Review

【放送は終了したけど…】今からでも観るべきおすすめ&隠れた良作アニメ3選(2018年7~9月編)

【放送は終了したけど…】今からでも観るべきおすすめ&隠れた良作アニメ3選(2018年7~9月編)

今年7月クールのTVアニメ、50作以上にのぼる中から、本誌ライターが「ぜひ観ておいて欲しい!」と願う個性派3作をピックアップ。正直なところ、誰もが推す超大作や重厚な物語を描く大作“覇権アニメ”自体も少なかった今期だが、目のつけどころにハッとさせられた良作が多かったのは、2018夏アニメの特徴だったかも? オンエアを見逃した方は、ぜひDVDやBlu-ray、サブスクリプションサービスで!

文 / 阿部美香


圧巻の“シュールな顔芸”はこだわりの作画と熱演あってこそ!

『あそびあそばせ』(全12話)

とある女子中学校で、生徒会非公認の「あそ研(遊び人研究会)」を結成した3人娘と、個性的な学校の仲間が巻き起こす、ぶっ飛んだ日常を描いた『あそびあそばせ』は、見た目は繊細な癒やし系美少女作品、中身はアグレッシブでシュールなパワフルギャグ作品だ。原作コミックス発刊時から“表紙詐欺”だと話題を呼んでいた本作は、アニメになっても“らしさ”を加速し、ハイテンションな演出とハイセンスな作画で1クールを駆け抜けた。そこにまず拍手を贈りたい。

なんといっても見どころが、魅力的なキャラクター達だ。誰が観てもルックスはかわいらしさ満点の主役3人なのだが、華子(CV:木野日菜)は、執事が世話をしてくれる金持ちで文武両道なくせに、常軌を逸したおバカ(しかもとてつもない貧乳だ!)だし、見た目は完全にネイティブ美少女のオリヴィア(CV:長江里加)は、英語が話せないことを隠しているおバカ(しかも腋の臭いが強烈だ!)だし、恥ずかしがり屋で一見優等生な巨乳メガネ美少女の香純(CV:小原好美)は、壊滅的に英語ができず、怒るととんでもないことを口にする(しかもBL小説を書いている!)。周囲の人々も、どいつもこいつも“残念”で“ヤバイ”ヤツばかりなのに、絵柄が最高級に上品でキュートだという、そのギャップが堪らない。普通の会話劇としても、すべてが思いも寄らない斜め上へと進んでいくのが堪らない。

そんなキャラクター達のヤバさを増幅するのが、突然襲い来るインパクト大の“顔芸”だ。突然白目を剥いたりするのは当たり前、楳図かずおばりのホラータッチあり、顔の皺や皮膚が緩みきったリアル顔あり、通常の絵柄もテイストもすべて無視した急激な展開は、“顔芸”なんて言葉ではもはや足りない。“作画の暴力”といっていい。そんなクレイジーなビジュアルの魅力を、より効果的に高めているのが、こだわりの作画だ。

第1話を観てまず驚いたのが、キャラクターの輪郭を形成している主線が、単純な1本線ではなく、ペンのかすれ具合までも表されたデリケートな描き方をされていたことだ。どこまでも清楚で淡いパステルテイストの色彩と相まって、見とれてしまうほど上品で繊細。だが、その繊細な作画があるからこそ、描き方も塗り方も一気に豹変する“変顔”が映える。きっと、技術的にも相当な苦労があったのではないだろうか。

メインキャスト3人の、ぶっ飛んだ声の演技もお見事だった。第1話の先行上映会で香純役の小原好美は、「後半は掛け合いじゃなく、殴り合いみたいな感じ」と語っていたそうだが、まさにそれ。聞くところによれば、本作の声の収録はアフレコではなく、プレスコ(音声を先に収録し、それに合わせて映像を作る手法)だったそう。新人声優だからこそなりふり構わず演技できたであろう、圧巻の緩急自在のハイテンション芝居は、演じ手の自由度の高いプレスコだからこそ実現できたものなのかも知れない。

キュートなOP主題歌「スリピス」が流れる、美少女たちの可愛らしい姿が至福なオープニングから一転、クレイジーな本編を終えると、ジャギジャギの映像とともに主人公声優3人がデスボイスを叫び倒すエクストリームメタルなED主題歌「インキャインパルス」が流れるという、遊び倒した作りも秀逸。ちなみに、オープニング映像で咲き乱れている黄色い百合の花言葉は「偽り」「陽気」なのだとか。ちゃんと“表紙詐欺”を踏襲しているところも素晴らしい。とてもあっけなく通常運転でフツーに終わった最終話も、新しい日常系アニメのカタチなのかも知れない。とにかくかわいく、いろんな意味でとにかくヤバイ『あそびあそばせ』、多くの方に観ていただきたいです!

アニメ『あそびあそばせ』オフィシャルサイト

Amazonプライム・ビデオで『あそびあそばせ』を観る

dアニメストアで『あそびあそばせ』を観る

“ゆるふわ”なのに“ガチ”な成長ドラマが心を捉える

『ヤマノススメ サードシーズン』(全13話)

インドアで高所恐怖症の雪村あおい(CV:井口裕香)が、幼なじみ・倉上ひなた(CV:阿澄佳奈)に振り回されながら登山の楽しさに目覚めていく『ヤマノススメ』シリーズは“登山初心者ノウハウ”がメインの5分アニメから、登山仲間との友情を描く15分アニメとグレードアップし、丸4年振りに復活したサードシーズンではついにフル尺の30分アニメへ。本シリーズの根強い人気が感じられる正統進化を果たした。

最大の魅力は、過酷な高みを目指す熱血根性物語とは一線を画す、心温まる登山系ゆるふわ日常アニメとしての面白さだ。ただし、同じゆるふわなアウトドア趣味を描いてヒットした『ゆるキャン△』とは、似て非なる要素がひとつある。それは“目標”のある/なしだ。『ゆるキャン△』の女の子たちは、キャンプでご飯を食べ、お喋りをしてまったりしたり、素敵な景色を眺めたりと、“キャンプする”こと自体を味わう。だからこそ観ているほうも癒されるのだが、『ヤマノススメ』のあおいちゃんにとっての登山には、(セカンドシーズンで)一度挑戦したものの、高山病にかかりリタイアしてしまった富士山登頂という、大きな目標がある。

だから、この物語で描かれるゆるふわな日常にも、ただの“まったり”に終わらない、聖地を目指すための精神的なモチベーションを高める描写が潜められている。(ガチなギアを揃えるとか、登山を成功させる体力をつけるためにリュックにペットボトルを余計に詰め込んで努力するとか、登山地を上級者向けに至るセオリーに則って段階的にステップアップしていくとかね!) そんな人間性とスキルの“成長”が人間ドラマを生み、“物語”をしっかりと牽引していっている面白さが、単なる日常系アニメとは異なる魅力だ。

音楽で例えるなら、『ゆるキャン△』はいろんなアーティストが集う“音楽フェスに参加している”ことこそが楽しいフジロックフェスティバル(アウトドアも満喫できるしね!)。『ヤマノススメ』は武道館のステージに立つことに憧れ、ライブハウスからステップアップする過程を追うことがファンも楽しい、ワンマンライブのようなものか。そんな成長のドラマを、押しつけがましくなく見せてくれるから、心地がいい。とくにサードシーズンは、登山を通じて心を通わせてきた親友・あおいとひなたの“女の子らしい想いのすれ違い”にも重点が置かれているのでハラハラするし、その行方に目が離せない。最終回、あおいとひなたが和解?して、(視聴者には聞こえない)互いの秘密を耳打ちしあうシーン、何を話していたのか気になって仕方ないよ!

圧倒的に魅力的なサビが脳内を駆け回るOPテーマ「地平線ストライド」も至福(さすがTom-H@ckさん!)。前シーズンよりも優しさを増したキャラクターデザインと、実在の美しい山々の景色も、この作品の尊さを増強している。気持ちよく終わってくれたサードシーズンではあるが、アニメでは聖地・富士登山へのリベンジはまだ果たされていない。最終回ラストに出てきた「See you again!!」の言葉を信じて、続編を待ち望む!

アニメ『ヤマノススメ サードシーズン』オフィシャルサイト

dアニメストアで『ヤマノススメ サードシーズン』を観る

原作をリアルガチに再現した大胆不敵な演出にハマる!

『Back Street Girls -ゴクドルズ-』(全10話)

やらかしちまった若き極道3人が、ケジメをつけるため、親分に命令されたのはタイでの性転換手術と全身整形。美少女に変身した彼らは苦しい修行の末、美少女地下アイドルグループ「ゴクドルズ」としてデビューし、なんやかんやでブレイクしてしまう!……という、破天荒な「週刊ヤングマガジン」連載マンガが原作。設定からして、完全に“出オチ”感がハンパない本作は、「誰にでもオススメできる」作品とはけっして言えない。実際、昭和感あふれる劇画タッチの絵柄や、バンバン登場するストレートな下ネタを敬遠する人も多いだろう。かくいう筆者も、劇画調は正直、苦手なクチで、斬新な設定に惹かれて観始めたのだが……すっかり病みつきになりましたよ。いろんなことが“一周回って”面白かった! というのが正直な感想だ。

オンエア中から、マニアの間では近来まれに見る“画が動かないアニメ”として賛否あった『Back Street Girls -ゴクドルズ-』だが、その理由はただひとつ、原作にとことん寄り添う手法をあえてチョイスしたことにある。“劇画調なのにアイドル物”という困難を、“劇画タッチそのままを再現する”ことでクリアした本作の表現。なんか絵面に既視感あるなぁ……と思ったら、アレでしたよ。近代アニメ演出を変えたレジェンド・出崎統が生み出した“出崎演出”(勢いのある止め絵、画面分割、透過光表現を駆使し、人物の内面表現を突き詰めた)じゃないですか!? 制作陣がどこまで意識していたかは分からないが、“出崎演出”オマージュによるハードボイルドな昭和感も、突き抜けたギャグの軽妙さによってライトになり、とても馬鹿馬鹿しく観られて新鮮だ。同時に、1話の中に短いエピソードを畳みかけていく構成も、“あえて動かさないアニメ”を飽きさせない、とても良い工夫だと思う。

さらに特筆すべきは、キャストたちの声の演技の頑張りだ。アイドル姿の女の子たちの声を、貫井柚佳、前田佳織里、赤尾ひかるという新人が務め、元極道らしいやさぐれた芝居を披露してくれたのも楽しいが、時折もれる男極道たちの心の声を小野大輔、日野聡、興津和幸といった演技派男性声優が担当し、豪快なツッコミと熱演で彩っているのがじつに痛快。男女の極道セリフのシームレスな繋がりが、さらに物語のテンポを良くしている。同じキャラの性別変化を、男女声優が演じ分けた『魔法少女 俺』での荒技を経験済みゆえ、驚くほどのインパクトはなかったものの、逆に、そこに違和感を全く感じず、純粋に面白く本作の世界に入り込めたのは、演出側と声優の巧みさの証明ではないだろうか。

ぶっちゃけ、いろんなアニメを見続けていると、複雑でヘヴィーな作品に疲れたとき、こういう「何も考えずにクスクス笑える」作品はとてもありがたい。男性におすすめしたいのはもちろん、見た目も登場人物のクセはものすごく強いが、アイドル稼業と「かわいさ」を強要される女子の本音が痛快に語られる本作は、女性にもぜひおすすめしたい。

アニメ『Back Street Girls -ゴクドルズ-』オフィシャルサイト

Netflixで『Back Street Girls -ゴクドルズ-』を観る