Interview

wacci ちゃんと泣けてちゃんと笑えるアルバム完成! この5人だから生まれた『群青リフレイン』談義

wacci ちゃんと泣けてちゃんと笑えるアルバム完成! この5人だから生まれた『群青リフレイン』談義

日常風景を優しい眼差しで切り取り、聴き手の日々に、心に寄り添って歌う5人組のポップバンド、wacciが、前作『感情百景』から1年ぶりとなる通算3枚目のアルバム『群青リフレイン』をリリースした。
賛否両論の議論が湧いた女性視点のラブソング「別の人の彼女になったよ」をはじめ、 “泣ける”配信シングルとして4ヵ月連続でリリースされた先行シングル「空に笑えば」「最上級」「ワンセット」を含む全13曲を収録した本作は、ソングライティングの大部分を担っているヴォーカル&ギターの橋口洋平の歌声に焦点を絞ってきたこれまでと比較すると、メンバー一人ひとりの個性を強く感じられるアルバムとなっている。バンド結成から9年、メジャーデビュー6年目を迎え、バンドとして成熟し、この5人でしかなし得ない強固なグルーヴも獲得。より多彩さを増した彼らの“個”に迫った——。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 荻原大志


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「wacciっていうバンド、カッコいいだろ」って自信を持って言えるようなアルバムになったかな(村中)

まず、アルバムが完成した率直な感想からもらえますか。

小野 今、やりたいことをそれぞれの曲に込めてやった感覚があるアルバムが作れたので、とてもうれしいです。

因幡 個人的にはよりバンドサウンドになったかなと思っていて。図らずもみんなが同じ方向を向いていて、すごく手応えがありますね。

横山 1曲1曲に対して、メンバーのやりたいこと、やりたい方向に突き詰めてできた曲が多かったかなと思います。すごくワクワクするアルバムになったなって思います。

橋口 今までで一番wacciの持ってる魅力やスキルを前面に出せた1枚になったなと思います。曲のテーマも多岐に渡っていますし、カッコよく言うと、(キメ顔で)「非常に満足しています」。

村中 (笑)橋口が言ったように、めちゃくちゃ満足感がありますね。今までは「橋口洋平が作った曲を、いい歌だから聴いてください」っていうアプローチだったんですけど、今回は「wacciっていうバンド、カッコいいだろ」って自信を持って言えるようなアルバムになったかなと思いました。

いま、皆さんが言ったように、これまでになくバンド感のあるアルバムになってるし、メンバーそれぞれの個性も楽曲ごとに際立ってるなと感じてて。だから、今回は編曲を担当した楽曲をフィーチャーしながら、それぞれが「やりたかったこと」に焦点を当ててお伺いしたいと思ってます。最初に驚いたのは、村中さんのアレンジ曲です。「タフネス&サバイバー」はディスコファンク、「月のむこう側」はシティポップ寄りのおしゃれなアーバンソウルになってます。

村中 そもそも僕はブラックミュージックが大好きで、ずっと聴いてきて。これまでも「Weakly Weekday」や「シンデレラ」のようなブラックミュージックの要素がある曲もあったんですけど、今回は、wacciを通してブラックミュージックをやるのではなく、僕のフィルターにみんなに乗っかってもらったんですね。そういうことができたことがうれしいし、特に作詞・作曲もさせてもらった「月のむこう側」は新しい一面が出せたんじゃないかなと思って、とても満足しています。

小野 wacciを組む前の慧慈くんはブラックミュージックのバンドをやっていたので、すごく懐かしかったです。

因幡 俺らのイメージはこっちだよね。

橋口 もともと僕らが知ってる慧慈くんはコレなんで、これまでもずっとこういう曲を求めてたんですよ。でも、今まではwacciに寄せようとか、僕の歌やキャラクターに囚われてて、出してくれなくて。やっとそういうのが似合うようになってきたのかもしれないし、慧慈くんのこういう曲をいつか歌いたいと思ってたので、やっと出してくれてすごくうれしかったです。それに、歌詞のテーマが僕じゃなかなか書けないずるさとか、違う方向にダメな感じがあるというのも含めて、アルバムの中では大事な曲になってますね。

村中 自分の悪い癖で、歌詞も最初は橋口が歌うなら? っていうことを考えすぎちゃって。ディスカッションしているうちに正解が分からなくなっちゃったんですけど、最初にメロディに当ててた言葉の方向に戻したんですね。スピッツさんが好きなので、ストーリーではなく、全体の雰囲気で分かるような歌詞というか。女の子とお酒を飲んで遊ぶ時って、帰したくない気持ちになるよなっていう大人のウキウキした気持ちを書いてます。タクシーで帰れちゃうけど、帰らないっていう選択をするのは、なかなか青春感があるなって思いますね。

アレンジの主導権を持ったメンバーのフレーズに、みんな寄せていってるんです(小野)

小野さんはピアノが弾むポップロック「Answer」の編曲を担当してます。

小野 ストリングスがあって疾走感がある感じでアレンジしたいっていうことは、橋口くんと話してたんですよ。そこから、僕はこれまで、歌の後ろでなるべく派手に動くものがないっていうアンサンブルの作り方をしてきたんですけど、この曲では、歌と並行して何かしらのメロディが鳴ってる状態にしたかったんです。それを思い切り、全部のパートも作って。

ピアノが特にすごいですよね。短い尺の中で速弾きしてて。

因幡 とにかく、ピアノが難しかった記憶しかないですね(笑)。レコーディングの一番最後にして、心置きなく、腕が震えるまで弾き続けたっていう思い出があります。今はもうなじんでますけど、自分の手グセじゃないフレーズで、なおかつ、あれだけ速いものを落とし込んで弾くっていうのは、かなり訓練になりましたし、勉強になりました。

横山 ドラムも難しかったです。僕はこの曲の練習をしていて腱鞘炎になりました。

小野 (笑)。

横山 いまだにちょっと引きずってます。打ち込みで作ってるフレーズなので、自分ではなかなか考えられないというか、自分では絶対にやらないキメを入れていて。難しかったし、スリリングなレコーディングだったんですけど、バンドをやってる感もあったし、それはそれで楽しかったですね。

村中 ギターも僕じゃ出せないフレーズを出してくれて。今回、メンバーが単品でアレンジしたことがいい風に働いてるなって。5人で頭を付き合わして話すと、どんどんその人の良さが、よくも悪くも中和されちゃうじゃないですか。そういうのがなくて。指示どおりに弾いたので。自分の中でもこういうアプローチがあるんだって勉強になったし。小野くんらしいなって感じましたね。

小野 この曲に限らず、アレンジの主導権を持ったメンバーのフレーズに、みんな寄せていってるんですよね。だからこそ、それぞれの引き出しが詰まったアルバムになってるなと思います。

橋口 歌詞はアレンジができてから大幅に書き換えたんですよ。アレンジから、遠距離恋愛で頑張りつつも、お互いに思い合っている二人が浮かんできて。アルバムの中では珍しくアレンジ先行で歌詞を書いた1曲で、アレンジ先行な分、歌ありきのアレンジというよりは、歌や歌詞も音の1つみたいなところで書いた歌なのかなって思います。

村中 バッチリハマってるよね。Bメロとか、すごい好き。

「最上級」はイメージがすぐに湧いたし、自分にとっては思い入れがあります(因幡)

因幡さんは「最上級」「ワンセット」「空に歌えば」の3曲のアレンジを手掛けてますが、1曲だけ挙げるとすると?

因幡 アルバムの1曲目「最上級」ですかね。聴いてる方には伝わりにくい部分かもしれないんですけど、自分の中でカントリーやブルーグラスっぽいアプローチをしてて。カントリーやブルーグラスって、音の抜き差しだけとかで、構成がシンプルだったりするアレンジが多いんですけど、橋口がこの曲をアコギ一本と、キックの音だけ入ってるデモをくれた時に、そういうアレンジが合うんじゃないかなって思って。橋口も同じ方向を向いていたので、これいけるかなって。他のアレンジした曲は、アレンジの方向性が固まるまで結構悩んだんですけど、「最上級」はイメージがすぐに湧いたし、自分にとっては思い入れがあります。

横山 カントリーやブルーグラスって、歌ってる人がキックを踏んでたりして。だから、この曲もあんまりドラムセットで演奏している感じじゃない、ちょっと合奏してるような感触になってますね。最後のアウトロも5人なんだけど、もっといるような合奏感と高揚感があって、楽しい曲になってますね。

村中 やってることはエレキもすごくシンプルなんですよ。ギターを始めたての子もすぐにできると思うんですけど、本当に抜き差し加減で作ってて。完成した時に聴いて、カッコつけられる曲になってるなと思って。やるな〜と思いました。

小野 (笑)。本当にアンサンブルの構築はシンプルなものになってるんですよね。それがシンプルなメッセージと相まって、すごくいいなと思っていて。しかも、一瞬もピアノが目立たない。これをピアノの人が作れるのも強みかなと思ってますね。

橋口 今までは疾走感を出そうとすると、ギターロック気味だったりとか、ピアノロック気味にいきがちだったんですよね。でも、今回やっと、wacciに一番似合うというか、マムフォード・アンド・サンズやザ・ルミニアーズのような、カントリーの疾走感っていうのが見つけられて出せたのがよかったなって思います。歌詞としては、今まで書いてこなかった、好きすぎて壊れそうな部分と一生懸命に向き合って。理性を取っ払って、好きだっていう気持ちを、頭おかしいくらいに出すにはどうすればいいのかなって考えて、自分のことをコントロールできないくらい好きなんだっていう気持ちをいたるところに散りばめた曲になってて。できた言葉はすごくシンプルだったんですね。だから、やるほうとしても、すごく伝えやすい曲になったなって思いますね。

因幡 あと、もう1曲、いいですか。バンドでのアレンジなんですけど、9曲目「花束にして」は昔からwacciが持ってきた強みの曲を入れられたのもいいなと思ってます。

「花束にして」はバラードですが、ピアノが泣けますよね。

橋口 頭のフレーズがすごく良くて。始ちゃんはああいうのがたまに出るんだよね〜。

小野 (笑)。「たまに」は余計だよ。

橋口 「東京」みたいに、バッキングじゃないいいフレーズが出てくる時がたまにあって。

村中 だから、「たまに」を強調するなよ(笑)。

因幡 じゃあ、5年ぶりですね(笑)。次は2023年になります。

村中 (笑)しかも、家族向けの曲ってありそうでなかったもんね。

母親への感謝が込められた曲になってます。

橋口 僕らは、恋愛や応援歌だけじゃなくて、ちゃんと家族の絆も歌っていいバンドだと思うし。一番似合うところかなって思うので、今回、こういう歌の視点を入れられたのはすごくよかったなと思いますね。しかも、もっとうまいこと言えたりもしたんでしょうけど、これくらいの字数で、これくらいの譜割りで、シンプルに歌うほうが、みんなもこの歌に気持ちを重ねて、誰かに送ったりできるギフトソングになり得るのかなって。そう思って書いたので、母親に送りたいとか、結婚式で歌いたいとか、それくらい広がっていく歌になればいいなって思ってますね。

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