Tリーグ丸かじり  vol. 2

Column

平野美宇と韓国卓球界の女神、徐孝元が壮絶ラリー。Tリーグ女子開幕戦に卓球の未来を見た

平野美宇と韓国卓球界の女神、徐孝元が壮絶ラリー。Tリーグ女子開幕戦に卓球の未来を見た

卓球コラムニストの伊藤条太です。少し時間が空いてしまいましたが、今回はTリーグの男子の開幕戦に続いて行われた女子の開幕戦のレポートです。そこには、男子の卓球とはまた違った女子の卓球ならではの魅力がありました。

取材・文 / 伊藤条太 写真提供 / T.LEAGUE


日本初の卓球のプロリーグ、Tリーグ。男子の開幕戦の翌日の10月25日、同じ両国国技館で女子の開幕戦が行われた。

日本での卓球は、男子よりも女子の方が一般的な認知度が高い。かつては、テレビで放送されるのが女子の試合ばかりなものだから、知人から「男子の卓球は大会がないのか?」と聞かれたこともあるほどだ。リオ五輪でメダルを獲ってからは急に男子の卓球も認識され始めたが、それでも女子の人気には及ばない。それは今回の開幕戦のテレビ放送の組み方にも現れている(男子はBSのみ、女子はBSと地上波の両方)。

男子の開幕戦は約5600人と8割程度の入りだったから、それより人気がある女子の開幕戦は満席になるに違いない。おまけに対戦するのは、平野美宇、早田ひな擁する日本生命レッドエルフと、徐孝元(ソ・ヒョウォン、韓国)、エリザベタ・サマラ(ルーマニア)ら強豪外国選手を擁するTOP名古屋だ。これを見ないで何を見るのかという凄いカードだ。興奮を抑えるのに苦労しながら会場に入って、愕然とした。観客が男子のときより明らかに少ないのだ。後で聞くと約4600人だったという。

つまりこういうことだ。無料でテレビを見る限りにおいては、女子の卓球のファンは膨大にいるが、その中で、お金を払って会場に足を運ぶほどのコアなファンは少ないということなのだ(男子の卓球は逆だ)。これは由々しき事態だ。観客が少なければチケット収入は減るし、空席が目立つ会場では放映権にも影響してくるかもしれない。

そんな私の不安をよそに試合は始まったわけだが、始まってみてまた驚いた。男子のときよりも歓声が大きかったのだ。しかもそれは、従来の卓球の試合会場の歓声とは明らかに違っていた。卓球の試合では、選手がサービスをするときは静かになるのが通常だが、かまわず歓声を上げる観客が多数いたのだ。ラリー中も卓球愛好者なら驚かないようなラリーで歓声が上がり、ときには笑い声さえ漏れた。

これは理想的な観戦態度だ。卓球愛好者は、ややもすると卓球を「お勉強」しがちになる。しかし興行は「お勉強」の場であってはならない。野球やサッカーの会場がそうであるように、観客が底なしに楽しむ場でなくてはならない。

試合は3 – 1で日本生命レッドエルフの勝利となったが、最高の盛り上がりを見せたのは、3番の平野と徐の試合だった。平野の人気は言うまでもないが、一方の徐も「韓国卓球界の女神」と言われる、卓球界では知られている美人選手だ。会場の巨大モニターに映し出された徐の姿を見て腰を抜かした男性客は多かったことだろう。

「韓国卓球界の女神」の異名をとる徐孝元(ソ・ヒョウォン)

平野美宇を擁する日本生命レッドエルフが開幕戦に登場

しかも徐の、卓球台から離れて相手の攻撃をひたすら返し、機を見て反撃をするカットマンというファンタスティック極まりないプレースタイル。試合はもつれにもつれて最終ゲームまでいき、平野のファンと徐のファンの応援合戦の様相を呈し、最後は平野に軍配が上がった。

従来の卓球の試合とは異質の盛り上がりを見せたこの試合は、Tリーグの大きな可能性を明確に示していた。そこには卓球の未来があった。

T.LEAGUE(Tリーグ)オフィシャルサイト
https://tleague.jp/

著者プロフィール:伊藤条太

卓球コラムニスト。1964年岩手県生まれ。中学1年から卓球を始める。東北大学工学部を経てソニー株式会社にて商品設計に従事。日本一と自負する卓球本収集がきっかけで在職中の2004年から『月刊卓球王国』でコラムの執筆を開始。世界選手権での現地WEBレポート、全日本選手権ダイジェストDVD『ザ・ファイナル』シリーズの監督も務める。NHK『視点・論点』『ごごナマ』、日本テレビ『シューイチ』、TBSラジオ『日曜天国』などメディア出演多数。著書『ようこそ卓球地獄へ』『卓球天国の扉』など。2018年よりフリーとなり、近所の中学生の卓球指導をしながら執筆活動に励む。仙台市在住。

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