Interview

the peggies バンドの骨の部分を伝えたという最新作について、北澤ゆうほに訊く。

the peggies バンドの骨の部分を伝えたという最新作について、北澤ゆうほに訊く。

3ピースのガールズロックバンド、the peggiesがニューシングル「君のせい」をリリースした。表題曲はアニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」のオープニングテーマで、タイトルにもなっている「君のせい」というフレーズを何度も繰り返す、甘くて苦い青春ロックナンバーとなっている。アニメ「BORUTO –ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」EDテーマに起用されたデビューシングル「ドリーミージャーニー」以来となるアニメとのコラボに、バンドとしてどんなアプローチで臨んだのか。ヴォーカル&ギターでソングライターである北澤ゆうほに制作過程を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 荻原大志

恋愛に限らず、他人に不器用に接してしまうっていうところを描いてますね

新曲「君のせい」はアニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」のオープニングテーマになってます。とにかくサビの<君のせい/君のせい>が一度聞いたら、頭から離れないんですが、どんなところから作っていったんですか。

the peggiesあるあるなんですけど、原型は前からありました。限られた時間で流れた時に、一番耳に届きやすいし、頭に残りやすいし、<君のせい>ってワードもパンチがあるから、これを磨くのが良いんじゃないかってなって。でも、最初に書いてた歌詞は、アニメに寄らずに普通に書いたので、脚本を読んで、歌詞も書き直して作っていきました。

原作はライトノベルですよね。脚本を読んでどう感じました?

ライトノベルは「ハルヒ」(「涼宮ハルヒの憂鬱」)くらいしか知らなくて。全然読んでこなかったし、どういう人が読むのかもわからないし。未知の世界すぎて、どういう人たちに届くことを見越してやっていけばいいのかな、どういうモチベーションでいけばいいんだろうと思って。最初は、情報がないという意味での不安があったんですよね。乱暴な言葉で言うと、アニメオタク向けというか、ターゲットが絞られた人向けなのかなって思ってたんだけど、最初の3話分の脚本を読んだら、設定はトリッキーだけど、大筋のテーマには共感できるところがあって。これ、素直に描きたいっていう気持ちで描けるなって思って。

その共感した部分ってどんなところでした?

青春時代を送っている高校生の話だけども、キラキラしてるだけではなくて。理想の青春を描いてるっていうよりは、“思春期症候群”というトリッキーな設定に当てはめて、思春期の若者が持つ不甲斐なさとか、自分好きと自分嫌いの間で揺れ動く感情みたいなのを描いてるんだなと思って。その、自分好きと自分嫌いの間で揺れ動いてる感じって、例えば、「JAM」っていう曲でも描いてたりするから、私が描きたいテーマにも沿ってる。青春という意味でも共感できたし、ヒロインの女の子の麻衣ちゃんは、自分はこういう風に見られるべき人間だっていう自意識のせいで、どうしても強がってしまっていて。強い女の子でいたいから、あんまり素直に男の子に甘えられないっていう気持ちもわかるなって思いながら読みました。

ゆうほさん自身はどんな青春時代を過ごしました?

もう完全に“ザ・10代のトゲ”を全身に纏いながら生きてました(笑)。

あはははは。中学2年生でバンドを結成してますよね。

うん、もうthe peggiesでしたね。中学生の頃は毛皮のマリーズとか、ロックンロールが好きで聴いてて。エスカレーター式の女子校だったから、学校の中では明らかに少数派の趣味のところにいた。そこで、自分はもしかしたら特別なんじゃないか、みたいな意識が最初に芽生えるじゃないですか。「自分は特別かもしれない」というのと同時に、外界に接するうちに、どんどん自分へのコンプレックスというか、「自己否定みたいな感情」も同時に同じスピードで芽生えていって。世界はこうあるべきっていう理想もすごすぎて、もっとみんなちゃんと物事を考えて行動して欲しいって思ってて(笑)。楽しんでる人達へのコンプレックスもあったから。「みんな、バカだな」って思いながら過ごしてて。バカだなって見下せればいいんだけど、どっかでなんで混ざれないのかな、みたいな劣等感もありましたね。

じゃあ、ご自身の青春時代のことを描いた?

いや、リードは基本的に私の経験から得た価値観や感覚を自分の頭の中にある別のキャラクターに当てはめて、この子はこういうかなって考えるんですよ。しかも、今回はアニメのことを意識していたので、麻衣ちゃんと通ずるところというか。自立した女子でありたいっていう反面、どうしても一人では生きていけない部分、誰かに頼りたい部分っていうのがある。恋愛に限らず、他人に不器用に接してしまうっていうところを描いてますね。

ひとりぼっちだなって思うのも、誰かがいたから一人だなって思うし、悲しいなつらいなって思うのも、誰かがいるからだし

恋愛対象だけではない?

パッと聞いたときに、恋愛になればいいなと思うんですけど。基本的に全て恋愛に限らないなって思ってますね。

<君のせい/君のせい/君のせい>の“君”が、大好きなたったひとりの“君”にも聴こえるし、“私”の周りにいるいろんな“君”=他人のようにも聴こえます。

うんうん、そういう風に聞いてもらっても全く間違えてないですね。いっぱい“君”っていう言葉が出てくるので、それは、友達でもいいし、会社の同僚でもいいし、同じ環境にいる誰かに当てはめてきいもらってよくて。恋愛に限らず、自分の感情が動くのって、結局、そばに誰かがいるからだなって思うんですよ。ひとりぼっちだなって思うのも、誰かがいたから一人だなって思うし、悲しいなつらいなって思うのも、誰かがいるからだし。その存在は恋愛に限らずあるんだよって思ってますね。

この繰り返しが多い楽曲に対して、レコーディングにはどんなアプローチで臨みました?

歌詞の情報量も少ないし、構成もそんな珍しくない。言ってしまえば、シンプルな作りだから、3分ちょいを退屈にさせないように、1コーラス聞けばいいじゃんって言う曲にならないようにっていうことを意識してレコーディングしようねって言ってましたね。あと、私はギターの音を作れた時に、これはもう最高! って思って(笑)。ギターの音、めっちゃかっこいい。ここ最近の録音の中で一番いい音で録れたなって思ってて。いろんな音色を重ねてるんですけど、数あるギターを最終的に3ピースの音にぎゅっとまとめられたなって思うし、歌も単調にならないように意識しましたね。

通して聴くと、2番の方がゆうほさんっぽいんですよね。

そうそう。1番はアニメのオープニングに使われるから、聞いてもらった時に歌詞が届きやすい状態のものを録音しようと思って歌って。2番からは私を出そうと思って。歌い回しも自分のニュアンスを出して歌ってて。それがいい具合にできたなって、今でも思ってます。

MVもアニメの舞台と同じ湘南で撮影されてます。

中島セナちゃんの撮影シーンは別日で、私たちは“君”くんとの演奏シーンだけだったので、新しいことはなくて。みく(大貫みく/Ds)は、どんどん入潮になってしまって、ドラムが前に前に移動したりして。大変ちゃ大変だったけど、天気もちょうど曇りだったし、撮ってる時間はすぐに終わりましたね。

ゆうほさんの髪の毛が短いことに驚きました。

切りました。しょぼい理由なんですけど、ライブの時に髪の毛がめちゃめちゃ邪魔だったんですよ。ライブ中も今、どうなってるかなって気になるのがすごい嫌で、ポニーテールにしてて。そしたら、うちのベースが同じタイミングでポニーテールを始めて。同じは絶対に嫌だ、被るのはマジでヤだと思って。ライブのことを考えたのと、人と被りたくないって気持ちから、切っちゃいましたね。

まーちゃん(石渡マキコ/Ba)はどうなってるんですか、今。

結んでないから、私が伸ばして結びます!

あはははは。イタチごっこみたい(笑)。アニメのオープニング映像はどうでした?

映像ができる前に早めに曲を用意して投げたおかげでバッチリと曲とあった映像にしてもらって。ドラムのキメのタイミングで絵が変わったりとか、作曲者としてめちゃめちゃ嬉しい映像になってましたね。ただ単にあっちの用意した映像の後ろで流れてると言うよりは、本当にマッチして、1つの作品になってから嬉しいなって思ってます。あと、最初はニコニコ動画で見たんですけど、<♪君のせい>って始まった瞬間に、みんなが「俺のせいじゃない」「俺のせいじゃない」「ごめんなさい」「ごめんなさい」って弾幕を流してくれて。それが面白かったし、楽しんでくれてよかったなって思ってます。

私、何事においても、めちゃめちゃ俯瞰するんですよね。なるべく、荒波を立てないように俯瞰をしてしまう癖があって

アニメでも歌詞に合わせて、狙い撃ちしてますしね。一方のカップリング「最終バスと砂時計」は多幸感溢れるラブソングになってます。

「君のせい」が私の価値観を別のキャラクターにはめて変換したものだとしたら、これは割と自分の感じかもしれない。私、何事においても、めちゃめちゃ俯瞰するんですよね。なるべく、荒波を立てないように俯瞰をしてしまう癖があって。

それはネガティヴな意味で? 癖ってこと?

癖なんですよ。傷つきたくないからという理由ではなくて、ふっと一歩引いた上で、北澤ゆうほとその時の彼氏とかを見てしまう癖があるんですよ。「北澤ゆうほ、次はこう言えば喧嘩にならないぞ」みたいな(笑)。そうしてしまうことがさみしいことだと思ってないし、別にサバサバしてるわけでもないんですけど、私はそのやり方で恋愛を楽しんでて。だから、ぱっと見、落ち着いてるラブソングになるかもしれない。

砂時計を倒したままで愛し合ってる二人ですよね。

「時が止まったままでいいよ」って言うニュアンスで作ってて。私は、ずっと付き合ってて結婚したとしても、最終的には死というものがあって、必ず別れは来るものだと考えてて。それをわかった上で、「ずっと一緒にいようね」とは安易に言えない。それは、諦めてるとかじゃなくて、ただの認識に過ぎないんですね。でも、だからこそ、ずっと一緒にいたいなと思ってしまうと、時が止まるという選択肢しかないな、みたいな。明日こないでほしいな、みたいな。倒れた砂時計そのままにして、ステイしようぜ、今、ここの時間にって感じなんだけど。

さらに、最後は二人が1つになってますよね。

二人が1つとか、あんまり言いたくないんですよ。

でも、言ってるじゃないですか。

<私たち二人で1つだね>っていうワードだけだと、ありえないと思ってるタイプだし、言いたくない言葉の1つなんだけど、もしも二人が1つになることが可能なのであれば、どういう経緯でなるのかなっていうことを冷静に考えて。その説明を入れた感じですね。1つにならずとも、結局、人って人に流されるなと思ってて。彼氏が好きなものは必然的に興味を持つ。結果、好きになるかはわからないけど、興味を持ったりするから、全部が重なって1個になることはないけど、ちょっと重なって、輪郭が1個になることはあるなと思って。そういうニュアンスで書けば、私なりの二人で1つは言ってもいいかなと思って書きました。そう、私はあんまり書かないんですけど、書いてみました。

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