Interview

土屋公平が放出した、最高の和製ブルースアルバム『午前三時の残光』インタビュー

土屋公平が放出した、最高の和製ブルースアルバム『午前三時の残光』インタビュー

最新作で表現した新たなる地平を、永遠のギター少年が語る。

気づく人がいたとしても、誰も踏み込めなかった日本語のブルース表現。しかも、それは、ある種の知性を付帯したギターと共に燻蒸(くんじょう)した音楽表現として立ち昇る。
画期的な和製ブルース・アルバムとして僕らの前に出現した『午前三時の残光』の制作道程を探る。

インタビュー・文 / 佐伯 明


今回の最新作『午前三時の残光』ですが、私的モード録音盤としても7作目。
今回がとてもブルース方向に振れた、その理由と言ったらやはり昨年B.B.キングがお亡くなりになったから、ですかねえ。

そうですね、まさにそうです。

それまで土屋さんは、ブルースに特化したというか、ナンバー的にブルース・ナンバーばかり集めたアルバムを作ろうとしたことはなかったんですか。

そうなんだよね。だから、この私的モード盤シリーズは、常に作ってなきゃっていうことで、空いてる時間があったらなるべくイメージを音に変えて少しでも録音して、いつか完成させられるようにと思って――まあ自宅でやれることだけなんだけどね、自宅でやれることなので、そういったシリーズだからね、だから常に音は作っているんだけど、だけど、去年B.B.キングさんが亡くなって、そのニュースがねえ……けっこう衝撃がね、ジワッとした衝撃というか、そういうのがあって。

春先でしたよね。

いつも田舎に帰ると歓迎してくれるお爺ちゃんがいなくなっちゃったみたいな、感じ。

が、したんだ。

そう。ずっといると思ってた人が、ホントにいなくなっちゃったの? っていうところから、ジワジワ来ましてね。まあ何曲か録った、もう少しずつレコーディングし始めた曲もあったんだけれども、ちょっとそのときの自分の感じっていうのを色濃く出してみようかなっていう感じがね。

ということは、気持ちとしては強いものがあったということですよね。

そうだね。この「ブルーズ方向に振り切る」っていう強いものはあったよね。できたものを入れるっていうこと――

ではなくて。

今まではわりとそんな感じだったので。

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で、ご自身でレコーディングしていくときに、どんどん曲はできていったんですか?

……順調ではなかったけど、まずは日本語で、自分のスタイルでやっている先輩方の音源っていうのは、意外にないものだなっていうのをね、まず感じて。何かいい曲があったらカバーもしてみたいなって思ってたので。だけど、基本3コードでシカゴ・ブルースの形でやってる音源っていうのは、ほとんどが英語でね。

そうですよね。日本のポップ・ミュージックというかロックというか、その歴史を振り返っても、関西ブルースとかね、そういうのはあったけど。

うんうん。

あとはほら、演歌の人たちの、「ナントカのブルース」っていうもの。

だから、B.B.キングが初来日したときに観に行った関西系の皆さんはみんな大衝撃を受けて、ブルーズにハマリ込んだ人っていうのは多いと思うんだけど、だいたい皆さんが英語でそのままやってるっていう感じなのでね。それも聴くのは好きだけど、まあ自分がやるんだったら自分の雰囲気と自分が育ってきたブルーズとを上手くミックスできないかなっていう意味で言うと、やっぱり日本語なんだろうなっていう。自分の言葉で、3コードに載っけて、シャッフルするようなのがやってみたいなあっていう感じで。

そこはでは、英語でやるっていう方向には行かなかったんですね。

そうだね。だから、参考になるものがそんなになかったんです。だから、わりと自分でオリジナルで考えていったっていう感じかな。

ブルースを日本語で歌うっていうのが一個、今回の大きなフックかなと思いますよね。特徴。

うん。

なら、歌詞はどうだったんでしょう。

……歌詞も含めて、とにかくこのシリーズは全部の楽器を自分でやるっていうのがあるので、完成までに3回ぐらい挫折しそうに(苦笑)。

なった(笑)。

で、まあ、発売日まで自分で決めて、それを事務所の社長に伝えて、だから2回ぐらいは「もう、ちょっと今回無理かもしれない」って社長にごめんなさいの連絡をしなきゃいけないかなと思ったぐらい、途中でちょっと、うん。「もうこれは、成り立ってないな」っていうか、そんな気持ちになったり。

その暗礁に乗り上げそうになったときの難関部分というのは、具体的にどういうことだったんですか?

まあ自分が気に入るかどうかっていうのがまずあるよね。自分がいいと思えないっていう、そんな時期に入っちゃったりすると、もう何を聴いても面白くなくて、「こんなの、自分が気に入らないんだから誰かに聴かせられるわけない」みたいになって。まあ、過去もひとりでずっと作業をやってるわけで、そんなことはあったんだけどね、今回はけっこう、わりとその“落ちた”ところも深い感じがあったかなあと思って。

逆にその、ブルースにフォーカスしたからこそ、壁が高くなったっていうところもあるんじゃないですか?

自分の中の「のぼれたかな」っていう、なんかその高度というか、そういうのはちょっと高かったのかもしれないね。

ですよね。その壁の高さがわかったときが、ちょっと挫折しかけたときと重なるのかななんて思いますけどね。

そうだね。だから、プレイバックしても全然いいと思わなかったりとか、「何とも思わないな、こんな音楽」とか思ったり(苦笑)。「電話しなきゃ。できませんって」って(笑)。

ははは!

そんなことをしばらく凹んでたりなんかして。

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