Interview

原田知世が演じるように歌い上げる少女時代の名曲ポップス

原田知世が演じるように歌い上げる少女時代の名曲ポップス

2015年3月にリリースされた14年ぶりのカヴァー・アルバム『恋愛小説』の第2弾となる『恋愛小説2〜若葉のころ』を5月11日にリリースする原田知世。
“故郷・長崎での少女時代”をテーマに、ポップス/歌謡曲の名曲を演じるように歌い上げている。その新作と選曲について、話を聞いた。

インタビュー・文 / 油納将志 写真 / 増永彩子


みんなが知っている、口ずさんでいる流行歌の時代
そんな時期に少女時代を過ごせて良かったと思います

この『恋愛小説 2~若葉のころ~』は’15年3月に発表された洋楽カヴァー・アルバム『恋愛小説』の続編で、今回は70年代半ばから80年代前半の邦楽の名曲をカヴァーしていますね。

はい、『恋愛小説』をリリースした後、各地をツアーしながら次の作品についてプロデューサーの伊藤ゴローさんたちと話していく中で、邦楽のカヴァーに自然な流れでたどりついたんです。でも、一言で邦楽と言っても星の数ほど名曲がありますよね。ですので、何かテーマを設けて考えようということになり、私が子ども時代からデビュー前後に聴いていた曲というテーマで30曲くらいの候補から10曲を選びました。当時の日本のポップス/歌謡曲は個性がはっきりとしていますし、私の思い入れもあるものなので、いったいどんなアルバムに仕上がるのかが最初は予想できなかったんですよね。でも、’14年に発表したアルバム『noon moon』からレコーディングもツアーもほぼ同じバンド・メンバーでやってきてチームワークが良い状態なので、ゴローさんを中心に面白いものができるなという予感がありました。

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どんな少女時代だったのでしょう?

目立つことは好きじゃなかったんですけど、家族の前では張り切って歌うというような内弁慶タイプ(笑)。姉(原田貴和子)と一緒に歌番組を観て、お気に入りの曲をおぼえて家族の前で歌ったり、踊ったりしていました。思い返せばいつも歌っていた気がします。旅行の車の中やお風呂に入っている時も歌っていたのですが、不思議と歌手になろうという気持ちは全くなかったんですよね。姉は私以上に人見知りで目立ちたくないタイプだったのに、いつしか私も姉も女優や歌手として仕事をするようになっていた。人生って面白いですよね。

お姉さんと歌っていた時代の曲がまさに選ばれているわけですが、選曲の基準はあったのでしょうか?

自分の好きな曲が必ずしも自分の声質や歌い方に合うとは限らないので、少し多めに候補となる曲を挙げて、その中からゴローさんがアルバムとして統一感のあるアレンジができそうな曲を選んでいきました。でも、ほとんどが実家で歌っていた曲です(笑)。

ここからは1曲ごとに歌ってみての感想を聞かせてください。まず1曲目は竹内まりやさんの「September」です。

まりやさんの「不思議なピーチパイ」がすごく好きで、候補曲にも挙げていたのですが自分が歌うことやアルバムの統一感を考えて、「September」のほうが面白いアレンジや歌い方になりそうだと思って決めました。サウンドの軽やかさと華やかさに反して、歌詞はすごくせつない。そのせつなさを松本隆さんの歌詞が伝えてくれますので、私はサウンドに身を委ねて歌うことに専念しています。

2曲目は荒井由実(松任谷由実)さんの「やさしさに包まれたなら」です。

これも大好きで、ずっと歌いたかった曲でした。姉がよく聴いていたんです。自分に合った曲を選んだ中でも、とびきり歌いやすい曲。自然と一番心地良い場所を探して歌えるというか。なかには歌うたびに出来不出来がはっきり分かれる曲もあるのですが、この曲はいつ歌ってもあまり変わることがない安定した曲ですね。

松田聖子さんの「秘密の花園」が3曲目です。

これは難しかったですね。聖子さんを念頭に書かれた松本さんの歌詞を、聖子さんが曲のキュートな世界観をしっかりと投影しながら歌い切っているので、その完璧な曲を前にアプローチを悩んでいました。でもアレンジも変わっているので、新たな解釈と気持ちで歌ってみました。それくらい聖子さんのヴォーカルの強さ、インパクトをこの曲から感じましたね。

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4曲目の太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」はどうでしょう?

普段は着ない服を誰かに勧められて着てみたらサイズもぴったりで心地良かったというくらいフィットした曲でした。ゴローさんのおすすめでカヴァーしたのですが、私の声の個性をはじめ、よく理解していただいているんだなと歌って感じましたね。

5曲目は原田真二さんの「キャンディ」。初めて男性の曲がここで登場です。

特に男性・女性の意識はなかったのですが、結果として女性の曲ばかりになってしまいました。原田真二さんの声、初めて観た時の印象が鮮烈で、すごく思い入れがある曲です。やっとカヴァーできるタイミングが来たんだなと思いました。当時住んでいた家の部屋の情景が浮かんでくる曲です。今回カヴァーした「異邦人」と「夢先案内人」も記憶に結び付く曲ですね。なつかしくてあたたかい気持ちにさせてくれます。

6曲目のキャンディーズ「年下の男の子」はちょっと意外でした。

世代的にはピンク・レディーなのですが、キャンディーズが解散する頃のことはすごく印象に残っています。キャンディーズの曲は歌詞、曲調、振り付け、衣装全てが完成度が高くて、1曲ごとにコンセプトや世界観が確立されているんですよね。この曲のかわいらしさを大人の茶目っ気で出してみたいと思ったので、世代的には少し上の曲ですが選びました。

 7曲目の久保田早紀さんの「異邦人」は難しそうな曲です。

子どもの頃、最も聴いた曲のひとつです。ヒット曲がたくさん流れる歌番組の中でも異質で新鮮だなというのは子どもながらにわかっていましたね。大人になってからもアルバムを聴き続けていて、影響も受けた1曲でもあります。アレンジが確立されているので難しいかなと思っていましたが、ゴローさんならできるはずとお願いしたら、すばらしいアレンジをしてくれました。

8曲目の大貫妙子さんの「夏に恋する女たち」は当時同名ドラマの主題歌となりました。

そう、ドラマの主題歌だったんですよね。当時、この曲の大貫さんの存在感のある声、洗練されたアレンジ、時代の空気感が私にとってひときわ素敵に感じられたんです。しなやかな大人の女性の香りがして、いつかこの曲を歌いたいと当時から思っていて、ようやく実現しました。

9曲目は山口百恵さんの「夢先案内人」です。

百恵さんは女優でもあり、偉大な歌手でもある。ドラマもずっと観てました。百恵さんの歌の中で自分が歌うとしたら、この曲だと決めていました。ほかにも好きな曲はいっぱいあるりますが、この曲は特に歌ってみたかったんです。

最後は松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」です。

去年、NHK-BSの『The Covers』に出演した際に「キャンディ」と「異邦人」を歌ったのですが、「SWEET MEMORIES」も候補の中にありました。残念ながらその時は歌うことができなかったんですけど、今回このアルバムで歌うことができたのはうれしい限りですね。でも、この曲も聖子さんのイメージが強いので、今の自分に合うような歌詞の世界を考えながら、自分なりの「SWEET MEMORIES」を歌うように心がけました。

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カヴァーと言っても、ほかのアーティストの曲をただ歌うだけじゃない、アレンジや歌い方、歌詞の解釈など、さまざまな面からアプローチしていますよね。まさに原田さんの色に染まったアルバムになっていると思います。

今回、いろんなカヴァーの仕方があるんだなってわかりましたし、楽しみながら歌うことができました。まず完成された曲を前にして、作っていかないといけないので悩みもします。でも、結果的に自分らしさが見えてもくるんですよね。今回選んだ曲がリリースされた時代は才能ある大人たちが集まって、曲としての完成度を極限まで高めて、さらに万人受けするヒットすることを目指していたように思います。歌い手の方々も曲が持つ物語の中で演じるように歌っている。そして、年代に関係なく流行歌として、みんなが知っている、口ずさんでいる。本当に良い少女時代を過ごせたんだなと思いますね。

原田知世

オーディションで5万7千人の中から選ばれ、’83年に『時をかける少女』で映画デビュー。以降、映画・ドラマなどの話題作に出演し、また、ドキュメンタリー等のナレーションを担当するなど幅広く活動中。同時に、歌手としてもデビュー当時からコンスタントにアルバムを発表。’90年以降は鈴木慶一、トーレ・ヨハンソンを迎えてアルバムを制作した。’07年、プロデューサーに伊藤ゴローを迎え、アルバム『music & me』、’09年『eyja』、’14年『noon moon』、’15年『恋愛小説』を発表。現在は高橋幸宏らと結成したバンド、pupa のメンバーとしても活動している。

リリース情報

原田知世 『恋愛小説2〜若葉のころ』  原田知世 『恋愛小説2〜若葉のころ』 

『恋愛小説2〜若葉のころ』

Verve/Universal Music
2016年5月11日発売

【初回限定盤 CD+DVD】
SHM-CD+DVD:3600円+税
【通常盤】
SHM-CD:3000円+税

01.September (竹内まりや・’79年)
02.やさしさに包まれたなら (荒井由実・’74年)
03.秘密の花園 (松田聖子・’83年)
04.木綿のハンカチーフ (太田裕美・’75年)
05.キャンディ (原田真二・’77年)
06.年下の男の子 (キャンディーズ・’75年)
07.異邦人 (久保田早紀・’79年)
08.夏に恋する女たち (大貫妙子・’83年)
09.夢先案内人 (山口百恵・’77年)
10.SWEET MEMORIES (松田聖子・’83年)
11.いちょう並木のセレナーデ (小沢健二・’94年)(初回限定盤のみ収録)

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