Interview

UA 地球上のすべてに降り注ぐ DNAに響く愛の歌

UA 地球上のすべてに降り注ぐ DNAに響く愛の歌

UAが7年ぶりとなるオリジナル・アルバム『JaPo(ヤポ)』をリリースする。
3.11を経て「本質に向かわないとどうしようもないと思った」と語る今作は、時代も地域も越えて、日本人のDNAに響いてくるような、根源的な愛を歌った曲が並ぶ。
はるか昔から、私たちの底に流れ続けている記憶を呼び覚ますような、宇宙や地球と繋がり大切なものだけをすくい上げたかのような作品について聞く。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / ミズカイケイコ


ニューアルバム、すごく良かった!

ありがとう!(笑)

聴いていて、UAの歌の発音の仕方に、なぜか真言密教の香りがした!

ああ、たとえば「阿毘羅吽欠(あびらうんけん)」っていう真言があって、遠隔で誰かのことを良くしたいときには、阿毘羅吽欠って唱えてから祈るのがいちばん効果が早く出るんですって。

そうそう、そんな感じのアルバム。って、どんな感じだよ(笑)。

(笑)私はそういう経験があったり、そういうものが好きだから、いろいろ勉強した中でアルバムに出てきた部分もいっぱいあると思う。

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今日はそういうUAの勉強の日々の話もしましょう。まず、久しぶりにアルバムを作ろうと思ったのはいつ頃で、きっかけは何だったんだろう。

実を言うと“3.11”以前の2010年辺りから、青柳拓次くんと1枚アルバムを作ろうかなあっていう構想があって。そのときはシンプルなギター中心の、小歌とでも言うか、可愛い、ちょっとしっとりしたものを考えてたんだけど。

鼻歌みたいな感じの。

うん。拓次くんも『たであい』っていうソロ作品で、日本語の歌に挑戦し始めてた。それがすごく美しかったので、私ももっと“和”の言葉遣いを意識した、現代の俳句じゃないけど、「ちょっとクラシックな印象もありながら今の自分にできる歌」のアルバムを作ろうと思ってたのね。ただ翌年に3.11があって、そのテーマは棚上げになった。モチベーションがまったくなくなってしまったんですよね。ただ「あいしらい」という曲だけは、その時点で書いていた。これは私と長男のことを歌ってます。

「あいしらい」は、元々お能の世界の言葉で、相手役に対する間合いとか距離、相手を感じながら演技する関係性のことをそう呼ぶらしいんです。私がこの言葉を見たのは、ある生け花の本だった。かつては銀閣寺の慈照寺で花を立てていた私の大好きな女性の花方さんがいらして、彼女の花が素晴らしくて、ちょっと習いにも行ったんだけど。で、彼女の写真集のあるページに、メインのお花とバックの葉っぱの関係性を「あいしらい」というふうに書いてあったの。それが妙にエロティックでもあり、「愛し合う」という言葉にもそっくりで、なんとも私のハートを掴んだのね。その言葉を遣って、息子との関係を書いてみたのが「あいしらい」です。

結局、拓次くんから最初にもらったデモテープで、この曲だけはずっと残ってた。その最初の一筆書きの印象のまま、今回レコーディングしました。今は息子は自立して一緒に暮らしてないけど、やっぱり親子なので、どこかで繋がってるっていう意識がある。
彼はまだ駆け出しの俳優ですけど、表現者として生きていこうとしてる。私も世の中に対して、地球に対して、何かを表現しようとしている。そうした人生の中で、今は息子とほとんど時間は共有してないけれども、私と息子の立ち位置を「あいしらい」という言葉で表してます。

3.11以降、自分の生き方自体を見つめ直して変わらないといけないと思っていた

すごい話からインタビューが始まったね。親離れ子離れを、能の演劇用語で描く発想が面白い。で、3.11以降、一度アルバム作りから離れて、改めて作ろうと思ったのは?

しばらくは環境があまりにも変わったので、生活に慣れることも大変だったし、やっぱり3.11のショックのあとで自分が精一杯何かできることはないかって探してたので、自分の作品に取りかかっていけるっていうムードはしばらくはまったくなかったかなあ。

和風だとか言葉だとかって、そういう細かいことではもはやなくなっちゃって、もっと本質に向かわないとどうしようもないと思った。もっと別の歌の表現があるのかもしれないと思ってずっと模索していたし、何よりも自分の生き方自体を見つめ直して変わらないといけないと思っていたから。でもおそらくその時点で答はわかってた。すごく大きなテーマになることはわかってたんだけど、自分が伴ってなかったの。経験が必要だったんだと思うの。そのテーマを持ちながら暮らして7年が経ったのは、すごく当然のことなのかもしれなくって。 

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だんだん経験が積み重なっていって、歌という形になっていったわけだよね。

はい。

じゃあ、ホントにそういう意味で音楽になっていったのは、わりと最近だったりしたのかな?

2014年の秋から冬にかけてデモテープを作って準備して、残りは今、住んでいるカナダの島で書きました。で、2015年の春に、10日間ぐらいかけて日本で『JaPo』のレコーディングをしました。

日本ってやっぱり島の国ですよね。島に自分のDNAを感じている

この真言みたいな言葉と発音は、沖縄のもの?

沖縄ではなくて、奄美です。私の母が奄美の人で。“奄美の島口(しまぐち)”っていうのかなあ。前から何曲かトライしてるんだけど、すごく面白い。奄美の言葉がどんどんと失われていっているので、それを残したくて。特に私の師匠の朝崎郁恵さんが遣ってる島口をね。

朝崎さんはNHKの『新日本風土記』のテーマ曲の「あはがり」を歌ってる人だね。

ご高齢なんだけど、活躍してます。偶然にも彼女の出身の村は、私の母の村の隣なんですよ。同じ小学校の先輩だった。 

UAは奄美の言葉で歌ってみたかった。

そうです。その奄美の言葉の中でも、神言葉を遣ってます。神を降ろして祈りを捧げるときの言葉を朝崎さんに習って、彼女にその場で一緒にいてもらって「ここはこういうふうに歌いたい」って言って、それを訳してもらって。

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面白いレコーディングだなあ。 

その他の言葉も遣ってます。1曲目の「AUWA」は奄美口ではなく、“ホツマ”っていう古代語です。縄文の初期にもう日本…日本と呼ぶのかわかりませんが、国はあったっていう説もあるんですね。で、そのときの国造りの憲法なんですよ。文字の1個1個が神を表してる。面白いなと思って、本で自分も勉強しました。

今、縄文文化が再評価されている。9千年間も戦争のない社会が続いたっていう。

今の日本にとっての真の平和についてのヒントがありますよね。かつてこの島がそうだったのだとすればねえ。私は日本人だし、44年間、日本人として生きてきて、ものすごく日本を愛してる。日本ってやっぱり島の国ですよね。島に自分のDNAを感じている。

2曲目の「JAPONESIA」は、“ヤポネシア”という言葉自体、島尾敏雄さんが定義したところからいただいてる。彼も大陸からの文化が入る前の、それこそ搾取とか国家とかに関係なしの、地域それぞれ、この連なる島々がそれぞれ個性的にちゃんと文化を持って連なって、きちんと平和を保っていたときがあった。そのときの人間のあり方っていうか。

過去にあり得たんだから、今できないことはないってことだよね。

そうですよ! しかも過去を振り返るんじゃなくて、未来に向けてそれを表現して行きたい。

この世って3%しか見えてない。私は目に見えない97%のほうがリアリティがある

今回のそういうUAのテーマを伝える音楽は、違うメロディが4つぐらい同時並行しながら進んで、一つの歌になるという“ポリフォニー”というスタイルを取っている。

そうそう、コーラスが入ってたり、リズムもちょっと変拍子が聴こえてたり。

ポリフォニーは、前からやってみたかったの?

はい。どんどん興味が増えていって。いつ頃からかなあ、ピグミー族が森でやってるポリフォニーを、フィールド録音してる作品がいくつかあるんですよね。おうちでそれをかけてるのが好きだった。子どももすっごく楽しそうにするし、まるで森が再現されたかのような音楽。要するに「私のものだ」「あなたのものだ」っていうような意識がまだない人間たちの純粋な喜びよね、ああいう音楽って。ホントに癒やされるし、一瞬でその場の空気が変わる。

よく、人間の脳の働きはまだ3%しか解明されていないって言われている。それと同じく、この世って3%のことしか見えてないと思うんですよ。97%は目に見えないとされてる。私はその97%のほうがものすごくリアリティがあるって思ってます。ただ、私がピグミーのポリフォニーをやるって言ったらちょっとまた意味が違うので、この日本でいかにポップにできるかっていうのを、拓次くんとトライしてみたんです。

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レコーディングしてから、リリースするまで1年経ってるね。

はい、経ってます。それは何故かと言うと、4人目ができたからなんですよ。

なるほど! そういうことか(笑)。 

そうそう(笑)。彼を出産するタイミングが、本来『JaPo』のリリース日だったんだけど、ちょっと無理だわっていうことになって。彼がお腹にいたときに日本で全部レコーディングは済ませたけれども、ちょっとしばらく発酵させましょうねっていう感じで(笑)、ミックスもしないで置いといたんです。やっぱりそういうのってタイミングあるじゃない。ウェーブがあるので。

じゃあミックスは今年に入ってから?

そうです、はい。 

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