Interview

緑黄色社会 溢れ出す熱い思いとカラフルなアイデアを彼女たちはどんなふうに音楽化したのか?

緑黄色社会 溢れ出す熱い思いとカラフルなアイデアを彼女たちはどんなふうに音楽化したのか?

快進撃を続ける4人組の新作『溢れた水の行方』が届いた。6曲入りというコンパクトなサイズのなかに、印象的な楽曲のバリエーションと歌詞世界の広がりを備え、バンドの現在の充実とさらなる飛躍を感じさせる仕上がりだ。
その制作を振り返りながら、いま彼らが意識していること、そしてこれから見据えている彼らの音楽の“行方”について、メンバー4人にじっくり語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 高木博史

「あのころ見た光」はこれからの私たちのこと、“ここからスタートだ!”という気持ちも感じてもらえると思います。

今回は、作り始めるときにはどんなことを考えていましたか。

小林 昔から変わってないんですけど、“このアルバムを作るから、どういう曲を制作していこう”というふうには考えなくて、普段いろいろ作っていくなかで“アルバムを作るとしたら、このなかからどの曲を入れたいかな?”という話し合いから始まっていくんです。だから、アルバムのコンセプトというようなものはなくて、結果的にこういうものができた、という感じです。

“どの曲を入れたいかな?”という段階で何かポイントになったことはありますか。

長屋 聴いてくれる人をびっくりさせたいという気持ちは常にあるので、そういう意味でこれまでの作品を越えられるものという視点で選んだと思います。

長屋晴子(Vo / Gt)

小林 作った当時は“ちょっと等身大過ぎるな”みたいな感じがして音源化しなかった曲もあるんですけど、今だったらちゃんと表現できるんじゃないかということで今回入れた曲もありますね。

「今だったらちゃんと表現できるな」ということで入れたというのは、どの曲ですか。

小林 1曲目の「あのころ見た光」です。

「あのころ見た光」を最初に作ったのはいつ頃ですか。

長屋 2、3年前ですね。私たちが21歳の頃です。

それで♪twenty-one♪というフレーズが入ってるんですね。そのタイミングではどうして音源化しなかったんですか。

小林 21歳の自分たちが21歳の歌を歌うと、ちょっと狭くなっちゃうなと思ったんです。でも、今だったら21歳以降のこともわかった上で作れると思ったんで、歌詞も長屋の手を借りて書き直して仕上げました。

歌詞の手直しのポイントは?

小林 最初の歌詞は第三者的過ぎて、ちょっと人間味に欠けてたという言い方が多分正しいと思うんですけど、それとはまったく別に長屋に歌詞を書いてもらって、その2つを組み合わせたような感じですね。

長屋さんは、新しく書く際に何か意識していたことはありますか。

長屋 元の歌詞はやっぱり21歳の頃のものだから、届け方にまだ説得力がなかったというか、23歳の今の視点で21歳の頃を振り返って書くというほうがいいなということは思っていました。

「あのころ見た光」の作曲はpeppeさんですよね。

peppe 20歳を過ぎて、ちょうど未来のことを考え始めたときに、明るい開けたイメージがあって、それをもとにピアノを弾いてたらまずイントロが生まれて、とにかくその明るくて開けたイメージがはっきりあったので、すんなり作れました。作りたいものを作った!という感じです。

その時点から2年ほど経って、今回レコーディングした、このタイミングについてはどう感じていますか。

peppe “今だな”ということは、すごく思いました。昔でもなかったし、この先でもないなって。そのことは本当に自信があるし、それにこれからの私たちのこと、“ここからスタートだ!”という気持ちも感じてもらえると思いますね。

「サボテン」は、日常の生活に溶け込む感じを出したくて、こういうアレンジになりました。

もう1曲、peppeさんが曲を書いた「Bitter」は、1stミニアルバム『Nice To Meet You』に収められていた曲ですが、この曲は今回の収録にあたって何か手を加えたところはありますか。

長屋 これは、敢えてそのまま入れました。

peppeさんの曲は、やっぱりピアノから始まる形になるんですね。

peppe そうですね。ピアノでイントロを考えるところから作り始めることが多いので。男子メンバーが作ると、ギターのリフから始まったりすることが多いですね。

穴見さんは、今回の作品から敢えて1曲選ぶとすれば、どの曲になりますか。

穴見 僕としては「サボテン」が推しです。今回は、1曲目から3曲目までの流れがこれまでのリョクシャカにはあまりなかった流れだと思うんですけど、4曲目の「サボテン」ですべてすくい上げるようなサウンドになっていると思うし、個人的に歌詞がすごく好きなんですよ。

穴見真吾(Ba / Cho)

その「サボテン」は、どういうふうに生まれた曲ですか。

長屋 歌詞と曲がほぼ同時進行で出来上がったんですけど、この曲の歌詞は珍しく最初にテーマがありました。私自身がサボテンを育てて、水をあげなさ過ぎて枯らしてしまったんですけど…(笑)、でもいろいろ調べてみると、水をあげ過ぎても根腐れして枯れてしまうということがわかったんです。それが意外で、ちょっとびっくりしたと同時に、恋愛と似てるところがあるなと思ったんですよね。重いと言われてしまう恋愛はたくさんあると思うんですけど、でも“それって、ちょっと違うんじゃないかなあ”という違和感が私のなかにはずっとあったんです。単純に一途なだけなのに、純粋に愛を与えているだけなのに、重いという悪い言い方で言われてしまうことに納得いかないというか。そういう気持ちを歌詞にできたらいいなと思って書いたのが「サボテン」です。

アレンジはどういうふうに進めたんですか。

長屋 まず私がベーシックなところを作って、それを真吾がさらにアレンジしてくれたんですけど、その時点で私が伝えたのは生活感を大事にしたいということでした。日常的な感じというか。

穴見 僕が最初にやったアレンジは「軽快過ぎる。もうちょっと暮らしに寄り添う感じに」と言われたんですよ。

長屋 この歌詞みたいな話って、じつはどこにもあると思うんです。だから、日常の生活に溶け込む感じを出したくて、こういう仕上がりになりました。

壱誓のボーカルも素晴らしいので、そういうパートが入ることで「このバンドって面白いな」と感じてもらえることが増えると思ってるんです。

穴見さん作曲の「Never Come Back」は、どういうふうに生まれた曲ですか。

穴見 まず僕がすごく荒削りなトラックを作ったんですけど、そしたら壱誓が「歌詞を書きたい」と言ってくれて…。

小林 すごく真吾らしい要素もありつつ、緑黄色社会でやれそうだなという、いいエッセンスをずっと感じてたんで、「アルバムにどの曲を入れたい?」という話になったときに、まず頭の中に流れてきたのがこの曲だったんです。

歌詞のモチーフは、どういうことだったんですか。

小林 まずは当時の僕の心境が反映されたものなんですけど、僕は恋愛をうまく成就させるタイプではなくて…。男って、どうしても自分に都合のいいようにしてしまうところがあると思うんですけど、その情けなさを書きたいなと思って。だから、すごい男目線で書いたんですけど、そしたら長屋が「これだと、私は歌えない」って(笑)。当然の反応で、それで視点を変えてみようと思って、そういう情けない男の被害に遭った女性の視点で書き直しました。

そういう経緯があるから、男性ボーカルと女性ボーカルが絡む、というアレンジのアイデアが出てきたんですか。

小林 それは、真吾のデモの時点で「ここは絶対、俺が歌うところでしょ?」って感じのパートが用意されてたんです。

穴見 前作の「君が望む世界」もそうですけど、壱誓が歌うパートを入れたいなといつも思ってるんですよ。壱誓のボーカルも素晴らしいので、そういうパートが入ることで「このバンドって面白いな」と感じてもらえることが増えると思って、だからいつもそのことを意識して曲を作ってるんですけど、今回は掛け合いみたいな構成で考えていたものが最終的に壱誓の歌詞とも通じ合って良かったなと思います。

アレンジも印象的な曲ですが、このアレンジはどんなふうに進んだんですか。

穴見 最初にギターが刻むリズムでずっと進んでいきたいっていうのがまずあって、そのギターのフレーズは去年出たBECKの『Colors』というアルバムに影響を受けてて、それで最初はかなりロックな感じだったんです。そこにLASTorderさんにアレンジで入ってもらったら、エレクトロな要素が加わってよりダンサンブルな感じになったと思います。

「視線」はどういうふうに生まれた曲ですか。

長屋 これは「あのころ見た光」よりも前からあった曲なんですが、当時はサビのメロディがどうもしっくり来なくてそのままにしてたんです。最初は、歌詞も主人公の心の弱さみたいなことがテーマだったんですけど、今回サビのメロディを変えようと思い立ったときに歌詞のテーマも変えてみたら、うまくハマりました。

穴見 この曲のデモが送られてきたときに“すごくいい曲だなあ”と思ったので、“絶対、いい曲に仕上げなきゃいかん!”という気持ちが大きくなり過ぎて、3回アレンジをやり直したんですよ。でも、やっぱりいい感じにならなくて、最後はみんなでスタジオに入ったんですよね。

長屋 そこで、めちゃくちゃシンプルにやってみたら、「これで、良くない?」という話で、だからそれまでの真吾のアレンジは悪くなかったんだけど、手を尽くし過ぎていて…。

穴見 とんこつラーメンにカレーを入れた、みたいな(笑)。

長屋 (笑)、やり過ぎた感があったので、音をどんどん抜いてシンプルにやってみたら、いい感じになりました。

私たちの音楽に対する思いも、熱量が多すぎたとしても無駄ではないと思うんです。

「リトルシンガー」は作曲:緑黄色社会となっていますが、最初の曲作りからみんなでやったということですか。

長屋 この曲は小説とコラボした曲で、その小説の主人公がバンドをやってて、曲を作るんですけど、その曲の歌詞を私が書くという形のコラボだったんです。それで、歌詞ができたので、その曲をみんなで作ろうという話になったんですけど、小説にも青春感というか、みんなで一緒に作り上げる感があったので、曲のほうもメンバーみんなでやったほうがいいものになるんじゃないかなと思ったんですよね。

この曲の主人公は♪僕は僕のために生きて/僕のために歌うよ♪と歌いますが、長屋さんは、あるいは緑黄色社会は何のために歌うんですか。

長屋 私は、その小説の主人公に似てるところがあったので、こういう歌詞になったんです。私も、リスナーのために歌ってるのは間違いないんですけど、でもそれ以前に自分のために歌っているところがすごくあります。私が音楽をやっているいちばんの理由は歌うことが好きだからなんですけど、そういう意味でも自分のために歌っていると思います。

『ADORE』リリースの時点でも同じことを話されていました。それから1年余りの間に緑黄色社会の音楽の受け取り手はすごく広がっている状況にあっても、そこのところは変わらないということですね。

長屋 多分、私は、私のために歌わなくなったら続けられなくなるかもしれないなと思いますね。

小林 僕らは、長屋が自分のために歌った歌が、結果的にはいろんな人の共感を得ているのかなと思っています。

小林壱誓(Gt/ Cho)

自分のために歌うということがまず基本にあるとして、そこにより多くの人に聴いてほしいという思いもある場合に、そのバランスについていまはどんなふうに考えていますか。

長屋 「リトルシンガー」は提供した形になったわけですけど、そういう経験は初めてだったんです。だから、自分たちのなかだけじゃなくて、違う人のことも考えて曲を作るということが初めてでした。そこに関してすごい戸惑いはあったんですけど、でも自分の気持ちもリンクさせることでその戸惑いをクリアできたと思ってるんです。だから、そういう形がこれからどんどん増えていったとしても嘘にはならないというか、どこかに自分の気持ちをちゃんと入れ込めることはできるから、クリアしていけるんじゃないかなと思います。

アルバム・タイトルの話ですが、すごくいいタイトルだなあと思いました。

長屋 タイトルはいつもすごく悩むんですけど、元は「サボテン」の歌詞から出てきたんです。さっきも話しましたが、重いと言われてしまうような一途な思いも間違いではないじゃないですか。無駄ではないと思うし。同じように、私たちの音楽に対する思いも、熱量が多すぎたとしても無駄ではないと思うんです。だから、その溢れてしまった思いもこれからどんどん夢につなげていきたいなと思って、こういうタイトルにしました。

「サボテン」の歌詞に倣って言えば、♪愛に加減がある♪ということを学習した先にはその一途な思いの扱い方は変わってくるんでしょうか。

長屋 変わってくると思いますね。別のやり方で伝えることを考えるというか、自分たちも大人になってきたから、溢れてしまうようなものを重いと思われないようなやり方でこれからは伝えられるんじゃないかと思います。今回の作品にはそのことも表れているんじゃないかと思うんですが、「視線」とか「Never Come Back」とか、すごくキャラクターの違う曲がいろいろありますよね。仮に緑黄色社会の曲のどれかを聴いて、例えば“重いな”と感じた人がいたとしても、「じゃあ、別の曲を聴いてみて。違う感じかもしれないよ」と言えると思うんです。そういうアプローチをこれからもしてきたいと思っています。

たくさんの人の前で歌うことがどんどん楽しくなってきてるんですね。

さて、ワンマン・ツアーが決定しています。本数も会場の規模も着実にアップしてきていますが、今回のツアーに向けてどんな気持ちで臨みますか。

peppe まず自分のなかで、そしてメンバーのなかで気持ちを固めるということが大事だと思っています。意志をひとつにするということが、会場が大きくなってくるといっそう大事になってくるかなと思っていて、でも逆にそこがしっかりしていれば自信を持ってやれると思うので、そういう気持ちで臨みたいと思います。

peppe(Key / Cho)

穴見 いまの話にも重なると思うんですが、僕は会場が大きくなるほど逆に初心に帰るということを意識するんです。ライブに向かう自分の流儀として、もちろんいろんな人に向けて演奏しているんですけど、曲ごとに自分のなかのイメージのお客さんがいて、その人に向けて演奏するという意識があるんです。だから、会場が大きくなっていって、大きく広く届けるのは間違いないんですけど、僕のなかではひとつのことに向かって演奏していくというところをあらためて意識したいなと思います。

小林 会場が広くなるにつれて、お客さんが増えていくにつれて、僕はやりやすくなってる気がしてるんです。自分をどう見せるかということはいつでも大事なことだと思うんですが、それでも見られているという意識が強すぎると表現しきれないことがこれまでは多かったんですね。でも、キャパが大きくなってくると、見られているという感覚がどんどん薄れていって、それで自分がやりたいように表現できる、自分が届けたいことを素直に表現できるなと感じているので、今回のツアーではますますやりやすく感じられると思います。

長屋 今回のツアーの東京はBLITZですけど、昨日たまたま外からBLITZを見ることがあって、“すごく大きいなあ”と思って、ちょっと怖くなったところもあったんです。さっきも話したように、私は歌うことが好きということだけでやってきたから、“会場がこんなに大きくなっていいのかな?”という感覚も正直あるんですけど、それでもさっき壱誓も言ってくれたように、私のための歌でも、それを好いてくれる人が増えてきているわけだし、実際たくさんの人の前で歌うことがどんどん楽しくなってきてるんですね。だから、怖さを感じつつも、やっぱりすごく楽しみですね。

いいツアーにしてください。ありがとうございました。

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ライブ情報

ワンマン・ツアー“溢れた音の行方”

11月22日(木) 宮城・仙台CLUB JUNK BOX
11月24日(土) 愛知・名古屋ダイアモンドホール
11月30日(金) 福岡・福岡DRUM Be-1
12月1日(土) 広島・広島CAVE-BE
12月8日(土) 大阪・大阪BIG CAT
12月15日(土) 北海道・札幌cube garden
12月21日(金) 東京・マイナビBLITZ赤坂

緑黄色社会

長屋晴子(Vo / Gt) 、peppe(Key / Cho)、穴見真吾(Ba / Cho) 、小林壱誓(Gt/ Cho)。
2012年活動開始。愛知県在住。同級生3人と幼馴染で結成される。お互いを知り尽くした4人がそれぞれのポップセンスをぶつけ合い、幅広いカラーバリエーションを持った楽曲・サウンドを生み出す。2013年、10代限定音楽フェス「閃光ライオット」準グランプリ。2017年に1月に『Nice To Meet You??』、同年8月に『ADORE』という2枚のミニアルバムをリリース。2018年3月には、1stフルアルバム『緑黄色社会』をリリースしている。2018年5〜6月に行われたライブ・ツアー“リョクシャ化計画2018”は全会場ソールドアウトとなった。

オフィシャルサイト
http://www.ryokushaka.com

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