Interview

TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』は「まだまだ続きます」─4クール(1年)以後も続投決定の快挙、親子2世代から支持される人気の秘密とは?

TVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』は「まだまだ続きます」─4クール(1年)以後も続投決定の快挙、親子2世代から支持される人気の秘密とは?

2018年1月よりTBS系列で放送中のTVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』が絶好調だ。子どもたちをターゲットにしたロボットアニメながら、子どもの親世代とアニメファンも広く巻き込み評判となった本作。劇中では「初音ミク」や「エヴァンゲリオン」といった外部作品・キャラクターとの大胆なコラボもあり、たびたびネットを騒がせている。今回はそんな『シンカリオン』の“今までとこれから”について、作品プロデューサーの証言とともに解説する。

取材・文 / 柳 雄大

親子2世代で楽しめることが『シンカリオン』のベースコンセプト

鉄道が大好きな小学5年生の男の子・速杉ハヤトと彼の仲間たちが、新幹線から変形する巨大ロボット「シンカリオン」に乗り込み、未知の敵に立ち向かう……まずはこれが『新幹線変形ロボ シンカリオン』の基本となるストーリーだ。

謎の巨大怪物体の侵攻で人類に危機が迫る中、シンカリオンとの適合率の高さから急きょ運転士(=パイロットのこと)として選ばれた少年・速杉ハヤト。また彼の知らないところで実は巨大怪物体と戦っていたことが判明する父・ホクト。この父子の絆が物語の軸のひとつであったことから『新世紀エヴァンゲリオン』を連想した(大人の)視聴者は多く、特に放送スタート直後は“明るいエヴァ”と評されることにもなった。

新幹線E6系こまち

新幹線N700Aのぞみ

また本作にはJR各社公認のもと実在の新幹線が登場することが大きなポイントで、それは本作がタカラトミーのおもちゃ「プラレール」の1シリーズに位置づけられていることとも密接な関係がある。今回はTVアニメ『シンカリオン』のプロデューサーとして作品にクレジットされる5名(ジェイアール東日本企画・小学館集英社プロダクション・タカラトミー・TBS・小学館という5社それぞれの代表者)のうち、タカラトミーに所属する小嶋慶也プロデューサーに、おもちゃを展開するメーカーならではの視点とともに話を聞いてみた。

小嶋プロデューサー 「『シンカリオン』は、タカラトミーとしてもプラレールという主力の商品のひとつです。さらに今回はJRさん初の新幹線オーソライズ(公認)というアニメ作品でもあり、関係各社さんの間でも緊張感と、気合の入り方が違う、特に大事なコンテンツなんですよ」

タカラトミーより発売中の玩具「DXS(デラックスシンカリオンシリーズ) シンカリオン E5はやぶさ」。通常の「プラレール」商品と同じ規格で遊べるシンカンセンモードからシンカリオンモードへの変形を再現したヒット商品。

これまで鉄道や新幹線が変形するといったロボットのアニメは数あれど、実はJR各社が正式に許諾したという作品は『シンカリオン』が初めて。子どもたちが大好きな実在の新幹線が、3DCGで描かれるカッコいいロボットに変形するというのが本作の醍醐味だ。劇中ではハヤトの乗る東北新幹線E5系はやぶさに続き、秋田新幹線E6系こまち、北陸新幹線E7系かがやきなど、現実に走っている新幹線がシンカリオンに変形し、新たな運転士とともに次々に登場する。

子どもが大好きな要素が詰まった『シンカリオン』だが、その上での本作のポイントは大人にもしっかり楽しめるように作られていること。それは偶然ではなく、当初より作品の狙いとして存在している。

小嶋 「新幹線って、どの世代でも人気が衰えないんですよ。プラレールももちろん子どもがメインターゲットではあるんですけど、親子2世代、3世代で楽しめる商品になってきていて。そういう意味でも話題喚起をして、レンジの広い展開、作品にしたいっていうのは『シンカリオン』の企画のベースにありますね」

「ミク」「エヴァ」コラボのダブルインパクト

本作が大人世代にも話題になった理由のひとつとして、劇中で「初音ミク」や「新世紀エヴァンゲリオン」といった作品外のキャラクターとの大胆なコラボレーションを実現した点は大きい。

第15話「北へ!!シンカリオン H5はやぶさ」(4月21日放送)では、11歳の小学生で「シンカリオン H5はやぶさ」の運転士として“発音(はつね)ミク”が初登場。名前も外見もあのVOCALOID・初音ミクそっくりだが、そのキャスト(声)も初音ミクに音声を提供している藤田咲が担当。アフレコで演じた音声を、「初音ミク」のメーカーであるクリプトン・フューチャー・メディアが音声合成する(つまり、劇中でも初音ミクのイメージそのままでキャラクターがしゃべる)という凝りようで視聴者を驚かせた。

「発音ミク」初登場の衝撃も冷めやらぬ中、第17話「西へ!!シンカリオンVS大阪名物!?」(5月5日放送)では『新世紀エヴァンゲリオン』の楽曲をバックに新幹線「500 TYPE EVA」が登場。現実として5月13日に迫っていた「500 TYPE EVA」の運行終了を前にうれしいサプライズとなった。

そんな第17話のインパクトもさることながら、3か月後に放送された第31話「発進!!シンカリオン 500 TYPE EVA」(8月11日放送)では1話まるまる「エヴァ」コラボのエピソードが繰り広げられた。この回は、なんと碇シンジ(声:緒方恵美)をはじめ「エヴァ」の登場人物たちがオリジナルキャストで登場し、主人公のハヤトと共闘するというものだった。

碇シンジが乗り込んだ新幹線「500 TYPE EVA」は初号機……ではなくシンカリオンに変形して、巨大怪物体(これもかつて「エヴァ」の敵だった使徒たちをコラージュしたような壮絶なものだった)と対峙。シンカリオン 500 TYPE EVAの変形シーンではあの「残酷な天使のテーゼ」が流れる……という熱すぎる展開に「エヴァ」世代のファンは歓喜した。ちなみに、これだけディープな「エヴァ」ネタを繰り広げつつも、子ども目線にも「新しいシンカリオンの登場と活躍」をしっかり見せることでシンプルにも楽しめるようにしてある作りはさすがだ。

TVアニメ放送に先がけて、タカラトミーから2017年10月に発売されていた玩具「プラレール 新幹線変形ロボ シンカリオン 500 TYPE EVA」。第31話に登場したのはこの機体だったが、年間を通じた定番商品ではなかったため現在は入手困難に。タカラトミー広報いわく「第31話放送後の反響はありますが、もともと一種のお祭り企画として発売できた商品でしたので、現状では再販の予定はない状況です」とのことだ。

他作品のキャラクターがチョイ役で出てくるといったレベルではない、本気度の高いコラボ企画の反響は大きく、当初関心を持っていなかった大人の視聴者も惹きつけることに成功している。

小嶋 「この第31話の次回予告はネットでも観ていただくことができたんですが、YouTubeでの動画再生数が1週間で200万回を記録するほどの勢いがあり大きなトレンドになりました。結果、おかげさまで『シンカリオン』は特にお子さんの親世代、大人のみなさんからの注目度もかなり上がったと感じています。テレビの視聴率もすごく安定していますし……ライセンサーとしては、おもちゃ以外に各社さんからの商品化の引き合いがかなり増えてきているのも実感しています」

子ども向けでも、「子どもだまし」じゃない

派手なコラボレーション以外にも、TVアニメ『シンカリオン』には作品として大人を惹きつける点が多い。そのひとつは、主人公の子どもたちのエピソードに教訓がかなりしっかりと入ってきたり、彼らを支える大人サイドの葛藤も描かれていたりといった、ドラマの深さだ。

例えば、第9話「熱闘!!超進化研究所温泉旅行」は、シンカリオンに乗り込む少年たちの指揮をとる真面目なお姉さんでありつつ、上司からは無理難題を押し付けられがちな指導長代理・三原フタバ目線のエピソード。せっかくの温泉旅行だというのに、上司不在のなか重要な決定を下さなければならなくなったフタバの苦悩には、大人の視聴者にこそ共感できるリアリティがある。いっぽう、部下の前では仕事をサボっていると見せかけて極秘任務を遂行する指令長・出水シンペイの活躍も見どころだったりして……。

小嶋 「まじめに観ようとすると、メインターゲットである4~6歳ぐらいの子どもたちには分からないんじゃないかな?っていうストーリーや演出もあると思うんです。でも、それはそれで僕らはいいと思っていて。極端な話、あの世代の子どもたちにとってはシンカリオンの合体シーンと戦うシーンが見られれば満足という部分もあるかもしれません。その上で、僕らは親御さんと一緒に観てほしいし、大人が観たときには“こういう展開は気になるな”とか、“あ、ここまで深く考えて作ってあるんだ”とか、ロジックを追ってもちゃんと楽しめるように考えています。例えばそこでお子さんが、今の場面はどういうこと?と聞いたりして、親子の会話が弾めばいいなとも思いますし」

こうして、低年齢層をターゲットにしつつ「子ども向けでも子どもだましではない」作品として確立していった『シンカリオン』。その作品性の実現にあたっては、やはりクリエイター陣の力が大きかったという。

小嶋 「ライター(脚本)の下山健人さんしかり、池添隆博監督しかりですが、作品づくりへのマインドというか、気持ちがすごく熱い人たちなので、何気ない会話にもちゃんと教訓が入っているとか、そういうところもかなり丁寧にやっていただいていますね。彼らの人としての熱さというか、人間性というか、温かさが、作品にもにじみ出ていると思います」

小嶋プロデューサーが本作への貢献度をたびたび口にした下山健人は、TVアニメ『BLEACH』『NARUTO』シリーズや、近年は特撮ヒーロー作品の多くでも第一線で活躍している脚本家だが、その人物像についても尋ねてみた。

小嶋 「ものすごく熱い方ですね。アイデアもたくさん持っているし、何より一番の適性は、ご自身が“鉄ちゃん”(=鉄道ファンのこと)だったことですね。僕なんか話していて恐れ多いっていうか、もう知らないことばっかり知っていて(笑)。劇中でハヤトが時刻表を読んでいるシーンが出てきますが、あの時刻表ひとつとっても鉄道ファンのリアリティを追求していて……“デカい時刻表を持ってるとおかしいんですよ!”というような話をシナリオ打ち合わせの時におっしゃっていましたね」

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