全話レビュー!『幽☆遊☆白書 25th Anniversary Blu-ray BOX』リリース記念特集  vol. 6

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魔界トーナメントの圧倒的面白さと、“祭りのあと”のせつなさ。TVアニメ『幽☆遊☆白書』全話レビュー:魔界編(第95話~第112話[最終話])

魔界トーナメントの圧倒的面白さと、“祭りのあと”のせつなさ。TVアニメ『幽☆遊☆白書』全話レビュー:魔界編(第95話~第112話[最終話])

「ただのケンカをしようぜ、国なんぞぬきでさ」

第104話 意外な提案・魔界の変動
脚本:大橋志吉 絵コンテ:榎本明広 演出:うえだしげる 作画監督:榎本明広
(1994年11月5日放送)

雷禅の死を受け、北神を連れて黄泉の本拠地に乗り込んだ幽助。そこで黄泉との会談の席が急遽設けられ、隣室に待機する蔵馬ら、そして軀と飛影が密かに様子を見守るなか、幽助は黄泉に魔界の統一権をかけたトーナメントの開催を提案する。その申し出を受け入れて、自国の解散を約束する黄泉と軀。それぞれが新たな戦いに向けて動き出す。

これまでの話の展開から国同士の戦いが始まるのかと思いきや、「ただのケンカをしようぜ」と提案して流れを変えてしまう幽助のケンカ馬鹿っぷりは、少年マンガの主人公らしくてやはり最高。黄泉の息子の修羅や、雷禅のかつてのケンカ仲間たちも登場し、トーナメントに向けてだんだんと役者が揃っていく感じも熱い。また、幽助の「今から行くからよーお茶用意して待ってろォー!!!」という言葉に応えて、黄泉が部下に玉露とお茶菓子を用意させていたり、北神が「あんたなんばすっとねー!」と訛り言葉で幽助にツッコんでいたりと、ここ数回の緊迫した雰囲気から一転してホッとするような描写が多いところもこの回の特徴か。

「久しぶりだぜ、この緊張感。じゃ、いっちょ肩ならしといくか」

第105話 魔界大戦・予選開始!
脚本:富田祐弘 絵コンテ:下田正美 演出:下田正美 作画監督:嶋村秀一
(1994年11月12日放送)

幽助のアイデアで実現した魔界トーナメントがついに開幕。優勝候補の軀や黄泉をはじめ、黄泉の息子の修羅(声:大谷育江)、飛影と蔵馬、雷禅の旧友たちなど、魔界中から腕に覚えのある者が6,000人以上も集結する。だが、トーナメント本戦に参加できるのは128名。まずは出演者を振り分けるべく、49人ずつのブロックに分かれてバトルロイヤル形式の予選がスタートする。

大会スタイルのバトルに必要なものと言えば実況&解説ということで、暗黒武術会編で活躍した小兎が、アニメ独自の展開として実況役に復帰。登場シーンの華々しさからも、彼女がいかにアニメスタッフから愛されているかがわかる。ちなみに解説は、これまた久々に登場したジョルジュ早乙女……になるのかと思いきや、コエンマににらまれて彼はあえなく退散し、黄泉の参謀だった妖駄(ようだ)が務めることに。ほかにも酎、凍矢、鈴駒、陣、鈴木、死々若丸らの奮闘が原作よりも厚めに描かれているのがうれしい。

「この次はお前も主役の一人になれ」

第106話 闘う親子! 黄泉と修羅
脚本:隅沢克之 絵コンテ:小柴純弥 演出:小柴純弥 作画監督:井上敦子
(1994年11月19日放送)

抽選により予選で同じブロックに割り当てられてしまった黄泉と修羅は、本戦トーナメント出場を賭けて、親子同士での対決を行うことに。父を打ち負かすべく、不意打ちなどの汚い戦法にも頼る修羅だが、黄泉は圧倒的な実力差で息子を一蹴。未熟な修羅に戦いに臨むうえでの覚悟を教えるとともに、本戦へと駒を進めた。そしていよいよトーナメントの幕が開く。

初登場時は冷徹な野心家という印象の強かった黄泉だが、この回では修羅に厳しい態度で向き合いながらも、最終的には親バカな表情を見せるところがあり、随分と人間臭くなった感じがする。大会主催者の幽助がトーナメント開幕前の挨拶で、優勝する自信はないと語りつつ「誰が勝ってもスッキリできるような気がするんだ」と言った通り、三国間でにらみ合っていた当初の緊迫感はいつの間にかどこかへ消え去っており、軀も含め主要キャラ全員が大会を楽しんでいる様子が微笑ましい。すでにグランドフィナーレに向けての花道は始まっているのだ。

「彼らの戦いの美学はみんなあなたに影響を受けている、それはオレや飛影にも言えることだけどね」

第107話 激闘! 夢に賭けた男たち
脚本:隅沢克之 絵コンテ:松井仁之 演出:松井仁之 作画監督:山沢 実
(1994年11月26日放送)

魔界統一を賭けて128人の猛者が争う決勝トーナメントの第一回戦、幽助が危なげなく白星を飾るなか、鈴駒や死々若丸ら暗黒武術会で知り合った同士たちは次々と敗退。S級妖怪クラスの実力を手にした彼らでも易々と勝ち抜けることはできず、本大会のレベルの高さがあらためて露わになる。そして風使いの陣、呪氷使いの凍矢も、それぞれ雷禅の旧友たちと争うことになり、死力を尽くした激闘を繰り広げる。

原作では詳しく描写されることなくサラッと流された、陣や凍矢たちの戦いを大々的にフィーチャーしたこの回。両者とも暗黒武術会からさらにパワーアップした能力や新技で奮闘するが、これまた原作ではあまり描かれなかった雷禅のケンカ仲間たちが恐るべき実力で彼らを圧倒する。全体のストーリーから考えると、それほど重要なエピソードとは言えないかもしれないが、原作の内容や登場人物のキャラクター性を補足するという意味でも、ボーナストラック的な楽しみ方ができる回と言えるだろう。

「オレはもう昔の蔵馬じゃない。オレは自分を偽って生きたくはない」

第108話 蔵馬、過去との決別
脚本:富田祐弘 絵コンテ:阿部紀之 演出:下田正美 作画監督:千葉道徳
(1994年12月3日放送)

決勝トーナメントは早くも第二回戦に突入。順調に勝ち進んだ蔵馬は、かつて軀に仕えていた魔界整体師の時雨と対戦することになる。飛影に剣術の基礎を教えた彼の剣技に押され、戦闘中に妖狐の姿に戻った蔵馬だが、あえて再び人間体である南野秀一の身体に戻る。その胸中には、人間の身体に転生した自身を育ててくれた母・志保利に対する思いがあった。

時雨が再登場したのを観て「あれ!? この間、飛影に顔を真っ二つにされたんじゃ……?」と思ったのだが、どうやら軀に生き返らせてもらっていたらしい。それはさておき、人気キャラである蔵馬の心情に焦点を絞り、戦闘シーンを通じて妖怪よりも人間として生きていく彼の決意が表現されるこの回。特に桜の花びらが舞い散る描写を序盤と終盤に置くことで、蔵馬の迷いとその解消を抒情的に見せる映像美は見どころだ。阿部監督のコンテ、そして『幽☆遊☆白書』で演出家として本格デビューし、後にアニメ監督として『セイバーマリオネットJ』『ゼーガペイン』などを手掛ける下田正美の演出が冴え渡っている。

「お前とはもう戦わない、すべての憎しみは、もう昔のものだ」

第109話 対決! 飛影とムクロ
脚本:大橋志吉 絵コンテ:高橋資祐 演出:新房昭之 作画監督:高橋資祐
(1994年12月10日放送)

激戦が続く決勝トーナメントの二回戦、飛影は因縁浅からぬ軀と戦うことに。お互いに生まれたときから悲惨な境遇のもとで育ち、憎しみを糧にここまで生き延びてきた二人。どこか気持ちの通じ合う部分を持ちながらも、それを共有することができるのは、彼らが常に身を置いてきた戦いという場においてのみ。飛影は優勝候補の一角である軀から勝利をもぎ取るべく、持てる力のすべてをぶつける。

前回の蔵馬に続き、飛影にスポットを当てたこの回では、邪眼の能力を身につけてまで探していた母の形見の氷泪石を軀から入手したことで、生きる理由を見失っていた彼の心情にひとつの決着がつくことに。戦いのなかで軀に「お前が抱いてるのは故郷に対する激しい憧れだろう!」と自身の憎しみを否定され、飛影もまた邪王炎殺黒龍波を放って軀の憎しみの象徴である手枷を破壊する……このエピソードは、アニメ版オリジナルの展開ながらも彼らの関係性を深堀りするものとなった。原作しか知らないという人にもぜひ観てほしい一本。

「てめェ後悔するぞ、オレはな、戦ってるうちにどんどん強くなるんだ」

第110話 俺の力・これが全てだ!
脚本:橋本裕志 絵コンテ:榎本明広 演出:うえだしげる 作画監督:榎本明広
(1994年12月17日放送)

軀や雷禅の旧友たちがいつ果てるともわからない激闘を繰り広げるなか、トーナメントの四回戦まで勝ち進んだ幽助はついに黄泉と直接対決。圧倒的な力の差に一時は戦う気力を失うも、魔界を訪れる前に交わした螢子との約束を思い出し、再び活力を取り戻す。身体に魔族の証である紋様が浮き上がり、妖気と霊気を同時に扱えるようになった幽助は、その力で黄泉に立ち向かう。

幽助自身が戦いの前に、黄泉と自分では大人と子どもレベルの実力差があると分析する通り、最初から幽助には勝ち目のない雰囲気が醸し出される黄泉とのバトル。だが、先の蔵馬vs時雨戦、飛影vs軀戦などで提示されていたように、ここでは勝ち負けの結果が重要なのではなく、己が戦うことの意味を見出すことにポイントが置かれている。黄泉は幽助のストレートをわざと食らって「パンチを真っ向から受けてみたいと思ったのは初めてだ」と語るが、彼もまた幽助と拳を交えることで、自分自身の中に眠っていた戦いに対する情熱を取り戻していく。幽助は、蔵馬は、飛影は、黄泉は、軀は、それぞれ何のために戦っているのか? その答えを原作以上にわかりやすく描いたのが、アニメ版の魔界トーナメントの肝ではないだろうか。

「オレも君といつまでも戦っていたい……そんな気になってきた。だが……」
「どんな祭りも、いつか終わりがくる」「その通り!」

第111話 決着! 激闘の果てに
脚本:大橋志吉 絵コンテ:下田正美 演出:下田正美 作画監督:井上敦子
(1994年12月24日放送)

激闘を繰り広げる幽助VS黄泉。あらゆる妖気を吸収してしまう黄泉の秘技・魔古忌流煉破反衝壁(まこいりゅうれんぱはんしょうへき)だったが、これを幽助の霊丸がついに破る。息をのむ者、涙を流す者……それぞれが見守るなか、ついに決着の時が訪れた。

本作が全112話であるという事実を知りながら観ていても、“あと1話で終わる” とはとうてい思えない大激戦。魔族の証とされる紋様が浮かび上がった幽助の肉体、魔古忌流煉破反衝壁を打ち破る新たな霊丸(コエンマいわく“妖気と霊気の混合弾”)など、原作コミックでは描かれなかったディテールも多く登場する。まさにこのアニメがバトル描写にかけたこだわりが伝わってくる一本だったが、勝敗が決したあとの“祭りのあと”感、そのあっけなさ、せつなさにも『幽☆遊☆白書』らしさを感じる。

戦いを終え、再会を誓って解散する人びとの機微が細かに描かれているのもアニメ版ならではだ。その様子を説明するナレーションを、アニメオリジナルキャラのジョルジュ早乙女(声:西村知道=本作ナレーションとの兼任)がしゃべっているという“ネタばらし”的な迷シーンも、ここまで観てきたファンにとってはたまらないものがある。

「FOREVER FORNEVER」

第112話[最終話] フォーエバー! 幽☆遊☆白書
脚本:大橋志吉 絵コンテ:小柴純弥 演出:小柴純弥 作画監督:田中 良
(1995年1月7日放送)

幽助が魔界に発ってから2年。高校生として新たな生活を送っていた桑原は、蔵馬、静流、螢子とともに幻海師範の待つ寺へと向かう道のりにいた。その先には雪菜、ぼたん、コエンマの姿も……。穏やかに過ぎゆく時間のなか、幻海は、集まった者たちへ遺言となる言葉を告げる。

原作にあった出来事を巧みになぞりつつも、事実上はアニメオリジナルとしての内容で完成した最終回。まずは近況を語らいながら電車でどこかへと向かう桑原と蔵馬、その行き先を明かさず始まるイントロダクションが大人っぽくて粋(イキ)だ。そして「魔界や霊界はその後、どうなったのか?」を、視聴者が桑原の視点で知っていくという構成がいい。千葉繁演じる桑原は、長らく活躍のなかったフラストレーションを晴らすかのような熱演(とおそらくアドリブの数々)で楽しませてくれる。また静流、螢子と合流した道中では、スポーツ新聞にあった記事をきっかけに飛影の近況が明らかにされるシーンも(ちなみにこの新聞は文面までしっかり描写されており、解像度の高いBlu-rayなどで見るとちょっとした小ネタが楽しめる・笑)。幻海の寺における一連のシーンでは、たびたび「コツン……」と庭園に響く“ししおどし”の演出も味わい深い。

そしてラストシーン、夕陽のきらめく海辺にはしゃぐ面々。BGMには、これまで本編の名シーンをたびたび彩ってきた、優しいインストゥルメンタル版の「微笑みの爆弾」がかかって……。“この大切な時に、幽助は何をしている?”そんな視聴者の思いと、ヒロインの螢子の思いがリンクしたとき、ついに彼は姿を現す。「よっ、ただいま!」の一言、また再会を祝福するキスシーンは、本作のターニングポイントとなった第5話の名場面が再び訪れたかのような感慨を覚える。あらためて大団円を飾るのは、やっぱりあの曲だった。“アリガトゴザイます!”

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