Interview

和田唱 初のソロアルバムから見えてくる、ありのままの姿。天才ソングライターの才能全開の作品について訊く。

和田唱 初のソロアルバムから見えてくる、ありのままの姿。天才ソングライターの才能全開の作品について訊く。

TRICERATOPSの和田唱の初のソロ・アルバム『地球 東京 僕の部屋』が完成した。全11曲、とにかくいい曲揃い。ギターがメインの曲だけではなく、キーボードを駆使したポップチューンもあって、天才ソングライター和田唱の才能が全開になっている。それに応えるように天才ボーカリスト和田は、スウィート&キュートな声でこれまでになかった“和田ワールド”を描き出す。一方、リリックは和田の個人的な世界観が展開されていて、今、この時代に必要な歌と、その未来が示されている。42才を迎えた和田は、ポップスを通じて新しいライフスタイルを提示しているようにも思える。ソロの第一歩の全貌を語ってもらった。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 荻原大志

今まで誰も題材にしてこなかったような歌詞とかタイトルっていうのを、なるたけ昔から意識して書くようにはしてるんです

ジャケットの少年がかわいいね。

和田 それ、少年時代の僕なんです。

えっ? 昔の写真なの? そうは思えないくらいクリアな写真だね。“少年・和田唱”は何を覗いてるの?

和田 「くるくるてれび」っていう子供向けの8ミリ映写機みたいなもので、ボタンを押すと電池で中のフィルムがカラカラって回って、中にアニメとかの1分ぐらいの映像がループされるんですよ。それを夢中で見てるんです。

自宅で撮ったの?

和田 そう、実家のリビングで、ちょうど遊びに来ていた、親父の後輩でもある篠山紀信さんが撮ってくれたんです。篠山さんがちょうどジョン・レノンの『ダブル・ファンタジー』のアルバム・ジャケットを撮影した時期で、ジョンのファンとしては「やべ~!」と思いました。その写真が最近、実家で見つかったので、今回の僕のアルバムのジャケットに使わせてもらいました。

凄い写真だね! そしてジャケットのインナーの写真はギターを持ってる和田くんだ。

和田 そのギターは、ギブソンの古いやつなんですよ。1940年代に作られた、ちょっと珍しいやつ。少年が表で、中を開くとこうなってて、昔の熱中と今の熱中を対比で入れてみました。

いいジャケットだね。ではアルバムの話に行きましょう。まず1曲目の「大きなマンション」っていうタイトルには、不思議な面白さがあるね。

和田 僕もちょっと変なタイトルだなとは思いましたが、面白いでしょ(笑)。

自分で言ってる(笑)。イントロのアコギがとてもきれいで、いい曲だね。

和田 これは、夜道を歩いてて、大きなマンションが見えて、まさにこの歌の中で歌ってもいる通り、電気のついてる部屋もあれば消えてる部屋もあって、いろんな人がここに住んでんだなって思った。それが、なんか不思議で。ここのひとつひとつの部屋にそれぞれのストーリーがあって、人間ってすごいよなぁみたいなことを、夜の散歩道でよく思ってたんです。ひとつの建物の中にいろんな人たちが住んでいて、そこにいろんなストーリーがあるっていうのを歌にできないかな、それも自分のことをからめて歌えないかなと思ったときに、自分の中にいろんな思い出があって、それが僕の中に住んでるっていうところから、「あ、歌になるな」と思った。

大きなマンション見て、自分の体も同じだなって?

和田 そう。俺も実はマンションみたいなもので、もう眠っちゃってる思い出もあれば、まだ輝いてる思い出もある。そう思ったときに、「大きなマンション」っていうのはいいタイトルかなって。

面白い! 和田くんらしい。「ロケットに乗って」っていうタイトルに、近い雰囲気がある(笑)。マンションって言葉は、これまであまり歌われてない。

和田 かもしれないですね。今まで誰も題材にしてこなかったような歌詞とかタイトルっていうのを、なるたけ昔から意識して書くようにはしてるんです。一瞬、違和感はあるんだけど、でもそれが浸透したときに確固たるオリジナリティーになる。“復刻ジーンズ”とかね。TRICERATOPSのファーストアルバムでは、“復刻”とか“エスカレーター”とか、そういうのを意識しましたね。

僕の中にはまだまだ発展途上な部分がめっちゃめちゃいっぱいあって、そこが青春性を保ってる理由じゃないかと思います

タイトルだけじゃなく、「大きなマンション」は歌詞の展開もいいね。

和田 そういう意味ではビートルズの「イン・マイ・ライフ」がこの曲のベースにありますね。♪in my life,I love you more〜♪って、やっぱり凄い歌詞だなってずっと思ってたし、僕なりの「イン・マイ・ライフ」かもしれないですね。

「イン・マイ・ライフ」って、言っちゃっていいのかな?(笑)。

和田 言っちゃっていいです(笑)。

この歌のテーマって、“大人の青春性”だと思った。

和田 青春性ですか?

大人にもある青春性。

和田 僕は成熟するのが遅い部分があって、そういう意味では青春性が保ててるのかもしれないですね。不安との向き合い方、怒りとの向き合い方、すべてにおいて未熟な部分もまだある。もちろんかなり達観した部分もあるにはあるんですけど、総合的に言うと未だにアンバランスっていう。で、僕はアンバランスなところを認めつつ、陰にならない。人前では常に明るく振る舞うっていうのが僕のポリシーなんですけど、それはさておき、僕の中にはまだまだ発展途上な部分がめっちゃめちゃいっぱいあって、そこが青春性を保ってる理由じゃないかと思います。

前回のインタビューのときに、21才でデビューして、21年間TRICERATOPSをやって、今42才になったって言ってたけど?

和田 年齢って、あんまり気にしてないですね。でもジョン・レノンが「イン・マイ・ライフ」を作ったときは、まだ20代半ばですよ。すごいですよね。ただのラブソングじゃないところが好きです。

そういう意味で「大きなマンション」は、ただのラブソングじゃないものを意識したのかな?

和田 そうですね。それは年相応ですね。今、自分がリアルに感じてることです。ソングライティングって両方あって、かなりリアルな自分が出るときと、ホントに創作になる場合と。その比率で言うと、「大きなマンション」はすごく自分に寄ってると思いますね。

そして「大きなマンション」は、メロディはシンプルなのに、曲としては変化に富んでいる。

和田 いつも言ってることですけど、あんまりいっぱいコードを使わずに、限られたコードで曲を作ることを自分に課してる。実際、今の洋楽ポップスはほとんどそうですし、僕はそこからの影響がすごい強いので、日本語でそれをやりたいっていう思いが常にあるんですよね。少ないコード展開の中で、しかも繰り返しの中で、いかにメロディーを変えて発展させていくかっていうのは、常日頃やってることだから。鍛えられてもいると思うし、未だにやってて刺激的で楽しい。難しいけど、楽しいことなんですよね。昔よりは、上手にできるようになってきたのかなって気はしてます。でも、やっぱり僕は計算して数学的に曲を作ることはどうしても苦手で。基本は自然にソウルから湧き出ることを期待してますね。

今回のアルバムでは、全部の楽器を和田くん本人が演奏してるけど、1曲目の「大きなマンション」と最後の「Home」には、ストリングスを専門の人達に弾いてもらってる。

和田 ストリングスは、さすがに自分ではできないですよ(笑)。僕のストリングスの基本は「イエスタデイ」であり「エリナー・リグビー」の世界観です。僕、ドラムが入ってる曲にストリングスはあんまり入れたくないんです。大味になっちゃうから。ストリングスを入れるんだったら、弾き語りの曲。今回はまさに最初と最後が、ギターの弾き語り、ピアノの弾き語りなので。

ひとりだと身軽にいろんなことを歌えますね。ソロ・モードだと、言葉遣いもいつもより自由になったのかなって気はします

面白かったのは、「矛盾」。♪本音で生きてたいけど 愛されてもいたいの♪って、かなり赤裸々じゃないですか(笑)。

和田 そうですね。赤裸々だからこそ、音楽的にはちょっとコミカルなほうによせようと思って。

この曲で熱いギターのリフがあると、必要以上に熱くなっちゃう。それでシンセでちょっとコミカルに。

和田 そうそうそう。リアルすぎると暑苦しいじゃないですか。そこはいつでも客観性を持って気を付けてます。例えばすごく怒ってたりとか愛してたりとか、熱い曲のサウンドはクールにしますね。そういうとこでバランスをとってかないと、しつこくなっちゃうので。今回、常に気をつけてたのは、クールなサウンドですね。サウンドと歌詞のバランスが常に大事なんです。

クールなサウンドで、赤裸々に歌う。

和田 そう。もしかしたらTRICERATOPSというものを通すと、こういうものは出てこなかったのかもしれないです。あまりに個人的な歌詞になると、いつもふたりのことを考えちゃうんですよね。この詞を(吉田)佳史はどう思うんだろう、林(幸治)はどう思うんだろう。もしくはなんとも思わないのか。思わないのも嫌だなとか(笑)。個人的なことを歌うなら、100%共感してもらってやりたいので。そういう意味では、ひとりだと身軽にいろんなことを歌えますね。ソロ・モードだと、言葉遣いもいつもより自由になったのかなって気はします。それと、こういう歌こそコーラスをいっぱい入れる。極端なこと言うと、歌詞はフォークで、そのかわりサウンドとコーラスは、俺の大好きな洋楽の流れを取り入れてる。そういうミクスチャーです。洋楽が大好きな人って、歌詞の世界もそっちにいっちゃう人がわりといる。でも僕はそこをすごく割り切って考えてますね。日本語として面白くて、サウンドはコードの少ない洋楽。そういうミクスチャーを意識しましたね。

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