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「丁寧」神話から卒業! 気楽に家事に向き合い楽しむテクニック満載の『主婦力ゼロからのやってみた家事』

「丁寧」神話から卒業! 気楽に家事に向き合い楽しむテクニック満載の『主婦力ゼロからのやってみた家事』

SNSにあふれるステキ主婦。「もっと丁寧に、もっと素敵に」という謎の焦燥感

家事は、その家庭内でしか“成果”が見えない。ゆえに、隣の家の家事がどの程度行われているのかは、永遠に闇に包まれたままだ。

かくいう私も、幼稚園のママ友が「朝、子どもを送り出しても、掃除とか洗濯とかしてたらあっという間に帰ってくるよねー」と話すのを聞いて、「えっと……毎日、そんなに掃除するとこや洗う物、ある……?」と戸惑ったことがある。ヒヤヒヤしながら「そうだよねー」と合わせておいたけど。

少し前までは、毎日シーツを洗わなくても、夕飯がレトルトカレーでも、我が家が幸せならそれでよかった。でも、今はSNSなどに目指すべき丁寧な暮らしがあふれていて、ズボラ派の家事従事者たちも、「もっと丁寧に、もっと素敵に」という謎の焦燥感に苛まれていく。

『主婦力ゼロからのやってみた家事』の著者マルサイさんも、そんな一人だったという。今やインスタグラムのフォロワー13万人以上、その「ラクして簡単」を徹底する家事を紹介するイラストやレシピが人気を集めているが、かつては、床にホコリが舞っていても気にならない、棚を開けると雪崩が起きる派の人間だった。結婚後、家事本や家事ブログを読みあさり、第一子妊娠を機に、「立派な主婦になる」ことを決意。思い描く「丁寧で美味しいご飯を作り、隅々まで掃除が行き届いた部屋に暮らし、手作りおやつでコーヒーブレイク」というステキ主婦になるため、巷で評判の流行り家事に片っ端から挑戦を始める。

しかし、血反吐を吐く思いで立派な主婦を追求した結果、円形脱毛症を発症。そこでようやく、これほど追い詰められているのに「自分が心地いいと思える暮らしは何一つ手に入っていない」ということに気づく。良かれと思って取り入れた家事に、むしろ振り回されていただけだった、と。

世にあふれる丁寧像に惑わされずに、「私らしい家事」の流儀を積み上げていく

これ以降、チャレンジの結果、自分に合えば「私らしい家事」として取り入れ、少しでもめんどうだと感じたらやめることを徹底。本書は、チャレンジと失敗を繰り返しマルサイさんがたどりついた心地よい家事」が、そこに至るまでの紆余曲折とともに紹介されている。料理、整理・収納、掃除、洗濯、そして育児……その家事テクニックの数々は、曰く「ほどよく手を抜いた気楽」なものでありながら、超実用的だ。

©マルサイ/大和書房

©マルサイ/大和書房

たとえば料理なら、つくりおき、土鍋炊飯、フリージング、無添加無農薬、塩麹、一汁一菜。いずれも流行と呼べるほどのブームとなり、定番として今も生活に取り入れている人も多いだろう。しかし、著者の場合、つくりおきは「何日も食べ続けることに飽きる」、フリージングは「在庫管理が苦痛」、無添加無農薬は「近所のスーパーで気軽に買えない、高価すぎる」などの理由で、いずれの家事も継続を断念。

そんな彼女がたどり着いたのは、「手間なくおいしく」。火を使うおかずは毎日1品だけ。その他は「切っただけ、盛っただけ、和えただけ」のメニューでテーブルを彩る。「3分でできる火を使わない副菜いろいろ」として、30文字程度の超絶簡単レシピが紹介されているが、いずれも今日から真似したいものばかり!

そして、「器の中央に小高く盛る」、「ゴマや海苔、かつおぶしなどのトッピングでゴージャスに」、「存在感のある器を使う」などのちょっとした豪華見せテクや、献立の幅が広がるお助け調味料・白だし、お助け食品・キムチに頼るなど、丁寧礼賛系のメディアではまずお目にかかれないテクニックが満載だ。

そして、こんなにラクをしてるのに、載っているメニューの写真がどれもおいしそうなのだ。むしろ、写真を先に見たら、「手間かかってるじゃん(=私にはできない)」と勘違いしてしまいそうなほど。よくよく読めば、どれもいたって簡単なテクニックだということがわかる。そして、これなら自分にもできる! やってみよう! と前向きな気持ちにしてくれるのだ。

©マルサイ/大和書房

収納や掃除、洗濯の項でも、「目立つところがキレイであればヨシとする」、「料理をしながら足でキッチンを水拭き」、「洗濯機を回すのは2日に1度」など、えっ? それでいいの!? というルールが満載。でも、彼女なりの理由と、そのルールで家庭を回していく知恵に裏付けされているので、読んでいてとても納得感が高い。

もちろん、マルサイ流の家事が、読者全員にとって心地よいとは限らない。本のタイトルにあるように、著者は「やってみた」からこそ、それが自分にとって合うか、合わないかの判断ができたわけだ。その地道なチャレンジ精神も見習いたいところ。

彼女がたどり着いたのは、世にあふれる「丁寧神話」に惑わされずに、自分軸の、「私らしい家事」の流儀を積み上げていくこと。他の誰かからしたら「手抜き」「ズボラ」に見えるかもしれないけれど、自分と家族の「心地いい暮らし」に勝るものはない――そんなことを教えてくれる1冊だ。

文 / 中田千秋

書籍情報

『主婦力ゼロからのやってみた家事』

マルサイ(著)
大和書房

主婦力ゼロ、ともかく何もできないところからスタート。作り置き、一汁一菜、エコ掃除、100均収納、オキシ漬け……はやり家事を片っ端からやってみました! 数々の失敗と挫折を繰り返し(泣)、そしてわかった本当によい家事。インスタグラムのフォロワー12・9万人! ただいま男子3人(幼稚園、小学生)の子育て真っ最中! 家族においしい料理を食べさせたい、部屋はすっきりきれいに片付けたい、生活のベースをうまく回したい、でも、母はできるだけ手間をかけずにラクしたい!「子どもがいてもちゃんとしなきゃ」という呪縛から逃れ、無理せず、がんばらず、でもあきらめず。試行錯誤のうえたどりついた、現在のマルサイ家の家事ご紹介します!