モリコメンド 一本釣り  vol. 89

Column

reGretGirl ダイレクトに歌われる恋愛(失恋)とストレート過ぎる歌詞に多くのリスナーが引き込まれる3ピースバンド

reGretGirl ダイレクトに歌われる恋愛(失恋)とストレート過ぎる歌詞に多くのリスナーが引き込まれる3ピースバンド

「いつか有名になって自分をフッたことを後悔させてやる」と、後悔を意味する“regret”と女の子の“girl”をくっつけ、バンド名を“reGretGirl”(後悔する女の子)と命名した、というエピソードにまずはグッとくる。もしかしたら“そんなことでバンド名を決めるの?”引く人もいるかもしれないが、10代後半とか20代前半の男にとって、失恋は大きなパワーに転化されることがある。好きな女の子にフラられた男は(よっぽど何も考えない人でない限り)、“何がいけなかったんだろう?”“どうしてこうなったんだろう?”という思考に絡め取られる。それはおそらく初めて自分を客観視せざるを得ない事態であり、その状況を抜け出し、前に進むためには、何らかの強いアクションがどうしても必要となる。平部雅洋(V/G)にとっては“バンドで成功して、彼女を見返す”ことが、キツい状態から脱するための方法だったのだろう。

大阪を拠点に活動している3ピースバンド、reGretGirl。平部、十九川宗裕(Ba.)、前田将司(Dr.)によるこのバンドが描くのは(いまのところ)ほとんどが失恋ソングだ。まずはYouTubeの再生回数が480万回に迫る「ホワイトアウト」を聴いてみてほしい。主人公は、恋人に送ったLINEのメッセージがなかなか既読にならないことを不安に感じている男。夜になって「少し会いたい」と連絡が来たから、車で会いに行くが、そこで耳に飛び込んできた言葉が「私、好きな人ができた」のだった——。「ホワイトアウト」とは、その言葉を聞いた瞬間の“頭真っ白”状態のこと。挙句の果てに“僕”は、「どこにも行かないで」と泣きながら彼女にすがりついてしまうのだった。

どこまでもストレートなバンドサウンド、エモーショナルなメロディも印象的だが、それぞれの音楽的な要素はあくまでも歌詞を伝えるためにあるのだろう。ここで歌われているのは、ちょっと驚くほどに女々しく、どこまでも切ない“僕”の心情だ。YouTubeのコメント欄には「歌詞がそのまますぎるという声もありますが僕にはこれくらい直接歌ってくれたほうが好きです」「最近8ヶ月付き合ってた彼女にいきなりフラれたんだが、歌詞が重なってメンタル殺しにきてる。最高」といった声が並んでいる。「ホワイトアウト」で描かれた”フラれっぷりの凄まじさ“が似たような経験を持つリスナーの心を捉えていることはまちないだろう。この曲を含む1stミニアルバム『my』は、6曲すべてが失恋ソング。この極端なまでの潔さもまた、reGretGirlの魅力だ。しかも、じつは楽曲同士がつながっているところもポイント。たとえば「デイドリーム」は「ホワイトアウト」の後日談になっていて、”君“のモノで溢れた部屋でひたすら物思いに浸るシーンが描かれ(←この精神状態はかなりヤバいと思う)、「room」という楽曲では”君“が荷物を取りにくるところを歌にしている。要はひとつの失恋で6曲分のストーリーを綴っているというわけだ。

「ホワイトアウト」は10代に人気のアプリのTik Tokでも拡散。さらに藤田ニコルがInstagramのストーリーでも歌詞を紹介したことでも話題になった。それはreGretGirlがバンドシーンだけではなく、幅広い層にアピールする力を既に備えているということの証左だろう。

10月17日には、2ndミニアルバム『take』をリリース。別れてしまった彼女のことをアレコレと思い出し続ける“僕”を主人公にしたロックチューン「Sunari」(明るくてヌケのいいメロディとバンドサウンドが歌詞の切なさを際立たせている)、<会いたいと思うことが罪みたいに思える>というフレーズが胸を打つバラードナンバー「黒鳥山公園」を含む本作は、ソングライティング、サウンドメイクの両面において、バンドとしての大きな前進を感じさせる仕上がり。平部自身の個人的な体験、感情に根差した歌ばかりだが、多くのリスナーが共感できる楽曲に結びつける表現力を、このバンドは獲得しつつあるのだと思う。

buck number、My Hari is Bad、クリープハイプといったバンドと比較されることも多いようだが、2作にミニアルバムを聴けば、reGretGirlがどのバンドとも似てないことがはっきりとわかるだろう。その理由はとてもシンプルで、平部は彼自身の恋愛(失恋)をダイレクトに歌っているから。恋愛、失恋、入学、卒業、就職、離職、何でもいいのだが、人生のなかで多くの人が経験するであろう出来事は、一見同じように見えて、じつはすべて異なり、だからこそ尊く、かけがえがないのだ。reGretGirlはそんな当たり前の(でも、とても大切な)ことを改めて思い出させてくれる。

文 / 森朋之

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オフィシャルサイト
http://regretgirl.com

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