Interview

宮崎秋人&木村 了が駆け抜ける光と影の42.195km──舞台『光より前に~夜明けの走者たち~』。ふたりが向き合うオリンピックランナーの人生

宮崎秋人&木村 了が駆け抜ける光と影の42.195km──舞台『光より前に~夜明けの走者たち~』。ふたりが向き合うオリンピックランナーの人生

東京オリンピックで銅メダルを獲得し、一躍国民的ヒーローとなりながらも、その後、重圧に苦しみ、27歳で自ら命を絶った悲劇のランナー・円谷幸吉。そして、東京オリンピックで8位に沈むも、挫折を乗り越え、メキシコオリンピックで銀メダルに輝き、77歳になった今もなお走り続ける君原健二。好対照のふたりの軌跡が、今、舞台に刻まれる──それが、11月14日(水)から開幕する舞台『光より前に~夜明けの走者たち~』だ。
本作は、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『三文オペラ』など意欲作が目立つ谷 賢一が温め続けてきた作品。円谷幸吉 役に宮崎秋人、君原健二 役に木村 了を配し、ただ走り続けたふたりの男の生き様を描く。日本中に衝撃をもたらした英雄の死。そしてその遺志を受け継ぐように掴んだ銀色のメダル。あの光と影の季節を、円谷と君原はどう生きたのか。若きふたりの俳優が、物語に込めた想いを語ってくれた。

取材・文 / 横川良明 撮影 / 増田慶


了くんは、ひねくれているなあって(笑)

まずは本読みを振り返って、お互いのお芝居の印象からお話しいただければ。

宮崎秋人 了くんは、ひねくれているなあって(笑)。

木村 了 (笑)。

宮崎 もちろんいい意味で、ですよ(汗)。もう全部裏をかいてくる。でもそれは、ちゃんと君原さんのことを調べてきているからで。音とか間とか、全部僕の予想を超えてきた。初めて読み合わせしたときは心の中で白旗を振っていました、この人にはかなわないって(笑)。

宮崎秋人

木村 そこで言うと秋人くんはまっすぐだなあって。

宮崎 (笑)。

木村 いや、それで正しいんだよ。だってまっすぐな役だから。円谷さんはまっすぐすぎたがゆえに、ああいう悲しい道しか残されていなかった人。秋人くんは、稽古を重ねるごとにどんどん「このまま死ぬんじゃないか!?」っていう雰囲気が出てきて。もう円谷さんとの同化が始まってるなって思った。

宮崎 了くんは? 君原さんと同化しているなって感じるところある?

木村 僕はナイーブになった(笑)。前までは全然気にしていなかったのに、すごく周りの目が気になってきて。だから谷さんからのノート(※演出家からの提案のこと)もすごく怖い(笑)。本当はノートとかすごい欲しい人なのに(笑)。でも、谷さんからのノートを受けて、みんなの芝居がどんどん変わっていくのがわかるから、今はすごく楽しいです。

木村 了

宮崎 楽しいですね。本読みを聞いていても、ノートをもらって了くんが「あ、腑に落ちたんだな」っていうのがよくわかる。そこで瞬時に芝居を変えてこられるのもすごいなって思いますし。

木村 秋人くんの芝居は、心から感情を出す人なんだってわかるから気持ちいい。信頼できる人だなっていうのが芝居から伝わってくる。

宮崎 嬉しい(照)。

木村 絡みがあんまりないので、もっと絡みたかったっていうのが本音ではあるんですけど、今回はこれがいい距離感なんだろうなと思っています。

走ることで、自分のことを考えるようになった

(ワタナベエンターテインメントの)渡辺ミキ社長が「宮崎秋人の顔つきが、以前とまったく違っていた。随分、走り込んでいるらしい」とツイートしていたのも気になりました。役づくりとして、やはり走り込みを?

宮崎 そうですね。稽古が始まる前にみんなで集まったことがあって、そのときに谷さんも了くんも走ってると言ってて。みんな考えることは同じなんだなと思いました。ただ僕は走るのが大嫌いで(笑)。学生の頃にバスケをやっていたときも体力づくりの一環で走らされるのがすごく嫌だったし。校内マラソンも参加しないでいいならしたくないタイプです(笑)。

(笑)。そんななか、実際に走ってみて、今、走ることについて、どう考えていますか?

宮崎 孤独だな、ということは感じますね。朝ひとりで走っていても、支えてくれる人もいなければ支える人もいない。でもそのときにふっと了くんの顔がよぎるんですよ。了くんも走っているんだから自分も頑張らなきゃって。

木村 僕は走ることで、すごく自分のことを考えるようになりました。ほかのことは何も考えない。ただつねに「己とは?」みたいなことを考え続けているんです。もともと走るのは好きだったけど、そんなふうになったのはこの作品に入ってから。もしかしたらこれも君原さんと同化し始めているからなのかもしれないですけど。

宮崎さんは、円谷幸吉さんのご実兄である喜久造さんともお会いになったそうで。

宮崎 円谷さんが子供の頃のことを聞いたりして。「兄弟喧嘩とかなかったんですか?」って伺ったら、「周りをよく見る子だったから、上が親に怒られているのを見て、自分は怒られないようにうまく立ち振る舞っていた」とおっしゃっていました(笑)。家族から見てもいい子だったそうで、改めて真面目でまっすぐで純粋な方だったんだなって思いましたね。

木村さんは、君原さんに近づくためにどんな取り組みを?

木村 ご存命の方を演じるのが初めてなので、まずはどんな方だったのか知るために文献や書籍を読みあさっています。知れば知るほど面白い方で、君原さんは自分の理論を絶対的に信用しているんですよ。人に何を言われても動じない。そこはすごく共感するところで、役者も演じるにあたってこの方法が絶対に正しいなんてものはない。だから、自分を信じるしかないんです。そういうところは似ているなと思いました。

我を忘れるくらい入りこまないと、円谷さんは演じられない

では、ここからはより人物像を深く掘り下げていくために、集中して質問させてください。まずは宮崎さんに円谷さんのことを聞いていきますね。本を読ませていただきましたが、終盤、円谷さんは朝が来るたびに自分が思うように走れないことを知り、追い込まれていく様子は胸が痛みました。

宮崎 1回目の本読みのとき、そのくだりを徐々に絶望の度合いが上がっていくようにやってみたんですね。そしたら谷さんから「最初から100パーセント希望、100パーセントどん底でやってみて」って言われて。そのとおりにやってみたら全然違ったんですよ。朝起きるたびにどん底に突き落とされる、その繰り返しで。自分でやりながらもうラクにしてくれって思ったし、もうページをめくりたくないとさえ思いました。でもおかげで、ああいう選択をとった円谷さんの気持ちに少し近づけた気がして。

その振り幅の差はたしかにキツいですね。

宮崎 僕はどちらかというと役と距離を取るタイプで、あまり没入しすぎて周りが見えなくなることってないんですけど。今回に関しては自分もそうなる可能性があるというか、そうならないととても到達できない。我を忘れるくらい入りこまないとできない役なんだということを痛烈に感じています。

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