Interview

【インタビュー】『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と2020年に向かう今、鷺巣詩郎が語ったアニメ音楽の40年。その始まりは『機動戦士ガンダムIII』だった

【インタビュー】『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と2020年に向かう今、鷺巣詩郎が語ったアニメ音楽の40年。その始まりは『機動戦士ガンダムIII』だった

90年代に『エヴァ』を手掛けたことで良い意味でタガが外れた。クラシックからジャズまで何でもOKになれた

『アニソン録 プラス。』には『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』よりARIANNE「Komm, susser Tod~甘き死よ、来たれ」とLOREN&MASH「THANATOS -if i can’t be yours-」も収録されています。鷺巣さんはライナーノーツでこの2曲について「アニソンの新しい方向性を示したことが、鷺巣としてはとてもうれしかった」と書かれていますが、具体的にはどのような部分で新しさを提示できたとお考えですか?

鷺巣 もちろんそれまでのアニソンも日本の歌謡曲やアイドル歌謡から良い影響を受けて、相互的に多様性を高めていたわけですが、とはいえ、その頃のアニソンは洋楽ポップスとの互換性があまりなかったんですよね。おそらくそういう音楽を作ろうとしていた方もいたとは思いますけど、ファンにとっては日本語の歌詞や日本的な表現のほうが分かってもらいやすいだろう、という考えがあったんだと思います。

ところがこの2曲に関しては、そういう考えを取っ払って作ったんです。それは庵野(秀明)監督の雑食性があったからこそのことで、僕も90年代に『エヴァンゲリオン』を手掛けたことで、音楽的に良い意味でタガが外れたというか、クラシックからジャズまで何でもOKになれたんです。

なるほど。

鷺巣 じつは90年代に入ってアニメ自体が多様化したときに、ほかでも色々試してはいたわけですが、その中には成功もあったし失敗もあった、と。それは言い換えると手段と目的が違っていたわけですね。鷺巣にとって『エヴァ』でやった洋楽ポップスとのインタラクティブは手段だったんですが、庵野監督がすごいところはそれが目的でもあったんです。手段だけの人が集まっても、結局それは指標にはならなくて、あくまでチャレンジしただけで終わってしまうんですけれども、庵野監督のように明確な目的とビジョンを持った人がそれを作品上に焼き付けると、ちゃんと脈々と引き継がれていくんですね。そういう意味でこの2曲は、タガを外しただけではなく、それ以降のアニソンが洋楽のポップスともインタラクティブになれる大きなキッカケになったと思います。

『まごころを、君に』が公開されたのは97年でしたが、それはダイアナ妃が亡くなって大騒ぎになった年でもあるんですよ。そのときにエルトン・ジョンの歌った追悼曲(「Candle In The Wind 1997」)がものすごくヒットして、世界中のラジオで唸るほどエアプレイされたわけですけど、日本のFMではそのエルトンの曲と一緒に「THANATOS」や「甘き死」がよくオンエアされてたんです。それまではアニソンが海外のヒットチャートを制した曲と一緒に流れるというのはありえなかったんですよね。そういう意味で庵野監督の見据えたものというのは、我々のかなり先を見ていたと結果的に言えるわけです。

「甘き死よ」にはゴスペルミュージックの要素などが盛り込まれていて、それこそ当時鷺巣さんとMartin LascellesさんがMASH名義で発表されていた作品や、その後に鷺巣さんが展開された『SHIRO’S SONGBOOK』シリーズにも繋がるコンテンポラリー感を感じます。

鷺巣 そうですね。さらに言えば、僕がそのあとに手掛けた『BLEACH』の音楽でも、(『アニソン録 プラス。』にも収録されている)挿入歌の「Number One」という曲は阿部(記之)監督がずっと使い続けてくれたので、どちらも英語の歌ということもあってか、「甘き死」なんかと一緒にYouTubeで世界的に聴かれているんです。もちろん「残酷な天使のテーゼ」や『ONE PIECE』の曲のように日本的な良さを持った曲もJ-POPのアニソンとして海外で受け入れられていますけど、それとはまた違った、いわゆるアニソンと英米ポップスとのインタラクティブな表現という目的は果たせたと思っています。そういう曲が世界中の人に認知してもらえるということは、20年前には信じられなかったことですね。

『エヴァ』の音楽を作ることには緊張感がありますし、常にチャレンジなんです

今作には井上大輔「めぐりあい」(『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』主題歌)、新井正人「アニメじゃない -夢を忘れた古い地球人よ-」(『機動戦士ガンダムZZ』主題歌)、MISIA「オルフェンズの涙」(『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』EDテーマ)と、『ガンダム』関連曲が3曲も収録されています。

鷺巣 今回のライナーにも書きましたけど、僕は79年に自分のアルバム(鷺巣詩郎 WITH SOMETHIN’ SPECIAL名義の作品『EYES』)を出してるので、ちょうど『ガンダム』と自分の歩みは同じ長さなんです。まさかその頃はこんなにも『ガンダム』が続くとは思っていなかったので、自分もそれにあやかりたいなとは思いますよね(笑)。

ただ、今は主題歌を担当するアーティスト側も『ガンダム』ということで「よし、『ガンダム』の曲を残そう!」と考えるようになったと思うんです。それはやはり『ガンダム』の場合、富野(由悠季)監督が関わっていない作品だったとしても、そこに富野イズムがないわけではないからだと思うんですよ。そういう「よし、やるぞ!」と思えるシリーズに、こうやってことあるごとに音源を提供できるということは、本当に作家冥利に尽きます。ただ、僕は最近富野さんとは会ってないですけれども、そうやって知らないところで遠隔操作されて色んなものを引き出されているのかと思うと、恐ろしい人だと思います(笑)。

鷺巣さんにとってのアニメ音楽のお仕事は、本作にていったんまとめられましたが、今秋にはTVアニメ『SSSS.GRIDMAN』の劇伴音楽を担当されるなど、まだまだ新しい作品も増え続けています。この先アニメ音楽の世界でさらに挑戦したいことはありますか?

鷺巣 今いちばんのチャレンジは『シン・エヴァ(シン・エヴァンゲリオン劇場版)』ですね。鋭意制作中なのですが、エヴァもすでに20年以上続いているので、たくさんのものが積み重なって出来ているんですよ。そこには視聴者の方には明かされていないものもたくさんあって、よく「これを載せると崩れる……!」みたいなバランスゲームがありますけど、そういう瞬間の連続なんです(笑)。そうやっていろいろな迷彩を施しているところに、何か合わないものを置くことによって、エヴァンゲリオン自体が崩れてしまう可能性もあるわけなんですね。そういう意味で、『エヴァ』の音楽を作ることには緊張感がありますし、常にチャレンジなんです。なので、2020年まではそれがいちばん大きい挑戦になると思います。

鷺巣詩郎オフィシャルサイト

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