全話レビュー!『幽☆遊☆白書 25th Anniversary Blu-ray BOX』リリース記念特集  vol. 6

Review

魔界トーナメントの圧倒的面白さと、“祭りのあと”のせつなさ。TVアニメ『幽☆遊☆白書』全話レビュー:魔界編(第95話~第112話[最終話])

魔界トーナメントの圧倒的面白さと、“祭りのあと”のせつなさ。TVアニメ『幽☆遊☆白書』全話レビュー:魔界編(第95話~第112話[最終話])

TVアニメ『幽☆遊☆白書』放送25周年を記念した『25th Anniversary Blu-ray BOX』(全4巻)、そのリリースを祝し、伝説の作品を今一度見直してみよう……ということで始まった短期集中連載。第6回は、TVシリーズがいよいよ完結を迎える「魔界編」の総決算! 約2年3カ月、全112話におよんだTVアニメ最終章のレビューとともに、今回は『幽☆遊☆白書』リアルタイム世代のライター陣が選んだ“ベストエピソード”もご紹介。さらに、Blu-ray BOXへの収録が決定した完全新作アニメーションの情報も!

文 / 逆井マリ(担当話:#95-102)
北野創(担当話:#103-110)
柳 雄大(担当話:#111-112、全体解説)


大胆なシリーズ構成で迎えた『幽☆遊☆白書』ならではのラストステージ

TVアニメ『幽☆遊☆白書』のラストを飾る魔界編は、主人公・浦飯幽助が魔族の血を引く存在であることが明かされた仙水編から繋がって始まる。その前半は、激しい戦いから日常に戻った幽助の違和感をきっかけに、彼の魔界への旅立ち、友との別れが主題に。幽助、飛影、蔵馬──魔界との縁をもつ3人の謎、過去の清算がこれまでの集大成として描かれていく。4代目EDテーマ「太陽がまた輝くとき」の歌・映像の印象も相まって、儚い別れの物語というイメージが強く表れているのがこのパートの特徴といえる。

やがて魔界一国の主となる幽助が選んだ手段が「魔界トーナメント」、すなわち、政治や謀略の世界とは別ものの純粋なケンカ勝負だった。かつて暗黒武術会で出会ったライバルたちの再登場もあり、ここを“最後の祭り”として物語は収束していく(EDテーマも5代目の「デイドリームジェネレーション」に変わる)。

この魔界編の放送スタートを前に、原作コミックはひと足先に連載を完結しており、TVアニメ版ではラストを見据えた大胆なシリーズ構成がとられている。原作では極めてわずかな話数のみで語られた魔界トーナメントだったが、アニメ版ではいくつかのオリジナルエピソードによって厚みを加えたものに。その流れから、終盤はアニメ独自の方法で完結に向かう。しかしそうしたオリジナル展開を迎えつつある中でも、ファン心理としては“きっとうまくいく”という安心感が本作には確立していたし、実際にシリーズは見事なできばえで完結した。特筆すべきは主役の幽助で、彼は魔界全土を巻き込む大胆な提案をするという立場にあるが、これを佐々木望が2年間で培った存在感とともに演じ切っている。この幽助というキャラクターの“揺るがなさ”は、間違いなく作品終盤の魅力の源泉になっていた。

『幽☆遊☆白書』は「ジャンプ」漫画における、いわゆる王道のバトルものに属する作品だ。しかし近い系統の作品には見られないオシャレさ、シニカルさが特色で、その頂点を極めたのが最終章・魔界編だった。初代霊界探偵・佐藤黒呼との出会いと会話からして、幽助は当時まだ中学生だというのに、なんと大人びた世界に見えたことか……。

「どっちだろう 泣きたくなる場所は 2つ○(マル)をつけて ちょっぴりオトナさ」、本作主題歌「微笑みの爆弾」の1フレーズだが、どこか作品の核心を言い当てているようなフレーズでもある。この楽曲が第1話から最終話まで欠かさず使用され続けたことも、今なら深く頷ける気がする。

〈第95話~第112話「魔界編」主題歌データ〉
OPテーマ「微笑みの爆弾」(第112話はEDでも使用) 歌:馬渡松子
EDテーマ「太陽がまた輝くとき」(~第102話) 歌:高橋ひろ
EDテーマ「デイドリームジェネレーション」(第103話~111話) 歌:馬渡松子

「あの仙水とのタイマン勝負に割り込まれてから、ずーっと何をやっても中途半端な感じがして、しょうがねぇんだ」

第95話 幽助の運命・危険の足音
脚本:隅沢克之 絵コンテ:高橋資祐 演出:新房昭之 作画監督:高橋資祐
(1994年8月27日放送)

仙水との最終決戦時、何者かに意識を支配されたことを不服に思う幽助は、人間界に帰ってからもスッキリとしない日常を送っていた。そんな幽助へのアドバイスとして幻海師範が紹介した人物は、初代霊界探偵であった佐藤黒呼。人里離れた森の奥で静かに暮らす黒呼とその家族は、幽助を優しく迎え入れる。

仙水とのラストバトルが伏線となって始まる新章。明るいトーンで描かれた風景とは裏腹の暗い劇伴音楽が不穏な空気を醸しだす。幽助と黒呼との一連のやりとりが印象的な回だが、黒呼がブランデーを一滴垂らした紅茶を幽助に(また、子どもたちにはウィスキーボンボンを)渡すシーンは白眉。本作の原作からのアニメ化にあたって、飲酒や喫煙にまつわる表現は各所で工夫されていたが、特にこのシーンは当時のスタッフの誠意を感じる。結果、ちょっとしたやりとりだが、黒呼のサバサバとしたキャラクター性と幽助との関係性が伝わるワンシーンになったように思う。

また、魔界編へ突入した今回からはオープニング映像が一部リニューアル。新キャラの軀、黄泉、さらに暗黒武術会編からの再登場となるかつてのライバルたちなど、登場人物があちこちで一新されている。小っちゃくなった死々若丸がカワイイ。

「たった三名の妖怪同士の争いが、魔界全てを巻き込みつつあるのです」

第96話 闇の訪問者・深まる謎
脚本:大橋志吉 絵コンテ:うえだしげる 演出:中山晴夫 作画監督:室井ふみえ・越智信次
(1994年9月3日放送)

黒呼の家を訪れていた幽助のもとに、魔界から3人の使者がやってきた。そのリーダー・北神は、現在の魔界をめぐる数々の事実を語り出す。魔界の三大勢力である雷禅(らいぜん)、軀(むくろ)、黄泉(よみ)、彼らは「人間を食糧にするか否か」で500年以上にらみ合いを続けていた。しかし、北神たちの国王である雷禅……幽助の本当の父親であるその妖怪に、命の危機が訪れているという。

緊迫感溢れる攻防の中で、幽助の父親のことや、魔界の現状が露わになっていく。幽助を魔界にいざなう北神は、本作では蔵馬の次に丁寧な言葉づかいと薔薇が似合うと感じられた紳士なキャラクター。堀内賢雄の甘く渋みのある声がマッチして独特の存在感を放っている。

「ちょうど3年したら戻ってくる。約束するよ。そしたら… 結婚しよう」

第97話 別れ・それぞれの旅立ち
脚本:富田祐弘 絵コンテ:水野和則 演出:小柴純弥 作画監督:井上敦子
(1994年9月10日放送)

北神の説得、そして黒呼のすすめにより魔界へ旅立つことを決意した幽助。いっぽう時を同じくして、蔵馬の元には魔界の三大国王のひとりである黄泉から、飛影の元には軀からの使者が訪れていた。

“それぞれの旅立ち”としての名シーンが続出する一本。幽助と螢子の河川敷~雪村食堂でのやりとりは、個人的にもとりわけ思い入れがある。魔界へ行くことを決めた幽助に「帰ってきたら教えてね。私の彼氏紹介してあげる」と突き放す螢子。そうしてフラれてしまった幽助が、螢子の自宅でもある雪村食堂を訪れ、3年で帰ってくることを約束、そしてプロポーズ。一時BGMが止まり、思わず息を止めて観てしまうニクい演出……このドラマティックな流れ、“神回”と言わずしてなんと言おう! そんな本編の最後、振り向かずに螢子に手を振る幽助の姿も印象深い。EDテーマ「太陽がまた輝くとき」の切ない歌詞が特に染みる回だ。

「なんで人間食うのやめたんだ?」「オシメがとれたら教えてやる」

第98話 魔界へ! 父との対面
脚本:橋本裕志 絵コンテ:榎本明広 演出:うえだしげる 作画監督:榎本明広
(1994年9月17日放送)

桑原やぼたん、コエンマらは幻海の寺に集まっていた。幽助だけでなく蔵馬、飛影も魔界に行くことが明らかになり、霊界特別防衛隊が再び開けた扉からそれぞれが旅立つ。魔界に到着した幽助は、北神たちの案内により父・雷禅と対面する。

魔界に行く直前、幽助を引き留めようと熱弁をふるった桑原はもちろんだが、敵対していた霊界特別防衛隊の面々すら惹きつけてしまう、そんな幽助のヒーロー感が見逃せない。戦友たちに男の背中を見せて次なるステージと向かっていくその姿は、どこか戸愚呂・弟の旅立った暗黒武術会編ラストシーンにだぶって見えた(最も、戸愚呂の場合は辛い地獄である冥獄界へ向かう哀しいシーンであったが……)。そんな雄々しい幽助が巨大なプーを撫でるシーンは一段と愛おしい。

そして今回の見どころはやはり、いよいよ登場した雷禅(声:菅生隆之)と幽助との親子対面。衰弱しているとは思えない雷禅の圧倒的な存在感にまず驚かされる(幽助の凄みのある眼光は親譲りだったのか!)。お互いの挑発的な会話にも、血のつながりを強く感じさせられた。

「強くなればなる程貴様が遠くなっていく気がするぜ。化物め」

第99話 忘れ得ぬ記憶・誕生の時
脚本:隅沢克之 絵コンテ:下田正美 演出:下田正美  作画監督:嶋村秀一
(1994年9月24日放送)

魔界三大勢力の一角であり、身体を包帯と呪符に覆った妖怪・軀。この軀の元を訪れて半年、戦い続ける飛影は故郷の夢を見ていた。そんな時、軀は直属の戦士・時雨(しぐれ)を飛影に差し向け、勝負に勝てば自身の正体も見せるという。しかし、時雨は飛影に邪眼の手術を施した“魔界整体師”で、かつての“師”でもあった。

初めて明かされる飛影の複雑な生い立ちと、妹の雪菜に正体を明かさない理由。飛影の故郷の幻想的な風景と、殺伐とした戦いの光景が物悲しさを一層強める。孤独こそが飛影の強さの理由であり、復讐こそが飛影の生きる目的だった。そんな彼の孤高の生きざまを丁寧な展開で描いていく。この一連のエピソードであらためて飛影の虜になったファンは男女問わず多かっただろう。もちろん、私もその一人である。

「真剣勝負は技量にかかわらずいいものだ。 決する瞬間、互いの道程が花火の様に咲いて散る」

第100話 明かされる邪眼の秘密
脚本:大橋志吉 絵コンテ:小柴純弥 演出:小柴純弥 作画監督:山沢 実
(1994年10月1日放送)

軀の直属戦士・時雨に立ち向かっていった飛影。勝負は相打ちとなったが、軀は飛影への褒美として氷泪石(ひるいせき)を渡す。生後まもない飛影が、天空の氷河の国から魔界の森に投げ落とされた時に持っていた氷泪石。これこそ飛影が探し求めていたものだったが……。

記念すべき第100回は、時雨(声:谷口節)との戦いとともに飛影の過去が描かれた。時雨と飛影の相打ちは、お互いの身体の一部、しかも時雨に関しては顔面を断ち落とされるという凄惨さで、これまでの戦いのなかでもひときわ強烈(原作の見開き・断ち切りページで描かれた最後のシーンは、子ども心にショッキングであった)。この過激な対決をスローモーションの演出で忠実に描いたところに、スタッフの熱意をビシバシ感じる。

名場面が続出の回だが、物語を引っ張っていく飛影の独白がやはり見どころと言えるだろう。「以前は生きるために戦い、勝つために手段を選ばなかった。目的があったからだ。だが今はない。今はいかに死ぬかだ」と言う飛影。そして意識を失った飛影に、軀は「お前はまだ死に方を求める程強くない」と語りかけた。正体が女性であることが明らかになった軀、そのミステリアスな美しさと、ザラッとした苦みをにじませる2人の関係性には今も昔も興味をかき立てられる。そんな軀を演じているのは高山みなみ。中性的で少年らしさのある声の持ち主である彼女はまさしく適役で、魅力的なキャラクターをより引きたてている。

「オレに会って最初はとまどった…だと?  猿芝居はいったい誰に習った?」

第101話 魔界盗賊・千年目の再会
脚本:橋本裕志 絵コンテ松井仁之 演出:松井仁之 作画監督:千葉道徳
(1994年10月15日放送)

妖狐蔵馬とかつての盗賊仲間であった黄泉。現在の彼は、国家の軍事会議に蔵馬を参加させたり、意見を求めたりとかつての旧友に信頼を寄せているように見えたが……裏には愛憎入り混じる歪な関係性があり、その理由には黄泉が盲目になる原因である過去の事件が関係していた。

前回までの飛影に続き、一連の会話のなかで蔵馬の過去が明らかになっていく。蔵馬と黄泉、頭脳派の2人ならではの駆け引きがスリリングだ。普段は穏やかで紳士的だが、大切なものを守るため時には冷徹になる蔵馬。人間界で母親の恩恵を受け形成されていったその人格だが、それ以前の盗賊・妖狐蔵馬はかなりドライな性格であったことが推察される。そんな蔵馬に相対する黄泉に命を吹き込んだのは、トム・ハンクスなどの洋画吹き替え声優としても有名な江原正士。渋みの効いた低い声は、冷酷なセリフを放つ黄泉とも抜群の相性となった。

「なれあいより刺激を。そんな関係みたいです」

第102話 妖狐変化! 忍び寄る殺意
脚本:富田祐弘 絵コンテ:高橋資祐 演出:小柴純弥 作画監督:高橋資祐
(1994年10月22日放送)

黄泉の参謀として動くようになった蔵馬は、幻海とコエンマの協力を受けながら、人間界で戦士の養成を行っていた。当初は高圧的だった黄泉の部下たちを次々と味方につけていく蔵馬。その活躍を黄泉国家の軍事総長・鯱(しゃち)は妬んでおり……。

ここで蔵馬が育てている新戦力こそが、魔界編オープニング映像に登場している鈴駒、酎、凍矢、陣、鈴木、死々若丸の6人。暗黒武術会編を観てきたファンにとって胸アツの展開である。彼らが修行する幻海の寺、そこで蔵馬とコエンマがかわす会話も、初めは黄泉の誘いに乗り気ではなかったはずの蔵馬に妖狐の血が騒いでいる様子が感じられ印象深い。そして、襲いかかる鯱を前に覚醒し、妖狐として圧巻の戦いを見せた蔵馬。彼の終始張りつめた表情にも注目してほしい。

「あーーー……ハラへったな」

第103話 父の遺言・遠い日の想い
脚本:隅沢克之 絵コンテ:うえだしげる 演出:中山晴夫 作画監督:室井ふみえ
(1994年10月29日放送)

幽助が魔界にやって来てから早一年が経ち、修行の成果もあって今や父・雷禅の部下たちを上回る実力を身につけていた。そんな折、雷禅が自身の寿命を縮めてまでも人間を食することを拒み続けてきた理由を幽助に告げたのち、静かに息を引き取る。魔界を統治する三大勢力のパワーバランスが崩れたことで、新たな動きを見せようとする黄泉と軀。だが、幽助は彼らに先んじて思わぬ行動を取るのだった。

この回の見どころは何といっても幽助と雷禅という、魔族大隔世によって繋がりを持つ父子のやり取りにあるだろう。これまで己のことを語ることのなかった雷禅が、今際の際に息子に語ったのは、700年前に心を奪われた人間の女、幽助の魔族大隔世のルーツとなる女性の話。原作コミックにはない描写も加えた逢瀬の物語は、子どもが楽しむには少し艶やかすぎる?と思うぐらいだが、雷禅の一途な男気が伝わる良エピソードだ。最後の言葉が「あーーー……ハラへったな」というところも実に彼らしい。

また、この回よりエンディングテーマが馬渡松子の歌う「デイドリームジェネレーション」に変更。シャープながらもどこか哀感の漂う楽曲の素晴らしさは言うに及ばず、個人的にはEDアニメで、魔界編に突入してすっかり出番がなくなった桑原の新規アニメーションを見られたことがうれしかった。

1 2 3 >
vol.5
vol.6
vol.7