山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 45

Column

鉛の飛行船、その軌跡 / レッド・ツェッペリン

鉛の飛行船、その軌跡 / レッド・ツェッペリン

70年代に青春を過ごしたロック少年の誰もがその「洗礼」を受けたと言っても過言ではないバンド、レッド・ツェッペリン。
1980年、天才的なグルーヴでバンドの要を務めたジョン・ボーナムを失って解散したものの、いまも多くのミュージシャンがその影響を隠さない。
結成50周年を迎え、最新リマスター音源のリリースが続く彼らのサウンドの秘密について、HEATWAVE山口洋が初めて書き下ろす。


編集部からのリクエスト。僕らの世代に強烈な影響を与えた『永遠の詩(狂熱のライヴ)』のリマスター復刻に合わせて、なんと、レッド・ツェッペリン。今年の9月で結成50周年なんだと。

パンクとヤンキーを組み合わせた独自の人種、“パンキー”として高校生活を送っていたので、レッド・ツェッペリン(以下、ZEP)が好きだと公言するのは憚られた。でも、実は大好き。ずいぶん影響も受けたし、すべてのアルバムを聞いていた。

ご多分にもれず、映画館で『永遠の詩(狂熱のライヴ)』を見て感化された。まず度肝を抜かれたのはジョン・ボーナム(以下、ボンゾ)のドラムス。音も存在も演奏も風貌も、何もかもが圧倒的。ロック・バンドにおけるドラムスは魂の柱。そこが圧倒的でなければ、バンドは二流。僕が今、池畑潤二さんと演奏させてもらっていることのルーツもここにある。ドラムスが圧倒的でなければ、バンドをやる意味はない。いや、ほんとうに。

続いてジミー・ペイジ。独特なリフとフレージング。決して流暢ではないギター・ソロ。好きだったなぁ、ファッションを除いては。昇り竜のステージ衣装はないよなぁ、ヤンキーの学ランの裏地じゃないんだから。ロンドンブーツも、なんかやだなぁ(すいません)。

でも、この映画の影響で、初めて買うエレクトリック・ギターは、彼が使っていたギブソン・レスポール・スタンダード1958年モデルを精巧にコピーした日本製に決めた。手に入れるため、年齢を詐称して、中華屋で皿洗いに励んだ。来る日も来る日も洗った。たぶん、数万枚は洗ってついに手に入れた。嬉しかったなぁ。残念ながらそれはもう手元にはないけれど、今やそのモデルはジャパニーズ・ヴィンテージと呼ばれ、高値で取引され、ギブソンの本物は2,000万を超える。『永遠の詩(狂熱のライヴ)』をそのギターでコピーすることで、コードの鳴らし方やソロの組み立て方を学んだ。中でも「レイン・ソング」が特別に好きで、でもあまりに難しすぎて、途中で投げ出したのだけれど、近年、ようやくマスターして、ときどきライヴで演奏する。かように僕は影響を受けてる。

ジミー・ペイジが映画『ゲット・ラウド』で、お馴染みの古いダンエレクトロを手に、名曲「カシミール」のイントロを弾いてみせるシーンがある。その瞬間、同席しているふたりのロック・スター、U2のエッジとジャック・ホワイトの目が、ただのギター少年になる。忘れられないシーン。僕も同じだけどね。笑。YouTubeにもあるから、是非。その目がZEPの功績を物語る。その曲のチューニングは僕も大好きなDADGAD。ジミー・ペイジはジョン・レンボーンやバート・ヤンシュをはじめとするブリティッシュ・トラッドに影響を受けていて、そこから昇華させたもの。DADGADで中近東の雰囲気を出す。それがジミーのジミーたる所以。

ギターを弾かない人にはわかりにくい話かもしれないけれど、フェイザーやワウなど、エフェクターの使い方も斬新。テルミンやヴァイオリンの弓を使ったボウイング奏法、ストリング・ベンダーなど。エレクトリック・ギターに革新をもたらしたのもジミー。

ジョン・ポール・ジョーンズの個性は溢れる知性。決して出過ぎることなく、シュアなベースと鍵盤でバンドを支える。社会にもバンドにも、こういう人種は不可欠。

最後にロバート・プラント。少年だった僕にとって、当時はいちばんどうでもいい存在だった。「見て見て、僕の胸毛(失礼)」的フィーリングと過度なハイトーン・シャウトがどうしても好きになれなかった。でも、近年の音楽活動において、いちばんインスピレーションを与えてくれるのは彼。決して過去の栄光に埋没せず、冒険心に満ちて、今日を切り拓いていく。僕は彼の今の音楽の大ファン。安住しないその姿勢に励まされている。ZEPと切り離しても、今の彼の音楽を聞いて欲しい。

ZEPのオリジナル・アルバム9枚のうち、一般的に評価が高いのは前半の4枚だと思う。僕は6枚目の『フィジカル・グラフィティ』(1975年)と最後のアルバム、『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』(1979年)が特別に好き。空間の響きが素晴らしくて、完成度が半端なく高い。後者はリアルタイムで聞いていたから、思い入れも深い。

ZEPの素晴らしいところはオーバーダビングが少ないところ。4人での演奏に最小限のダビングが施されているだけ。ゲスト・ミュージシャンも居ない。後期はアンサンブルが恐ろしいほどに完成されていて、無駄な音がひとつもない。そしてドラムの音がいつも素晴らしい。おそらく天井の高い部屋で、アンビエンスとともに少ない数のマイクで録音されている。バスドラムやスネアと云った単体の音ではなく、ドラムキットが全体として力強く迫ってくる。ボンゾがその空間で叩いている姿が目に浮かんでくる。

ボンゾのドラムはZEPのコア。彼の代わりはいない。1980年9月24日、僕は16歳。朝刊でボンゾの死を知ったときはほんとうにショックだった。あのドラムを生で体験することはもう叶わない。それゆえ、彼の死をきっかけに、バンドの解散が決まったことは隠れファンとしても納得がいった。その潔さが好きだった。

世界中に多大な影響を与えたバンド。あちこちの楽器屋で「天国への階段」をあまりに多くの人が弾くので「NO STAIRWAY」と張り紙がしてあったのは有名な笑い話。聞いたことがない若い世代には『フィジカル・グラフィティ』を勧めます。ロック・バンドが到達したひとつの最高峰だと思うから。


レッド・ツェッペリン / LED ZEPPELIN:1968年、ザ・ヤードバーズのギタリストだったジミー・ペイジが、ジョン・ポール・ジョーンズ(bass)と出会い、バンド・オブ・ジョイにいたロバート・プラント(vocal)、ジョン・ボーナム(drums)に声をかけて結成。1969年、バンド名と同じタイトルのアルバム『レッド・ツェッペリン』でデビュー。1969年10月『レッド・ツェッペリンⅡ』、1970年10月『レッド・ツェッペリンⅢ』、1971年11月『レッド・ツェッペリンⅣ』を立て続けにリリース。『Ⅳ』に収録された7分を超える大作「天国への階段 / Stairways To Heaven」はロック少年のバイブルとなった。1973年3月、ジャケットをヒプノシスが担当した『聖なる館 / Houses Of The Holy』、1975年2月、初の2枚組『フィジカル・グラフィティ / Physical Graffiti』を発表。1976年3月には『プレゼンス / Presence』を、同年9月には『永遠の詩(狂熱のライヴ)/ The Song Remains The Same』、1979年8月『イン・スルー・ジ・アウト・ドア / In Through The Out Door』を発表。
1980年9月、ジョン・ボーナムが突然の事故死。同年9月、「彼なしでのバンドの継続は無理」とバンドは解散を発表。ライヴ・パフォーマンスによる人気はもとよりレコード・セールスでも成功を収め、全世界で3億枚以上のアルバムを売り上げた。1985年、フィル・コリンズのステージに招き入れられた3人で演奏、1988年、アトランティック・レコード40周年コンサートでは、ジョン・ボーナムの息子、ジェイソン・ボーナムを加えてレッド・ツェッペリン名義のライヴを行った。
1995年には「ロックの殿堂」入りを果たし、2005年には「グラミー賞:生涯業績賞」を受賞。その1年後には、ストックホルムで「ポーラー音楽賞」を受賞し、創設メンバーのジョン・ポール・ジョーンズ、ジミー・ペイジ、ロバート・プラントとジェイソン・ボーナムは、2007年ロンドン O2アリーナでアトランティック・レコードの創設者、アーメット・アーティガンのトリビュート・コンサートのヘッド・ライナーを務めた。さらに、アメリカの文化の生涯にわたる貢献に対して「ケネディ・センター名誉賞」を2012年に受賞。2014年1月にはグラミー賞「ベスト・ロック・アルバム」賞をアーメット・アーティガンのトリビュート・ライブを収録したライヴ・アルバム『祭典の日(奇跡のライヴ)/ Celebration Day』で受賞。レッド・ツェッペリンとして初のグラミー賞の受賞となった。

オフィシャルサイト

『The Song Remains The Same [Super Deluxe Boxed Set] / 永遠の詩(狂熱のライヴ)〈2018リマスター〉【スーパー・デラックス・ボックス・セット】』
2018年9月7日発売
ワーナーミュージック・ジャパン
WPZR-30800/9 ¥35,000(税別)

人気・実力の絶頂期とも言える1973年のライヴの模様を収録した伝説的ライヴ作品をジミー・ペイジによる最新リマスタリングでリリース。2枚組CDと4枚組重量盤180グラム・アナログに下記をセットしたスペシャル・パッケージ。

・映画『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ / The Song Remains The Same』本編や、映画では使われなかった「祭典の日 / Celebration Day」「丘のむこうに / Over The Hills And Far Away」「ミスティ・マウンテン・ホップ / Misty Mountain Hop」「オーシャン / The Ocean」の4曲のアウトテイク・パフォーマンスをボーナス映像として収録した2枚組DVD
・アルバム収録曲のDolby Digital 5.1サラウンドとPCMステレオ音源に加え、フォト・ギャラリーを収録したDVD
・アルバム収録曲の96kHz/24ビット ハイレゾ音源のダウンロード・カード
・28ページにも及ぶ、バンド・フォトや映画からのライヴ写真、キャメロン・クロウによるエッセイなどを掲載したブックレット
・現在入手困難となっている、1977年に日本で映画が公開された時に販売されていた、日本版映画パンフレットの復刻レプリカ・パンフレット
・オリジナル・アルバム・ジャケットのハイ・クオリティ・プリント(初回30,000セットにはナンバリング付)

同時発売:
『The Song Remains The Same [2CD] / 永遠の詩(狂熱のライヴ)〈2018リマスター〉【2CD】』WPCR-18071/2 ¥3,000(税別)
『The Song Remains The Same [4LP] / 永遠の詩(狂熱のライヴ)〈2018リマスター〉【4LP】』WPJR-10043/6 ¥12,000(税別)

『How The West Was Won [Super Deluxe Boxed Set] / 伝説のライヴ -HOW THE WEST WAS WON-〈2018リマスター〉【スーパー・デラックス・ボックス・セット】』
2018年3月23日発売
ワーナーミュージック・ジャパン
WPZR-30784/92 ¥25,000(税別)

LED ZEPPELIN 50TH ANNIVERSARY YEAR記念作品! 2003年にリリースされた、バンド解散後に発表された1972年の名ライヴ・アルバム『伝説のライヴ』の最新リマスタリング盤。3CD+4LPに下記をセットしたスーパー・デラックス・ボックス・セット。

・最新リマスター音源を収録した3枚組CDと4枚組重量盤180グラム・アナログ
・アルバム収録曲のDolby Digital 5.1サラウンドとPCMステレオ音源に加え、フォト・ギャラリーを収録したDVD
・アルバム収録曲の96kHz/24ビット ハイレゾ音源のダウンロード・カード
・コンサート会場で撮影された未発表写真やレアな写真に加え、メモラビアなどを多数掲載した本
・オリジナル・アルバム・ジャケットのハイ・クオリティ・プリント(初回30,000セットにはナンバリング付)

同時発売:
『How The West Was Won [3CD] / 伝説のライヴ -HOW THE WEST WAS WON-〈2018リマスター〉【3CD】』WPCR-17986/8 ¥3,300(税別)
『How The West Was Won [4LP] / 伝説のライヴ -HOW THE WEST WAS WON-〈2018リマスター〉【4LP】』WPJR-10024/7 ¥8,800(税別)

『フィジカル・グラフィティ / Physical Graffiti【リマスター/スタンダード・エディション】』
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-16365/6 ¥2,600(税別)


自ら設立した「スワン・ソング」レーベルからの第1弾リリース。バンド史上初の2枚組アルバムであり、ビルボード・アルバム・チャート最高位1位(6週)を記録した、1975年発表作品。オリジナル・アルバムに収録されている15曲は、ツェッペリンのダイナミックな音楽レンジを表すもので、ロックにドライブする「カスタード・パイ / Custard Pie」、アコースティックなアレンジとなる「ブロン・イ・アー / Bron-Yr-Aur」、オリエンタルのフレイバーを織り交ぜた「カシミール / Kashmir」、ファンキーなグルーブの「トランプルド・アンダー・フット / Trampled Under Foot」などツアーの原動力ともなった楽曲が揃っている。2014年にスタートしたジミー・ペイジ監修、最新デジタル・リマスターによるオリジナル・アルバム、スタンダード・エディション第3弾。

『In Through The Out Door / イン・スルー・ジ・アウト・ドア』【リマスター/スタンダード・エディション】
ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-16687 ¥2,000(税別)

1979年に発表された、バンド最後のオリジナル・アルバム。サンバ、カントリー、ダンスほか、これまでにないサウンドを取り入れた。ビルボード・アルバム・チャート最高位1位を獲得。2014年にスタートしたジミー・ペイジ監修、最新デジタル・リマスターによるオリジナル・アルバム、スタンダード・エディション。
*オリジナルの茶封筒仕様も復刻再現

著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』には阪神・淡路大震災後に作られた「満月の夕」が収録され、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。東日本大震災後は、仲井戸“CHABO”麗市、矢井田瞳らと“MY LIFE IS MY MESSAGE”として、福島県相馬市の人たちと希望のヴァイブレーションを起こすイベントを続けている。2018年4月から池畑潤二 (Drums)、細海魚 (Keyboard)と新生HEATWAVEの活動を開始、12月19日大阪を皮切りにいよいよツアーがスタートする。リスナーからのリクエストで構成されるソロ・アコースティック・ツアー“YOUR SONGS 2018”も残すところあと5本。2017年12月22日渋谷duo MUSIC EXCHANGEのライヴを収録した『OFFICIAL BOOTLEG #005 171222』、17歳から現在に至るまでの激レア&貴重音源満載の『山口洋の頭の中のスープ』好評発売中。

オフィシャルサイト

ライブ情報

山口洋 solo tour“YOUR SONGS 2018”
10月28日(日)小倉GALLERY SOAP
11月3日(土・祝)岡山 Blue Blues(ブルーブルース)
11月6日(火)出雲 London Pub LIBERATE
11月8日(木)高松 Music&Live RUFFHOUSE
11月10日(土)高知 シャララ opening act 中塚詩音
ブログのコメント欄にて、リクエスト受付中

HEATWAVE SESSIONS 2018_III
11月25日(土)吉祥寺STAR PINE’S CAFE
詳細はこちら

HEATWAVE TOUR 2018 “Heavenly”
12月19日(水)大阪 バナナホール
12月20日(木)福岡 Gate’s7
12月22日(土)東京 duo MUSIC EXCHANGE
詳細はこちら

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