Interview

アニソンレーベルからのデビューは「正直めっちゃ不安だった」 生粋のロックバンドが打ち明けた、ランティスとの出会いと開花への道のり

アニソンレーベルからのデビューは「正直めっちゃ不安だった」 生粋のロックバンドが打ち明けた、ランティスとの出会いと開花への道のり

力強く伸びやかな歌声と、心を強く揺さぶるメロディー。大阪発、結成10周年を迎えた4ピースバンド・ラックライフは、等身大の自分を歌い、リスナーの背中を押し続けてきた生粋の“ライブハウス”バンドだ。そのラックライフが、数々のアニメソングのリリースで知られるランティスレーベルからメジャーデビューを果たしたのは、2016年のこと。アニメとは無縁の音楽活動を続けていた彼らだったが、今や『文豪ストレイドッグス』『最遊記RELOAD BLAST』『食戟のソーマ』などで主題歌を発表するたび、アニメファンは彼らの歌声と演奏にしっかりと心掴まれ、「この作品は、ラックライフの曲じゃないと!」と熱い想いを寄せられるほどになった。

生粋のロックバンドが、“アニソン”と出会うことで起こったケミストリーの正体とは? これまで担当してきたアニメソングを通じて彼らが表現したかったこと、最新シングルとなるTVアニメ『ツルネ ―風舞高校弓道部―』のOP主題歌「Naru」に込めた想い、バンドとしての在り方を、ラックライフのソングライター&ギターボーカルのPONにたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 阿部美香 構成 / 柳 雄大


アニメソングの世界は「ありのまま」を歌うことができる場所だった

ラックライフ 写真左から、たく(Bass.)、ikoma(Guitar.Chorus.)、PON(Vocal.Guitar.)、LOVE大石(Drums.)

ラックライフは今も大阪在住で、もともと高校の同級生同士で結成され、ライブハウスで育った生粋のギターロックバンド。そういうタイプのバンドが、アニソンのリリースがメインのランティスからメジャーデビューし、アニメの主題歌を歌い続けているのは、業界内でも非常に珍しいことですね。

PON そうなんですよ。だって僕、ランティスからメジャーデビューすることになった時、正直、めっちゃ不安だったんですよ。

どうしてですか?

PON ランティスからデビューするということは、僕らもやっぱりアニメのタイアップ曲を歌うことになる。作品に寄り添う曲を書かなければいけないだろうから……自分らしさだと思ってるものが、もしかしたらそぎ落とされてしまうんじゃないか? とか。僕らがそうというワケやないですけど、ライブハウスでやってる人間って、やっぱりアニソンにはどこか偏見もありますし。でも実際にやってみたら、原作の力を借りながら、ちゃんと自分のありのままを歌うことができてる。僕にとっては、すごく合う場所やったんやと、安心しましたよね。

原作の力を借りながらも、自分のありのままを歌える場所がアニメソングの世界。そう聞くと、今までの主題歌との向き合い方を知りたいですね。アニソンとの最初の出会い、1stシングルは、『文豪ストレイドッグス』のEDテーマ「名前を呼ぶよ」でしたね。

PON あの曲のテーマは「承認欲求」です。「なぜ自分は自分でいるんだろうか?」と考えたとき、原作の武装探偵社の仲間やったり、周りの人達が名前を呼んでくれることが、「あ、自分はここにいるんだ」という証拠になるなと。それは、僕にとってライブハウスに遊びに来てくれる人達なんですよ。ラックライフという名前を知って遊びに来てくれること、音楽で出会った仲間達がPONという人間を認識してくれること。原作にそれを重ねて作った感じですね。

タイトルもじつにストレートに。そしてメジャー2ndシングル「初めの一歩」は、『チア男子!!』のOP主題歌でした。

PON 『チア男子!!』の主人公がチアを始めるとき、熱心に誘う幼馴染みがいたんですよ。その彼がいなかったら、物語が始まってない。それは、俺にとってのLOVE大石(Dr)なんです。自分はもともとソロシンガーになりたかったから、バンドは観てるだけのものやったのに、「オモロいから、一緒にやってみようや」って声をかけてくれた。それを曲に重ねて、次は俺が誰かを引っ張ってあげられるように、「ライブハウスにはこんな楽しいことあるで!」と、初めの一歩を踏み出させるような曲にしたかったですね。

なるほど、実体験と作品が重なったんですね。3rdシングルは、「風が吹く街」。『文豪ストレイドッグス』第2クールのED主題歌として作品と再会しましたね。

PON はい。第2クールは、武装探偵社ができる前の「黒の時代」のエピソードから始まったんですね。その話で感じたことは……例え会えなくなってしまっても、大切な人にもらった言葉って、すごく自分の中に残って、それが芯になり柱になって、自分が自分でいられるんやなと。原作では太宰(治)さんが織田作(織田作之助)に言われた「お前は人を救う側の人間になれ」って言葉がそうなんですよ。そういう大事な言葉を、僕はライブハウスで生きてきた中で、大好きな人達からたくさんもらってきたんです。

例えば、どういう言葉でした?

PON 「PONは歌ってるだけでPONになるから、自信持って胸張って自分の歌を歌え」と、歌を辞めた先輩に言ってもらえたり。死んじゃったおばあちゃんに、「あんた、楽しそうに歌うね」と言われたことを、しんどい時に思い出し踏ん張れたり。会えなくなってしまったけど、その言葉があったから、ちゃんと今を幸せに生きているんだよという想いで作ったのが「風が吹く街」です。

「ラックライフがやってくれるなら間違いない」背中を押したファンの声

『最遊記RELOAD BLAST』のEDテーマになった「リフレイン」は?

PON 『最遊記RELOAD BLAST』の登場人物って、みんな“オラついてる”じゃないですか(笑)。あんな風になれたらいいなってすごく思ったんですよ。

自分には、そういう要素がないから?

PON そう。それぞれのキャラクターが、過去の辛いことを抱え持ってるけど、誰にも言えなかったりする。でも、それを燃やして走り続けるエネルギーは、俺の中にもあるんじゃないかなと思ったんですね。原作の台詞に、「お前が死んでも何も変わらん。……だが、お前が生きて変わるものもある」という言葉があって、ほんまにそうやなって。投げ出すこと、辞めることは簡単やけど、その先に自分しか作り出せない世界があるなら、この目で見ないといけない。「ムカつくことはいっぱいあるけど、俺はやったんねん!」ぐらいの気持ちで、オラつきながら歌詞書いてました(笑)。

5thシングルの「僕ら」は、またまた映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』エンディング主題歌に。横浜の街を、反目勢力同士が力を合わせて圧倒的な危機から救おうとする、壮大な戦いを描いていましたね。

PON あれは、『文豪ストレイドッグス』の仲間たちの歌を書こうと思ったんです。僕にいちばん近い仲間っていったら、やっぱりラックライフのメンバーやスタッフを合わせたチームやなと。そこで「仲間と一緒に戦っていくんだ」みたいな1番の歌詞を書いたんですけど……そこで書けなくなっちゃったんです。「これ、2番からどうしてええか全然わからへんわ」って思ってたら、劇場版のエンディング・アーティストはラックライフですと公式に発表されて、もうめっちゃ怖かったですよ、曲、できてもないし。

焦りますよね。

PON 「もう逃げられへんわ! どうしよ?」って時に、周りの反応がすごかったんです。僕らを応援してくれてる人は、「映画館でラックライフが聴ける、うれしい。おめでとう」という言葉をいただき、『文豪ストレイドッグス』ファンの方からは、「ラックライフがやってくれるんやったら、間違いない。楽しみ」と言ってくれた。それが嬉しくて、ほんまに泣きながら2時間エゴサーチしてましたから。

それは嬉しいですね。

PON 今も、喋りながら泣きそうですもん! 曲できてないけど、こんだけ僕らの音楽を信じて待っててくれる人がいるんやと思ったら……「一人じゃない」感がすごかったです。みんなに背中を押されてるような気持ちで、その日のうちにフルコーラス完成できましたからね。ほんまに、みんなに助けられてできた「僕ら」なんですよ。めっちゃええ話なんで、ここは太字で書いて欲しい!(笑)

そんな「僕ら」の次が、『食戟のソーマ 餐ノ皿「遠月列車篇」』のOP主題歌「シンボル」。

PON これも作品の主人公達と自分たちを重ね合わせた曲ですね。ソーマが学校の寮で、仲間と「俺のほうがうまい」「こうしたほうがええんちゃうか?」みたいに切磋琢磨してる。じゃあ、僕らにとってそれはどこか? っていうと、ライブハウスなんですよね。5年前、200キャパで50人ぐらいしかお客さんおらんかったライブの打ち上げで、「お前の歌、最高や、ええなやっぱり」とお互い認めあって、「いつか俺らで、東京でも大阪でも1000人、1500人のライブハウス埋められたら最高やん!」と夢を語りながら、足りないものがたくさんあって悔しい想いをしてきた。「だけど俺らも頑張るから、お前らも頑張れ、夢をちゃんと叶えないとオモロないで!」という想いを歌った曲ですね。

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