Interview

「伝わらなかったら意味がない」 東出昌大が『ヒーローマニア-生活-』で見出したもの

「伝わらなかったら意味がない」 東出昌大が『ヒーローマニア-生活-』で見出したもの

ヒーローになる!イケてないフリーター青年が即席世直し集団を結成する映画『ヒーローマニア-生活-』で、東出昌大はこれまで見せていなかった顔を見せた。冒頭から頭を看板にぶつけてばかりの唐変木なありように、わたしたちのこの俳優に対するイメージはある意味、一変するだろう。映画デビューから4年。彼がいま考えていることとは?

俳優業は誰かが教えてくれるものではない

『ヒーローマニア』というメインタイトルからは想像もつかなかった、いきなりの、しかも決してカッコ良くはない活劇シークエンスから映画は始まりますね。あそこで、いきなり首根っこを掴まれたような気持ちになりました。

もともと、原作通り『生活』というタイトルで僕らは撮影していたので、ヒーローということは意識してなかったんです。『生活』というタイトルなのに、物語は決して日常ではない。その変態性というか、そういうところが出てればいいなと思って撮ってました。(完成した映画の)初号を観たときも、原作にあった不気味さだとか、何か人間として成熟してないけど、そこが人間臭くて面白いという部分は残っていたので、映像化は成功してるんじゃないかなと思いました。

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たしかに変態性はあるけど、人間臭いですよね。このふたつは両立するものなんですか。

原作の福満しげゆきさんが持っている魅力でもあると思うんですけど。あの変態性のある原作を映像化したいと思った豊島(圭介)監督の中にも、そこはあったと思います。なんとも例えにくいんですけど、全部ひっくるめて馬鹿馬鹿しいものをみんなで作ってると思うので。馬鹿馬鹿しいものだと思って、頭でっかちにならずに観ていただけたらなと思います。

観客を頭でっかちにさせないために、俳優がすべきことはなんでしょう。

もちろん、台本の持ってる良さを考えるということもあるとは思うんですけど。豊島監督って現場で怒号を飛ばすようなタイプでもないですし、わりとニヤニヤしながら撮っていて。その現場の空気感というのが、いい意味で作品にも絶対出てると思うので。だから、そこは失わず、という感じで撮ってたと思います。

現場ごとに空気感は違いますよね。東出さんは、その都度、その空気感と交わるほうですか。

まったくもって、その通りだと思いますね。それは別に、親しい人がいる、いないにかかわらず。作品によって、ほんとにくだらない冗談を言い合う現場もありますし。それとは真逆で、緊張感持って、誰とも喋らない現場もありますし。それは、そうしたほうがいいんじゃないかと、ちょっとずつ探りながら試していってるところでもあるんですけど。でも、そういうもんじゃないかなと思います。

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よりよいかたちを、その場で見つけていくということですかね。

毎現場、毎現場、課題はあるので、思ったことを実践していくだけのことだと思います。俳優業って、誰が教えてくれるものでもない、メソッドも日本にはないので。でも海外のメソッドの本とか読むと、書いてあったりもしますし。あとは先輩方の居住まい、佇まいとか、食事の席で話してくださることを聴いて、日々発見し、それを試してやってるって感じです。

ひとつの決まったかたちがない、ということがやりがい、醍醐味にもなりますか。

やりがい、醍醐味でもあり、難しさでもあるんですけど。結局、終わった後に、これが答えだったんだ、という絶対的なものもないので。また、答えに近づけるように、次の現場で試行錯誤するんですけど。でも、今回の『ヒーローマニア-生活-』は悔いもそんなにないというか、やわらかい作品なので、わりとカラッと撮影に臨めたと思います。

悔いがないというのは、現場におけるご自身の状態や心持ちが良かったとか、そういうことですか。

いや、作品によると思います。辛いシーンが多い役とか、影のある役の撮影って、結構つまらないので(笑)。

辛くなる?

ええ、やりがいはあるんですけど、単純に面白くはならないというか。それは楽しいシーンが少ないということだと思うんですけど。『ヒーローマニア-生活-』は(演じる)中津(秀利)が活き活きしてるシーンが多かったり、楽しいって、中津自身が思ってるシーンも多かったので、カラッと楽しかったかなと思います。

緩急のある役ですものね。そういうシンクロニシティってあるものなんですね。ダメージを受けるときは受けると。

あります、あります。それも含めて仕事なので。だから(暗い役は)嫌だってことではないんですけど。役によって、現場のトーンによって、いろいろありますね。今回は、いい意味で、全力でくだらない映画になったなと。それはうれしかったですね。