Interview

BIGMAMA 「バイオリニストがいるロックバンド」という唯一無二な存在をしっかりと示したというメジャー1stアルバムについて訊く。

BIGMAMA 「バイオリニストがいるロックバンド」という唯一無二な存在をしっかりと示したというメジャー1stアルバムについて訊く。

11年間のインディーズ活動を経て、昨年3月に満を持してメジャー進出を果たしたBIGMAMAが、メジャー1stアルバム『-11℃』を完成させた。これまで作品を作るごとに貪欲なチャレンジを続けてきたBIGMAMAが、あえて自分たちの得意技だけで作り上げたという今作。それは、「バイオリニストがいるロックバンド」というバンドの唯一無二のアイデンティティを大切にした、BIGMAMAの核心に極めて近い1枚になった。作品のコンセプトは身体。それぞれの楽曲に、手、足、心臓、肺、腰など、身体のパーツをあてがった意味深なテーマには、過去のBIGMAMAの作品とリンクするような部分や、いくらでも深読みできる仕掛けがたくさん散りばめられている。なぜ、そんなことをするのか。以下のインタビューの金井政人(Vo/Gt)と柿沼広也(Gt/Vo)の言葉から、その意図が伝わればと思う。

取材・文 / 秦理絵 撮影 / 荻原大志

僕たちは「バイオリニストがいるロックバンドである」っていうことを証明する12曲を作りたかったんです(金井)

『-11℃』には、これまでBIGMAMAが積み重ねてきた歴史が凝縮されているというか。バンドの多角的な魅力を感じられる作品かなと思います。

金井 正直、多角的に作ったつもりはないんですよ。アルバムを作るうえで、自分たちの表情を1個に決めてたんです。だから、いろいろなバリエーションが出てるとすれば、勝手についてきた副産物ですね。極端に言うと、僕は12曲全部、同じ曲を書こうとしたんです。

全部同じ曲!? それは、かなり意外です。

金井 自分なりの言い方ですけどね。わかりやすく説明すると、僕たちは「バイオリニストがいるロックバンドである」っていうことを証明する12曲を作りたかったんです。10年以上も音楽と向き合ってると、飽きないようにする秘訣みたいなものがあって。いつも新しい好きなものを見つけてきたけど、それを1回削ぎ落したかったんですよね。音楽的にダイエットしていくというか。とことん飢餓状態にして、最後に残ってるものは何だろう?と思ったら、「バイオリニストがいるロックバンドである」っていうことだったんです。

「全部が同じ曲である」みたいな感覚は、柿沼くんも共有していたんですか?

柿沼 そこまでは話してなかったけど、気持ちいいアルバムを作ろうとは思ってました。何度も繰り返して聴きたくなるアルバムというか。それが、どういうアルバムだろうね?みたいな話をしたときに、サウンド感が揃ってるアルバムは心地好いよねって話して。

ジャンルというよりも、音質として統一感のあるアルバムという意味ですね?

柿沼 そう。だから、(手元の資料を見ながら)「メジャー1stアルバム」って書かれると、気合いが入る感じがするんですけど、自分たちとしては、ちからが抜けてるんですよ。さっき「多角的」っておっしゃっていただいたのも、やっぱり僕らも10年間やってきた経験があるから、そのうえで作っていくと、「この歌に似合う音色は、どういう音色だろう?」っていうのが、なんとなくわかっちゃうんです。(歌に)呼ばれちゃうというかね。だから、結果的にバリエーションは出たんだなっていうのは思いますね。

3月のメジャーデビュータイミングのインタビューでも、「バイオリニストがいるロックバンドである」ということは、意識して作ったという話をしてましたね。

金井 いま「自分たちのしてることのなかで、いちばん価値のあることって何だろう?」っていうのを突き詰めたら、得意なことをやる、いちばん勝算のあることをやるっていうことが大事だったんですよね。たとえば、俺がアコースティックギターを1本持って、秦基博さんの次に歌うとか、それは勝算が薄いじゃないですか。

まあ、そうかもしれない(笑)。

金井 ただ、そこでロックバンドBIGMAMAとして5人でやれたら、何の心落ちなくやれるわけですよ。だから、絶対に負けないことをやり続けることが、いま自分たちの品質を誇れる、いちばんの方法だなと思ったんです。っていうときに、俺らの得意なところは、ラウドさのなかでバイオリンが美しく響く、そういう音楽なんですよね。それを、それぞれのメンバーのいちばん得意なもので積み重ねられたときが、いちばんかっこいい。リアド(偉武/Dr)がダイナミックなドラムを叩いて、そこに柿沼がオンリーワンのフレーズを弾いてくれて。今回はそれを12個揃えてキチッとやり切った作品なんです。

同じことを12曲やったのに、結果これだけ違う曲ができたということそのものが、BIGMAMAの11年間の充実を物語ってるんでしょうね。同じ発想で11年前にアルバムを作っていたら、本当に同じような曲だけが並んでたと思うから。

金井 うん、そういうことだと思いますね。

メンバーとスタッフで同じように投票をやったんですよ。そしたら見事に分散して(柿沼)

今回のアルバムをリリースするにあたっては、事前にリスナーにリード曲を決めてもらうという試みもありましたけど。この企画を思いついたのは?

柿沼 僕らがリード曲を決められなかったからなんですけど(笑)。

なるほど(笑)。

柿沼 これをやる前に、メンバーとスタッフで同じように投票をやったんですよ。そしたら見事に分散して。っていうところで、この企画の提案があったんですよね。急な企画だったので、全曲のミックスが終わってるわけでもなく、それぞれ30~40秒を切り取って聴いてもらったから、選ぶのも難しかったとは思うんですど。ファンの子たちが一生懸命考えてくれた結果が「Step-out Shepherd」で。BIGMAMAの良さをおススメするときに、このサビを聴いてほしいと思ったんだろうなっていうのは納得がいくので。面白かったです。

自分たちで決めるとしたら、この曲になってたと思いますか?

金井 柿沼とリアドは、「~Shepherd」を外してたからね。

柿沼 そう言うと、「俺が選ばなかった曲」みたいになりますけど。BIGMAMAの直球すぎて、いままでもこういうような楽曲は作ってきたっていう自負があったんですよ。だから、この曲で世界が変わるとは思えなかったんです。これ、敵を作る可能性があるから、「僕が外した」っていうのは書かないでほしいなと思いますけど……。

作り手の気持ちとしては、より新鮮なものをって考えますよね。

金井 僕らの作るものが建物だとしたら、どこをリード曲にするかって、玄関とか入り口を作る作業なんですよね。その作業って、僕は向いてないというか。作った順に可愛いですから。「どれがいちばん良いですか?」って聞かれたときに、補正がかかり狂ってる人間だから、客観的な評価ができないんですよ。しかも、今回は、僕が「同じ曲を作り続けよう」っていうマインドでいたぶん、みんなは選びづらかったんだと思うんです。だから、最終的にはファンに委ねるっていう。入り口を決めることを誰かにゆだねるのは、僕の美学には反さないので。それはファンであっても。

好きな曲じゃない、リード曲なんだって選んでくれたことは肝ですよね(金井)

たぶんね、今回のアルバムで「好きな曲は何ですか?」っていうアンケートだと、結果は違ったと思うんですよ。でも、「リード曲を選んでください」っていうお題で、「Step-out Shepherd」が選ばれることに、BIGMAMAとリスナーの絆を感じたんです。

金井 そう、好きな曲じゃない、リード曲なんだって選んでくれたことは肝ですよね。結果を見て、「自分がリード曲を決めた」とか、「自分のリード曲が決まらなかったじゃないか、ふざけるな!」みたいな、プラスの感情もマイナスの感情もあると思うけど。

自分で自己紹介するよりも、友だちとかに「この人はこういう良いところがあるんですよ」って言ってもらうほうが、説得力がある。この企画って、そういうことですよね。

金井 たしかに。

柿沼 めっちゃ良いたとえ。

金井 BIGMAMAを人に勧めるとしたら、「~Shepherd」だって考えてくれてること自体が、素直にありがたいですからね。ここで僕らが自分たちを紹介するために、じゃあ、こういう曲を作ろうってなるのは、メンタリティとしてダサいですから。

わかります。今回のアルバムは「身体」がテーマですね。それぞれの曲が、手、足、心臓っていう身体のパーツと連動してて。毎作アルバムを作るごとにコンセプトを掲げてきたBIGMAMAですけど、このアイディアの発端は何だったんですか?

金井 (メジャーデビューシングルの)「Strawberry Feels」は、食べ物がテーマの3曲だったから、あれが違った見え方をしてほしいなっていうのを思ってたんです。

シングルでは、いちご、ポップコーン、ドーナッツがタイトルに入ってて。

金井 そういう食べ物のシングルだったはずものが、最終的に別のかたちになって、大きなフィジカルの1枚になっていく感じにしかったんです。それは、長く好きでいてくれる人への楽しみを用意したいっていう、自分なりの意地みたいなところで。他にもアイディアはあったけど、身体を12分割にしようっていうのはそそられましたね。

どうして身体っていうものにそそられたんでしょう?

金井 うーん、あんまり理由はないですね。自分なりに、ただ8枚目のアルバムに向かっていくんじゃなくて、引き絵で見たときに、自分たちの過去とうまく連動するように書いていくのが表現として誠実だと思ったので。それが身体のイメージだったんです。

「Ghost Leg」が「目」とか、「Miffy’s Mouth」が「口」とか、対比する身体のパーツがあって、聴きながら深読みできる面白さもあるんですけど。ひとつ、リード曲「Step-out Shepherd」が、なぜ「鼻」なのか、理由を教えてもらえます?

金井 これは、安井がベースでシェパード音階(無限に上昇、または下降していくように聞こえる音の錯覚)を弾きたいって言い出して。ニッチなことをしてるなと思ったから、それを生かしてあげたかったんです。で、シェパードって、犬のなかでも、かなり鼻がいいんですよね。あと、ピラミットの主従関係に従順なんですよ。家のなかで、お父さんは偉いんだけど、お母さんは下とか。そこに「Step-out」ってつけたくなったのは、そのピラミッドが嫌になる、そういう動物の主従関係を逸脱する歌詞を書きたくなったからですね。

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