Weekly モバイルエンタメステーション  vol. 12

Column

アニメーションとロックバンドの本質的な出会い。2018年秋アニメ・オープニングテーマ3選

アニメーションとロックバンドの本質的な出会い。2018年秋アニメ・オープニングテーマ3選

裾野を広げるアニメーション文化。単なるタイアップやジャンルに最適化された「アニソン」とは異なる、音楽と物語との本質的な出会いがいくつも生まれている。今回は2018年11月現在放送中のアニメ作品の中から、特に互いのコアをえぐり合うようなコラボレーションを見せたオープニングテーマ3曲を紹介する。奇しくもバンド形態で活動する3組の楽曲となったが、こうした他ジャンルとの相互浸透が起きるのも、バンドという形態が楽曲の持つテーマ性をとことんまで突き詰められる、ミニマムな単位だからこそだと思うのだ。

セレクト・文 / 北出 栞

the peggies「君のせい」

原作の解釈を拡張するバンドの目線

『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』というなんとも珍妙なタイトルの作品のオープニングを飾るのがthe peggiesの新曲「君のせい」だ。タイトルから受ける印象に反して、思春期の悩みが「存在を認識されなくなる」「心の傷が物理的な怪我になる」などの現象として表れる「思春期症候群」を扱った、繊細で少し不思議なジュブナイルストーリーとなっている。

the peggiesはギターボーカル・ベース・ドラムスからなる女性3人組のロックバンド。「ガールズバンド」という紋切型のイメージで捉えている人ほど、力強く曲を引っ張るリズム、サウンドの分厚さに驚くはずだ。作詞作曲を担当したギターボーカルの北澤ゆうほ曰く、楽曲はメインヒロインの心情に寄せて書き下ろされているといい、「男性の皆さん是非、強がってしまう女の子の複雑な心境を知って頂きたいです」とのこと。本作の原作は少年向けレーベルから発刊されているライトノベル。主人公も高校生の少年だが、そこに本楽曲によって「女子目線」が加わることで、新たな読解の可能性を引き出している。疾走感のある曲調に乗せ、主人公が全力疾走している様は彼とヒロインの「縮まっているようで縮まっていないような絶妙な距離感」(北澤)を表し、演奏のキメに合わせてタイミングよくカットが切り替わる演出も気持ち良い。「オープニングにロックバンドを起用すること」に対するアニメスタッフのポリシーが感じられる映像は、バンドのファンにも一見の価値ありだ。

the peggies オフィシャルサイト
http://thepeggies.jp/


ハルカトミユキ「17才」

作品の奥底にある「翳り」を掬い取るサウンドと言葉

アニメ『色づく世界の明日から』の舞台は、魔法が日常に浸透しているという以外は私たちが住むのと変わりない現代の世界。魔法使いの血を引く主人公の少女は過去の出来事がきっかけで色を失い、すべてが白黒に見えてしまう世界で生きている……この魅力的な導入を支えるのがハルカトミユキの手がけるオープニングテーマ「17才」だ。

2人組の「バンド」であるハルカトミユキには、ニルヴァーナからの影響を公言するなど攻撃的なロック・サウンドがフィーチャーされた楽曲も多い。「怒り」や「翳り」のイメージで捉えられることも多い彼女たちだが、今回アニメーションとの化学反応を起こすことでサウンド面でも歌詞面でも、きらめくようなポピュラリティを獲得した。柔らかい映像のイメージに反して「たとえば今日までの僕が壊された夜」という歌い出しのフレーズは突き放したような響きを持って聴こえるが、そのようにして始まるこの楽曲の歌詞の全体は、実はかぎりなく優しい。「壊された」としても夜は明け、「僕」は続いていく。変化を肯定するということが、徐々に解放感を増していくサウンドとともに歌われるのだ。本作が初めから光輝く世界を描くのでなく、「自分だけが白黒の世界に生きている」という痛みをしっかりと描いている作品だということが、彼女たちの元々持っていた資質とも深い部分でシンクロしたのだろう。「17才」というシンプルなタイトルは、「子供ではなく、しかし未だ何者でもない」不安定な時代を肯定する力強さに満ちている。

ハルカトミユキ オフィシャルサイト
http://harukatomiyuki.net/


TK from 凛として時雨「katharsis」

4年越しの相思相愛が生んだ究極のコラボレーション

『東京喰種:re』第2クールのオープニングテーマである本楽曲。同シリーズのアニメ化第1作(2014年『東京喰種』)でもオープニングテーマ「unravel」を提供したTK from 凛として時雨が再登板している。

元々原作者の石田スイが日本のロックバンド、特にポストロックと言われる実験的要素を含む音楽を愛好していて、他にも当時すでに解散していたthe cabsというバンドのソングライターだった高橋國光を起用したり(これを機にソロプロジェクト「österreich」が新たに立ち上がった)、インディーズでほぼ無名に近かったCö shu Nieというバンドをフックアップしたりしてきた。原作者が自作のアニメ化の主題歌にここまで深く関わるというのは稀なことだし、決してポピュラーなものではないこの種の音楽性であればなおのことだ。繊細と激情の間を行き来する複雑な構成、爆発的な轟音とシャウト……こういった要素は『東京喰種』という、バイオレンスを通じて人間性の彼岸を問う作品であるからこそマッチして響く。人間を喰らうことでしか生きられない「喰種」という存在、元は人間でありながら、「喰種」になってしまったがゆえの主人公の哀しみ……静かに幕を開ける「katharsis」もサビで絶叫、文字通りカタルシスが爆発する。ミュージシャン自ら「この組み合わせが創り出す世界は究極のそれであると願っています」(TK)とコメントする、運命的とも言うべきコラボレーションがここにある。

TK from 凛として時雨 オフィシャルサイト
http://tkofficial.jp/

音楽編の次回更新は12月3日(月)予定です。


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