LIVE SHUTTLE  vol. 303

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小田和正、完走した全国ツアー2018『ENCORE!!』千秋楽には嬉しい続きがあった(楽屋での立ち話付)

小田和正、完走した全国ツアー2018『ENCORE!!』千秋楽には嬉しい続きがあった(楽屋での立ち話付)

新横浜駅から横浜アリーナへ向かう途中、前を歩いていた女性3人連れが、こんな話をしてた。「ホント、取れないのよチケット…」。ただ、この人達は取れたんだろう。これは友達の話のようだ。確かに今回のツアーは、即日完売だったと聞いた。それから3時間ほど経過したライブの終盤。

くわしい内容は不明だが、今回のツアー・タイトルが「ENCORE !」なので、来春に行うのは、“W・ENCORE ! ”とでも呼ぶべきものかもしれない。それにしても、凄い人気である。当たり前と思えばどんなことでも当たり前になるが、古希を過ぎた今現在の小田の状況というのは、まさに前代未聞と言っていい。

この日のライブは、『めざましテレビ』のテーマソング「会いに行く」でスタートした。小田の歌声は、少し緊張しているようだった。今回のツアーは何度か見たが、それは毎回感じることでもあった。これほどのキャリアの人間も緊張するのか? いや、これこそ小田の“才能”なのだろう。一本一本、まっさらな気持ちで臨むからこそ、緊張も生じるのだと思うのだ。

「こころ」では、早くもアリーナに八の字に渡された花道を、巡回しながらの歌唱となる。小田が近づくと、付近の歓声がボォリュームを上げる。見事に一周したあたりで、曲が終了していく。

最初のMCは、今日が千秋楽らしく、ツアーを振り返ってのものだった。曰く、“色々なことがあって、これほど完走するのが難しいと思ったことはなかった”。事実、複数の会場で、台風接近に見舞われた。大阪公演は、地震のために来年1月へ延期となった。

“自分はいい音楽が好きだ”と、“再認識した”ことも語った。そして自分は、“いい音楽を書こう”、とも。“いい音楽”というのは漠然とした表現に思えるが、小田のなかの膨大な情報と経験を、収斂するならこの言葉へ行き当たるのだろう。期待しよう。

この日は千秋楽だが、暦の上ではハロウィンでもあった。そこでスペシャル・プレゼントが。ピーター、ポール&マリーの「A Soalin’」を歌ったのだ。ハロウィンの日に慈悲を請い、祈る男を主題とした数え歌である。小田はカソウやフンソウじゃなく、エンソウでもって、この日に応えてくれたのだ。

このツアーの前に、「この道を / 会いに行く / 坂道を上って / 小さな風景」という、新曲4曲入りのCDがリリースされている。当然、これらも期待した。オープニングに続き、そこから歌われたのが「小さな風景」である。特に新曲であることの説明などはなく、それでいて、見事に「秋の気配」などと馴染んでいた。特に説明しない、というのは、4曲すべてに共通した。

小田のライブといえば、中盤の「ご当地紀行」が名物である。ツアー先のオフ・ステージを、VTR収録されたものだが、小田と気づき、握手や記念撮影を求める市井の人々との交流が楽しい。 イベンターの方と同乗した、水に浮かぶ大きなタイヤ型の乗り物で、もんどり打ってひっくり返る姿には、VTRのなかの小田自身も、そして場内も爆笑である。これほどお腹の底からケラケラ(実際はヒャーヒャッヒャに近い)笑う小田は初めて見た(意外とファルセットっぽい声で笑うんだなぁというのも発見であった)。

後半も前半同様に名曲満載であり、「ラブ・ストーリーは突然に」や「キラキラ」では、客席のなかへ突進していく。お客さんにマイクを差し出し歌ってもらう。これは恒例行事となっている。ただアリーナ席を回るのではなく、階段を登り、スタンド席の中段まで行って、万遍なく、観客との距離を縮めようとする。

盛り上がりに盛り上がったあと、静かな曲へ移ったときの、会場の空気の“入れ替わり”も見事だ。いや、これは小田達も見事だが、詰めかけた観客が、真に音楽を“聴きに来ている”からこそ醸し出されるものなのだ。

冒頭のMCで、自分が目指しているのは“参加型のライブ”だと言って小田だったが、まさにそれが成就した瞬間が、「今日も どこかで」の大合唱だ。本編の最後の「君住む街へ」では、歌詞を噛みしめるように、花道を一周した。

アンコールは会場によって曲が入れ替わるようだが、この日は「my home town」でスタートだ。横浜アリーナで聴くこの曲は格別である。またアンコールでは、いつ聴いてもピアノのイントロが神秘的な「さよなら」も聴けた。真夏の会場でもこの曲を聴いたが、もうすぐ“外は白い冬”のこの時期に聴くと、また違った響きなのである。

小田は最後に、“また精進して、帰ってくる”と約束した。“精進”という言葉が小田らしい。バンドのみんなとアカペラで「また会える日まで」を歌い、いよいよ終了と思いきや、鳴り止まない拍手とアンコールの声に、即座に決断し、オープニングでもやった「会いに行く」を演奏した。「また会おうぜーっ!」。ひときわ大きな声で叫んで、ステージを後にした。

最初にも書いたが、来年の春、追加公演がある。それが純粋に、今回のツアーの“追加”なのか、はたまた新たな内容も加味したものなのか、それは不明である。ただ、延期となった1月の大阪公演はともかく、春までには“準備期間”がある。それなのに、何も企画しない小田とも思えない。ここで軽はずみに余計なコトは書けないけど、そんな感じで春を待ちたいと思う。

最後に、楽屋で小田に面会したときの、少しだけ交わした会話を記しておく。ホントに少しだが、重要なワードが含まれているような気がしないこともない。

年明けに、延期となった大阪公演はありますけど、年末はゆっくりするんですか?

小田 「いや、そうでもなさそうなんだ」

もしや、曲づくりとかですか?

小田 「いやそれが…。“挙動不審”なんだよ」

取材・文 / 小貫信昭 撮影 / 菊地英二

小田 和正 (おだ かずまさ)

1947年9月20日生 神奈川県横浜市出身
東北大学工学部、早稲田大学理工学部建築科修士課程卒業

1969年オフコース結成。
翌70年、プロとして音楽活動を開始、「愛を止めないで」「さよなら」「言葉にできない」などのヒット曲を発表。82年には日本武道館連続10日間公演を実施。日本の音楽シーンに様々な記録を残しつつ、89年2月、東京ドーム公演を最後にオフコース解散。
その後、プロデュース活動を経てソロとしてアーティスト活動を再開。
91年に発表したシングル「ラブ・ストーリーは突然に」は270万枚を超える大ヒット作となった。
映画やテレビ特番などの映像監督としても活躍し、これまでに「いつか どこかで」(92年)、「緑の街」(98年)の2本の映画監督作品を発表している。
2001年からは毎年12月に「クリスマスの約束」(TBS)と題した音楽特番を放映し好評を博している。
2002年に発表したベストアルバム「自己ベスト」は、出荷数300万枚を越え、発売から足掛け11年で500週のランクイン(=TOP300入り)を果たす史上初の快挙を成し遂げている。
2011年4月20日、オリジナル・アルバム『どーも』発表。業界紙オリコンにてチャート1位を獲得。
2016年4月20日、オールタイムベスト「あの日 あの時」を発表。アルバム1位を獲得し最年⻑記録を更新した。
2018年、40万人動員全国アリーナ古希ツアー「KAZUMASA ODA TOUR2018」(全国21会場 48公演)の開催が決定しており、古希を迎え今も尚制作、ライブとますます精力的に活動を続けている。

オフィシャルサイト
http://www.fareastcafe.co.jp

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