Interview

梶 裕貴、立花慎之介が語った“声優に求められる必須スキル”とは? 新撰組と、すれ違いに翻弄された時代の物語─劇場版『PEACE MAKER 鐵』キャスト対談

梶 裕貴、立花慎之介が語った“声優に求められる必須スキル”とは? 新撰組と、すれ違いに翻弄された時代の物語─劇場版『PEACE MAKER 鐵』キャスト対談

武士になるため京都に旅立ち、戦いへと突き進んでいく若者たちの姿を描く『PEACE MAKER 鐵(くろがね)』。黒乃奈々絵による原作連載開始から多くのファンを魅了し、TVアニメ、TVドラマ、舞台、ドラマCDと様々な展開を見せてきた本作が今年、15年ぶりにアニメ化され、前後篇の劇場版アニメとして帰ってきた。主人公・市村鉄之助の青年期を演じる梶 裕貴と、鉄之助に執着するかつての友・大和屋鈴を演じる立花慎之介に、前篇『想道(オモウミチ)』の振り返りや11月17日から公開される後篇『友命(ユウメイ)』の見どころ、さらには“声優に必要なスキル”についてなど、大いに語ってもらった。

取材・文 / とみたまい 撮影 / 松浦文生


劇場版で鉄之助を演じたことで、改めて「作品の一員にしていただけた」と感じた

まずは今年6月に公開された『劇場版「PEACE MAKER 鐵」前篇~想道~』を振り返っての感想を教えていただけますか?

梶 裕貴 今まで青年期の鉄之助役として、ドラマCDシリーズのみの出演だった僕にとって、アニメ版の『PEACE MAKER 鐵』に出演するのは、今回の劇場版が初めて。とても光栄でしたし、感慨深いものがありました。やはりこれだけ多くのファンの方々がいらっしゃる作品で「鉄之助を演じる」というのはすごく緊張感がありました。ただ公開時に各地で舞台挨拶をさせていただいて、ファンの皆さんのリアクションを直接感じることができたのは嬉しかったです。

もちろん共演者のみなさんのお力添えがあったからこそ、青年期の鉄之助として作品に馴染むことができたと思っていますが、改めて劇場版を通して……やっと、ファンのみなさんも含めた『PEACE MAKER 鐵』という作品の一員にしていただけたと実感した前篇でした。

立花慎之介 僕もドラマCDから出演させていただきましたが、当時から「青年期の鉄之助と鈴が動いているところを早くアニメで観たいな」と思っていて……アクションや戦闘シーンが多い作品ですから、音だけで表現するのではなく、画でも見たいなと思っていたんですね。それが今回、劇場版アニメという形で公開されると知ったときは非常に嬉しかったんですけど、まあ鈴としては、あまり喋るシーンは多くはなかったのですが…(笑)。

 前篇は、まあそうですよね(笑)。

立花 でもそうですね、青年期の物語がここからまたひとつ始まって、新しい『PEACE MAKER 鐵』を映像として観られることの嬉しさを感じましたね。

『劇場版「PEACE MAKER 鐵」後篇~友命~』の台本を初めて読んだときの印象は?

 原作のある作品なので、物語の展開は把握していましたが、それでもやっぱり演じるとなると気持ちも違いますよね。前篇では明るくポジティブに描かれていた鉄之助ですが、(前篇の)最後の沙夜とすれ違うシーンは印象的で演じていて辛いものがありました。文字通り、お互いが反対方向へ進んでいく“すれ違い”でしたが、そのズレというのが、鉄之助と沙夜だけでなく、新撰組と時代のズレにも感じられました。

新撰組は前に進んでいるつもりでも、時代に逆行していくことになる彼らには、これから大きな苦しみや辛さが待っているんだろうなあと……。覚悟はできていましたが、それでも後篇の内容は、台本で読んだときから自分の心に重くのしかかってきていましたし、演じてみて胸が締め付けられるような思いがありましたね。

立花 僕は前篇・後篇を通してみると、「ああ、なるほど。ここで終わるんだ」とも思いましたね。作品として“良い終わり方”といいますか……観た人の心に強く残る終わり方をしているなと感じたのと、「ここで終わるんだったら、続きを作ってよ。まだいっぱい先があるでしょ?」っていう(笑)。

 もちろん先を観たいけど…もう辛いことしかない。

立花 新撰組目線だと辛いことが多いですけど、鈴からしてみると、「いや、この先がまだあるんだよ!」って(笑)。

 そうですよね(笑)。鈴はこの先がないと…。

立花 ただの悪い人なだけだから(笑)。

 たしかに(笑)。まだきちんと掛け合えていないので、アニメでも鉄之助と鈴の掛け合いを観たいですね。

立花 そういう意味でも、さっき梶くんが言っていたように、すべてにおいて“すれ違い”なんですよね。鉄之助と鈴もズレているし、時代と新撰組もズレていて、沙夜と鉄之助もズレている。そのズレが残ったまま終わるので……良いところできっちり終わってはいるものの、全体を通してこれからの展開が気になるというモヤモヤ感も残るという。いろんな捉え方ができる、いろんな楽しみ方ができる後篇になっていると思います。

鈴の芝居は“ねちっこさ”を強調して、敵としての立ち位置を明確にした

ドラマCDから始まり、劇場版アニメの前篇・後篇と演じられてきて、ご自身が演じるキャラクターの変化について意識した点などはありましたか?

 ドラマCDでは「北上篇」(油小路事件を経て、北へ向かう新撰組を描くシリーズ)で心を閉ざしてしまった描写の多い鉄之助を演じていたので、劇場版で明るく元気な、エネルギーに満ちている鉄之助を演じることができたのは嬉しかったですね。

辰之助(市村辰之助:声/うえだゆうじ)や烝(山崎 烝:声/櫻井孝宏)をはじめ、新撰組の面々と賑やかに会話していたり、沙夜(声/高橋美佳子)との青春を描いているシーンなんかもあったりして。そういった鉄之助を演じられたことで、あらためて自分のなかでキャラクターが完成されたような気持ちにもなりました。

鈴についてはいかがでしょう?

立花 鈴はもう、ドラマCDからダークサイドに落ちていたので(笑)、根幹は変わらないというか……いやらしさや暗さといったところを特化して劇場版も演じさせていただきました。ただ、やっぱり画がつくと、鈴の“ねちっこさ”みたいな部分がより伝わると思ったので、ドラマCDのときよりもお芝居を強調した感はありますね。

物語の流れのなかでいろんな鈴が出てはきますが、現時点ではダークサイドに落ちている、本当に悪い、ラスボスのような強さといやらしさ、「裏で糸を引いている黒幕です」感を強めに作りました。きみやしげる監督からも「もっとねちっこく演じていいですよ」とディレクションをいただいたりもしたので、敵としての立ち位置を明確にしようと心がけました。

2003年に放送されたTVアニメ『PEACE MAKER 鐵』のキャスト陣のなかに、2014年のドラマCD収録で初めて参加されて、そして今回は劇場版アニメということで、プレッシャーもあったと思うのですが?

 そうですね。まだ声優を目指していた頃に拝見していた作品なので、自分も一人の声優として関われることへの喜びもありつつ、大先輩方のなかで“主人公”という立ち位置で参加させていただくことへのプレッシャーもものすごくありました。そんななか、ドラマCDシリーズを経て、劇場版の前篇・後篇とご一緒させていただいて……本当にみなさん、あたたかく迎えてくださって。

スタジオの真ん中に座らせていただいて、みなさんから「鉄之助、鉄之助」と支えていただいた印象がある、本当にあたたかさを感じる現場でした。鉄之助の少年期を演じていらっしゃる小林由美子さんからも、「梶くんが鉄之助の青年期を演じてくれて、本当によかった」というような、本当にありがたいお言葉もいただきまして…感無量です。……でも同時に、僕からしてみると、「テレビで観ていたキャラクターたちが目の前にいる!」みたいな、いちファンのような感想も実は浮かんだりしていました(笑)。

お芝居の観点から、青年期から演じることの難しさというのはありましたか?

 人間の心が動く瞬間って、相手との関係性で成り立っていくものだと思うんです。例えば、過去に一緒に過ごした時間・思い出があるからこそ心が動く、といったことですが……青年期から参加させていただいている僕らは、原作を読んで知識を得たり、先輩方のお芝居を拝見して学ばせていただいたりするものの、その時間をキャラクターと共に過ごせていないという難しさはあるなと感じました。

今回だったら特に、烝や辰之助、沙夜と少年時代を過ごした思い出があるからこそ、鉄之助のなかで高ぶる感情というものがあったと思うんです。なので、自分が途中から参加して感じたものだけでなく、思い出とともに生きてきた鉄之助がいまどう感じているかという部分も……きちんと想像で埋められるように、すごく大切にお芝居させていただきました。

立花さんはいかがでしょう?

立花 もちろんキャストのみなさんに受け入れられるかどうかというのもありましたが、熱量が非常に高いファンの方々に支えている作品でもあるので……少年期から青年期に移ったとはいえ、僕と梶くんの二人が受け入れられるのか、少し不安に思っていた部分はありました。

そんななかドラマCD、劇場版の前篇とやってきて、ファンの方々にも、役者の方々にもあたたかく迎え入れていただけて嬉しかったですし、そうやって受け入れてくださったことで、後篇もやりきることができたんじゃないかなと思っていますので、すごくありがたいですね。

1 2 >