので、誰もが得をして終わりたいですね。

渡部 今、初めて聞いて感動しました。舞台はいろんな人の想いが絡み合って成立していると改めて思います。今作で僕の知らない部分が出てきても、きっと丸尾さんに委ねれば安心だから、思いっきり引き出してもらいたいな。

渡部さんは、映画であれば監督、舞台であれば演出家への接し方はどうしているのでしょうか。

渡部 あまり変わりはなくて、とにかく人と接することは緊張するので、どうやって自分のことを的確に伝えるか、いつも試行錯誤しています。

丸尾 渡部くんって初舞台は何歳の時?

渡部 初舞台は21歳です。僕は、プロデュース公演しか出演していないのですが、舞台の制作過程を側で見ているのは楽しかったです。何より舞台を作っている感覚を味わえる“稽古”が好きですね。

丸尾 わかる、わかる。映像と舞台の演技は違うとか、舞台に立つ感覚の違和感はあった?

渡部 それはなかったです。

丸尾 それだったら大丈夫。劇団公演でもやっていけるよ。

それでは、ここまでの脚本の手応えはどうですか。

丸尾 僕はとてもブレやすくて、リーダーシップをとって作っていくタイプではないので、「この演技はどう? この台詞はどっちがいい?」と素直にキャストに聞きます。通し稽古をしたら、車座に座って、自分の感想と、稽古を観た感想をみんなに言ってもらう。もちろん、僕から言いますし、もっとよくするためには、どうすればいいんだろうと話し合います。ただ、それができたからといって、全部が正しい方向に進むわけではないので、キャストといまの現状と課題を共有して、それを直していくスタンスをとります。なので、今作も全員に意見を聞いていきますよ。

渡部さんは脚本とどのように接していきますか。

渡部 僕は脚本に書かれているままのことを話すように心がけています。自分で悶々と台詞を覚えていくこと、初見で読むこと、実際に共演者と会話をすること、この3つはまったく違います。脚本の同じ文体に立ち向かっているのに、得るものが違うし、感想も違えば、どれもうまくいかないことがある。ですので、僕1人で台詞を言っている雰囲気を出さないようにするのが大前提で、相手のことを想像して、相手に集中して、相手の息を飲んで、自分の息を吐いて、また相手の息を飲む。相手の呼吸に合わせることが大切になってきます。

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