Interview

「フジファブリックの音楽を聴くためだけの90分でもいい」。原作ファンでもある橋本 愛が映画『ここは退屈迎えに来て』への思いを語る

「フジファブリックの音楽を聴くためだけの90分でもいい」。原作ファンでもある橋本 愛が映画『ここは退屈迎えに来て』への思いを語る

渡辺大知が演じた“新保くん”に一番共感。「欲しいと思ったものほど手に入らない。ちくしょうと思いながら生きてる」

東京への憧れや未練、挫折を抱えた人たちが暮らす地方都市が舞台になってますが、橋本さん自身にとって、東京という街はどんな場所になってますか?

前よりは楽しめるようになったと思うんですけど、突如、つまらないなと思うときと、すごく楽しい! っていう時と、すごく波があります。面白いなと思いますけど、地元にいる時よりすごい焦ってるなとは感じます。潜在意識で焦らせる街なんでしょうね。

「ここは退屈迎えに来て」というタイトルはどう思います? “ここ”が地方都市を表してると思いますが。

東京にいる今の自分の方が、このタイトルに近い気持ちでいます。「迎えに来て」ではなく、「どうやったら抜け出せるんだろう」という考え方ですけど。ただ、この小説を読者として手にとったのも、タイトルの詩的な表現が素晴らしく響いたので。すごく大事にしたいなと思うし、こう思ってる子たちを少しでも、救い上げられるような作品つくりをしていきたいなって思います。

手にとった時もう東京にいましたよね。

あの時は、退屈だから迎えにきて欲しいって思いで読んだわけではなくて。すごい水面下で何かがリンクしてはいたんでしょうね。お風呂でのぼせながら、夢中で読んでましたから。

青春時代に思い描いてた未来の自分はありますか?

特になかったですね。この仕事をしてるとは思ってなかったので、勉強して、いい大学に行って、適当に暮らしてるだろうと思ってました。ただ、この仕事を始めてからは、25になっても続けてるかどうか分からないな〜くらいだったんですけど、今は、もう、おばあちゃんになっても、続けているイメージが自分の中にあって。腰が悪かったら、どうやって現場に行くんだろうっていうことを考えるくらいのイメージはしてます。だから、これからもっと計画的にちゃんとやってくんだろうなって思いますけど、その傍、いつ、どうなるか分からない、いつ、人生が終わってしまうか分からないっていう観点も捨てられないので、常に、今日、明日っていう気持ちで生きてますね、いまは。

おばあちゃんになっても続けようと思えたのはいつですか?

ほんとにここ1年くらい。お芝居の果たして何が楽しいのかっていう片鱗が見え始めて。なるほど、こういう瞬間がやめられないんだなっていうのが……特に、この時に思ったっていうわけではないですけど。

この現場でもありました? 「これがあるからやめられない」って感じた瞬間は。

私がこの現場で楽しかったのは、新保くん(渡辺大知)と会話した高校時代のプールのシーンですね。椎名くんの彼女に見えたっていう嬉しさもあいまってたと思うんですけど、あの時、プールの空気感と塩素の匂いと眩しい光、それに、キラキラした胸のトキメキを感じて、楽しいなって思ったのを覚えてます。

その後、みんなでプールに飛び込んで水しぶきを掛け合うシーンがありました。

あそこは、苦しくて、正直、死ぬかと思いました(笑)。あの時、水しぶきで見えなかったんですけど、なんとなく、あれが椎名くんだろうなとか、サツキちゃんいた、とかを考えてて。椎名くんには積極的に近づかないんだけど、どこかで探してしまうところがあったり、サツキちゃんとはまだ無垢な友情関係があったりとか。そこまでは映画には映ってなかったけど、現場ではそういう人間関係を水しぶきで見えない中で表現するのに必死だったのは覚えてます。

そういう意味では、「桐島〜」の屋上での大乱闘シーンと近いものがありますね。大騒ぎしている中で何と無く人間関係が見えるっていう。

そうですね。桐島は見えなかったけど、こっちはちゃんと椎名くんが見えてて。周りの人がふり回されるし、どこか忘れられない存在として椎名くんがいるっていう部分でも似てるなと思いました。

“私”はそのプールと、一度だけ一緒に行ったビリヤードの思い出を宝物のように思ってるんですよね。橋本さんはそんな思い出はありますか?

やっぱり、あのシーンは私も自分の唯一の青春みたいな時を思い出してました。友達と夜に10何人で花火をしたりとか、夜まで家で話してたこととか。

青春への後悔や未練、こんなはずじゃなかったっていう思いは共感します?

いっつもそんな感じはします。いつもそんなに満足してないし、いつも欲しいと思ったものほど手に入らないから。ちくしょうと思いながら生きてます。

あははは。新保くん側の感情ですね。

そうですね。どっちかというと、新保くんに一番共感できるかな。10年後の新保くんは、未だ淀んでるし、停滞はしてるんだけど、どこか晴れやかで、ああ、良かったと思いました。

最後に、<一番大切なことは人生を楽しむこと、幸せでいること。それがすべてです。>というヘプバーンの名言の引用がありました。橋本さんが幸せを感じる瞬間は?

現場にあります。考え方はそれぞれですけど、人生って、まず、3割寝てるじゃないですか。残りの7割のうち、1日8時間働くことを考えたら、もう半分が仕事ですよね。今のお仕事はもっと働くから、半分以上仕事になる。じゃあ、人生=仕事じゃんって思って。だったら、仕事に幸せを感じたり、見つけないと、そもそも人生が豊かにならないということになる。私はこの仕事が大好きだし、幸せになるために頑張ってるっていう感じだから、それはもう幸せなんですけど、楽しむっていう方は仕事とは別で。東京って何が楽しいんだろう、つまんないな〜って思う時に、すごい小さいことでも楽しむようにしてますね。「あ、今日、晴れてる」とか、「図書館空いてた」くらいでも嬉しいし、1個1個を楽しむことは大事だなって思ってますし、このセリフには共感します。

ヘアメイク / 岩田美香(モッズ・ヘア)
スタイリスト / 清水奈緒美

橋本 愛

1996年、熊本県生まれ。2010年、映画『告白』(中島哲也 監督)に出演して脚光を浴びる。『桐島、部活やめるってよ』(12/吉田大八 監督)で「第36回日本アカデミー賞」新人俳優賞ほかを受賞。そのほかの主な出演作に、【ドラマ】『あまちゃん』(13/NHK)、『若者たち2014』(14/CX)、【映画】『さよならドビュッシー』(13)、『渇き。』(14)『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋‐』(16)、『PARKS パークス』(17)、『美しい星』(17)などがある。公開待機作に、映画『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』(10月26日公開)がある。2019年は、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』への出演も決まっている。

オフィシャルサイト

フォトギャラリー

映画『ここは退屈迎えに来て』 

10月19日(金) 全国公開

【STORY】
マスコミ業界を志望して上京したものの、10年後地元に戻ってきた27歳の「私」(橋本)。実家に住みながらフリーライターとしてタウン誌で記事を書いている冴えない日々。高校時代に仲の良かった友達サツキと久々に会った勢いで、男女を問わず皆の中心にいた憧れの椎名くん(成田)に連絡し、会いに行くことに。道中、「私」の中に椎名くんとの高校時代の忘れられない思い出が蘇るー。元カレ「椎名」を忘れられないまま地元でフリーターとして暮らす「あたし」(門脇)。元カレの友達・遠藤と、腐れ縁のような関係を続けているけれど、心は彼といたときの青春の輝かしい記憶に今もとらわれているー。

出演:橋本 愛 門脇 麦 成田 凌 / 渡辺大知 岸井ゆきの 内田理央 柳 ゆり菜 亀田侑樹 瀧内公美 片山友希 木崎絹子 / マキタスポーツ 村上 淳
原作:山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」幻冬舎文庫 
監督:廣木隆一 
脚本:櫻井 智也
制作プロダクション:ダブ
配給:KADOKAWA

©2018「ここは退屈迎えに来て」製作委員会

オフィシャルサイト
http://taikutsu.jp/

原作本

ここは退屈迎えに来て

山内マリコ
幻冬舎文庫

そばにいても離れていても、私の心はいつも君を呼んでいる? 都会からUターンした30歳、結婚相談所に駆け込む親友同士、売れ残りの男子としぶしぶ寝る23歳、処女喪失に奔走する女子高生……ありふれた地方都市で、どこまでも続く日常を生きる8人の女の子。居場所を求める繊細な心模様を、クールな筆致で鮮やかに描いた心潤う連作小説。

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