奥田民生 ライブの流儀  vol. 0

Review

【後編】 ライブで観る奥田民生「奥田民生ひとり股旅スペシャル@マツダスタジアム」

【後編】 ライブで観る奥田民生「奥田民生ひとり股旅スペシャル@マツダスタジアム」

昨年設立した「ラーメンカレーミュージックレコード」より、ライブアルバムとライブ映像を5月11日に同時リリースする奥田民生。
今回は、地元広島のMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島で行われた弾き語りライブ映像のレビューをお届けする。
昨年50歳を迎え、多彩な活動を展開してきた中で、原点に戻るかのようなギター一本のスタイルで3万人の観客を魅了した伝説のライブをぜひ体感してほしい。

文 / 平山雄一
撮影 / 三浦憲治・佐藤早苗・永井峰穂・山本倫子


 僕はこれまで何度も奥田民生の“ひとり股旅”を観てきたが、昨年、広島で行なわれた“ひとり股旅スペシャル@マツダスタジアム”は、他のどれとも違うものだった。
 ご存知のように、広島は民生の地元である。地元の“ひとり股旅”としては、@旧広島市民球場(2004年)と、@ 厳島神社(2011年)があった。市民球場のときは、初めてのスタジアム・クラスでもあり、爽快な緊張感の中でのライブとなった。厳島神社は海に浮かぶ世界遺産であり、直前まで超悪天候の予報を覆してのライブだっただけに、まさに“夢のような時間”だった。そして新装なったマツダスタジアムは過去最大規模なのにも関わらず、民生の落ち着きっぷりはハンパなく、堂々とマイペースを貫いてのライブとなったのである。

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©RAMEN CURRY MUSIC RECORDS

 昨年、50歳を迎えた民生は、1年間を精力的に活動した。5月に行なわれたユニコーンの50祭 イベント“もみじまんごじゅう”ではユニコーンの他、サンフジンズ、地球三兄弟、MTR&Yなど民生の関わるバンドが勢ぞろい。民生の活動の幅広さと同時に、いろいろな音楽を楽しみたいという、ミュージシャンとして最高の状態にあることを示した。その流れの中での“ひとり股旅スペシャル”だったわけだが、このライブのキーワードは“地元”と“50歳”だったように思う。広島で生まれた50男 のパフォーマンスは、自由な展開と巧まざるユーモアの中に、色気と勇気を潜ませた素晴らしいものだった。

 このDVDは、そんな民生の“貫録”をあますところなく収めている。監督は板屋宏幸で、初期のユニコーンから傑作PVを数多く撮っている。今回は真正面から勝負する民生を、正攻法で撮影。特にアップの表情からは、歌に込める民生の気持ちが見ている方にダイレクトに伝わってくる。それはスタンドで見ていた僕には直接見ることのできないものだったが、当日に民生の声から感じたメッセージがしっかりとビジュアル化されていて、あの日のライブをありありと思い出すことができた。

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©RAMEN CURRY MUSIC RECORDS

 1曲目の「674」からゆるく入る余裕のスタート。急いで盛り上げようとはせず、民生はオーディエンスとの距離をゆっくり縮めていく。MCもしっかり収録されているので、当日の雰囲気が充分伝わってくる。

 目立つのは、観客の表情が多くインサートされていることだ。子供を抱いて立ってみているお父さんや、赤ちゃんにダウンを着せてくつろぐお母さんなどが映し出され、家族や友達や恋人たちの姿が、民生のゆったりとした歌と重なっていく。僕はあの日の球場を“市民祭”のように感じたが、その様子がDVDによく描かれている。民生の歌と共に過ごしてきた“地元の友達”が、そこに集まっている。彼らは民生を誇りに思い、民生も地元の友達を大切にしている。

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©RAMEN CURRY MUSIC RECORDS

 臨機応変なセットリストでライブは進む。途中、会場のアナウンスを担当するウグイス嬢からのリクエストにも応えたりする。とはいえ、後半のひとり股旅名物のカバーコーナーの選曲は、ある程度用意されたものだったと思う。地元のスター、矢沢永吉や吉田拓郎のカバーで場内を沸かせた後、民生がこのところ一緒に活動している浜崎貴司(FLYING KIDS)の「幸せであるように」やサンフジンズの「ハリがないと」を歌って、民生の近況報告になっていた。

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©RAMEN CURRY MUSIC RECORDS

 そして白眉は真心ブラザーズの「人間はもう終わりだ!」と、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「世界の終わり」と続く“終わりシリーズ”だった。世界が騒然としている2015年に、広島の人間が歌うにふさわしい選曲だと僕は思った。なので、ライブ後の打ち上げで民生にこの2曲を歌った理由を質問すると、民生は笑いながら「ノーコメント!」を貫いた。この潔さが、民生の魅力だ。彼のコメントこそないが、この2曲の映像はしっかりDVDに入っているので、ぜひ体験して欲しい。

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©RAMEN CURRY MUSIC RECORDS

 この2曲だけでなく、カバーコーナーが全曲収録されているのも嬉しい。エンディング・クレジットにはavexをはじめ、収録の許可を出してくれたレコード会社名がずらりと並ぶ。オールジャパン・クラスの協力関係に、民生の音楽シーンでの存在感の大きさが見える。また音楽業界の良心も感じて嬉しくなった。 現在、大リーグで活躍中のマエケンこと前田健太のマツダスタジアムでの最後の投球も見られたりして、この“完全収録”はとにかく凄い。

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©RAMEN CURRY MUSIC RECORDS

 初回盤には、開催発表記者会見や前日のリハーサル、当日の楽屋の模様も収録されていて、 “広島の偉大な1日”が堪能できる内容になっている。できれば広島名物“むすびのむさし”の弁当を手に入れて、パクパク食べながら見て欲しいと思う。

リリース情報

2016年5月11日発売

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奥田民生ひとり股旅スペシャル@マツダスタジアム

[DVD]
初回盤(DVD3枚組)
RCMR-92001-3 / 7,500円+税
通常盤(DVD2枚組)
RCMR-2002-3 / 6,800円+税

[Blu-ray]
初回盤(BD+DVD)
RCMR-92501-2 / 8,500円+税
通常盤
RCMR-2502 / 7,800円+税

[収録曲]
―1回表(前半)―
1.674
2.えんえんととんでいく
3.イージュー★ライダー
4.デーゲーム
5.雪が降る町
6.遺言
7.何と言う
8.野ばら
9.私はオジさんになった
10.風は西から(英語バージョン)

―1回裏(後半)―
11. SUNのSON
12. メリハリ鳥
13. The STANDARD
14. Darling
15. 結婚しようよ
16. アイラブユーOK
17. 幸せであるように
18. さくら
19. 人間はもう終わりだ!
20. 世界の終わり
21. じょじょ
22. ハリがないと
23. 無限の風
24. 早口カレー
25. CUSTOM
26. さすらい

―延長―
27. 最強のこれから
28. 風は西から

[初回盤のみ]
ドキュメンタリーを収録したDVD付属

プロフィール

奥田民生

1965年広島生まれ。1987年、ユニコーンのボーカリストとしてデビュー。1993年の解散を経て、1994年にシングル「愛のために」でソロ活動を本格的にスタート。「イージュー★ライダー」「さすらい」などヒットを飛ばし、井上陽水とのコラボレーションや、プロデューサーとしてもPUFFY、木村カエラを手掛けるなど、その才能をいかんなく発揮。弾き語りスタイルの“ひとり股旅”、ひとりレコーディングライヴ“ひとりカンタビレ”など活動形態は様々。2009年にはユニコーンの活動を再開し、ソロと並行して行う一方、世界的なミュージシャンであるスティーヴ・ジョーダンらとのThe Verbs、近年は岸田繁(くるり)、伊藤大地と結成したスリーピースバンド、サンフジンズとしても活動している。昨年50歳を迎え、新たにレーベル「ラーメンカレーミュージックレコード」を立ち上げ、アニバーサリーライブも数々行った。

オフィシャルサイト:http://okudatamio.jp/

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