Interview

【インタビュー】『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と2020年に向かう今、鷺巣詩郎が語ったアニメ音楽の40年。その始まりは『機動戦士ガンダムIII』だった

【インタビュー】『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と2020年に向かう今、鷺巣詩郎が語ったアニメ音楽の40年。その始まりは『機動戦士ガンダムIII』だった

『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズや映画『シン・ゴジラ』の音楽をはじめ、数多くの映像作品やアーティストの楽曲を手掛けてきた音楽家の鷺巣詩郎が、デビュー40周年記念盤となるコンピレーション・アルバム『アニソン録 プラス。』を、自身の61歳の誕生日でもある8月29日にリリースした。

70年代末からTHE SQUARE(現在のT-SQUARE)の作品に関わる傍ら、歌謡曲やアイドルソングの作曲家およびアレンジャーとして第一線で活躍し、ポップスからクラシカル・クロスオーバーに至るまでジャンルを問わず良質な音楽を生み出してきた彼。本作では、その中でもアニメ作品にまつわる楽曲に焦点を絞り、主題歌やキャラクターソング、劇伴音楽を中心に、新録曲や未発表音源などを含む全73曲がCD4枚組に収められている。

『エヴァ』やMISIA、May’nらの楽曲はもちろん、小幡洋子「もしも空を飛べたら」(『天空の城ラピュタ』イメージソング)や竹本孝之「燃えてヒーロー」(『キャプテン翼』主題歌)などの「この曲も手掛けてたの!?」と意外に思える楽曲、さらに『笑っていいとも!』より「テレフォンショッキングのテーマ」のセルフカバーといった+αな楽曲も加えられており、鷺巣詩郎という音楽家の偉大さをあらためて実感できる作品と言えるだろう。そんな本作について、鷺巣本人に語ってもらった。

取材・文 / 北野 創


鷺巣詩郎『アニソン録 プラス。』収録内容

<CD1>
めぐりあい 井上大輔 『機動戦士ガンダムⅢめぐりあい宇宙編』
for you アネモネ 戸田恵子 『ガラスの仮面』
ネコじゃないモン! 児島由美 『ネコじゃないモン!』
希望の地 = Atlantis タイクーン 『百億の昼と千億の夜』
Love with You ~愛のプレゼント~ 小林千絵 『牧場の少女カトリ』
青春プレリュード 加茂晴美 『アタッカーYOU!』
風のメモリー 山口益弘 『アタッカーYOU!』
風とブーケのセレナーデ 秋本理央 『幻夢戦記レダ』
行方不明のハートたち 秋本理央 『幻夢戦記レダ』
背中ごしにセンチメンタル 宮里久美 『メガゾーン23』
淋しくて眠れない タケウチユカ 『メガゾーン23』
秘密く・だ・さ・い 宮里久美 『メガゾーン23 PART Ⅱ 秘密く・だ・さ・い』
ロンリーサンセット 宮里久美 『メガゾーン23 PART Ⅱ 秘密く・だ・さ・い』
裸足のソルジャー 下山公介 『六三四の剣』
燃えてヒーロー 竹本孝之 『キャプテン翼』
アニメじゃない―夢を忘れた古い地球人よ― 新井正人 『機動戦士ガンダムΖΖ』
TRANSFORMER 下成佐登子 『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』
TRANSFORMER 2010 広瀬 翔 『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー2010』
アイ・シティ 上田由紀 『アイ・シティ』
A PSYCHIK MAN 楠木勇有行 『アイ・シティ』

<CD2>
もしも空を飛べたら 小幡洋子 『天空の城ラピュタ』
夢色チェイサー 鮎川麻弥 『機甲戦記ドラグナー』
オレンジ・ミステリー 長島秀幸 『きまぐれオレンジ☆ロード』
ふり向いてマイダーリン 藤代美奈子 『きまぐれオレンジ☆ロード』
ブレイキング ハート 坪倉唯子 『きまぐれオレンジ☆ロード』
夏のミラージュ 和田加奈子 『きまぐれオレンジ☆ロード』
ジェニーナ 和田加奈子 『きまぐれオレンジ☆ロード』
Just for make believe 鷺巣詩郎 featuring Hazel Fernandes
愛は奇蹟(ミラクル) 花奈 『超獣機神ダンクーガ GOD BLESS DANCOUGA』
ボクらの夢によろしく CHA-CHA 『ミラクルジャイアンツ童夢くん』
陽春のパッセージ 田中陽子 『アイドル天使ようこそようこ』
絶対!Part2 早坂好恵 『らんま1/2 (熱闘編)』
逆転タイフーン 早坂好恵 『ひみつの花園』
はらほろひれはれ 早坂好恵 『ひみつの花園』
おーい!車屋さん 忍者 『21エモン』
レッツ・ゴー・ジャンくん 日高のり子 『ふしぎの海のナディア』
My Precious Trick Star~優しさをくれたあなたへ~ SILK 『劇場版 ふしぎの海のナディア』
本命盤 恨み舟 清川元夢 『ふしぎの海のナディア』

<CD3>
もういちどLove you 笠原弘子 『超時空要塞マクロスⅡ-LOVERS AGAIN-』
約束 笠原弘子 『超時空要塞マクロスⅡ-LOVERS AGAIN-』
約束 May’n<新録>
Wings of my Heart MAJESTY 『バイストン・ウェル物語 ガーゼィの翼』
Komm, susser Tod~甘き死よ、来たれ ARIANNE 『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君』
THANATOS -if i can’t be yours- LOREN&MASH 『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』
Overcome 2018 鷺巣詩郎 featuring LOREN<新録>
明日へのメロディー CHAKA 『劇場版「カードキャプターさくら」封印されたカード』
This Kind of Love 鷺巣詩郎 featuring Hazel Fernandes
Treat or Goblins 林原めぐみ 『アベノ橋魔法☆商店街』
Number One 鷺巣詩郎 featuring Hazel Fernandes 『BLEACH』
Nothing Can Be Explained 鷺巣詩郎 featuring Mike Wyzgowski 『BLEACH』
Nos Reves d’Enfants  Meri NEESER 『スカルマン』
愛は降る星のごとく May’n 『最強武将伝・三国演義』
魂のルフラン2010Version 高橋洋子 『「エヴァンゲリオン」シリーズ』

<CD4>
集結の運命(さだめ) 林原めぐみ 『CRヱヴァンゲリヲン ~始まりの福音~』
Breakthrough 川畑要 『ベルセルク 黄金時代篇Ⅲ 降臨』
オルフェンズの涙 MISIA 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』
Saving Grace 鷺巣詩郎 featuring LOREN<新録>
瞑目の彼方 やなぎなぎ 『ベルセルク』
TENSIONS alterna 2018 高橋洋子 『「エヴァンゲリオン」シリーズ』
SWANEE 鷺巣詩郎 ウィズ・サムシング・スペシャル<発掘・初収録>
B.KOOL.B.G. (bon KOOL bon genre) 鷺巣詩郎 『JT(日本タバコ)KOOL』CM
愛のよろこび クライズラー&カンパニー 『学生援護会“an”』CM『さんま・一機のイッチョカミでやんす』
いとしのナディア? 日高のり子 『ふしぎの海のナディア』
IMOSEな関係1907 鷹森淑乃 『ふしぎの海のナディア』
夢見るPLANET 荻野目洋子 with ウゴウゴ・ルーガ 『ウゴウゴルーガ』
Chanson des Jumelles ALOYSIA 『Par Avion』
主客転倒 鷺巣詩郎 『彼氏彼女の事情』
宮沢一家 鷺巣詩郎 『彼氏彼女の事情』
Make Your Move 鷺巣詩郎 featuring LOREN
Monolith -the threat- 鷺巣詩郎 『ブラック・ブレッド』
テレフォンショッキングのテーマ~ゲスト登場のテーマ 鷺巣詩郎 『笑っていいとも! 』<新録>
La Maison -pour violon seul- 鷺巣詩郎 『日本アニメ(ーター)見本市』
Peaceful Times ~F02 次回予告~ 鷺巣詩郎 『「エヴァンゲリオン」シリーズ』
※シークレットボーナストラック有

「アニソンの多様性というのはこういうところから来ているんだ」ということを分かっていただきたかった

鷺巣さんはデビュー以来、歌謡曲を含め膨大な数の楽曲を手掛けてこられましたが、40周年を迎えたこのタイミングで、なぜアニメ音楽に特化したコンピレーション盤を編まれたのでしょうか?

鷺巣詩郎 僕は昨年に『鷺巣詩郎 執筆録』という、1998年から2011年まで「bmr(ブラック・ミュージック・リヴュー)」という雑誌で連載していた文章をまとめた本を出版したんですが、そのときに本を読みながら聴けるコンピレーションとして『録音録(SHIRO’S SONGBOOK 録音録 The Hidden Wonder of Music)』というCDをソニーミュージックから出させていただいたんです。

そちらには連載時期に自分が作曲や編曲、プロデュースを手掛けたアーティストの楽曲が収められているのですが、その続きとして、次は何か別の形でコンピレーションを出したいと思いまして。それで自分としては、この40年というのはアニメ音楽、アニソンにとってかなり重要な時代だったんじゃないかと感じていましたので、キングレコードさんをはじめ色々なメーカーさんにご協力いただいて、こうしてアニメ音楽に特化したものを作らせていただきました。

『アニソン録 プラス。』の収録曲を選曲するにあたって、どのような部分にこだわられましたか?

鷺巣 もちろんひとつには網羅ということがありますけど、今回のタイトルの「プラス。」というのは、要するにアニソンとその周囲のものということなんですね。自分としてはアニソンに特化して作家性を浮き彫りにさせたいという一面もありますが、その周辺の音楽も一緒に聴いていただくことで、「アニソンの多様性というのはこういうところから来ているんだ」ということを分かっていただきたかったんです。

例えばミュージカル映画になぜ多様性があるかと言うと、ブロードウェイやウエスト・エンドのように隣接するものに多様性があるからなんですね。日本のアニメも同じで、その隣にアイドル音楽や歌謡曲、J-POPがあったので、それらがインタラクティブに交わって成熟していったわけです。そうしたときに、やはりアニメ音楽だけではなく、その周囲のものも聴いていただくことによって、その多様性や成熟、どのように発展・発達して多くの人に受け入れられるようになったのかがわかると思うんですよ。

それは40年前からアニメ音楽も歌謡曲もジャズも分け隔てなく、さまざまなジャンルの音楽に携わってこられた鷺巣さんだからこそ提示できることかもしれませんね。

鷺巣 僕の場合は父親(うしおそうじ)の家業がアニメや特撮だったことが大きかったと思います。やはり音楽家やミュージシャンといった人たちを一括りで考えた場合、昔はアニメというものを別ジャンルや別カテゴリのものだと捉えがちだったので、ぶっちゃけそこまで作品に踏み込むことはなかったわけですよ。でも、タイアップ曲を作る場合はある程度の踏み込みが必要じゃないですか、僕は運良く、生まれたときからの環境があったので、そこはちょっとした反則でしたね(笑)。

松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」の編曲など、80年代に多くのアイドルソングを手掛けたことによる影響もあったのではないでしょうか?

鷺巣 特に日本のアイドルの楽曲というのは昔から、歌詞の世界観がハチャメチャなものを好んでやるところがあったんです。ポップスと言うのは、世界的に見ると好きだ嫌いだといった愛恋沙汰を描くことが多いですけど、日本のアイドルの場合はばSFファンタジー的なものやアニメ的な要素を含む歌詞だったり、「私が〇〇だったら」のように「たられば」を描いた空想のものが多いんですね。ですから、もともとそういうところはアニソンと接点があったと思いますし、例えば自分がアイドルの仕事をたくさんやっていたことで、さらに段差を感じることなくアニメの楽曲を手掛けることができた部分はあると思います。

ひとりの作家として、僭越ながら「こういうのもやってOKなんだ」と周囲に伝えていきたいという思いはあります

鷺巣さんから見て、この40年でアニメ音楽およびそれを取り巻く環境はどのように変化していったと感じられますか?

鷺巣 たとえば平成以降、アーティストがタイアップをやるときに「ストーリーに寄せなければ」とか「監督の意図を汲まなければ」とか、とにかく構えなきゃいけないというのがありましたが、それも10年ぐらい前から、それもどんどん多様化というか自由化してきていますよね。アニメの作り手自体がアーティストのファンという事象もありますし、そこはエンタメとして成熟した強みがあるんじゃないでしょうかね。

これは今回のライナーノートにも書きましたけども、「宇宙戦艦ヤマト」だったり「おどるポンポコリン」のように、アニメ音楽にとってちょっとしたマイルストーンになった作品がありますけど、昔はそういうものが生まれるのは10年とか5年に一度ぐらいだったのが、今はもう半年ぐらいのサイクルで「これもアリだな、あれもアリだな」となってると思います。多分アーティスト同士でも、ものすごくインスパイアされるものがあるんじゃないですかね。

そういった革新的な作品が折々で登場することによって、アニメ音楽の成熟度も増していったと。

鷺巣 例えばアイドルでも、秋元康さんが小泉今日子さんの「なんてったってアイドル」(編曲は鷺巣詩郎)で初めてアイドル自身に「自分はアイドル」ということを歌わせたわけですよ。それと今回の作品にも収録してる新井(正人)さんの「アニメじゃない -夢を忘れた古い地球人よ-」(作詞は秋元康)も、歌詞の中で「これはアニメじゃない」と言っていて、そういう自作自演的な歌詞は当時画期的だったわけです。そういう作品には、後続の人たちの自由度を非常に高めてくれたという功績があるんですね。

それは作曲家の場合も同じで、それこそ大昔に小林亜星さんが『狼少年ケン』のテーマ曲でアフロ的なサウンドを取り入れて、同業者の人たちも「こんなことをやってもいいんだ!」とぶっ飛んだわけです。「おどるポンポコリン」にしても、もちろんバブルという時代背景はありましたけど、「ここまでおちゃらけていいんだ」という驚きがあったわけで。自分もひとりの作家として、僭越ながら「こういうのもやってOKなんだ」と周囲に伝えていきたいという思いはありますね。

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