LIVE SHUTTLE  vol. 299

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back number 巨大な空間を前にしても彼らは変わりなく、揺るぎなく、「歌」を伝えるパフォーマンスに集中していった。頼もしくさえあった初のドーム・ツアーを振り返る。

back number 巨大な空間を前にしても彼らは変わりなく、揺るぎなく、「歌」を伝えるパフォーマンスに集中していった。頼もしくさえあった初のドーム・ツアーを振り返る。

dome tour 2018“stay with you”
2018年8月11日 東京ドーム

ライブは「瞬き」からスタートする。清水依与吏はスポット・ライトのもと、呼吸の延長のように歌い始めた。2曲目の「SISTER」では、早くも広いドームが、躍動感と解放感に包まれた。楽曲がもつ瞬発力、それに即座に観客が呼応する。「逢いたかったぜー、ヨロシク!」。そんな短い挨拶も、ばっちりキマってる。

「青い春」を歌い終わった後だった。清水はMCで、たとえドームとはいえ、特別に、ではなく、「なるべく普通にやること」を目指したいと言った。しかしこれが難しい、とも付け加え、自分達には「“ちいさな歌”しかないけど、それがここで、どう響くのか」を試したいんだと、意気込みを語った。このMCは、心に響いた。ドームで様々なアーティストを観てきたが、ここまで潔い態度を示した人達というと、過去に記憶がないくらいなのだ。

どこが潔いのか? 普通はドームなら、誰もが巨大な空間を前にして、ここでしか出来ないことをやろうとして、そんな演出に意識を向ける。しかし彼らは、これから伝わっていくであろう「歌」のため、この空間を、いかにして“歌が満たすスペースのまま”にしておくかに意識を集中するかのようだったのだ。

勇気が必要なことでもあったろう。音楽に対する反応には、顕在的なもの(拍手や歓声)がある一方で、潜在的なもの(じっと歌を心に留める)もある。前者は言うまでもないが、「歌」を伝えるということは、場内が後者の反応にも大きく傾く。でも3人は、自分達を信じ、揺るぎなく、「歌」を伝えるパフォーマンスに集中していった。

「チェックのワンピース」、「エンディング」、「ハッピーエンド」のあたりで想った。back numberのライブを観ていると、歌のストーリーのなかに、自分も道ばたのエキストラとなり、“出演”してる感覚になるのである。主人公と自分が、ぴったり重なる必要はない(だから)エキストラ、なのだ。登場人物の性別も、さして関係ない。それでも充分に、自分のなかから“似た経験”が呼び覚まされ、歌への共感に変わる。

今はそこに居ないヒトの残像を追ったり、つかえた言葉を吐き出せずにいた経験を、気付けば想い出し、これらを僕自身も、体に染み込ませていたわけだ。「ゆめなのであれば」を歌う時、清水は「最近気に入っている歌」と付け加えた。

サブ・ステージに移動しての2曲は、とても興味深いものだった。演奏された「西藤公園」と「重なり」は、インディーズ時代の最初のミニ・アルバム『逃した魚』からのもの。ここではサポートが外れ、3人だけのパフォーマンスとなる。しかも、初期に使っていた楽器を、わざわざ用意しての演奏だ。

それはバンドマンにとって、苦楽を共にした分身のようなものだろうし、小島和也も栗原寿も、感慨深げである。初期のライブは未見だが、“こんな演奏だったのかなぁ”と想像し……、いや、いくら楽器は当時のものでも、それでは彼らの腕前に進歩がないことになる。ここの文章は、即刻撤回する。なお、この時、清水は自ら手にしたギターのことを“棹(さお)”と呼んでいた。これ、バンドマン用語だ。細かいことだが、なんかイイナと思った(ホント、細かいことなんだけど…)。

「クリスマスソング」、「ヒロイン」と、季節とは真逆の歌が続く。こういうセットリストも、アーティスト冥利に尽きるのではなかろうか。歌が流れるその何分間かだけ、ドームの中を、冬特有の西高東低の気圧配置へと変化させたなら、まさにこれぞ、音楽のマジックなのだ。今回のドーム・ツアーのタイトルは「stay with you」だけど、このあと演奏されたのは「stay with me」。

新曲の「大不正解」が聴けたのも収穫であった。全体に、歌詞もメロディも演奏も、隙や緩みのない作品だ。歌詞を改めて確認したが、[言葉は2層 面もそう]という、このフレ−ズは個人的に、とても秀逸だと評価している。すっかりお馴染みの「スーパースターになったら」の、観客達が歌うパートでの大合唱などは、ドームの大きさに正比例し、いつも以上の熱量を発した。

「ネタンデルタール人」から始まったアンコール。最後に清水が本音で様々なことを語ったが、自分達がドームまで来られたからといって、慢心は一切ない、ということを、これでもかと念を押すように、様々な言葉にしていた。それを凄く、頼もしく感じた。

文 / 小貫信昭 撮影 / 半田安政(Showcase)

back number「dome tour 2018“stay with you”」
2018年8月11日 東京ドーム

セットリスト

01. 瞬き
02. SISTER
03. ARTIST
04. 青い春
05. チェックのワンピース
06. エンディング
07. ハッピーエンド
08. ゆめなのであれば
09. 半透明人間
10. 海岸通り
11. 西藤公園 
12. 重なり  
13. クリスマスソング
14. ヒロイン
15. stay with me
16. 大不正解
17. MOTTO
18. スーパースターになったら
<ENCORE>
en1. ネタンデルタール人
en2. ささえる人の歌
en3. 高嶺の花子さん

back number

清水依与吏(Vo・G)、小島和也(B・Cho)、栗原寿(Dr)の3人組。
2004年、群馬にて清水依与吏を中心に結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年現在のメンバーとなる。2009年2月1stミニアルバム『逃した魚』リリース。2010年6月1stアルバム『あとのまつり』リリース。2011年4月メジャーデビューシングル『はなびら』リリース。同年10月2ndアルバム『スーパースター』をリリースし、“スーパーツアー2011”開催。2012年11月3rdアルバム『blues』リリース。2013年9月初の日本武道館公演「live at 日本武道館-stay with us-」開催。2014年3月4thアルバム『ラブストーリー』リリース。2015年12月5thアルバム『シャンデリア』リリース。2016年1月から6カ月をかけて全国のホール&アリーナ全国32か所39公演をまわるツアー「back number tour 2016 “ミラーボールとシャンデリア”」を開催。同年12月、初のベスト・アルバム『アンコール』をリリース。2017年2月から全国アリーナツアー“All Our Yesterdays Tour 2017”を開催。

ツアー特設サイト
http://backnumber.info/feature/dometour2018

オフィシャルサイト
http://backnumber.info/

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