Interview

SHERBETS、結成20周年のベストアルバム。浅井健一がバンドの歴史を紐解く──『The Very Best of SHERBETS「8色目の虹」』

SHERBETS、結成20周年のベストアルバム。浅井健一がバンドの歴史を紐解く──『The Very Best of SHERBETS「8色目の虹」』

結成20周年を迎えたSHERBETSから、ベストアルバム『The Very Best of SHERBETS「8色目の虹」』が届けられた。全キャリアの中から名曲を厳選し、新曲「Yesterday」を加えた“The Greatest 15 TRACKS”(通常盤)、そして、初期・中期・後期の楽曲を3ディスクに収め(DISC3には新曲「愛が起きてる」を収録)、さらに“BONUS DVD”として秘蔵映像満載の「SHERBETS 20th Anniversary オフィシャルドキュメンタリー」を収録した“The Greatest 42 TRACKS+SPECIAL MOVIE”(初回生産限定盤)の2パターンでリリースされる。
本作には、鋭利で詩的なロックンロールを軸にした、このバンドの20年の軌跡がしっかりと刻み込まれている──。今回はバンドの中心である浅井健一(vocal, guitar)にインタビュー。このベストアルバムをフックにして、SHERBETSの20年について聞いた。

取材・文 / 森朋之

SHERBETSにはまだ奇跡を起こせる力がある

20周年を記念したベストアルバム『The Very Best of SHERBETS「8色目の虹」』がリリースされます。これまでのキャリアの中で生み出された名曲を改めて体感できるアイテムですが、浅井さんご自身は普段、過去の曲を聴き返す機会はありますか?

あんまりないね。もうリスナーには戻れなくなってる、音楽を作ることばっかりやっていて、いつも新しい曲のことを考えてるから。ごくたまに、ベースの仲田先輩(仲田憲市)とかと飲んで、誰かの家に行ったときに昔の曲を聴いて盛り上がることはあるけど。自分たちがやってきたことを振り返るのはそういう場面くらいだけど、「カッコいいな」と思うよ。メンバーとも「最高だな」って自画自賛して盛り上がったりね。まあ、一年に一回くらいだけど、そういうことは。

SHERBETSは1998年に本格的に始動。当時、どんな音楽的なビジョンがあったんですか?

当時も今もそういうものはないんだわ、一貫して。俺が曲をスタジオに持っていって、4人で音を合わせていくなかで曲が出来上がるんだよね。偶然辿り着いた音楽というのかな。「こういう曲にしよう」っていう頭脳的なことは一回もやったことがない。

その瞬間、その場所で音を重ねることで、曲が生まれる。

うん。そこで独特の世界観が出来上がるし、「なんかいいな」って思えるので。発想を狭めないでフルオープンでやりたいっていうのもあるし。それは今も同じかな。俺は“DISC3”に入ってる最近の曲が好きなんだけど、SHERBETSにはまだ奇跡を起こせる力があるんだよね。ただ、『FREE』(2011年発表)というアルバムを出した頃は「もう奇跡が起こせなくなったんじゃないか」と思ってたかな。それが解散騒動(『FREE』リリース直前に突如解散を発表、その直後に撤回)に繋がったんだけど。

そのときはバンドのマジックを信じられなくなっていた?

そうだと思う。新しい曲を作るためにスタジオに入っても、なかなかカッコよくならなくて。2、3回そういうことが続いたときに「もうダメなのかな」という気持ちになってしまったんだよね。でも、あとになって冷静に聴いてみたら、そのときの音源もカッコよかったんだよ。たぶん、俺自身が焦ってたんだろうね。

なるほど。SHERBETSは活動休止と再会を何度か繰り返していて。そのたびに音楽性が深まっている印象もあります。

たまにSHERBETSを離れたくなる時期があるんだわ。その間はソロやほかのバンドをやって、SHERBETSとは違う世界に入っていくわけだけど、それはほかのメンバーも同じで。で、しばらくすると「SHERBETSで音楽を作りたい」と思って、みんなで集まって。バンドから離れる時期があったから、逆にここまで続いたっていうのが、最近のもっぱらの見方ですね。

光や希望がない歌なんて誰も聴きたくない。俺も歌いたくない

ベストアルバムに収録されている新曲からも、今のSHERBETSのモチベーションの高さが伝わってきました。まず通常盤には「Yesterday」を収録。美しいサイケデリアが感じられる、壮大な楽曲ですね。

「Yesterday」の原曲はだいぶ前からあったんだわ。今回、スタジオで久々にやってみたらカッコよくなったから、収録することにしました。

形にならずに残っている曲も結構あるんですか?

あるよ。リフだけだったら、何百もある。それが曲になるかどうかは……まあ、タイミングだよね。

そして初回生産限定盤には「愛が起きてる」が収録されていますが、こちらはダンサブルなナンバーに仕上がっていて。

作っている途中で、踊れるような曲にしようと思って。みんなが安心して飛び跳ねたり、歌えるような曲にしたかったんだよね。「これでいいんだ! 今を楽しもう」と思えるような。クラブとかでもかけて欲しいね。

ベストアルバムを聴いていても感じたのですが、キャリアを重ねるにつれて、優しい雰囲気の曲が増えてませんか?

うん、それはあると思う。

初期の頃は怒りや憤りが強かった?

どうだろう? 「38Special」はそうかもしれないけど、怒って音楽をやるのは違う気がしてるから、自分の中で。最初のほうは怒ってるというより、何も気にせず、言いたいことを言っていた感じかな。あと、映画でもなんでもそうなんだけど、作品の中には光がないとダメだと思ったんだよね。そのことに気づいてからは、曲の中に光を入れることを意識し始めて。光や希望がない歌なんて誰も聴きたくないだろうし、俺も歌いたくないから。たまにさ、最初から最後までずっとバッドな状態の映画があるでしょう。そういうものにお金を払う価値があるんだろうか?って思うんだよね。もしかしたら「だからこそ日常を大切にしよう」というテーマがあるのかもしれないけど。

そういう変化が訪れたのは、何かきっかけがあったんですか?

覚えてないんだわ、それは。普通に生きていて、あるときふと気づいたんじゃないかな。変化ということで言えば、最近はなるべく(一曲)3分45秒以内で表現しようと思ってる。その中でやりたいことをやり切るのが大事だし、そういう曲は「もう一回聴きたい」と思ってもらえるんじゃないかって。これも何年か前から意識してますね。

曲は最近のほうが好き。たぶん、心情が今の自分に近い

ライヴに対しても何か変化はありますか?

あまりないかな。KILLS(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)はこの2〜3年でバリバリ変わったけど、SHERBETSはずっと同じ雰囲気なので。最初から気持ちいいグルーヴが出せてたからね。曲は最近のほうが好きだけど、俺は。たぶん、心情が今の自分に近いっていうのもあるし、『SIBERIA』(1999年発表)あたりの曲はちょっと長い(笑)。もちろん長くあるべき曲はそうでなくちゃいけないんだけど。

初回生産限定盤のDVDには、ドキュメンタリー映像を収録。これも貴重ですね。

すごくカッコいいし、観とって面白かった。「いろんなことやってきたな」と思うし、懐かしい映像もあって。

過去の映像を楽しめるのはいいですね。「このときは大変だった」みたいなことではなくて。

だってイヤなことは思い出したくないから(笑)。それはみんなも同じじゃない? ずっと前に録ったビデオとか観ると、面白いでしょ?

あまり観る機会がないので、なんとも……。

子供の運動会のビデオとかも、撮ったはいいけど、観たことないしな。それにああいうときって、親が一生懸命に子供を撮ってるでしょ? ということは、画面越しにしか観てないってことだよね。目の前で、一生に一度しか起きないことが起きているのに。我が子が必死な顔して走ってく姿を。もったいない。本当は目でしっかり見て、脳に記憶を刻んだほうがいいに決まってる。

たしかに。海外アーティストのライヴに行くと、お客さんがスマホで撮ってたりしますよね。

せっかく目の前で演奏してるのに、画面を通して観てるってことか。面白い生き物だよね、人間は。テクノロジーに翻弄されて、一番大事なことを見失いがちなんだわ。

“反応し合える”。誰かと一緒にやることで、思ってもみない曲が出来る

浅井さんにとって、バンドの醍醐味とはなんですか?

“反応し合える”ということだよね。SHERBETSはメンバー4人で反応し合いながら曲を作っているし、KILLSの場合は3人で反応し合って。ソロのときもミュージシャンと一緒にやってるから、やっぱり反応があるんだよね。すごく才能がある人だったら、ひとりでやってもカッコいいものが出来るんだろうけど、自分の場合はそこまでの力はないと思っていて。誰かと一緒にやることで、思ってもみない曲が出来るのも楽しいしね。だから、一番大切なのは相性なんだわ。

人柄も大事ですよね。

もちろん。演奏力とかセンス、どんな音楽を聴いてきたかも大事だけど、相性が合わないと音楽なんて一緒に作れないから。音っていうのが、その人の人間性が鳴ってるようなもんだから。荒んだ人が出すと音も荒んでると思うよ。

浅井さんは30年近いキャリアを通し、ずっと創作を続けていますが、そのモチベーションはどこから生まれてくるんですか?

ほかにやることもないしね(笑)。SHERBETSもそうだけど、みんなとスタジオに入って、集中して曲を作ることがすごく楽しいんだわ。カッコいい曲が出来ること自体も嬉しいし、しかもそれをみんなに聴いてもらえるわけだから。世の中にはいろいろな仕事があって、みんな誇りを持ってやってるだろうけど、俺にとって音楽を作ることは最も楽しいことのひとつ。最近は「たまには休もうかな」と思うこともあるけど(笑)。

SHERBETSの2年半ぶりのツアーも楽しみです。今回はオールタイムベスト的なライヴになりそうですね。

うん。俺もすごく楽しみ。みんなで仲良く、最後まで最高のツアーにしたいね。

20th Anniversary Tour 2018『8⾊⽬の虹』

10月27日(土)福岡 DRUM Be-1
10月28日(日)広島 セカンド・クラッチ
11月02日(金)長野 CLUB JUNK BOX
11月04日(日)仙台 MA.CA.NA
11月08日(木)大阪 Music Club JANUS
11月09日(金)名古屋 JAMMIN’
11月11日(日)札幌 Sound Lab mole
11月14日(水)東京 TSUTAYA O-EAST

SHERBETS(シャーベッツ)

浅井健一(vocal, guitar)、福士久美子(keyboard, chorus)、仲田憲市(bass)、外村公敏(drums)。
1998年に結成。これまで10枚のオリジナルアルバムを発表している。

オフィシャルサイト