Interview

「エウレカセブン」劇場3部作を支えるプロデューサーが語りつくす─“ほぼオリジナル”の新作として産まれた『ANEMONE』、その全貌

「エウレカセブン」劇場3部作を支えるプロデューサーが語りつくす─“ほぼオリジナル”の新作として産まれた『ANEMONE』、その全貌

2005年より放送されたTVアニメ『交響詩篇エウレカセブン』。レントン少年がエウレカと名乗る少女との出会いをきっかけに世界の真相を知り、閉塞感を突破していく物語は多くの視聴者の共感をよび、2000年代を代表する作品となった。あれから12年──『エウレカセブン』をさらに進化させるため、監督・京田知己、脚本・佐藤大、キャラクターデザイン・吉田健一をはじめとしたオリジナル・スタッフが集結し、あらたなストーリーを紡ぐ『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』劇場3部作のプロジェクトが昨秋よりスタートした。

11月10日より公開されている『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』は、3部作の真ん中に位置するゆえ、重要な役割を担っていると考えられる。その斬新な世界観はいったいどのような思いで作られたのか。本作プロデューサーの渡辺マコトに話を聞いた。

取材・文 / とみたまい


エウレカセブンシリーズの“ハブ”になるような作品に仕上がった『ANEMONE』

2017年秋より開幕した劇場3部作『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(以下『ハイエボリューション』)は、どういった経緯で企画されたものだったのでしょうか?

まず「2005年の『交響詩篇エウレカセブン』をリブートさせましょう」という話があがりまして……そのためには、オリジナル・スタッフである京田知己監督、脚本の佐藤大さん、キャラクターデザインの吉田健一さんが揃って作るエウレカセブンでないといけない、という認識のなか進められた企画です。

そのお三方が揃ったことで、企画が実現したということでしょうか?

そうですね。過去に『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』や『エウレカセブンAO』といった作品もありましたが、お三方が揃っての参加ということではなかったんです。ですから今回も、企画が実際にスタートするまでは「本当に三人が集まるのかな?」とは思っていまして……。

というのも、お三方にとって『交響詩篇エウレカセブン』はある種“肩書き”みたいな作品であって、それをずっと作り続けるということにプレッシャーを感じられていたと思うんです。それでも定期的に展開されてきて、その都度その都度、作品に与えられる命題が違っていたりするので……すぐにまた『交響詩篇エウレカセブン2』をやるようなテンションではなかったと思うんです。そういう意味でも、ある程度時間が経ったいまだからこそ、こういった企画が進められたのではないかと思っています。

いま“命題”という言葉が出てきましたが、『ハイエボリューション』の命題とはなんだったのでしょうか?

『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』(以下『ハイエボリューション1』)のときにお三方がおっしゃっていたのは、「12年前の焼き直しであれば、自分たちが関わる必然はないであろう」ということでした。ですから、少なくとも“お三方があらたに作るエウレカセブン”というのが命題になるのではないでしょうか。

なるほど。そういった「焼き直しではない」という意味でも、エウレカセブンシリーズ全体からみた『ハイエボリューション』の立ち位置とはどのあたりにあるとお考えですか?

おそらくですが、過去の作品全体のハブになるような立ち位置に……特に今回の『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(=ハイエボリューション2。以下『ANEMONE』)はなったかと思います。最初から意図的にそうであったかというと、ちょっと違うのかもしれませんが、『ANEMONE』に関して言うと結果的にはハブのような立ち位置になったのではないかなと思います。

『ハイエボリューション1』では時間軸を前後しながらレントンとエウレカの物語が綴られていましたが、『ANEMONE』ではアネモネのこれまで描かれることがなかった物語が展開されます。アネモネを主役にしたのはなぜでしょう?

『ハイエボリューション』がスタートする際に、お三方と弊社の南(株式会社ボンズ・南雅彦プロデューサー)が話し合って構成を作っていったのですが、その段階からすでに「3部作の真ん中はアネモネの物語にする」と決められていたようです。

お三方からも愛されているキャラクターですし、『交響詩篇エウレカセブン』ではそこまで深く描かれてないキャラクターだったので……エウレカのライバルとして登場するピーキーなキャラクターという印象はありますが、今回はもっと掘り下げて、アネモネにスポットを当てるような作品になったと思います。

『ANEMONE』を制作するにあたり、プロデューサーという立場で渡辺さんから現場にオーダーされていたことなどはありますか?

基本的に僕が「ああしてくれ、こうしてくれ」と言ったことは記憶にありませんが、ひとつあるのだとしたら、「監督がやりたいものを、制作側が作品としてきっちりと作れるような形にしたい」というようなことは言ったと思います。あくまでも“監督を中心としたモノづくりがしたい”という気持ちはありました。

石井・風花・アネモネ(CV.小清水亜美/玉野るな)

その「監督がやりたいもの」というのは、やはり“新しいエウレカセブン”なんでしょうね。特に『ANEMONE』では、キャラクターの設定がTVシリーズと変わっていますから。

そうですね。突出して変化があったのは、やっぱりアネモネですが……12年前の『交響詩篇エウレカセブン』で見せていたピーキーさがなくなって、普通の女の子になっていることがデザインからも見受けられると思います。

「予測ができない」京田監督との仕事が、ある意味“中毒”になっている

キャラクターの設定が変わったことにより、アネモネ役の小清水亜美さんは「新しいセリフ・エピソードを演じることになるなんて驚いている」、エウレカ役の名塚佳織さんは「いろいろ驚き、戸惑いました」とコメントされていますが……。

戸惑いますよねえ(笑)。

ほかにも、渡辺さんが感じたキャスト陣の印象などはありますか?

まさにおふたりのコメント通り、『ANEMONE』は12年前と設定や立ち位置が大きく違うところもありますので……新しいキャラクターをまた1から作るような方もいらっしゃったと思いますし、役づくりにはなかなかご苦労されたのかなあと思います。

特にエウレカについては、すべての作品において毎回違う個性を要求されるので。今回もご多分に漏れず(笑)、いままでのエウレカと違う側面を演じなければいけない状況ではありましたね。『ANEMONE』では主人公がアネモネで、エウレカがヒールのような側面もあったりするので、名塚さんも「え!?」と思われたんだと思います。

エウレカ(CV.名塚佳織)

役づくりについて、役者さんたちが現場で監督とディスカッションするようなこともあるのでしょうか?

音響監督の若林和弘さんと監督が打ち合わせをして、そこに監督がオーダーを伝えるヒントを与えるスタイルは変わっていないと思います。京田さんは「このキャラはこうだから、こう演じてほしい」みたいに縛るタイプではないので、役者さんの引き出しを若林さんと一緒に探っていくような感じですね。

『ANEMONE』は数回に分けて別録りナシの3日間で収録しましたが、皆さんベテランの方たちばかりなので順調に進めることができました。ただ、『ANEMONE』は絵コンテや美術など、普通のアニメーションと同じ工程を踏んではいますが、監督がシーンごとに作っていく手法をとったので、全部を並行して作っているんです。そのため、全体像が見えていないところもあったので、役者さんたちも探り探りの作業ではあったのかなあと思います。

全体像を見せずに、「今度はこのパート、その次はこのパート」みたいに同時進行で作っていく感じでしょうか?

そうですね。ですから役者さんだけでなく、CGのスタッフも、メカの作画のスタッフも、手描きのスタッフも、「いま作っているこの映像は、最終的にどこにハマっていくんだろう? これがどうやって繋がっていくんだろう?」と、最後の最後までわからなかったところはありますね。

そういった作りにするメリットはどこにあるのでしょう?

画作りに関して言うと、「従来のエウレカに縛られない」というところですね。あとはやっぱり、映像的な部分からストーリーを膨らませることができたのかなあと思います。ストーリーボードや美術ボードからスタッフの共通認識を組み立てていくことで、現場をまとめていったという感じですね。

渡辺さんのなかでも、最初はストーリーが浮かび上がってこなかった?

そうですね。中盤のシーンよりも先にエンディングが出てきたりしたので、「この間の部分はどういうふうになるんだろう? どこで締めるんだろう?」というのは、編集のギリギリまでわからなかったところもありますし、コンテのパートもかなり複雑な構成になっているので…。

プロデューサーとしては、胃がキリキリとなりつつ…。

ははは! そうですね。常に「まだか」と言われる立場ではありますから(笑)。

それでも監督を信じて、監督が作りたいものを最優先したのですね。

そうですね。やっぱり京田さんとのお仕事って、いろいろと変わったアプローチも作品のなかに取り込まれるので、「予測ができない」とおっしゃる方もいらっしゃるとは思いますが、僕のなかでは……もうずいぶんと長い付き合いになってくるので、ちょっと中毒になっているようなところもあるんです(笑)。もちろん、京田さんに作っていただく作品に関しては信頼以外にないので、僕たち制作側としては、「京田さんの作りたいものに、どうやってうまく着地できるか」というところを常に注力していますね。

京田さんは「こういうふうにしたい」という画作りへの執着がすごいうえ、完成形がどういったものになるのか掴みきれないところがあるので、スタッフからは「大変だな」とも思われているでしょうが(笑)、みなさん監督を信頼しているので、探り探り監督の理想のものを作り上げていくという感じでしょうかね。

「完成形がどうなるかわからない」と思いながらも作っていかないといけないスタッフさんたちのモチベーションをあげるために、なにか工夫されていることはありますか?

「毎回新しいオーダーをする」ということでしょうかねえ。皆さん「ひー!」って驚きながら作っていると思いますが……特に今回は「12年前とは違う、新しいもの」という部分で、監督がすごく意気込んでいらっしゃるので、新しい要素や新しいビジュアルを作ることに関しては、かなり意識されていたと思います。

1 2 >