LIVE SHUTTLE  vol. 305

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西野カナが見守ってくれる人たちへ感謝を込めて愛を歌う。デビュー10周年記念のステージ

西野カナが見守ってくれる人たちへ感謝を込めて愛を歌う。デビュー10周年記念のステージ

2017年11月に7枚目のオリジナルアルバム『LOVE it』をリリースし、2018年5月よりアルバムを携えたホールツアーを精力的に行っていた西野カナ。8月からは今年デビュー10周年ということもあり、さらにグレードアップした〈LOVE it Tour 10th Anniversary〉を全国6箇所12公演敢行していた。ファイナルは10月10日@横浜アリーナ。筆者が初参戦したライヴ、その模様をお届けしよう。

取材・文 / 藤井美保

「10月10日で10th Anniversary。10、10、10で縁起がええな」

会場が暗転するや大きなビジョンに都会の雑踏、夜の摩天楼が浮かび上がる。世界の街角はいつしか日本の渋谷あたりの風景となり、人々が絶え間なく行き交う。そこにコツコツとハイヒールの音。ふと見れば、階段が築かれたステージの上段に、キュッとポニーテールを結び、大きなスパンコールのモード風コートに身を包んだ西野カナが、たくさんの光の帯を集めるようにして立っていた。始まったのは「Girls」。

曲が最後のサビに差し掛かると同時に、観客の持つソフトクリーム型のフリフラが一斉に輝き始めた。いつもよりちょっと低めの声で「甘い甘い夢を見て それでもやる時はやるの それが私たちでしょ」と女子の胸の内を吐露し、「So Girls, put your hands up」と観客を促すように手をかざす。サウンドはかなりロックだ。あれ、西野カナってこんなに強い感じの女の子だったんだっけ?と、なんかのっけから認識を新たにした。

「盛り上がっていきましょう!」とEDM風の「We Don’t Stop」が始まるとカラフルなライトのシャワーを浴び、登場したダンサーズと一緒にキュートなポーズ。「パッ」では、文字どおりパッとフィフティーズ風のチェックのワンピースに早替えして、ノリのいいOL応援歌をポップに披露。と、オープニングから3曲を駆け抜けて、「横アリのみんな元気ー?」とここでMCタイムとなった。

「ありがとう」のイントネーションは、「とう」が上がるやわらかい関西弁。あ、そういえば三重県出身だったっけ。「今日は10月10日で10th Anniversary。10、10、10で縁起がええな」から始まった観客からの質問に答えるコーナーも、何も気どらない関西弁のまんまだ。それがなんだかすごく新鮮。「みんなが持ってるフリフラでウェーブしよう」と提案して、「自分のとこになったらそれピッと上げて、終わったらシュッと下げてな」ときびきびと話す姿はまるで体育の先生のよう。「ほな10色ウェーブ!」と号令をかけて、ステージ際から波が起こって帰ってくるまで、変わっていく色を素早く実況中継する姿はすさまじくエネルギッシュだった。

西野カナといえば、女の子憧れのファッション誌の表紙を飾ってきた、あのちょっとはかなげな、みんなの妹的な表情のイメージが目に焼きついていたから、こんなふうにバンバン喋る案外姉御な姿がなんだか不思議でしょうがない。本当にまったくの予想外。リアルな西野カナの魅力は、ライヴに来なきゃわからないんだなぁと改めて。きっとみんなこのギャップに萌えるんだろうと深く納得してしまった。

MCのひと仕事を終えて「よし!」とつぶやいて笑いを誘うと、今度はアコギ、ウッドベースを用いた小さなコンボ形式でカントリー風味の「Darling」。軽快なリズムに自然と拍手が湧く。さらに「あなたの好きなところ」。その歌声がまた、子供が嬉しくて思わず歌っちゃった、みたいな心地いい響きなのだ。その歌声から、こんなダメなオレでも大丈夫なのかも的な力をもらっている男子がきっと多いんだろうな。これだけ健気に「好きだよ」と歌いかけられたら同性でも惚れてまうやろ!だ。気づけばすっかりカナやんワールドに引き込まれていた。

中でも個人的に一番ハマったのは、ジャズっぽいサウンドを背景に、古いミュージカル映画みたいな雰囲気で始まった前半の「LOVE it Medley」のコーナー。レトロなコスチュームは、小粋に気品あるアクトレスを気取る感じでとても似合う。ダンサーズと様々にフォーメーションを組みながら、遊び心いっぱいにその場で様々に衣装チェンジも。「MEOW」の猫ちゃん柄のピンクのワンピ、可愛かったな。でもって生着替えのクライマックスは、シンデレラ城のようなセットの向こうで。その変身ぶりは、えっ、どうして?と、思わず声が出ちゃうほど鮮やかで、まるでマジックショーのようだった。シンプルなドレス姿になっての「もしも運命の人がいるのなら」。ライトの花火もきれいに上がって、会場は観客の興奮で一気に満たされた。

その熱をシュッと引き取るように、中盤は「if」、「手をつなぐ理由」、「涙色」と、立て続けにせつないバラードをじっくりと。すると今度は「DANCE Medley」のコーナーになだれこむ。「doll」からのファッションスタイルは、ちょっとスポーティなガーリッシュ系。こういったアップめの曲を歌うときの声の快感指数がすごく高いことにも驚いた。西野自身がその場で写す自撮りの映像を入れ込んだりした「スマホ」では、「Give your hands ONE CLAP〜」という歌詞で、観客にクラップさせて映像を使ったゲームに参加してもらうという演出も。〈ULTRA MUSIC FESTIVAL〉かっていうくらい賑やかなこのDJパーティ風ゾーンで、思いっきりジャンプして体力を使い果たした人も多かったはず。

後半の1曲目は『LOVE it』の中でもとびきり温かくてキラキラしたナンバー「LOVE」から。髪を低めの位置でくくり直し、シースルーを爽やかに上品にアレンジしたドレスに着替えた姿は、雑誌で見るあの西野カナのイメージに一番近かったかも。曲中で観客にワイパーをおねだりすると、ピンクやライトグリーンのフリフラで会場はワンダーランドな世界に。西野の笑顔とともに、みんなの愛と夢が膨らんでいくようだった。

「クラップゲーム難しかったやろ?」から始まったMCではこんなことを語った。「10年目にして気づいたのは、ライヴだと決まってる立ち位置より前のめりになってるってこと。テレビだと逆に内気が出て、気づけば立ち位置より後ろになってる(苦笑)。失敗もするしカッコ悪いとこもいっぱいあるけど、いつもみんなが見守ってくれる。その温かさにきっと前のめりになるんやなと。ホントにありがとう」と。なるほど。一般的に伝わってきているのはその“内気”の部分であって、ライヴでは思いっきり自分を解放して表現できているということなのだろう。「10年の中でも思い出の曲」と紹介して歌った「トリセツ」は、きっと西野が本来の自分自身を大きく解放するきっかけとなったに違いない。

続いて映画『3D彼女 リアルガール』の主題歌となっている新曲「Bedtime Story」も。「むかしむかし、あるところに」で始まる童話のようなこの歌が進んでいくと同時に、英語訳が絵本に書かれていくという演出がとても美しかった。「始まればあっという間。次が最後になります」と本編ラストは「アイラブユー」。客席からは「エ〜ッ!」の声が飛び交う。「エーッじゃなくて?」、「イェー!」、「バッチリやな(笑)」と、このへんのやりとりも、きっとこれまでの積み重ねで定番化してきたことなんだろう。と、じんわりしながら曲に耳を傾けていると、なにやら視界がザワザワとしてきた。気づけば横アリの大きくて高い天井から、大量の紙飛行機ならぬ紙ハートがふわふわと舞い飛んでいるではないか。嬉しそうに見上げて手を差し出す観客。「本当にありがとう キミに出会えてよかった」と歌うカナやんからの真心のプレゼントを、みんな夢見るような顔で受け取っていた。

アンコールは、ナンバー「18-1010」のアイスクリーム屋さんのトロッコに乗ってアリーナを一周。時折バズーカ砲を打ちながら「Have a nice day」、「Believe」を楽しく披露。ステージに戻った西野は、来年2月に10周年イヤーを締め括るスペシャルライヴをここ横アリで行うことを発表し、さらに嵐のような拍手を浴びた。そして、最後は「準備OK?」と観客に聞いて「Happy Time」で元気いっぱいにタオル回し。サポートメンバーとダンサーズと共に清々しい表情でラインナップした西野は、「みんなの毎日がハッピーになるように、いっぱいエールを送ってるよ」と、この日最高の笑顔で会場の隅々にまで手を振った。

あくまでも個人的な感想だが、私の中の西野カナのイメージは、完全に、はかなげな妹キャラ→リーダーシップのある姉御キャラに変わった。やっぱりライヴこそがアーティストの本質を知る場なのだなと、改めて実感した夜だった。

全国アリーナツアー2018「LOVE it Tour ~10th Anniversary~」2018年10月10日(水)SET LIST

M01. Girls
M02. We Don’t Stop
M03. パッ
M04. Darling
M05. あなたの好きなところ
M06. Medley
   Liar/LIGHTS, CAMERA, ACTION/MELOW/Best Friends Forever/もしも運命の人がいるのなら
M07. DANCE TIME
M08. if
M09. 手をつなぐ理由
M10. 涙色
M11. DJ Megamix
M12. Medley
   doll/LOVE IS BLIND/No.1/GIRLS GIRLS/candy/スマホ/LOVE & JOY
M13. L&J END EXTENDED BAND TIME
M14. LOVE
M15. トリセツ
M16. Bedtime Story
M17. アイラブユー
ENCORE
EN01. Have a nice say
EN02. Believe
EN03. Happy Time

Kana Nishino Love Collection Live 2019

2019年2月1日(金)横浜アリーナ<open 18:00 / start 19:00>
2019年2月2日(土)横浜アリーナ<open 17:00 / start 18:00>
2019年2月3日(日)横浜アリーナ<open 16:00 / start 17:00>

西野カナ(にしの・かな)

平成元年生まれ、三重県出身。2008年にシングル「I」でメジャーデビュー。2010年発表の「会いたくて 会いたくて」が500万ダウンロードを超えるヒットを記録、2ndアルバム『to LOVE』がオリコンチャート1位を獲得、90万枚を超えるロングヒットとなる。以降、「Darling」「トリセツ」など幅広い層より支持を集めるヒットソングを発表。2017年夏には、平成生まれの女性ソロアーティスト初となる東京・大阪ドーム公演を開催。2018年2月20日にデビュー10周年を迎え、5月より23都市26公演の全国ホールツアー、8月より6都市12公演の全国アリーナツアーを敢行。11月21日にベストアルバム2タイトルを同時リリースする。

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