Interview

生き物が絶滅する確率は99.9%!! 人間にとっても他人事じゃない! 超話題『わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』

生き物が絶滅する確率は99.9%!! 人間にとっても他人事じゃない! 超話題『わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』

今、世代を超えて多くの話題を集めている『わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』。油断、やりすぎ、不器用、不運……、かつて地球上に存在し、今は滅んでしまった生き物たちのおかしくも切実な絶滅理由をひもときながら、生物の進化の歴史を学べる本だ。

本書によると、今まで地球にうまれた生き物のうち、99.9%の種は絶滅しており、「生き残ることの方が例外」で、人間にも「絶滅の魔の手がせまっているかもしれない」という。

そんな学術的に語ろうとすればとことん難しくなるテーマだが、著者である動物ライターの丸山貴史によって面白おかしく紹介されている。絵を眺めているだけでも楽しい。そして読むほどに生き物への愛着が湧き、知るほどに悠久の歴史に思いを馳せてしまう、ある意味ロマンの一冊でもある。

取材・文 / 斉藤ユカ
撮影 / エンタメステーション編集部

数の少ない大型哺乳類は環境の変化にとても弱い。ほんの些細なことで滅びてしまう。

大人から子供まで、本当に大人気ですね。

本来のターゲットは子供なんですよ。小学校5年生の男の子を想定して作っています。ただ、学校で学んできたような内容ではないので、大人の方でも面白味を感じてもらえているのかな、と。なかには「生き方を学んだ」なんておっしゃってくれる方もいて、そこは意外だったんですけどね。

いえいえ、私も「ネアンデルタール人」の“想像力が足りなくて絶滅”というのには生きるヒントのようなものを感じました。力もあって脳も大きいのに、小さな集団で肉や食料だけを追いもとめたネアンデルタール人は、神を信じて結束したヒトに数の力で負けてしまった。

それはこの本の中でもちょっと異色ですね。歴史学者のハラリが書いたベストセラー『サピエンス全史』で有名になった説なんです。

絶滅した生物のキャラクター設定もそれぞれ個性的で面白いですね。“食事がのろくて絶滅 ”した「アースロプレウラ」というムカデみたいな多足類は、「そのうちみんなであたしのこと食べはじめて。あ、そうなんだーって、さすがにちょっとヘコんだ」と語りますよね。ギャルか、っていう(笑)。

キャラ設定、結果的には良かったですね。編集の方の強い希望だったんです。絶滅した生き物はこの世にいないので、感情移入するためにはキャラクターが立っていたほうがいいんじゃないか、と。僕としては、自分の体が食べられるのをそんな風に言うのはどうなのかと葛藤もあったんですが、概ね好意的に受け止めてもらえているようです。実は内容的にも、ちょっと砕けすぎではないかと思う所が少なくありませんでした。でも、監修の今泉忠明先生に相談したら「あ、いいですよ」みたいな(笑)。いずれにせよ、入り口は面白いほうが手にとってもらいやすいでしょうしね。

©監修:今泉忠明 著:丸山貴史/ダイヤモンド社

本書を読んで、大型の生き物は絶滅しやすいのかなと思いました。

目立つからというのもあるんですけど、大きな生き物は食物連鎖の上のほうにいるので数が少ないんですよ。昆虫なんかは100万種とか、下手すりゃ1000万種いるんじゃないかと言われているんですが、哺乳類なんかせいぜい5000種。種数が元々少ないんですよね。しかも、1種だけで何兆匹もいる昆虫がいる一方で、哺乳類でいうとジャワサイなんかは世界に30頭ぐらいしかいない。まあこれは人間がかかわった極端な例としても、大型の哺乳類はどれも広い生活スペースが必要ですから、そりゃ頭数は少ないだろうと。だから環境の変化にとても弱いわけですよね。ほんの些細なことで滅びてしまう。その点、昆虫は環境が変わっても狭い空間に入りこんで生き延びられる可能性がありますよね。ただ、外骨格や呼吸方法の制約があって、大型化することはできないですし、脳も発達していませんから知的動物になることもありません。

では、映画でよく見る大型の昆虫は想像上の物に過ぎないんですね。

そうですね。今知られている限り史上最大級の昆虫が、本書にもある「メガネウラ」ですからね。これで羽を広げたときの横幅が70cm。この大きさで飛んでいたというのも驚異的ですけど、酸素濃度が高かったから可能だったんですよね。体にいくつもあいた穴から直接酸素を取り入れていたわけですから、酸素濃度が高くないと体中には行きわたらなかった(笑)。でも、だからといって昆虫は下等なのではありません。必要がないから発達していないんです。実際に昆虫は、哺乳類とは比べ物にならないほどの数がいて、ある意味、地上で最も繁栄していると言えますよね。

©監修:今泉忠明 著:丸山貴史/ダイヤモンド社

あと、一通り読んで分かるのは、飛べなくなった鳥はやっぱりダメだなぁということですね(笑)。いろんな理由で絶滅しちゃうんですよね。

というかですね、鳥は本当は飛びたくないんですよ(笑)。

え、そうなんですか!?

飛ぶのは疲れるし、体重を軽くするために歯をなくしたりとか、食べ物を体の中に留めないようにすぐ排出したりとかいろいろ大変なんです。鳥って、基本的に草を食べるものがいないんですよ。なぜかというと、ウシなんかがそうであるように、草を食べても、体の中で発酵させて微生物に分解させないと栄養が取れないから。なので普通の飛ぶ鳥は果物とか虫とか栄養価の高いエサを食べて、すぐにウンチとオシッコのまざったものを排出しているんです。でも、敵のいない島に隔離された環境であれば、飛べないほうが有利なことが多いんですよ。同種同士で争う場合には、大きくて重いやつのほうが強いから、それがたくさん子孫を残して太っちょが増えてくると、だんだん飛べなくなっていくんですね。まぁ、そこに外から哺乳類が入ってくると、食べられて絶滅する可能性が出てくるわけですが。

ただ、ダチョウは例外ですね。アフリカのサバンナで切磋琢磨して生き残ってきたわけで、堂々とした地位を築いています。ダチョウは鳥の中で唯一、二本指なんですよ。だから速く走れる。それに、腸を長くして草食に進化したわけですから、単に太って飛べなくなった鳥とはわけが違う(笑)。

ダチョウの見方が変わります!

以前にダチョウ牧場で働いていたので愛着があるんですけど、あれは美しい形だと思いますね。脳みそは小さいですけど、遠くを見るため首を長くしたから頭を大きくできなかったんです。なので、脳みそよりも目がでかい(笑)。

“頭が悪くて絶滅”した生物も。同じ環境の中では、やはり賢い方が強かった?

本書にある絶滅した生物たちはとても愛嬌のあるイラストで描かれていますが、化石などから復元されたものなんですか?

人間が滅ぼした近代のものは写真や絵が残っていたりするんですけど、古生物は化石しか残っていません。ひどいものだと「ギカントピテクス」は下顎の化石しか発見されてないんです。ただ、類人猿ということがわかった。だから、ゴリラやオランウータンを参考に復元すればいいのではないか、というレベルですよね。本書ではオランウータン寄りに描いていただいたんですけど、真の正解はないんです。ただ、森林で進化してきた大型類人猿ということを考えれば、実像に近いものではないかとは思いますけどね。

化石が残されていれば、形状はある程度わかるとしても、「ティラコスミルス」が“頭が悪くて絶滅”したことはなぜわかったんでしょう?

基本的に有袋類というのは、未熟な状態で生まれるため脳が小さいんですよね。ティラコスミルスは南アメリカではトップの捕食者で、ほとんど敵がないない状況でした。それが、北アメリカと南アメリカがパナマ陸橋で繋がったことで、サーベルタイガーがやって来て、一気に滅ぼされてしまった。体格もほぼ同じで、同じように大型哺乳類を狩る動物なのにです。大きな違いといえば、有袋類は思考をつかさどる大脳が小さいということ。だから、同じような生態の動物であれば、やはり賢い方が有利だったんじゃないかという推測ですね。

©監修:今泉忠明 著:丸山貴史/ダイヤモンド社

ちなみに、私たちの身近にいるイヌやネコというのは、うまく進化してきた種ということなんでしょうか?

イヌ科とネコ科は陸上の捕食者としてはトップですからね。そこから家畜化されて小型化していますけど、基本的な体のつくりはそのままなので、大きさのわりには強力な捕食者です。北半球の競争が激しい環境で生き残ってきたオオカミとヤマネコの子孫ですから、イヌもネコもスペックは高いですよね。

個人的な話で恐縮ですが、我が家の猫は野性味がほとんどありません。それでも退化ではなく進化ですか?

やはりそこは家畜ですから、性質のおとなしいものを選んで繁殖させてきた結果ですよね。雑種のネコだと、例え飼いネコとして暮らしていても野生に放てば生きていけると思うんですけど、新しい品種は体もちょっと弱いかもしれません。最近問題になっている、足の短いマンチカンなどは骨がもともと弱いですしね。退化も進化の一種ですけど、家畜化というのは「人間にとって都合がいい」という方向を持った進化でしょう。ただ、家畜の進化についてはちょっとね、肉を食べることはどうなのかみたいな話にもなりますし、突き詰めていくほど答えは出せない領域になっていきますよね。

でも、絶滅に理由があるように、今この地球に存在する生物もみんな理由があって生きのびているんですよね。第5章「絶滅しそうで、してない」も興味深く読ませてもらいました。

そうですね。理由があると言っても、それはたいてい偶然なんです。「ライチョウ」は“山にのぼって助かった”わけですが、環境の変化で気温が上がったものの、日本にたまたま高い山があったから生き残れたんですね。

大型の哺乳類でまずいから生き残ったというのはいないんですよ。

私は「コビトカバ」が大好きなんですが、たまたま生き残っていた種だとは知りませんでした。

写真で見ると普通のカバと大きさが変わらないように見えますけど、全然違いますよね。体重が10分の1ぐらいしかないですから。

©監修:今泉忠明 著:丸山貴史/ダイヤモンド社

丸っこくってつるんとしててカワイイんです。

そうそう、突起がないんですよね(笑)。カバの祖先そのものではないんですけど、原始的な姿を保っているんですよ。カバはその昔、高温多湿な森で暮らしていましたが、地球が乾燥化して仕方なくサバンナで暮らしはじめた。でも、肌が弱すぎて、結局水の中に逃げ込んで大型化したんです。一方、コビトカバは“森に引きこもって助かった”んですね。

絶滅した種を見ることは叶いませんが、生き残った生物には会えますから、この本を持って動物園や水族館に行きたいです。

例えば「オウムガイ」なんて、地球で最も長く生きているグループのひとつですよ。浅いところにいたものは白亜紀末に滅んでいるんですが、深海にいた種は“やる気がなくて助かった”んです。わりと水族館でも見られますから、ぜひ。

水族館でオウムガイを見た記憶がないんですよね。地味すぎるからスルーしちゃってるんだと思います(笑)。

だいたい小さい水槽に入ってますからね。あまり動きもありませんし。

あんまり食べなくていいんですもんね。

そうですね。でも人間には食べられていますけど。イカみたいで結構美味しいって言いますね(笑)。ちなみに、「シーラカンス」はまずいらしいですよ。

もしかして、まずいから生き残っているんですか?

確かにマダガスカルの漁師が、釣り上げてもまずいから捨てるって言いますね。あれは皮も硬いですから、食べにくそうですし。ただ、大型の哺乳類でまずいから生き残ったというのはいないんですよ。多少臭いものもいますが、やっぱり哺乳類の筋肉って美味しいんでしょうね(笑)。

丸山貴史(まるやま たかし)

1971年、東京生まれ。動物ライター、図鑑制作者。法政大学卒業後、ネイチャー・プロ編集室勤務を経て、ネゲブ砂漠にてハイラックスの調査に従事。『ざんねんないきもの事典』『続ざんねんないきもの事典』(ともに高橋書店)の執筆や、『生まれたときからせつない動物図鑑』(ダイヤモンド社)の監訳、『世界珍獣図鑑』の編集など、図鑑の編集・執筆・校閲などを手がける。好きな動物はツチブタ。理由は、たった1種でツチブタ目を構成する孤高さや、シロアリ食なのに伸び続ける臼歯を持つ独自性など、あらゆる点でかっこいいから。

書籍情報

『わけあって絶滅しました。世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』

今泉忠明(監修)
丸山貴史(著)
サトウマサノリ(画)、 ウエタケヨーコ(画) 、海道建太(画)、なすみそいため(画)
ダイヤモンド社

「聞いてくれ、その理由を‼」絶滅した生き物たちが、自ら絶滅理由を語る! いちばん楽しい絶滅の本。やさしすぎたステラーカイギュウ、隕石が落ちたティラノサウルス、アゴが重すぎたプラティペロドンなど。生き物が絶滅する確率は99.9%。ああ、地球ってせちがらい。受難のいきもの70種。