Interview

「コールドケース」シリーズを手がける岡野真紀子プロデューサー。 日本版でこだわったオリジナルの要素とは!?

「コールドケース」シリーズを手がける岡野真紀子プロデューサー。 日本版でこだわったオリジナルの要素とは!?

未解決犯罪の解決に尽力する捜査チームの活躍を描いたアメリカの人気連続ドラマシリーズを、吉田羊主演でリメイクした「コールドケース〜真実の扉〜」。WOWOW開局25周年を記念したビッグプロジェクトは、日本ならではの物語の機微やソリッドな映像美、そしてキャスト陣の名演によって評判を呼んだ。
そのシーズン2がいよいよスタート。その生みの親とも言えるのが、WOWOWの岡野真紀子プロデューサーだ。「コールドケース」というシリーズでこだわったポイントを、つぶさに語ってもらった。

取材・文 / 平田真人 撮影 / 荻原大志

豪華なゲスト陣は単に列挙しているわけではなく、シナリオやテーマに沿って熟考した上で配役している。

先行して第1話と2話を拝見しましたが、シーズン1よりもさらに面白味が増している印象を受けました。

ありがとうございます。さらに話を重ねるごとにどんどん魅力が見えてくると思います。

シーズン2の制作発表のタイミングで、光石研さんが「『コールドケース』ロスだった」とお話になっていましたが、今もみなさん、そうなのではないかと…。

みなさん、クランクアップが近づくにつれて「寂しくなるね」と、おっしゃっていて、シーズン2での“「コールドケース」”ロスの度合いは、さらに増しているようです。なので、こうした取材だったり、完成披露試写などで集まれる機会があると、吉田羊さんたち5人ともスケジュールを空けてくださるんですよ。そのチームワークの良さと「コールドケース」に対する愛は、ただただありがたく、嬉しい限りです。

「コールドケース」シリーズを手がける岡野真紀子プロデューサー

岡野さんからご覧になって、なぜ5人にはあれほどの連帯感があるのだと思われますか?

元々、5人で「コールドケース」を作ることが決まった時、役者さんそれぞれとお話させていただいたんです。その際、これまでの“日本の刑事ドラマ感”をちょっと逸脱したいと、どなたかがおっしゃって。ならば、どうしようかという話になったので、ある種の「サラリーマン刑事(デカ)」と言いますか…ボスが指令を出して、刑事たちが事件現場へ行って…と、四六時中犯人のことばかり考えている、といった図式が多いんですけど、「コールドケース」は彼らの私生活を見せるとまでは言わないまでも、出勤風景や仕事が終わった時の上司や同僚との会話だったり、そういった日常感を大事にしたいと、キャスト側から提案があったんです。
実際、シーズン1からそこを大事に作ってきたので、撮影そのものが5人の役者さんたちにとってもコミュニケーションの場だったんですよね。なので、話を重ねるごとに何となく…一番若い永山(絢斗)さんと、班長でもある百合役の(吉田)羊さんと、ボスである三浦さんと、その間にいる立川(滝藤)とねこさん(光石)という関係性が築けたのかな、というような気がします。その日に撮る分が終わっても、みなさんなかなかお帰りにならないんですよ(笑)。話に花が咲いて、盛り上がっていらっしゃって。そういうことが多かったので、自然と役の関係性にも反映されて、チームワークの良さが画面にも映っていたのではないでしょうか。

なるほど。また、「コールドケース」は東京ではなく横浜を舞台にしているというのも、特色になっていますね。

オリジナル版もフィラデルフィアが舞台なので、日本版も東京ではないな、と考えていたんです。警視庁の花形たる捜査一課が扱う、誰もが注目する事件とは違うところに、実は知られざるストーリーがある…という構図がうまくハマッたのかな、と。

カメラも8Kカメラを使って撮っていて、映像へのこだわりも凄まじいモノになっていました。

シーズン1の時はまだ珍しかった4K-HDR制作も、2年経って段々とトレンドになりつつあって。なので、シーズン2は8Kで撮って4K‐HDR制作をしています。(シーズン1は6Kで撮影)視聴者の目も4Kクオリティに慣れて進化しているわけで、我々はさらに先を行かなければならないということで、8Kで撮ってそれをギュッと圧縮して4K‐HDR版を作っているので、さらにきれいな映像になっているはずです。現場では気づかなかったモノや動きが、8Kで撮った映像で見直すと多々あったことに気づかされるんですよ。そういう意味でも、編集や完成版を見るのが新鮮に感じられました。

昨年の取材で波多野貴文監督がおっしゃっていましたが、4K対応のテレビで「コールドケース」を見た時の臨場感は、まさしく凄まじい、と…。

今回は8Kで撮影してより映像美を追求しているので、さらにドラマに没入していただけると思います!

連続ドラマW「コールドケース2 ~真実の扉~」第3話より
© WOWOW/Warner Bros. Intl TV Production

そういったハードの面もさることながら、やはりベースとなるストーリーが面白いというのが、大きいのではないか、と思われます。そこで、シーズン2のシナリオ作りで留意した点も伺えればと。

シーズン1と2で大きく異なっている点は、完全な日本オリジナルのストーリーを3本ほど作ったことです。本国のオリジナル版に元となる話がない、日本独自の設定やシチュエーションをふくらませて、シナリオを練っていきました。それは、シーズン1の出来映えから本国の信頼を得られたことで、より自由度の増したドラマ作りが可能になったというところが、多分にあります。
そもそも、アメリカでつくられたドラマを単に日本向けに“翻訳”するのではなくて、日本だからこそ扱うことができるテーマで、独自の「コールドケース」を作りたい、という思いが私たちの中にはあったんですね。その一端が、ご覧いただいた第1話──1960〜70年代に盛り上がりを見せた学生運動をモチーフにした「学生運動」ですが、そのほかにもバブル崩壊と日本のヤクザを絡めた話(第6話『バブル』)であったり、第3話ではPKOにまつわるエピソードにもチャレンジしています。そもそも、本国のオリジナル版の面白いテーマを大事にしつつ、日本の各時代および年代に寄り添うことを考慮していまして。なので、シーズン2の本打ち(脚本を練る上での打ち合わせ)の時も、作家さんたちと共に興味のある日本の過去の時代を洗い出していったんです。それで「コギャル全盛期」だったり「PKO問題」といったテーマに焦点を当てていったという感じでした。

攻めたテーマであることに加えて、毎話のゲストキャストがまた、シーズン1に輪をかけて豪華になっていますね。

業界の方々からも、「毎回のゲストの顔ぶれがスゴすぎる」と、おっしゃっていただいて、ありがたいことだなぁと思いました。各回のシナリオとテーマに沿って丁寧にキャスティングをしていきました。また、役者の方々からもシナリオの面白さに惹かれたと言っていただいたり、シーズン1をご覧になっていてレギュラーの5人とお芝居をしたいと望まれていた方も多くて。また、これまで他の作品でお世話になった役者さんにも、「出たい」と言ってくださった方がたくさんいらっしゃったのも、とても幸せなことでした。

第1話だけでも、橋爪功さんに篠田三郎さん、津嘉山正種さんに市毛良枝さん、奥貫薫さん…と枚挙にいとまがないですよね。

第4話では佐藤浩市さんと吉岡秀隆さんが出てくださっていて。しかも吉岡さん、このドラマでは死刑囚役だったのですが、そのために坊主頭になさったんです。それも現場で坊主刈りになさっていて…その心意気には本当に敬服しました。それから5話では、今をときめく田中圭さんも出てくださっていますし、毎話のゲストは手前味噌ながら、驚くようなキャスティングになっています。

連続ドラマW「コールドケース2 ~真実の扉~」第4話より
© WOWOW/Warner Bros. Intl TV Production

また、吉村界人さんや神尾楓珠さん、山田杏奈さんや木竜麻生さんといったネクストブレイクと言われている若手の方々もキャスティングされていて。

シーズン1でも、吉沢亮さんや伊藤健太郎さん、村上虹郎さんといった今とっても旬となられた若い俳優さんたちがゲストで出てくださっていて。「コールドケース」にゲストで出るとブレイクする、という定説が浸透するといいなぁと、勝手に思っていたりもします(笑)。その虹郎さんが出てくださったから、というわけでもないんですけど、完パケをご覧になった村上淳さんが「さすがWOWOWクオリティー!」と評価してくださって、最終話にご登場いただきますので…ご期待ください。

期待しかありません! ちなみに、第1話のクレジットに松本穂香さんの名前があったんですけど、どこに出ていたのでしょうか?

1話ではほんの一瞬ですが、彼女はシーズン2のキーパーソンになっていくんです。前回のユースケ(・サンタマリア)さんに近いポジションですね。

どんなふうにシリーズの軸になっていくのかが楽しみです。それと、前シリーズでは各回で描く時代を象徴する音楽は洋楽がメインでしたが、シーズン2は日本のポップスやロックが多くなっていますね。

実はシーズン1が終わって、私自身の反省も含めてなんですけど、洋楽に寄りすぎた感があったかな、と思ったのは確かだったんです。WOWOWの視聴者の方々が総じてピンと来ていらっしゃったかと考えてみると、案外そうでもなかったというところがあって。そこを踏まえて、すごく悩んだ結果、シーズン2では思い切って“邦楽しばり”にシフトしました。やはり、洋楽も入れると選択肢の幅が広くなりすぎてしまうんですね。また、洋楽は人によって聴いていた時期が異なっていたりもして、必ずしもリアルタイムでリリースされた時代にピンとくるわけではない、という…。その点、たとえば小室哲哉さんのプロデュース曲なら’90年代半ばだったり、GReeeeNさんなら2000年代後半以降といったように、各時代をピンポイントで象徴する楽曲があるので、パッと耳にしただけで各話の年代が、より身近に感じられるようになったのではないかな、と。レギュラーのキャストの方々からも、「邦楽にして良かったと思う」と言われたので、その選曲も楽しみにしていただければと思います。

第1話のクライマックスで流れる「翼をください」は、ものすごくハマっていたように感じました。

そう言っていただけると、うれしいです。「翼をください」の場合は合唱曲として音楽の授業などで歌った人が多いと思うんですけど、「これは1970年代初頭の曲だったんだな」と再認識や再発見をしていただける、という楽しみ方もあるのかな、と。第2話もクライマックスで何を流すか悩みに悩んで、YEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」にしたんですけど、音楽が瞬時にその時代にタイプスリップさせてくれる力を持っていることを、シーズン2ではより実感しました。
ただ、すべての選曲がスムーズだったかというと、やはり喧々諤々あって。というのも、監督たちと私では世代が違うので、同じ’90年代なかばを生きたとしても、聴いていた曲が違っていたりするんですね。たとえば、第8話の「娘」はコギャルを描いた回なんですけど、自分の思春期ど真ん中だったので、そこは誰にも譲れません、と(笑)。でも、ちょっと世代が上の方々からすると、聞いていた曲にちょっとしたズレが生じるわけです。同じ時代でも世代によって時代を象徴する曲が変わってくる中で曲を絞り込んでいくのは、大変ではありましたけど楽しかったです。

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